自由なラジオ Light Up! 020回
「Iam not ABE に込めた警告 ひとりひとりの挑戦こそが民主社会をつくる」
https://youtu.be/7_3ShUdR4HI?t=19m47s
19分47秒~第020回 Light Up! ジャーナル
浜岡原発の安全対策工事の遅れについて
http://jiyunaradio.jp/personality/journal/journal-020/
おしどり:
小出先生、先月27日に茨城県で震度5弱の地震があった時、原子力規制庁からの緊急速報メールで「すべてに影響はない」と情報がすぐに来たんですけども、そこに列挙されていた北関東と東北地方の原子力関連施設の多さにすごい驚きました。
小出裕章さん:
そうですね。
おしどり:
はい。本当に。でも私達、東京に住んでいる人間は、3.11の後どうしても北の方に目を向けがちなんですけど、すぐそばには中部電力の浜岡原発があるですよね。
小出さん:
そうですね。
おしどり:
中部電力は、静岡県御前崎市にあるその浜岡原発の安全対策工事の工期を延期する方針を固めたようです。延期は5回目ということで、今回は初めて完了時期の設定も見送るということですが、これは計画も進捗もいい加減ですよね。
小出さん:
そうですね、私もそう思いますが、ただ皆さんもう一度基本的な所に戻って考えてみてほしいのですが、日本というのは世界一の地震国なのですね。
おしどり:
本当に。
小出さん:
そして、地震なんていうものを誰も願いはしないけれども、でもある時突然襲ってくるわけです。そして残念なことに、天災は忘れた頃にやって来るとずっと言われてきましたけれども、地震はいつやってくるというような予知ということは、これまでできた試しが一度もないのです。ただし、この日本という国が世界一の地震国だと言っても、地震の起きやすい場所というのはもちろんある訳で。例えば、世界中の地震学者が「近い将来に必ず東海地震が起きるだろう」と言っている訳です。
日本列島の南側には、南海トラフという巨大な地震域があるのですけれども、その地震域では南海地震・東南海地震・東海地震という地震が古文書をひもとくと、約100年から150年ごとに起きてきたということがはっきりと分かっているのです。
おしどり:
はい。
小出さん:
そして、東南海地震も東海地震も1854年の安政年間の時に起きました。そして東南海地震の方は、1944年つまり90年経って起きているのですけれども、いわゆる東海地震というのは1854年以降、もう162年起きていないのです。それだけ地震を起こすひずみが溜まっているということで、いつ起きても不思議でないという地震なのですが、その予想されている東海地震の予想震源域のど真ん中に浜岡原子力発電所が建っているのです。
もともと、こんな事はしてはいけなかった訳ですし、中部電力の方もおそらくこの事の重大性ということに少しずつ気がついて来ているのだと私は思います。本気で彼らが浜岡原子力発電所を再稼働させる気があるのかどうなのかという事も今となってみると、かなり疑問なのではないかと私は思っていますし、それが工事の遅れ、あるいは完了時期の設定も見送るということに繋がっているのではないかと私は思います。
おしどり:
なるほど。でも、100年から150年にいっぺんの地震がとっくに150年を超えてるというのは、次来るのは今までよりずっと大きい地震かもしれないということですもんねえ。パワーが溜まっていて。
小出さん:
ですから、東海地震、東南海地震、南海地震というのは個別に1つずつ起きたこともあるわけですし、3つがいっぺん同時に動くこともあったわけです。もし本当に、3つが同時に動くようなことになれば、マグニチュード9というような2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震と同じような巨大地震が起きると、地震学者が予想しているわけですし、それがなんと浜岡原子力発電所の直下で起きるという、そういうことになっているわけです。
おしどり:
うわぁ。すごいことですよね。小出先生これまで浜岡原発、どんな経緯で延期が続いたのでしょうか?
