終息の見通し立たず
熊本地震 例を見ない余震数
(しんぶん赤旗)2016年5月14日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-05-14/2016051414_01_1.html
4月14日午後9時26分に熊本県熊本地方で発生したマグニチュード(M)6・5、最大震度7の地震(前震)から1カ月。16日午前1時25分にはM7・3、最大震度7の地震(本震)が同じ熊本地方で発生すると、その直後から熊本県阿蘇地方や隣接する大分県中部でもM5クラスの地震が頻発し、最大震度6強を各地で観測するなど、活発な地震活動が続いています。
1417回発生
今月13日午前1時6分にも熊本県宇城市などで震度4を観測しており、同日午後6時現在で震度1以上の体に感じる地震の回数は1417回に達しています。図は、前震発生以後に熊本地方で発生したM3・5以上の地震の回数を、2004年の新潟県中越地震(M6・8)などと比較したもので、熊本地震の例をみない活動性の高さを示しています。
これらの地震は、熊本県内を北東から南西へ延びる布田川(ふたがわ)断層帯と日奈久(ひなぐ)断層帯や大分県東部の別府湾から西部にかけて分布する別府―万年山(はねやま)断層帯の活動によって引き起こされています。本震を引き起こした布田川断層帯について、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)はM7・0程度の地震が30年以内に発生する確率を0・0~0・9%としていました。
日本学術会議が2日に開いた「熊本地震・緊急報告会」では防災関係学会の報告が行われ、この中で日本地震学会の加藤輝之会長(東京大学地震研究所教授)は「(確率が)非常に小さい感じがするが、活断層の(活動の)繰り返し周期が数千年なので30年という短い期間では小さくなる」と、数字の“マジック”に注意をうながしました。
今回の地震では、熊本市や益城町などを中心に住宅被害が熊本県内で7万7000棟以上に上る(熊本県まとめ、12日午後4時半現在)など、多くの建物に被害が出ています。日本地震工学会の楠浩一・東大地震研准教授は、益城町では通りの両側の建物の倒壊率が71%に達していた場所があることなどを報告しました。
加藤氏は、熊本地方が九州の中では地震の被害を受ける確率が比較的高いところだと指摘。その理由として布田川断層帯や日奈久断層帯といった活断層があるだけでなく、地盤が悪く地震波が増幅され、揺れが大きくなりやすいことをあげました。
耐震性が課題に
日本建築学会の高山峯夫・福岡大学教授は、前震で被害がなさそうな建物が本震で倒壊したケースが多数あることを紹介しました。高山氏は、地震が立て続けに起こる場合、建物の耐震性をどのように評価するか、今後の課題だと述べました。
阿蘇地方では阿蘇大橋が地すべりで崩落するなど、斜面の地すべりや亀裂が多数発生しました。日本地すべり学会の福岡浩・新潟大学災害・復興科学研究所教授や砂防学会の山下伸太郎理事が状況を報告し、今後の雨や地震で新たな土砂災害が懸念されると警告しました。
熊本地震は、まだ終息の見通しが立たない状況が続いています。今回の地震によって布田川断層帯と日奈久断層帯の延長方向で応力が増大したことで新たな地震活動につながるのではと懸念されています。
加藤氏は北東方向の延長線上にある日本最大の活断層、中央構造線への影響が懸念されるとするとともに、布田川断層帯と日奈久断層帯の南西側にも未破壊部分が残っており注意が必要だと指摘しました。
(間宮利夫)
あなたの家は大丈夫?
