新潟知事選米山氏当選
共闘発展促す歴史的勝利
期待 急速に広がった
(しんぶん赤旗)2016年10月17日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-10-17/2016101702_01_1.html
新潟県知事選で、「新潟に新しいリーダーを誕生させる会」の米山隆一候補が、柏崎刈羽原発再稼働を止めてほしい、農業、暮らし・福祉を良くしてほしいとの県民の熱い思いを受けとめ勝利しました。日本の政治の前途に大きな希望をもたらす歴史的勝利となりました。
原発の危険 根深い不安
勝利の要因は、第一に米山氏が、一度断った出馬要請を県民や野党の熱烈な願いを受けとめ立候補したことです。立候補に当たり、泉田裕彦知事の「福島原発事故の検証なしに、再稼働の議論はできない」という路線を引き継ぐことを表明しました。多くの県民の期待と激励が急速に広がりました。
第二に、福島原発事故を経験し、原発の危険に対する国や東電への根深い不安感が県民・国民に存在し、官邸や自民党、「原子力ムラ」の圧力をもってしても抑えきれないことを示しました。相手陣営は「県庁に赤旗が立つ」などの卑劣な攻撃をしたり、大量の国会議員を動員しての団体締め付けを行いましたが、県民の願いの前には通用しませんでした。この勝利は、原発問題で野党と市民の共闘で勝利した鹿児島県の三反園訓(みたぞの・さとし)知事に続くものです。
安倍政治にノーを示す
第三に、参院選に続く、今回の知事選で、市民と野党の共闘がいっそう進化したことです。市民と野党5党が何としても県民の願いを閉ざしてはならないと、懸命に奮闘し、多くの市民が立ち上がる選挙になり、日に日に野党共闘の結束が強まっていきました。
日本共産党の志位和夫委員長、小池晃書記局長や各党党首クラスが相次いで応援に駆けつけました。選挙戦が進む中で、自主投票を決めていた民進党が松野頼久、前原誠司の両衆院議員、黒岩宇洋県連代表らをはじめ幹部が応援、最終盤には蓮舫代表、江田憲司代表代行が駆けつけました。
米山氏の勝利は、安倍政権の強行政治にノーを示し、新潟にとどまらず、野党と市民の共闘の新たな発展を促す歴史的勝利になりました。
(新潟県・村上雲雄)
新潟県知事選 安倍内閣の原発政策と謀略に有権者が鉄槌
安倍官邸と自民党のデタラメに新潟の「反乱」
問題はこの結果で今後の政治が変わるかどうかだ。民主主義を愚弄する横暴政権は必ずあの手この手で巻き返しに出る。支持率をさらに急落させる有権者の怒りの二の矢、三の矢が絶対必要
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/191981
(日刊ゲンダイ)2016年10月18日
歴史的な快挙だ。原発再稼働が最大の争点になった新潟県知事選が16日投開票され、脱原発派で共産・社民・自由(生活)推薦の米山隆一氏が勝利した。
自公が推薦した前長岡市長の森民夫氏と、事実上の一騎打ち。民進党の支持基盤である連合新潟も早々に森の支援を決め、当初は森の圧勝とみられていた。
「告示の時には遠くに見えた相手候補の背中が、すぐ目の前に迫っている。もしかしたら、追い越せる」
13日に森のお膝元である長岡市で演説した米山は、こう訴えていたが、その言葉通り、驚異の追い上げで逆転勝利を手にした。これは、脱原発を願う民意の勝利だ。NHKの出口調査によれば、投票所に足を運んだ有権者の73%が原発再稼働に反対の立場だったという。
新潟県にある東京電力・柏崎刈羽原発は、原子炉7基の出力が合計820万キロワットと世界最大規模だ。ひとたび事故が起きれば、とてつもない影響が出る。実際、07年の中越沖地震で放射能漏れなどが起きたこともあり、現職の泉田裕彦知事は再稼働に慎重な姿勢を貫いてきた。その泉田は4選を目指して出馬を表明していたのだが、8月に突然、地元紙との確執を理由に出馬を撤回。その裏には原子力ムラの暗躍もあったとされる。