小出さん:
もともとは、2011年3月11日の福島の事故が起きてから、当時、菅さんという方が首相をしていたわけですが、菅さんがとにかく浜岡だけは止めようとして動いた訳ですね。そして、「津波でやられるといけないから防潮堤を作れ」と「そうじゃなければ止めろ」と言っていたわけです。それで、中部電力もそれを受けて止めて、とにかく防潮堤を防波堤と言うんでしょうか、それを作ると言ったわけですけれども。
その防波堤がなんとも巨大なもので、もともと高さが18メートルというような、普通だったらありえないような壁をですね、浜岡原子力発電所の目の前の海に全部作るというそんな約束をしてしまったわけです。ですから、もともと工事自身が大変でしたから、思ったよりも時間がかかるということで、1回目の延期がありましたし、その後は18メートルでは足りない、もっと高くしなければいけないということで、また延びましたし。
そうこうしている内に新規制基準というのが出来てしまいまして、地震の揺れの大きさをどうやって考えるかということが、昔とはずいぶん変わってきているわけです。
その度に、中部電力の方は見直しを迫られるということになってきたわけですし、先ほど聞いて頂きましたように、中部電力自身がもうこれは止めたほうがいいのではないかとだんだん思い始めているのではないかなと私は思います。
おしどり:
防波堤が22メートルというのも、ちょっと想像がつかないですよね。
小出さん:
マコさん、ケンさんも見に行かれたそうですけれども、私も見に行きましたけれども、なんか漫画のような壁ですよね。
おしどり:
いや、本当に。
小出さん:
確かに高いけれども、本当に津波が来て、こんなものがポタッポタッと倒れないかというような壁が、今、原子力発電所の目の前の海にそそり立っているというようなそんな状況になっています。
おしどり:
イタチごっこと言うか、津波が来る、地震が来るかもしれない、津波が来るかもしれない、壁を作らなくてはいけない。じゃあ壁を作ろう、じゃあ高さが足りない、もっともっと作ろうみたいな。なんかそれで、どんどん延期していって計画が遅れていますって言う。
なんかお聞きしてると、計画が凄いずさんなように聞こえるんですけど、なんでこんなことになってるんですかね?
小出さん:
もともと原子力発電所の事故の歴史というのを見てもらえば分かって頂けるかと思うのですが、当初は、こんなんでいいだろうと思ってやっていたことが、次々と、「やはりダメだった」と「もっと厳しくしていかなければいけない」というような歴史をずっと辿ってきたわけです。地震に関しても、予想していた地震度の大きさ、もうこれ以上のことなんて考えなくてもいいと言っていたような大きさが、次々と乗り越えられてしまってきたというのがこれまでの歴史でしたので、科学というものはそんなものだと思って頂くしかないだろうと私は思います。
おしどり:
そうですね。今、どの学問も完成形ではなくて、まだ発展途上という事で、今の最新というだけであって、それが完全というわけではないですもんね。
小出さん:
もちろんそうなのです。科学というのは、もともと未知の物を知りたいということで始まっているわけであって、完全に分かるなんてことは絶対にそれこそない訳であって、分かれば分かるだけ、また別の事が見えてきてしまうわけで、これからもそういう歴史が続くと私は思います。
おしどり:
私、以前、全然関係ないですけど、東京電力が福島第一原発の地下水の汚染を調べてた時の言葉を思い出しましたよ。地下水の汚染を調べて、どこから何が漏れているのか東京電力が調べた時に、たくさん井戸を掘って、その汚染水の流れを調べた時に、もの凄い哲学的なことを言ってたんですよね。東京電力が規制庁の発表で。「調べれば調べるほど分からないということが分かりました」と発表してて、それを思い出しました。
小出さん:
非常に正直な科学的な発言だと私は思います(笑)。
おしどり:
そうですよね、そういうことですもんね。でも、その原子力というのは未知の物であっても、できるだけ完全と言うか、万一のシビアな状況をできるだけなくすというものなのにも関わらず、「いやぁ、未知なもので、完全ではないですから」と言うのは、なかなか怖い発言方法ですよね。
小出さん:
そうですね。でもそれは、例えば原子力規制委員会という所が新規制基準への審査というのをやっていて、これまでに九州電力の川内原子力発電所、関西電力の高浜原子力発電所、四国電力の伊方原子力発電所に、規制基準に合格したというお墨付きを与えたわけですけれども。その度に、規制委員会の委員長である田中俊一さんが「合格したからといって安全だとは申し上げない」と言っているわけであって、科学的に分からないということは必ず残っているということは彼自身も認めている訳ですし、科学というものはそういうものだと、皆さん了解していただくしかないと私は思います。
