地方政治 強まる危機感 首長 「解釈改憲ノー」続々
(東京新聞【核心】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2014061602000117.html
安倍晋三首相が目指す集団的自衛権の行使容認のための憲法解釈変更に、各地の知事や市長らが次々と反対の声を上げている。外交や安全保障は、地方政治とは無縁とみられがちで、異論を唱えることは国との関係をぎくしゃくさせかねない。それでも、解釈改憲を急ぐ首相を黙認できないとの思いは静かに広がっている。
(関口克己)
「戦争に直結」「9条守れ」
発言が目立ち始めたのは、首相が5月15日の記者会見で憲法解釈変更を検討する考えを表明してから。全国の都道府県と市町村の数は計1800近く。この問題で政権への苦言を公にした首長はまだ多数ではないが、行使容認反対などを求めた意見書を国会に提出した市町村議会も約60あることと合わせ、地方でも危機感が強まっている。
長崎市の田上富久市長は5月30日の記者会見で、安倍政権の動きについて「原爆被爆者には、日本の在り方の大きな方針転換になるのではないかという不安に結び付いている」と指摘。8月9日の原爆犠牲者慰霊平和祈念式典で読み上げる平和宣言文で、この問題に触れる方針だ。
三重県鈴鹿市の末松則子市長は、解釈改憲での行使容認を「戦争に直結すると捉えられかねない」と批判。「母親の立場からみても素晴らしい憲法。9条は変えてほしくない」と訴えた。
首相は会見で、乳児や母親を描いたパネルを用いて行使容認が必要とする事例を説明したが、札幌市の上田文雄市長は「危機感だけをあおる手法は、国民に冷静な判断をさせない催眠商法のやり方に酷似している」と批判した。
自民党参院議員も務めた東京都の舛添要一知事、経済産業省次官などを歴任した大分県の広瀬勝貞知事らも、首相が目指す今国会中の閣議決定に疑問を示す。
定期的な会見をすることが少ない町村長でも、長野県中川村の曽我逸郎村長は村のホームページで首相を戒めている。
動き広がれば局面変わる
長野県中川村・曽我逸郎村長
そが・いつろう 1955年、長崎県出身。京大卒業後、広告代理店・電通入社。営業部長で途中退社し、他縁のない長野間中川村に移住。2005年、村の合併に反対するグループから村長選に出馬し初当選。現在3期目。「脱原発をめざす首長会議」にも参加。
集団的自衛権をめぐる首相の考えに強く反対する首長の一人が、長野県中川村の曽我逸郎村長(58)。人口わずか5000人の山村から危機を訴えている。
─なぜ、行使容認に反対なのか。
「集団的自衛権を行使することは、日本の税金で訓練をした若者が、税金で購入した米国製の兵器とともに、米国の都合で始まった戦争に駆り出されることだ。何重にも売国的だ」
─行使容認と地方自治はどう関係するか。
「行使が認められれば、自民党は国家安全保障基本法案を成立させるはずだ。そこでは、自治体は国と協力して安全保障に必要な施策を実施する責務を負うとされている。自治体のあらゆる分野に国が口を出し、住民の日常生活もからめ取られていく」
─各地で、首相の動きに疑問の声を上げる首長が出ている。
「心強く感じる。ただ、現職の首長の中には、そういう発言はしにくい人もいる。国との関係をこじらせたくないからだ。でも、声を上げなくても、同じ思いを持っている首長は多い」
─世論調査でも、行使容認は反対が多い。
「住民が地元の議会や首長に、行使容認に反対する意見書や声明を出すよう働き掛けてほしい。ゲームのオセロは、黒ばかりの盤面でも、少しずつ白のこまが増えれば、局面は大きく変わる。政治も同じだ」
─行使容認に至れば、中川村はどうなるか。
「日本の若者が命の危機にさらされれば、かつての戦争と同じように、日本を守るために亡くなったとして、若者の村葬をさせられる時が来るかもしれない。自分はそんな弔辞は読みたくない」
沖縄から見た集団的自衛権 基地集中 知事選混迷
(東京新聞【こちら特報部】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2014061702000142.html
23日は、太平洋戦争末期の沖縄戦が終結した「慰霊の日」。悲惨な地上戦で、多数の犠牲者が出た。戦後の日米安保体制は、在日米軍基地のほとんどが集中する沖縄の犠牲の上に成り立ってきた。今、集団的自衛権の行使容認に向けた議論が急ピッチで進む。沖縄の人々は、この政治状況をどう見ているのか。