この活断層が危ない保存版全国MAP
(女性セブン)
まずは左の写真を見ていただきたい。農地に走った1本の亀裂を境に、畑が見事なまでに上下に大きくズレている。熊本地震によって益城町内の地表に突然出現した「断層」の姿だ。なんとも凄まじい自然のエネルギーである。
断層のなかでも地震の発生源となり得るものを「活断層」という。95年の阪神・淡路大震災も活断層が引き起こしたもので、活断層の真上にあった住宅や道路などは壊滅的な被害を受けた。
日本全国で確認されている活断層の数は2000以上。今回の熊本地震もそうだが、厄介なのは、いつ、どの活断層が地震を起こすか、予測か難しいことだ。
文部科学省「地震調査研究推進本部」の地震予測によれば、地震発生確率が高い(30年以内に3%以上)活断層は陸地内部だけで30か所あり、それぞれの活断層ごとに想定される地震規模(マグニチュード)も公表されている(図表1、2参照)。その中の1つが、14日に発生した熊本地震の「前震」を引き起こした「日奈久断層帯」だった。
なかでも大きな被害が予想されるのが、大都市圏内の活断層による地震だ。
東京を襲う直下型地震として想定されているのは「東京湾北部地震」で、12年4月に発表された東京都の被害想定によれば、死傷者数最大15万人、建物全壊11万622棟、さらに20万1249棟が火災で消失するとされる。
だが、さらに恐るべきは、都心部にもまだ完全に調査されていない、未確認の活断層が数多く存在するといわれていることだ。
東洋大学教授(変動地形学)の渡辺満久さんによれば、首都圏には政府が認めていない全長120㎞にも及ぶ長大な活断層が横たわっている可能性があるという。
「埼玉県本庄市から熊谷市にまたがる『深谷断層』と鴻巣市からさいたま市に至る『綾瀬川断層』について、政府は関東平野北西縁断層帯にある別々の断層だとしています。しかし、私の調査によると、深谷断層と綾瀬川断層は連続している可能性が高いことがわかりました。
さらに東京都江戸川区から千葉県市川市の江戸川河口に至る活断層も見つかっています。住宅が密集して地形が読み取れない調査未了地域がありますが、それらの断層が1本につながっている可能性は高い」(渡辺さん)
図表3を参照していただきたいが、この長大な活断層を渡辺さんは「想定綾瀬川断層」と命名ルている。問題なのは、長い断層はそれだけ大きな地震を引ぎ起こすという点だ。
「長さ120kmともなればM8クラスの巨大な直下地震となります。これは行方不明者が10万人を超えた関東大震災に匹敵する規模になる」(渡辺さん)
関束大寰災当時よりはるかに人目が増え、交通機関も密集している東京で、同規模の地震が発生したらどうなるか。
「想定綾瀬川断層の上には上越・東北新幹線をはじめとする鉄道路線、東北自動車道や首都高速道路などの主要道路が通っていますが、それらの首都の大動脈が寸断されます。荒川の堤防が各所で決壊し、東京の下町が激しい水害に襲われる危険性も高いでしょう」(渡辺さん)
そうなれば、被害の規模は国が「最悪のケース」として想定している「死傷者数最大15万人」ではすまないかもしれない。
文科省の地震予測では「空白地帯」のように見える都心部にも、活断層が眠っているという。
元日本活断層学会副会長の豊蔵(とよくら)勇さんは、図表4のように都心部を縦に走る何本もの「推定断㈲」を発見した。
「通常、活断層は地表に現れた地形から判別しますが、開発が進んでいる大都市では困難です。そのため研究者の間では都心部で活断層を探しても無駄だという先入観がありました。
しかし、昭和30年以降に行われた地下鉄、下水道などの公共工事やビル建築の際に取られた精度の高い地中のボーリングデータが膨大に存在しており、入手可能な一部を解析することで”見えない断層”を推定することができたんです」(豊蔵さん)
例えば東京23区のど真ん中の山の手台地には、JR田端駅から飯田橋を通り、赤坂御用地に至る全長約7kmの「飯田橋推定断層」など3本の推定断層がある。東部の下町エリアにも、何本もの推定断層が平行して存在しているとみられている。