ただし、こと原子力発電所に限ってはそんなことで了解できるようなものではないわけですから。私は何よりもまず科学的に物を考えるなら、原子力というのは止めるべきだと思います。
おしどり:
なるほど。わかりました。ありがとうございます。
でも、よく考えてみたら、その原子力規制委員会というのは地震のご専門ではないけれども、地震と原子力のことを判断していってるというのは、よく考えたらちょっと怖いことですよね。
小出さん:
そうですね。ただ、原子力というのは、非常に広汎な技術の上に乗っていますので、原子力規制委員会の委員というのはたった5人しかいないわけなんですけれども、その5人ではもちろんこぼれ落ちる所はもうそこらじゅうにあるということだと思います。
ただし、今、マコさんがおっしゃったように、地震というものに関して専門家がいないということは、やはり由々しき事だと私は思いますし、原子力発電所にとって、特に日本の原子力発電所にとって地震は最大の脅威なわけですから、ちゃんとした審査ができるようにしてほしいと思います。
おしどり:
なるほど、ありがとうございます。
熊本地震の後、福島県の農民連の方々が100人ぐらい政府交渉があった時に取材に行ったんですよね。福島の農家の方々が熊本地震の後、「もう川内原発を止めてほしい」という要望を原子力規制庁に出していたんですけど。それを原子力規制庁は、「新規制基準をクリアしているので大丈夫です」ということを福島の農家の方々にお話をしていて、それを俺達の前で言うのかっていう。自分達は犠牲者だから、これ以上増えないように話をしに来たということだったんですけど。お一人の農家の方がとても周知の事をおっしゃってらしてね。「熊本地震は地震学会でも気象庁でも今後予測がつかないと言っているのに、なんで原子力規制庁は予測をつけるんだ」と怒っていて。
小出さん:
その通りですね。
おしどり:
いや、本当にその通りだと思いました。小出先生、今日もありがとうございます。
小出さん:
いえ、こちらこそ。ご活躍いつもありがたく思っています。これからもよろしくお願い致します。
おしどり:
こちらこそ、よろしくお願いします。
追悼 むのたけじさん
【追悼】101歳のジャーナリストむのたけじさん
「あなたが、あなたらしくいられる社会を」
https://youtu.be/H67ZGUWtEYA
ETV特集 2015年10月10日
むのたけじ 100歳の不屈
伝説のジャーナリスト 次世代への遺言
http://dai.ly/x398s26
ことし100歳を迎えたジャーナリスト、むのたけじ。戦前・戦中は朝日新聞の記者だったが、「大本営発表のウソを書き続けた責任」をとって敗戦と同時に退職。戦後は、故郷の秋田で地方紙「たいまつ」を30年にわたって自力で発行した。記者として戦前・戦後の日本社会を取材し続け、膨大な記事と発言を残してきた伝説のジャーナリストである。「戦争を絶滅させる」。その言葉や生き方は、読者のみならずジャーナリストをめざす若者にも影響を与えてきた。95歳を過ぎた頃から特に年少者や若者への関心があふれだしたという。「今の若者たちと話していると、新しいタイプの日本人が出てきたと感じる。絶望の中に必ず希望はある。戦争のない世の中を見るまでは死ねない」。100歳になった今も食欲は旺盛、講演や取材をこなし気力は衰えない。戦後70年のいま、伝説のジャーナリストの足跡とそのこん身のメッセージを通じてこの国の未来を考える“熱血”ヒューマンドキュメント。
学ぶことをやめれば、人間であることをやめる。生きることは学ぶこと、学ぶことは育つことである。
北風の中に春の足音を聴き分ける、そんな耳を持ちたい。美女の舞踊に骸骨の動きを見定める、そんな眼を持ちたい。我を失うほどの窮境に置かれても、決して「はい」と「いいえ」は間違えて発音しない、そんな口を持ちたい。
より高く、より遠く跳躍しようとする者は、それだけ助走距離を長くする。現在以降をより高く積もうとする者は、現在以前からより深く汲みあげる。
むのたけじ
自由なラジオ Light Up! 021回
「 中国・北朝鮮は本当に脅威なのか?〜元自衛官が分析する『戦争法のその後』〜 」
https://youtu.be/uw6Uo3erses?t=17m35s
17分35秒~第021回 Light Up! ジャーナル
福島第一原発のデブリが圧力容器の底にあった
http://jiyunaradio.jp/personality/journal/journal-021/
西谷文和:
今日のテーマは、東京電力が福島第一原発二号機で溶け落ちた核燃料がどこに溜まっているのか初めて明らかにしたんですね。これ、どういう物を使って、中を見たんでしょうか?