(荒井六貴、篠ケ瀬祐司)
「標的にされるのでは」「戦争の準備している」
「また戦争に巻き込まれるようなことは絶対反対だ。戦争を知らない世代の政治家は何を考えているのだろうか」
沖縄県糸満市の平和祈念公園。沖縄戦の戦没者ら約24万人の名前が刻まれた「平和の礎(いしじ)」の前で浦添市の仲本政昭さん(79)は、集団的自衛権の行使容認に向けて突き進む政治状況に疑問を呈す。仲本さんは2人の兄を失い、自身も防空壕(ごう)で銃を構えた米軍に取り囲まれて捕虜になり、命を取り留めた。
平和の礎に妹3人の名が刻まれている南城市の無職真喜志静子さん(78)も「戦争の話は聞きたくもない。また同じことを繰り返すのでは」と心配を口にした。
1945年6月23日未明、旧日本軍の牛島満司令官らが自決し、事実上、この日に沖縄戦が終結した。沖縄県民にとって忘れてはならない日だ。
「昨年4月の主権回復の日に続いて、沖縄県民の心を逆なですることばかりだ」。憲法を考える草の根市民グループ「憲法9条・メッセージ・プロジェクト沖縄」事務局長の城間えり子さん(52)は憤る。
集団的自衛権の問題に沖縄県民がとくに敏感なのには理由がある。沖縄には日米安保条約に基づく在日米軍基地の約74%が存在しているという現実だ。「米兵や米軍による事故や事件も頻発し、憲法の基本的人権が守られているとは言い難い。いくら基地に反対しても届かず、主権在民でもない。だけど、基地があっても、戦争にならずにすんでいるのは、平和憲法のおかげ」。解釈改憲で集団的自衛権の行使が可能になり、米軍と一体化することになれば、「沖縄が標的になるのでは」と恐れる。
県議会議長や自民党沖縄県連顧問を務め、県連の重鎮だった仲里利信さん(77)は「集団的自衛権の行使容認は、抑止力になるという意見があるが、対抗する力を強めたら、軍拡競争になる。その先にいったい何があるのか」と警鐘を鳴らす。
仲里さんは、県連が米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する公約を撤回したことに反発。自民党国会議員の後援会長を退いた。今年1月の名護市長選では、移設反対派の稲嶺進市長を応援した。県連は3月、仲里さんを除名処分にした。「県内移設反対は、保守、革新の立場とは関係なくオール沖縄の意見だ。このままでは、沖縄は、米軍基地が撤廃されるどころか、逆に米軍の要塞(ようさい)化するだろう」
戦争末期、家族でガマ(洞窟)に隠れていた。3歳の妹といとこが泣いているのを見た日本軍の兵士がおむすびを出し、母親に「毒入りだから、食べさせろ」と言っていたのを鮮明に覚えている。仲里さんは安倍政権について「特定秘密保護法や集団的自衛権の行使容認は、戦争の準備をしているようにしか思えない」と話す。
保守分裂 「オール沖縄」模索
「県民同士の対立おかしい」
沖縄県で、政界に異変が起きている。11月に想定されている県知事選で、保守陣営が割れ、従来の保革対決の構図が変化する可能性が高まっているのだ。
立候補者として名前が挙がっているのは、保守系の大物2人。2010年に自民党県連などの推薦を受けて再選した仲井真弘多(なかいまひろかず)知事と、自民党県連幹事長を経験した翁長雄志(おながたけし)那覇市長だ。翁長氏は10年知事選で、仲井真陣営の選挙対策本部長を務めている。
かつて行動をともにした両者だが、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐり、たもとを分かった。
仲井真氏は知事選で「辺野古移設は事実上不可能だ」と県外移設要求の方針を示していた。それを昨年末に転換し、辺野古沿岸部の埋め立てを承認した。一方、翁長氏は辺野古への移設反対を明言している。
正式に出馬表明しない仲井真、翁長両氏を尻目に、周囲は走り出している。
活発な動きを見せるのは翁長氏を推すグループだ。那覇市議会最大会派「自民党新風会」(11人)は今月5日に翁長氏と会い、知事選への出馬を要請した。
地元経済界も12日、翁長氏擁立を目指す同志会を立ち上げた。中心人物はホテル経営の「かりゆしグループ」の最高経営責任者(CEO)、平良朝敬氏ら。保守候補の支持者として知られていたが、今年1月の名護市長選でも、移設反対の現職候補を応援した。