これらの推定断層のどれが、いつ、地震を起こすかわからないとすれば、東京直下型地震の発生確率はもっと高い数値になるはずだ。
もちろん危険なのは東京だけではない。大阪には都心部を縦に貫くように上町断層が存在する(図表7参照)。政府の中央防災会議がまとめた地震被害想定によれば、上町断層の地震による死者数は最大約4万2000人、全壊建物は約97万棟を超えるというから凄まじい被害だ。
また、京都も「活断層が作った盆地」といわれるほどで、市街地を取り囲むように活断層が走っている(図表5参照)。多くの寺社や文化財も、京都の街並みも、いつ直下型地震によって壊滅するかもわからない。
われわれにできるのは、いつ活断層による直下型地震がくるかもしれないという覚悟を持つことと、防災対策を常にしておくことしかない。
「九州にさらなる激震も…」
次はココ!危険6大エリア「予想MAP」
(女性自身)
甚大な被害を出した熊本地震。14日に益城町を襲った後も、16日午前1時25分にマグニチュード(M)7.3の地震が発生した。この地震が最も規模の大きい”本震”だった。
この本震は、益城町のみならず、同県の阿蘇地方、大分県での相次ぐ地震にも影響を及ぼした。
「今回の熊本地震による地殻変動で、他地域での地震が誘発される」と指摘する専門家は少なくない。
次の激震を襲うエリアはどこなのか――本誌は専門家を緊急取材した。
これまで日本を襲う巨大地震で、もっとも懸念されてきたのは南海トラフ地震。「30年以内に70㌫の確率で発生する」と予想されるその大震災の被害地は、四国から静岡県にまでおよび、「死者は32万人を超える」と政府は想定している。
だが、今回の震災を受けて、専門家からは、熊本県近辺の震災被害を懸念する声が上がった。
「熊本地震で、九州一帯へのさらなる激震が予測されます。政府は大分県近辺を危険視していますが、加えてほかの地震と連動しやすい日向灘では、M8.7の超大型地震が想定されます。ここ3年以内に起きてもおかしくはありません」
と語るのは、琉球大名誉教授である木村政昭氏。確かに熊本地震を受けて、地震活動は九州の他エリアにも広がっているように見える。
さらに、木村教授が”直近で”起こる危険地域を指摘したのは、意外な場所だった。
「いちばん直近で起こることが考えられる地震は、小笠原諸島の西之島の火山噴火による地震です。ここ2年以内に、伊豆諸島でM8.5が観測されるでしょう。もし起こった場合、伊豆諸島を津波が襲う危険性があります」(前出・木村教授)
長年、地震災害を取材してきたジャーナリスト・有賀訓さんは、熊本県と長野県の連動性地震を指摘する。
「じつは、熊本県で地震が起こると、2~3年後に長野県を大地震が襲うというデータがあるんです。九州から関東にかけて、中央構造線という断層帯が走っています。この中央構造線を通って、熊本県から地震が伝播していると考えられます。
1625年に熊本で50人の死者を出す地震が起こった2年後、長野県でM6.5の地震が観測されました。1723年にも同じように熊本県北部で地震が起こると、2年後に長野県で大きな地震が観測されました。
極めつきは1844年8月に熊本県北部で起こったM6.5の地震。3年後には、”善光寺地震”というM7を超える地震が長野県で観測されたんです」
千葉県・房総半島のフィリピン海プレートへの大きな地殻変動が起きていることをキャッチし、茨城・房総沖の地震を危ぶむ声も上がっている。
世界有数の地震大国・日本。これを機に、もう一度わが家の防災対策を見直そう。
近年予想される大地震と富士山噴火予想図(固定表示)
(木村政昭ホームページ)2016年4月15日
http://kimuramasaaki.sakura.ne.jp/site2/2016/04/15/1038/
そもそも総研 2016年4月21
大地震・巨大火山噴火の予知はできる?