今中哲二さん:
私も去年か一昨年ぐらいから何かやってるなというのは聞いてたんですけども。宇宙船っていうのはありますよね。
西谷:
宇宙線、X線とかですね。
今中さん:
空から、宇宙からくるやつです。
西谷:
はい。
今中さん:
その中に「ミューオン」っていうのがあるんですよ。
西谷:
ミューオン。はい。
今中さん:
もともと宇宙線というのは、正に宇宙から飛んできて、それはほとんどが陽子、プロトンというやつなんです。陽子というプラス1の電化を持ってるやつ、これ水素の原子核と一緒ですけども。
西谷:
それ理科で習いました。はいはい。
今中さん:
それが凄いエネルギー持って、大気中の原子核にぶつかるんですよ。大気、空気ですよね。空気って言ったら、大体窒素とか酸素とかありますけども。そうすると、窒素と酸素の原子核がまたバラバラに壊れるんですよ。
西谷:
壊れていく。はい。
今中さん:
そして、その時にできる物の一つがミューオンなんです。それで、いろんな物できるんですけども、ミューオンっていうのは比較的透過力が強いので、大気を抜けて、地表までかなり来てるということです。それで、それを使って透過力が強いんで、だから我々の体も毎日毎日ミューオンが突き抜けてるわけですけども。
西谷:
ミューオンが突き抜けてる。
今中さん:
調べてみたら、昔、エジプトのピラミッドってありますよね。
西谷:
ピラミッド。はい。
今中さん:
そのピラミッドの中がどうなってるかとか、それを調べるのに周りでミューオンを、だからピラミッドを通過してくるやつとかね。それで、その他には最近やられてるのでは火山。
西谷:
火山?
今中さん:
うん。
西谷:
阿蘇火山とか。
今中さん:
ええ。
西谷:
はいはい。
今中さん:
火山のを通過してくる、だから山を通過して抜けてくるミューオンを調べて、その中に密度の変化ね。透過力が強いと言っても、重たいものがあると吸収されたり散乱されると。それを、ですから周りで測定して中の様子を調べると。そういう原理。
西谷:
なるほど。火山が噴火しそうになった時は、ミューオンで調べているわけですか?
今中さん:
そうそう。あんまり上手くいってるとは、私聞いてませんけども、一応どこにマグマが溜まってるよと。マグマはちょっと密度が高いんで、それでやってるというのは見たことはあります。それで、それを使って福島の中の原子炉の御釜ですよね。お釜の中の燃料がどうなってるか一度やってみましょうというのを、なんか去年か一昨年ぐらいから立ち上げてやってました。
https://youtu.be/N6oUV7lLRgM
西谷:
これでね、取り敢えず分かったことはですね、いわゆる格納容器の中に圧力容器ってあるじゃないですか?
今中さん:
ええ。はいはい。
西谷:
この圧力容器の下にデブリがあったと。
今中さん:
下というかね、圧力容器そのものは高さが30メートルぐらいあるのかなあ。20メートルから30メートルの長細いやつですね。BWRの場合。
西谷:
沸騰水のね。はいはい。
今中さん:
その真ん中へんに核燃料の置いてある部分がありますよね?
西谷:
はい。
今中さん:
それで、燃料が溶けると、その圧力容器、お釜の底へ落ちる。
https://youtu.be/wwYk62WpV_s
西谷:
底へ落ちる?
今中さん:
はい。それで、それがメルトダウンですよね?
西谷:
はいはい。
今中さん:
それで底へ落ちて、それでお釜の底も抜けちゃったらメルトする。
西谷:
お釜の底が抜けたらメルトする。でも、格納容器がありますよね? その下に。
今中さん:
ええ。そしたら、その格納容器の底へ落ちると。それで、もし水とか全然なかったら、その格納容器の床が温度が上がって分解されて、ズブズブズブズブと、また溶けたやつが地面に潜り込んでいくと。
西谷:
「チャイナシンドローム。」
今中さん:
これがチャイナシンドローム。結局、どうなってるかっていうのをまずは調べたいということでやってたようです。
西谷:
今中先生から見てですね、この二号機に関して場所が分かったと。ある程度ね。
今中さん:
分かったというのか、ぼんやりと。要するに、影がちょびっとあるなあという程度で。
西谷:
これは、だからその廃炉に至る過程を100とすると、1ぐらい進んだんでしょうか? 10ぐらい進んだんでしょうか?