その翁長氏は集団的自衛権の行使容認について、6月議会で「憲法9条の下で許容される自衛権の行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきだ。集団的自衛権の行使はその範囲を逸脱する」と明確に反対した。
一方、知事の後援会は10日、3選を目指して出馬するよう、仲井真氏に要請した。自民党沖縄県連は翁長氏に出馬を求めた那覇市議の除名に動くなど、党内の対立は深まっている。
野党内には翁長氏との共闘を模索する動きがある。翁長氏は「オール沖縄」を掲げ、米軍新型輸送機・オスプレイの沖縄への配備撤回や、普天間飛行場の県内移設断念を求める運動をリードしてきた。保守政治家でも手を結びやすい相手だ。翁長氏も地元紙、琉球新報とのインタビューで「県民の心を一つにするためには党利党略ではなく最大公約数で、(日本全体の)0.6%の面積に(在日米軍の)74%の基地はいらないという部分で(共闘を)構築することだ」と、主張の違いを超えた連携に前向きな考えを示している。
沖縄国際大の前泊博盛教授は、「集団的自衛権の行使とは武力を使うことだ。そういう事態になったら、観光客は激減し、船便も滞る。沖縄県は干上がってしまう。抑止力が必要だとの議論が高まり、沖縄の米軍基地固定化につながるおそれもある」と警鐘を鳴らす。
昨年、県内の市町村長や県議らが、普天間飛行場の県内移設断念とオスプレイの配備撤回を求める「建白書」に署名した。前泊氏は建白書実現に向けた「島ぐるみ会議」の開催を目指す。前出の仲里氏も発起人の一人だ。前泊氏は翁長、仲里両氏らの動きをこう分析する。
「両氏は、ウチナーンチュ(沖縄の人)同士が対立をさせられるのはおかしいと気付いたのではないか。保守、革新というイデオロギーを超え、沖縄のアイデンティティー(独自性や本質)を大事にしようとする構造的な変化は、県内でかなり進んでいくだろう」
「必要最小限」歯止めない 古賀茂明さん
しんぶん赤旗日曜版2014年6月15日
6月13日(金)放送分「集団的自衛権ヤマ場・元官邸キーマンに聞く」
http://youtu.be/5y7V_rb2g24
先週のこの番組では、集団的自衛権の行使容認の鍵を握るとされている公明党の、与党協議メンバーの一人にお話を聞きましたが、その公明党が、集団的自衛権の一部行使容認の検討を始めました。
いよいよ大詰めを迎えることになったこの問題について、元防衛官僚で、小泉政権や第一次安倍政権の時などに内閣官房副長官補として、自衛隊のイラク派遣など、官邸の安全保障戦略の実施に携わった柳澤協二さんをスタジオに迎え、当時の動きや、それに対して今の動きをどう感じるか、などを聞きます
集団的自衛権一転容認へ 国会閉会後「閣議決定」
日刊ゲンダイ2014年6月14日
歴代政権が「できない」と禁じてきた”集団的自衛権”を行使できるようにして本当にいいの
か。ゴリ押しする安倍首相に対して、強く抵抗してきた公明党があっさり寝返った。脅しに震え上がり、大慌てで白旗を揚げたらしい。
集団的自衛権を行使できるように、この国会中に「閣議決定」をする予定だった安倍官邸に対
し、公明党は「まだ議論すべき点は多く残されている」と突っぱねてきた。
ところが一転、「閣議決定」を認めることになった。
「とにかく代表の山口那津男さんが『集団的自衛権は認められない』と妥協しようとしなかった。支持母体の創価学攷の意向があったのかも知れない。それが急転直下、公明党は”閣議決定”を認めることになった。ただ、あれだけ抵抗しておきながら、なんの成果もなく、容認するわけにはいかない。そこで閣議決定の時期を国会会期中ではなく、国会閉会後に遅らせることで自民党と話をつけたようです。これなら、公明党が安倍首相の暴走にブレーキをかけた、時間をかけて議論したと支持者に説明できる。でも、実態は公明党の全面譲歩ですよ」(政界関係者)
公明党が「集団的自衛権」の行使を容認するのは、シナリオ通りという見方がないわけじゃな
い。しかし、このタイミングで慌てて方針転換したのは、エゲツない脅しがあったからだ。
脅しのひとつは、安倍首相のブレーン飯島勲参与の発言である。わざわざアメリカで公明党が嫌がる「政教一致」について発言した。
〈公明党と創価学会の関係は政教一致と騒がれてきたが、法制局の発言の積み重ねで政教分離ということになっている〉〈法制局の答弁が変われば『政教一致』が出てきてもおかしくない〉
集団的自衛権を禁じてきた従来の憲法解釈を変えるように、政教一致についても変えるぞ、という脅しである。