「県民の安全を最優先し、原発再稼働を進める国に対してモノを申してきた泉田知事の不可解な出馬取りやめに、県民は疑問を感じていたはずです。その結果、泉田路線を継承すると宣言した米山氏に支持が集まった。決定打になったのは、13日に安倍首相が官邸で泉田知事と面会したことでしょう。敵対するなというドーカツなのか、何らかの密約で懐柔しようとしたのか、いずれにせよ、自民党と原子力ムラは汚いという印象を県民に与えた。こうした権力をカサにきて新潟県民をバカにするような動きが、寝た子を起こすことになったのではないでしょうか」(政治評論家・野上忠興氏)
無党派層が動けば政治は変わる
新潟県知事選の投票率は53.05%と、前回の43.95%から10ポイント近く上昇した。無党派層が選挙に行って怒りの一票を投じれば、巨大権力がどんな汚い手を使っても太刀打ちできないということが証明された。これは大きな希望になる。権力の横暴を有権者の良識が止める。この国の民主主義は首の皮一枚でつながったのだ。
政府の原発推進政策にとって目の上のタンコブだった泉田を出馬断念に追い込み、余裕をかましていた自民党は、脱原発派の米山が猛烈な追い上げを見せたことに焦り、なりふり構わぬ選挙戦を展開した。
終盤には、「共産党・生活の党・社民党主導の知事では、県政が大混乱し、新潟県は国から見放されてしまいます!!」「赤旗を県庁に立てさせてもいいのですか?」などと書いたビラが全県にまかれた。これが自民党の法定ビラというから驚く。
念のため言っておくと、新潟県旗はもともと赤い。的外れな中傷は、県民の反感を呼んで、自民が白旗を揚げる要因になるだけだった。
党幹部も大量投入。古屋選対委員長は告示後3回も新潟入りし、「エネルギー政策も原子力政策もただ反対、批判するだけでは何も生まれない」「何よりもこの知事選で絶対に勝たなければならない」と叫んだ。二階幹事長も12日に新潟を訪れ、土地改良関連団体や建設業協会など企業・団体を回って締め付け、支援を要請した。
この国の民主主義を守る戦いが一関門を突破した
現地で新潟県知事選の取材を続けてきたジャーナリストの横田一氏が言う。
「二階幹事長は7日に行われた経団連との懇談会でも、『電力業界などオール日本で勝たせる』と言っていました。それで電力、建設、土地改良など企業・団体をフル稼働させたにもかかわらず、敗北を喫した。原発再稼働の是非が正面から問われ、争点そらしができない選挙で、野党と脱原発の民意が勝った画期的な選挙なのです。米どころの新潟ではTPP反対の声も根強い。自公推薦の森氏がアピールした公共事業バラマキに対する批判もあった。足元が定まらない民進党が自主投票にしたことで、安倍政権との違いを明確に打ち出せたことが勝因です。旧来型の利益誘導政治に鉄槌を下し、横暴政権に対峙するモデルケースになり得ます」
問題は、この選挙結果で今後の政治がどう変わるかだ。安倍独裁政権の暴走が止まるのか。野党共闘は次のステージに進むのか。民意無視で再稼働ありきの悪魔的な原発行政は、本当に見直しを迫られるのか。
柏崎刈羽原発は現在、6、7号機が原子力規制委員会の安全審査中だ。年内か、遅くとも来年には結論が出る。再稼働には地元知事の同意が必須で、ここで再稼働反対派の新知事が誕生したことは重い意味を持つ。もし自公推薦候補が勝っていたら、全国の原発再稼働がなし崩しで進められただろう。
電力会社最優先の政策に民意は「NO」
すでに九州電力・川内原発や四国電力・伊方原発などで再稼働が実現しているが、柏崎刈羽を動かすことは、福島で過酷事故を起こした東電にとってのメルクマールになる。3・11後に再稼働できた原発は、今のところ「加圧水型」だけで、事故を起こした福島第1原発と同じ「沸騰水型」の柏崎刈羽を再稼働させることは悲願だ。来年1月に改定する新たな再建計画も、柏崎刈羽の稼働が前提になっていて、再稼働の見通しが立たなければ再建計画も進まない。