今中さん:
1ぐらいでしょうかねえ。はい。
西谷:
やっぱり、まだまだそういうレベルなんですね。
今中さん:
廃炉というか、要するに、私はまず現場検証ができてないんですよね。
西谷:
入れませんもんね。
今中さん:
うん。現場検証ができて、それからなんですよね。それから、もう本当に廃炉の話になっていくわけで。現場検証への1ステップ。
西谷:
がようやく、ちょっとだけ前に。
今中さん:
ちょっとだけという感じですね。
西谷:
これ、でも一号機と三号機もありますからね。
今中さん:
一号機はね、前にやってるんですよ。
西谷:
一号機やったんですか?
今中さん:
一号機やって、それでですから、圧力容器、お釜ですよね。お釜の中には燃料がないと。要するに、影が写ってないと。
西谷:
ということは、全部スルーしてしまったっていう事ですね?
今中さん:
そうです。ですから、メルトスルーしてると。それで、二号機についてはもともとの燃料があった分じゃない。即ち、メルトダウンはしてるけども。それで、メルトスルーはせずに残ってる部分があると。それは、あくまで影を見てるようなもんですから、どれぐらい、もともとあった分の何割。凄く大雑把の話でしかありません。
西谷:
あとは、どうやって取り出すかですね。
今中さん:
そうです。どういう風に飛ばせるかというのをまず調べると。
西谷:
そうか。どうやって取り出すかは、その後やね。
今中さん:
そうです、そうです。取り出すかは、どうなってるかをまず調べると。私の言う現場検証ですけども。はい。
西谷:
それが、でもまだ放射線が高いから、まだいけないと。
今中さん:
でも、とにかくやってもらわなくっちゃと私は思ってます。
西谷:
そうですね。それをやらない限りは、事故は終われませんからねえ。
今中さん:
はい。
西谷:
分かりました。本当に、最初の最初の一歩のちょっとした一歩が進んだということだろうということがよく分かりました。今中さん、どうもありがとうございました。
今中さん:
こちらこそどうも。
東電 福島原発事故費用
政府に追加支援要請 9兆円越え確実
(東京新聞【こちら特報部】)2016年8月2日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2016080202000140.html
東京電力ホールディングスが、政府に「追加支援」を求めている。福島第一原発事故による賠償や除染費用が足りない可能性が高まったからだという。政府が設定した東電支援のための上限は当初五兆円だったが、二〇一四年に九兆円に増え、さらに増えることが確実になった。最終的には一体、いくらになるのか。政府と東電は、国民にきちんと説明する責任がある。
(白名正和、三沢典丈)
膨らむ一方の「賠償」+「除染」
訴訟、電力自由化 「経営環境が激変」
先月二十八日、全国知事会議は「東日本大震災からの復興を早期に成し遂げるための提言」をまとめた。風評被害対策、財政支援など四十九項目のうち筆頭が原発事故処理だった。
「廃炉など原子力災害のあらゆる課題については、東京電力任せにすることなく、国主導で早期に解決すること」
福島県の内堀雅雄知事は「日本全体に関わる極めて重要な問題」と訴える。
示し合わせたかのように同じ日、東京ホールディングスが政府に追加支援を求める方針を発表した。数土文夫会長は記者会見で、支援要請の理由について「経営環境が激変した」ためと説明した。一三年に賠償額を五兆四千億円と見込んだが、今年三月の時点で六兆円を超えた。各地で訴訟を起こされ、賠償額はまだまだ相えそうだ。除染費用も見込んだ二兆五千億円では足りない。
「追加」の名の通り、東電はこれまでも、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(原賠機構)を通じて政府の支援を受けてきた。原発事故が起きた一一年の時点で、支援の上限は五兆円に設定されたが、一四年に九兆円に拡大された。
今年三月の時点で、東電支緩のための貸与総額は約七兆四千六百億円。実は、まだ、約一兆五千四百億円の余裕がある。なのに、追加支援を求めるのは、九兆円突破は確実と東電が判断したからだろう。
負担しなければならないのは、賠償と除染費用だけではない。総額の見当が付かないのは廃炉費用も同じだ。
「東電は二兆円を用意していたようだが、桁が足りない。これから十兆、二十兆円という規模で必要になってくるだろう」と、九州大の吉岡斉教授(科学技術史)はみる。