しかし、公明党がそれ以上にビビつだのは、創価学会の”カルト認定”だったらしい。
先週あたりから政界の裏側では「もし、公明党が集団的自衛権に反対したら、アメリカが創価学会をカルト認定するらしい」という情報が流れはじめた。この情報に公明
党が真っ青になっだのは間違いない。
「創価学会はフランスではカルトと認定されていますが、たいした実害は
ない。でも、アメリカにカルト扱いされたら激震が走る。アメリカは宗教に寛容な国ですが、宗教団体が過激な政治活動をした場合、宗教団体の免税特権などを剥奪することになっている。創価学会はアメリカにも大学を持ち、創価学会インターナショナル(SGI)が世界中で活動している。アメリカにカルト認定されることだけは避けたいはずです」(霞が関事情通)
公明党が方針転換した裏にどんな事情があったのか。集団的自衛権の行使を認めるのはシナリオ通りだったとしても、国民の期待をあおり、最後に裏切った公明党は、いずれ国民からしっぺ返しを受けるはずだ。
集団的自衛権
山口代表一転「合意目指す」
公明 行使容認なら矛盾
(東京新聞)2014年6月16日付
安全保障法制の見直しをめぐる与党協議で、公明党の動きに注目が集まっている。公明党は、集団的自衛権行使を認める場合でも極めて限定的にとどめる方針とし、山口那津男代表も十三日に「合意を目指す姿勢で臨む」と発言した。だが、山口氏を含む党幹部はこれまで、海外での武力行使や憲法解釈の変更は受け入れられないとの発言を繰り返してきた。解釈変更で合意するとすれば、これまでの発言に反することになる。
(金杉貴雄)
公明党は憲法解釈変更による行使容認に対し、昨年七月に山口氏が「断固反対だ」と表明。今年四月にも「政府解釈の変更は、憲法の精神にもとる」と批判した。他の幹部も「到底賛成できない」などと強く反対してきた。
山口氏らが特に重視するのは、これまでの政府見解との論理的な整合性だ。政権によって憲法解釈の論理が変われば、憲法が権力を縛る立憲主義や法治国家の根幹が揺らぐからだ。
ところが、自民党の高村正彦副総裁が示した新三要件は、集団的自衛権の行使を禁じた一九七二年の政府見解のうち、自衛権を行使できるのは「国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される急迫、不正の事態」に限定するとした記述について、「事態」を「おそれ」に変える
などして引用。見解の中核部分を用いながら異なる趣旨に転換し、自衛権行使の範囲を集団的自衛権を含め幅広く解釈できる内容にした。
これまでの政府見解と論理的な整合性があるとは、とてもいえない。その新三要件について、安倍晋三首相は十四日、機雷掃海も議論すべきだと主張して「限定」を無意味にした。過去の山口氏らの発言からすれば、公明党は首相らの考えを受け入れる余地はない。
だが、与党協議について「今国会中に閣議決定を」と圧力をかけ続ける首相に対し、公明党内には「連立維持のためには限定的には容認せざるを得ない」との声が広がり始めている。中堅幹部は「政治の安定、経済の再生が優先だ」と行使容認はやむを得ないとの考えを示す。
党幹部はこれまで「行使を認めれば『平和の党』ではなくなる。絶対譲れない」とまで述べてきた。容認すれば「与党の立場を維持するため党是や憲法の論理を捨て、海外での武力行使につながる解釈改憲を認めた」と批判されることになる。
悪の元凶はこの国の政治にある
公明党の存在はプラスかマイナスか
日刊ゲンダイ2014年6月18日付
果たして与党内で自民悪政の歯止めなのか、カムフラージュ役なのか
この国の政治が長い間こうして続いていていいものなのか大きな問題だ
しょせん「下駄の雪」である。ただくっついているだけ。最近は公明党を激励する投書が大新聞で頻繁に掲載されているが、国民は期待するだけアホだった。下駄の雪は、今回も自民党に従順だ。解釈改憲による集団的自衛権の行使容認について、今週中にゴーサインを出すのである。
政治評論家の有馬階海氏が言う。
「自公両党は20日の閣議決定を目指し、最終調整しています。あとは細かい文言だけ。公明党に配慮して慎重に進めたという”アリバイ”ができれば終わりです。臨時国会に積み残せば、またゼロから議論を始めなければならない。反対派も盛り返してくる。だから、安倍首相は今週中に決着をつけたいのです。もし先延ばしとなっても一週間程度でしょう。閣議決定は国会開催中じゃなくてもできるし、書類を持って回って署名を集めることも可能。安倍政権は会期延長をせずにケリをつける段取りで、公明党もそれに従う方針です」