「会社の存亡がかかっているから、東電や原子力ムラは、あらゆる手を使って柏崎刈羽を動かそうと画策してくるでしょう。ただ、7月の鹿児島県知事選でも九電・川内原発の一時停止を求める三反園訓氏が当選していて、これだけの民意が示された以上、あまりにも強引な進め方はできなくなったと思います」(横田一氏=前出)
当然、原発推進の安倍官邸にも大打撃だ。ただでさえ、支持率が下落傾向にある中で、安倍自身がわざわざ泉田と会うなどシャシャリ出てきたのに惨敗。痛恨の新潟ショックだ。
「民主主義を愚弄してきた政権の自業自得ですよ。世論をバカにしてはいけない。傲りには必ず綻びが生じることを示した選挙結果でした」(野上忠興氏=前出)
こうなると、大メディアが煽りまくっている解散どころの話じゃなくなってくるのではないか。
「自民党に真っ向から対抗する勢力があれば、民意の受け皿になる。物事の強引な進め方や国会論戦での詭弁を見て、安倍政権の一党独裁がいかに危険かということを有権者も理解してきたはずです。新潟の選挙結果は、巨大与党の暴走に一石を投じ、今後の政局に少なからぬ影響を与える。田中角栄本がブームになっているタイミングで、新潟から新しい政治がスタートすることには、歴史的な必然性を感じます」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
民主主義を守る戦いは、なんとか第一関門を突破した。こうなったら、支持率を急落させる二の矢、三の矢が必要だ。一強多弱といわれていても、支持率が下がれば、さすがに好き放題はできなくなる。パフォーマンスとイメージ戦略だけの無能政権なんて、有権者の怒りの前にはひとたまりもないのだ。
再稼働ノー「命・未来守りたい」
新潟県知事選勝利
市民と野党 官邸・”原子力ムラ”に勝つ
(しんぶん赤旗)2016年10月18日
東京電力柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働ストップが最大の争点となり、16日投開票された新潟県知事選挙で、市民と共産、自由(旧生活)、社民、新社会、緑の野党5党が擁立した米山隆一氏(49)が自公候補に6万3000票の大差をつけて初当選しました。野党支持層、無党派層から保守層まで支持が広がり、「柏崎刈羽原発の再稼働は認めない」という県民の明瞭な審判です。当選確実の報を受けて、米山氏は「県民の勝利。オール新潟の勝利だ」「これからかスタート」と力強く決意を語りました。
(新潟知事選取材班)
「よくぞ出てくれた」急速に広かった期待
知事選開票結果について、地元紙の新潟日報17日付は「無党派・民進票取り込む 新潟ショック政権激震」と大見出し。全国紙も「政権、新潟ショック」「次期衆院選へ不安も 原発争点野党には効果」(「朝日」)の見出しです。
今回の県知事選でのNHKの出口調査で、原発再稼働反対は73%。そのうち、60%台が米山氏に投票したと答えました。
「泉田知事が降りた時点で絶望感を覚えた。でも、原発再稼働反対の候補が決まった時は、ほんとうにうれしかった」。開票の夜の、米山事務所での声です。「よく出てくれた」の声は各地で出ていました。
米山氏が、一度断った出馬要請を市民や野党の熱烈な願いを受けとめて立候補したのは告示6日前の9月23日。「よし、やるぞ」「参院選に続く、野党の共闘を」と、県民の期待と激励が急速に広がりました。
終盤の10日、上越市で開かれた個人演説会では、100人近いママさんたちが幼児を抱えながら壇上に上がり、「守りたい命。守りたい未来」とアピール。各地の個人演説会でも、「予想を超える人数」などの報告が続きました。
柏崎刈羽原発6、7号機の出力は日本最大級、1~7号機の合計で一つの原子力発電所としては世界最大。2007年の中越沖地震の際には、柏崎刈羽原発で液状化か起きました。