先月、2号機の溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の大部分が圧力容器の底に存在することが、ようやく判明したが、1、3号機についてはデブリの状況すら分かっていない。人が近づいたら即死してしまうほどの高い放射線量の中、デブリを取り出せる日が本当に来るのか。
技術の進歩によって、取り出せたとしても、デブリの廃棄場所を確保できるのか。高レベル放射性廃棄物の「ガラス固化体」の最終処分場の候補地すら決まらない。デブリについては、福島県外どころか、福島第一原発の敷地外でさえ搬出するのは困難だろう。
原賠機構は先月十三日、廃炉に向けた戦略プランで、デブリを残したまま福島第一原発を建屋ごとコンクリートで覆う「石棺」に言及した。だが、地元の反発が相次ぎ、二日後、「石棺を検討しているということは全くない」と釈明する事態に追い込まれた。
原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「石棺はデブリを長期間、隔離保管することで放射線量の減衰が期待できる、現実的な手段ではなかったか」と指摘する。「石棺を含めた対応について、機構側は福島県側と冷静に話し合うべきだったと思う。今回、逆に総論をする機会が失われ、政策の選択肢が狭まってしまったのではないか」
廃炉費用 2兆円どころか「桁違い」
取りざたされる「新基金」
「税金投入の前に、まず事業者負担」
政府は東電の追加支援要請に対し、慎重な姿勢を見せた。林幹雄経済産業相は先月二十九日の閣議後の記者会見で「東電自ら行うことが大原則」などと述べた。
その二日後だった。三十一日、廃炉費用を支援するための公的基金を新設することを経産省が検討しているという報道があった。
それによると、原賠機構の上限九兆円の支援とは別に、政府が同機構に東電支援のための基金を設ける。デブりの取り出しなど廃炉の作業状況に応じ、基金から資金を援助する。廃炉費用を政府が一時的に立て替えることになるが、最終的に東電が返済する。
原賠機構の支援上限を一四年に続いて引き上げようとすれば、強い批判が出るだろう。だから、基金の新設なのかもしれないが、国民の税金が投入されることに変わりはない。
だが、基金について、林経産相は三十一日、視察先の福島県南相馬市で、「廃炉は東電が責任を持って行うもの。支援のための制度措置について新たな検討を行っている事実はない」と否定した。
では、「基金新設」は誤報なのか。「単なる誤報ではないだろう」と言うのは立命館大の大島堅一教授(環続経済学)だ。「東電の発表に合わせて、政府が国民の反応を見るために、経産省が情報を流したのではないか」
特に気になるのは、「デブリの取り出しなど廃炉の作業状況に応じ」などの点だ。
大島氏は「廃炉費用は原発を設置した電力事業者が利益などから全額負担すべきものだ。だが、四月の電力の小売り全面白由化で、従来のように利益を上げることは難しくなった。そこで、廃炉資金を継続的に東電に支援する仕組みをひねり出す必要が出てくる」と推測する。
大島氏の試算によると、賠償や除染を含め、東電が負担すべき事故費用総額は十三兆三千億円。原賠機構の支援上限九兆円を上回っている。基金新設は、東電には願ってもないことだが、大島氏は「事故を起こした原子力事業者だけ優遇するのはおかしい。電気料金の自由競争もゆがめてしまう」と批判する。
そもそも、福島の原発事故での資金の使われ方がおかしい。「ゼネコンや原子力関連会社の言いなりに、凍土壁などに巨額の資金が投じられる一方、効果について政府は何の検証も行っていない。政府は第三者委員会などを立ち上げ、廃炉にかかる費用総額を精査し、国民に示すべきだ」
九州電力川内原発に続き、十一日には四国電力伊方原発が再稼働する予定だ。東電も、柏崎刈羽原発の再稼働に向けて動いている。だが、ひとたび原発が過酷事故を起こすと、処理にかかる期間、費用が全く分からない。万一の事故が起きる可能性があるのに、原発の再稼働を進めていいのか。
大阪市立大の除本理史教授(環境経済学)は「廃炉費用の負担で債務超過になるのなら、本来、東電の法的整理を進めるべきだ。費用を国民に負担させるのは本末転倒だ」と指摘し、再稼働の前に、国民が事故のコストに対する意識を高める必要があると訴える。
「福島原発事故のコストが、今後、起きるかもしれない事故に向り、各電力会社へのメッセージとなる。今の制度であれば、原発事故を起こしても、電力会社の経営リスクは発生しない。このうえ、廃炉費用まで負担せずに済めば、事故を抑止しようという動機づけすら働かなくなる。事故のコストを誰がどう負担するのか、曖昧なまま再稼働を進めるべきではない」