公明党の北側一雄副代表は先週、地元・大阪の高級トマトを自民党本部に差し入れた。花言葉は「感謝」「完成美」。自民党側は「議論の機は熟したということか」と受け止めた。
「お返しはドーナツなんていわれています。議論を丸く収めましょう、という意味らしい」(政界関係者)
なんという緊張感の欠如か。若者を戦地に送る決定を下そうというときに、”贈り物ごっこ”もないだろう。
「机上の空論」で「断固反対」をやめた山口代表
公明党の山口那津男代表は昨年7月、解釈改憲について断固反対を表明。今年4月にも「憲法
の精神にもとる」と批判した。かねて同党は、与党の中にあって自民党の暴走に歯止めをかけると主張。政党としての存在意義を訴えてきた。解釈改憲の容認は、自ら「いらない政党」であることを証明することになる。
なにしろ、集団的自衛権の封印を解くために安倍政権が用意した事例は、デタラメのオンパレ
ードだ。中でも噴飯ものは、戦地から逃げる日本人を輸送する米艦船を護衛するケース。米国は、避難する日本人の救出を拒否している。安倍は「逃れようとする邦人を輸送する米国の船が襲われたとき、守れなくていいのか」とエラソーに言っていたが、現実にはあり得ない「机上の空論」だったのだ。
それなのに公明党は、素知らぬ顔で安倍の空論に乗っかり、集団的自衛権をOKとする構えである。安倍が力を入れる「戦闘下の機雷除去」についても、どうやら受け入れるらしい。自衛隊のイラク派遣で、当時の神崎代表が先陣を切ってサマワ入りしたときと同じだ。暴走に歯止めどころか、拍車をかけるのである。
国民を不幸にする自公連立の夫婦関係
「安倍首相が本気で集団的自衛権の行使容認を目指すなら、正々堂々と憲法を改正すべきです。年齢要件を定めた改正国民投票法も先日成立しました。だが、投票年齢が18歳以上となるのは4年後。それまでは憲法改正に手が付けられない。改正法が即時実行されるようにしなかった安倍首相は、憲法改正を諦めたわけです。憲法に手を付けるつもりはない。安倍首相のこだわりなんて、その程度だったのです」(有馬晴海氏=前出)
そんな安倍にひたすらついていく公明党。支持母体「創価学会」の池田大作名誉会長は、著書「人間革命」の書き出しで「戦争ほど、残酷なものはない。戦争ほど、悲慘なものはない」と記した。トップの平和への信念は、残念ながら公明党に伝わらないようだ。
公明党は1999年10月に自自連立に遅れて参加し与党入りした。翌年の4月に自由党の一部が離脱しても政権に乗り、自民党、保守党と連立を維持している。ある幹部は「政党だって夫婦と同じ。10年も一緒に暮らせば、家財道具も増えてくる。簡単に別れられない」と言った。だが、自公カップルの腐れ縁夫婦は、国民を不幸にするだけだ。
公明党は安倍独裁政権の生みの親
政治評論家の山口朝雄氏が言う。
「公明党の存在は国民を困惑させています。自民党単独の政権なら、責任の所在が分かりやすい。批判もストレートにできます。でも、公明党が一緒にいると、だれがどうやって判断したのか、政策決定の過程が不明瞭になってしまう。問題点も分かりづらくなります。しかも、今回のようなケースでは、平和を看板にしている政党だけに、悪政の歯止めとなるのではないか、と期待してしまう。その結果、なんとなく自民党が公明党に譲歩したような形になれば最悪。公明党のせいで悪政がカムフラージュされることになります」
そもそも憲法9条の見直しを目指す自民党と。「福祉と平和」の公明党は水と油だ。米国流の新自由主義で大企業や投資家を太らせる党と、弱者救済に目を向けなければならない党という違いもある。タッグを組むのがおかしいのだ。
「公明党は自民党に創価学会の票を提供し、自民党は公明党の政策を実現する。もともとはそんな関係でしたが、政権のうまみを知った公明党は連立離脱のカードを切れなくなった。結局、強気な自民党に対して公明党は妥協を繰り返すばかり。公明党がたまに見せる与党内野党のような態度は、ポーズにすぎません」(山口朝雄氏=前出)
前回衆院選で公明票がなければ落選していた自民党議員は80人近くに上るという。自民党の大勝はなかったし、過半数はもちろん最悪の場合は200議席の確保も難しかったとされる。いまの国会は一強多弱といわれるが、我が世の春の安倍政権を生んだのは公明党なのだ。それなのに文句を言わず、ただひたすら自民党の悪政についていくだけ。そんな状態が長い間続いている。