「福島原発事故の検証なしに、再稼働の議論はできない」。オール新潟”の声、県民の願いは明らかです。
今回の勝利は、福島原発事故を経験し、原発の危険に対する国や東電への根深い不安感が県民・国民に存在し、官邸、〃自民党本部直轄”、原子カムラ”の圧力をもってしても抑えきれないことを示しました。
各紙の社説で「原発への不安を示した」(「朝日」)、「原発不信を受け止めよ」(「毎日」)などと論じました。「読売」は3面記事で「原発に抵抗感強く 柏崎刈羽 再稼働困難に」との見出しを掲げました。
「力合わせれば勝てる」をス囗-ガンに猛奮闘
いかに市民と野党の共闘が進んだのか。市民と5野党で構成する「新潟に新しいリーダーを誕生させる会」の終盤の法定2号ビラは、「再稼働に同意しません!」の文字がくっきりと目立ちます。「権力にすり寄る知事ではなく県民に寄り添う知事を!」と打ち出します。「県民が力をあわせれば必ず勝てます」がスローガンです。
それが市民と野党の共闘をさらに励ましました。米山氏の各地の事務所では党派を超えた市民の熱気でいっぱいでした。どの事務所でも、若いママたちが宣伝や電話かけに懸命な姿がありました。
7日には新潟駅前で、日本共産党の志位和夫委員長、自由党(旧生活の党)の小沢一郎共同代表、社民党の福島瑞穂副党首、民進党の松野頼久衆院議員らのそろい踏みも実現しました。司会をしていた森裕子選対本部長(参院議員)が「前に詰めて通路をつくってください」と訴えるほど、聴衆であふれました。
日本共産党の小池晃書記局長は3回応援に入りました。選挙戦が進む中で、「自主投票」を決めていた民進党も前原誠司衆院議員、黒岩宇洋県連代表ら国会議員が続々つめかけました。最終盤の14日には、蓮舫代表、江田憲司代表代行が駆け付けると、「来てくれてありがとう」などの声が出ました。
こうしたスクラムが「県庁に赤旗が立つ」などの卑劣な攻撃をはね返しました。
「だいたい新潟県の旗の色は赤、候補者が旗の色も知らないのか。官邸が作ったのではないか」との批判も。
電話かけの中で。「俺は17年間、自民党員たった。今日ばかりは我慢ならない。『赤旗が立つ』なんてぱかなことを言う自民党はだめだ。米山に入れてきた」との声も寄せられました。
政権与党は総ぐるみで襲いかかってきました。安倍晋三首相まで乗り出し、泉田裕彦知事との会見を13日にセット。自民党の二階俊博幹事長は7日、経団連幹部との会合で、知事選に言及し「何とか(森民夫候補の)勝利を考えていきたい。電力業界などオールニッポンで対抗していかなければならない」と訴えました。県民の共同と、〃首相官邸・財界・原子カムラ”との対決がますます鮮明になりました。
公明党の井上義久幹事長も乗り込み、自民党は異例の”党本部直轄”態勢で、大量の国会議員を動員し、業界、各種団体の締め付けを行いました。投票日も、すさまじい締め付けが続きました。
原発再稼働推進の安倍首相から直接推薦状を手渡された相手候補。最終盤には、再稼働問題で、米山氏と違いがないかのような訴えをし、争点回避に躍起でした。
しかし、県民の願いの前には通用せず、敗北した相手陣営。「読売」は「与党総力戦で痛手」と論評しました。
自民支持層からも3割 共闘の力の進化示す
参院選に続く、知事選では多くの市民が自ら立ち上がり、野党と市民の共闘が進化する選挙戦となりました。
野党と市民が、はっきりした大義のもとで共闘すれぱ、自民党が圧倒的に強い地盤でも勝利できる、保守層の支持も広がることが浮き彫りになりました。本紙には、元自治相の白川勝彦氏も登場し、米山氏にエールを送りました。NHKの「出口調査」では、無党派層の60%台に加え、自民党支持層の30%程度が米山氏に入れたという結果も出ています。
この勝利は、「野党と市民の共闘の新たな発展を促し、日本の政治の前途に大きな希望をもたらす文字通りの歴史的勝利」(志位委員長の会見)です。