これでは安倍政権の亡国政治は止まらない。自公連立は、この国にとって悪の元凶なのである。
※小選挙区制が生んだ事態であることも忘れてはいけません!(`・ω・´)/
集団的自衛権と公明党。- 2014.06.18
http://youtu.be/rp4WfsWvESE
集団的自衛権、会期中の閣議決定断念 公明慎重論に配慮
(北海道新聞)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/546071.html
政府・自民党は18日、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更について、22日に会期末を迎える今国会中の閣議決定を断念し、閉会後に先送りすることを決めた。慎重論を唱えてきた公明党は行使容認の方向で調整に入ったが、党内の意見集約が難航しており、一定の時間が必要だと判断した。
ただ、政府・自民党は早期決着を図る姿勢を崩しておらず、遅くとも安倍晋三首相がオーストラリアを訪問する7月上旬までに閣議決定する方針だ。
菅義偉官房長官は18日午前の記者会見で「当初から期限ありきではなかった。今国会中に方向性を出すのは一つの考え方だったが、与党間で大詰めの協議をしているので見守っていきたい」と表明。政府が示した閣議決定案概要に対し公明党内で、行使の範囲が際限なく広がりかねないとの慎重論が出ていることについて、「政府の考え方を説明していくにつれて、そうした心配はなくなるだろう」と述べた。
これに先立ち自民党の石破茂、公明党の井上義久両幹事長は東京都内で会談し、閣議決定の時期について協議。井上氏は「与党協議と(自公)各党の党内議論の状況を見極めて協議したい」と会期内の閣議決定は困難との認識を伝えた。石破氏は会談後、記者団に「公明党は精力的に議論を続けている。その行方を見ながら日程感をつくっていきたい」と述べ、公明党の意見集約を待つ考えを示した。
72年見解は行使禁止 本来は海外派遣の歯止め
(東京新聞【核心】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2014061402000129.html
集団的自衛権に関する与党協議で座長を務める自民党の高村正彦副総裁が、行使を認める根拠として、自衛権を定義した一九七二年の政府見解を持ち出した私案を提示した。しかし、七二年見解は、自衛隊の海外派遣への懸念を打ち消すために集団的自衛権の行使を禁じた文書で、歴代政権が守ってきた歴史を持つ。ここから行使容認を導くのは無理がある。
(新開浩)
72年見解が出された当時は、米国が参戦していたベトナム戦争が泥沼化し、米国がアジア各国から地上戦力を撤退させていた時代。69年、当時のニクソン米大統領はアジア諸国に自主防衛力の強化を求めていた。
日本では、72年から5年間の第4次防衛力整備計画(4次防)の策定作業が進んでいた。当時の社会党は、4次防の期間中に日本の自主防衛路線が強化され、自衛隊の任務が海外まで拡大する可能性を懸念。海外で武力を使う集団的自衛権の行使は認めないと確約するよう政府に要求した。
そうした経緯から、当時の田中角栄内閣が国会に提出した文書が72年見解だ。憲法が認める武力行使を「外国の攻撃によって国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される急迫、不正の事態」に限り、行使の範囲も「必要最小限度」とした。認めたのは自国を守る個別的自衛権だけで「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」とも明記している。
81年には、鈴木善幸内閣も「集団的自衛権は憲法上許されない」とする答弁書を閣議決定。歴代の自民党政権は、集団的自衛権の行使を認めない憲法解釈を継承し、国会でも答弁してきた。
高村氏は72年見解に独自の解釈を加え、集団的自衛権の行使は認められるとの結論を引き出そうとしている。
72年見解の「国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される急迫、不正の事態」とは、実際に日本が攻撃された場合のことを意味するにもかかわらず、他国が攻撃された場合でも「覆される」可能性があれば、集団的自衛権を行使できるという理屈だ。
「必要最小限度」の範囲をめぐっても、高村氏は13日の与党協議後、記者団から集団的自衛権の一部が含まれるか問われ「はっきりあるということだ」と明言した。72年見解が集団的自衛権の行使禁止を明記していることには、当時の結論であって、国際的な安全保障環境が厳しくなったことにより、今は別の答えが出てくると説明。政府側の出席者は与党協議で「時代は変わった」と理解を求めた。
しかし、72年見解は、自衛隊による海外での武力行使に歯止めをかけるのが目的だった。高村氏は「継続性、論理的整合性を維持した」と私案を自画自賛したが、本来の見解の目的から大きく離れてしまった。
1972年の政府見解の憲法解釈部分
憲法は、第9条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、前文において「全世界の国民が…平和のうちに生存する権利を有する」ことを確認し、また、第13条において「生命、自由および幸福追求に対する国民の権利については…国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を定めていることからも、わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであって、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。
しかしながら、だからといって、平和主義をその基本原則とする憲法が、自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、それは、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置としてはじめて容認されるものであるから、その措置は、(その)事態を排除するためとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものである。
そうだとすれば、わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。
自衛隊「取材に発言慎め」
集団的自衛権 隊員に文書出回る
(東京新聞【こちら特報部】ニュースの追跡)2014年6月15日
安倍政権が集団的自衛権の行使容認に向けて、閣議決定に突き進んでいる。そうした中、自衛隊が隊員たちに集団的自衛権に絡んでメディアから取材を受けた際、「不用意な発言」を慎み、上司に通報するよう求める文書を出していたことが分かった。(荒井六貴)
議論に水差す / 若手集めに妨げ
「幹部が慌てていることを感じる。なんで、そんなに取り乱すのかと、不思議に思う」。閲覧した文書について、陸上自衛隊のある隊員はそういぶかる。
陸自や航空自衛隊の複数の隊員によると、この文書のタイトルは「集団的自衛権に関する注意喚起」。
内容は「最近、正規の手続きを踏まないマスコミ取材が多発しているので、取材を受けた場合は不用意な発言を慎むとともに、上司に通報するように」と記されていたという。文書は閲覧後、回収された。
文書が出回った時期は、本紙が5月25日付朝刊で自衛隊員の反応を紹介した時期とほぼ重なる。
記事は「戸惑う自衛隊員」「集団的自衛権 議論を注視」といった見出しとともに、「日本を戦争できる国にしようとしている」「公明党はどこまで踏ん張るのか」など匿名の隊員の声を紹介している。
空自のベテラン隊員は「隊員の戸惑いは上層部にとって、都合が悪いから、表に出したくないのだろう。個人的にも専守防衛で国民を守るためにと入隊したのに、なぜ集団的自衛権の行使が必要なのかという疑問はある」と話す。
この文書について、防衛省の広報担当者は「省内では出していない。部隊内については調査中。コメントできない」としている。
旧防衛庁の元職員である太田述正(のぶまさ)氏はこうした「口封じ」について「自衛隊の上層部にはリスクはあっても、自衛隊の力を世界に見せたいという願望がある。集団的自衛権の行使は、その一歩になる。国会の集団的自衛権の議論がわかりにくいこともあり、隊員が余計なことを話し、行使容認へという流れに水を差されたくないという意図に基づく措置だろう」と語る。
一方、市民団体「自衛隊をウオッチする市民の会」事務局長の種田和敏弁護士は「自衛隊はいま、若手の隊員集めに苦労している。隊員たちの不安などマイナスイメージを表に出したくないという理由もあるのではないか」と推測する。
実際、自衛隊員の平均年齢は1990年に31.8歳だったが、2011年には35.6歳に上昇。階級構成も、若い陸士や海士らが減り、幹部や上官クラスが多いといういびつな形になっている。
13年版の防衛白書でも「少子化、高学歴化が進み、募集の対象となる人口が減少し、環境はますます厳しい。募集活動をより充実させる」と指摘。並行して近年、女性隊員の萌えキャラを使ったグッズをつくったり、テレビドラマの撮影に協力したりとイメージアップ作戦も続けている。
種田弁護士は「集団的自衛権の行使で戦地に行くことが分かれば、親も子どもの入隊を嫌がる。若い隊員がいなければ、実際には行使はできない。それだけに、隊員集めを妨げる動きには神経質になっているのだろう」と指摘している。
衛星だいち2号 災害目的だが…艦船追尾に軍事応用も
(東京新聞【こちら特報部】ニュースの追跡)
2014年6月16日
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が先月二十四日に打ち上げた陸域観測技術衛
星「だいち2号」。東日本大震災の際に津波の浸水被害や地殻変動を観測し、復旧活動に貢献し
た初代「だいち」の後継機として期待されるものの、高性能のレーダーは、他国の艦船を追尾す
る能力を持ち、軍事技術にも応用できる。
(林啓太)
集団的自衛権行使へ準備?
「地上の災害素早く把握」(東京)「災害の状況や地形の変化をレーダーで観測する」(読売)「地図の作製、資源探査などに使われる予定」(朝日)…。
「だいち2号」を載せたH2Aロケット24号機の打ち上げ成功を伝える在京各紙の先月二十四日夕刊は、災害状況の把握や資源探査などの用途を強調した。高度約六百三十キロから地表に電波を放射し、地面や水面のわずかな変化を捉える。地上の物体を見分ける能力(分解度)は三メートル。二〇一一年五月に運用停止した初代の分解度(十メートル)に比べて性能は約三倍に上がった。
ただし、この能力は、軍事用として艦船の追尾に使おうと思えば使える。
海が穏やかであることなどの条件が整えば、艦船が通過した後に残る帯状の波や泡の筋、つまり航跡を検出できる。検出できる長さは数十~数百キロとの見方もある。運航の経路は一目瞭然である。
だいち2号は、艦船の針路や速度を把握できる装置も搭載している。
その装置とは、船舶自動識別装置(AIS)が発する電波を受信する「Spalse(スパイス)2」だ。AISは、一定トン数以上の艦船への搭載が国際条約で義務付けられている。電波を受信すれば艦船の位置や針路、速力も分かる。
だいち2号の軍事利用は法的には可能だ。
二〇一二年六月のJAXA法改正で、その活動を「平和目的」に限定した規定を削除。例えば衛星の運用を政令で防衛省に所管させることができる。
JAXAの広報担当者は、スパイス2について「本格的な運用ではなく、技術実証だ」と説明する。
「AISの技術実証も、目的は一般的な船舶の監視だ。電波で把握した航跡を船舶の追尾に使う予定はない。現段階では政府側にデータも提供していない」
とはいえ、奥村直樹理事長は五月下旬の記者会見で、だいち2号の軍事利用の可能性を問われると、「私どもの判断の範囲はあくまで平和目的だ。その先は政治が検討、判断する」と含みを持たせた。
海外では、JAXAの軍事面に注目が集まりつつある。米国の航空宇宙専門誌「アビエーションーウイークーアンドースペースーテクノロジー」は先月の電子版で、JAXAについて「日本が中国や北朝鮮の脅威に直面したとき、国防でより大きな役割を果たすことができる」と評価した。同誌は米国防総省にも情報源があり、信頼性は高いとされる。
もっとも軍艦にはAISの搭載義務はなく、搭載していても作戦中は電波を出さないことも多い。航空ジャーナリストの青木謙知氏は「日本が実際に艦船の追跡をやるかは疑問だ」と首をかしげる。
一方、軍事評論家の前田哲男氏は「内閣情報調査室(内調)が現在運用する四基の衛星は、動かない目標しか捉えられない。だいち2号が仮に軍事利用されれば、より高度な情報収集ができる」とみる。
「中国の船舶の動きが把握しやすくなる。こうした情報を米軍と共有し、集団的自衛権を行使した時に利用する狙いもあるのではないか」