https://youtu.be/ov7ouyGcGoE
巨大災害 MEGA DISASTER Ⅱ
日本に迫る脅威 地震列島 見えてきた新たなリスク
http://dai.ly/x41tifc
巨大地震から5年、膨大なデータによって、地震学の“常識”をくつがえすような新たな脅威の可能性が次々と浮かび上がっている。東北沿岸では、巨大地震で沈下していた陸地が数十センチも隆起する一方、沖合の海底ではプレートの複雑な動きが捉えられ始めた。
こうした大地の“異変”に、地下深くに存在するマントルの動きが関わっている可能性があることが、最新の研究からみえてきた。マントルの動きによって日本列島の地盤が変形しており、新たな地震のリスクにつながる危険性も浮かび上がっている。
さらに、GPSの詳細な分析からは、日本列島がのる巨大な岩盤・プレートが実はいくつものブロックに分かれている可能性も指摘され始めている。
日本列島の真下に大地の巨大な裂け目が潜んでおり、そうした場所では大きな地震が発生しやすいことがわかってきている。いま、日本列島の地下で何が起きているのか、その予兆をつかむことはできるのか。加速する地震研究の最前線に迫る。
日向灘の地震に誘発され南海トラフ巨大地震の発生確率が上がる!
「熊本地震は人工地震」をぶった切る
(Solid Earth Channel)2016/04/17
http://www.solid-earth.com/blog/2016/04/17/post-1401/
2016年4月14日から熊本県を中心に続発している地震について「これは人工地震だ!」というけしからんモノがいる上に、それを拡散している残念なヤカラがいます。
「益城町の地震波形にP波がない」というのが根拠のようですが、震源直上なんだから、震源と地震計の距離が近くてP波が見えにくいのは当たり前。
波形で、S波の立ち上がり付近をアップにすれば、P波は見えてくるものなので「アホか」の一言です。
管理人はお行儀が悪いのでこの程度でこういうヤカラはバッサリ切りますが、地震学者の小泉尚嗣さん(滋賀県立大学)は、「そもそも人工地震でM7の地震を起こせるか?」を科学的に説明してくださいました。
ご本人の承諾を得て、全文掲載いたします。
-----ここから-----
人工地震でM7クラスの地震が起こせるかどうかを考えてみます.
4/16の未明の熊本の地震の震源が深さ12kmとされていますから,まず,深さ12kmまで孔を掘らなくてはなりません.
ロシアのコラ半島で実際に深さ12kmまで約20年かけて掘った例があります.費用は不明です.
ドイツでも1990年から4年かけて9kmまで掘った例があります.
このときの費用は約400億円です.
しかも孔の大きさは,地表付近で70cm(28インチ),9kmの底付近で16cm(6.5インチ).
まず,深さ10kmまで掘るのが,費用としても時間としても大変です.
さらに,それを人知れずやらなくてはなりません.
以上の点を克服したとして,通常行われる人工地震で最大級のものはTNT火薬10トン程度でエネルギーにして、42GJ(ギガジュール)程度です。
これは、マグニチュード4の地震の波動エネルギー(約63GJ)にの2/3に相当します.
ただし、地震のエネルギーのごく一部のみが波動エネルギーになっていることを考慮して、その比を10%程度とすると、マグニチュード4の地震の総エネルギーは630GJということになります。
したがって、最大級の人工地震15発分=TNT150トン=M4の地震ということになります。
4/16未明の地震のマグニチュードは7.3とされていますが,暫定なのでとりあえずM7とすると,M4の地震のエネルギーの約3万2千倍.
上記の最大級人工地震の48万発分=TNT火薬4,800キロトン=4.8メガトン.
直径2mの孔を12kmまで掘って(莫大な費用に加えて何年かかるやら・・・),それを全部TNT火薬で埋めても60キロトンしかありません.
→無理です.
広島型原爆がTNT火薬15キロトン相当といわれるので,原爆を使っても無理です.
水爆ですとTNTにして数メガトン以上が可能ですから,エネルギー的には可能です.
でも,直径で1mオーダーの孔を12km極秘裏に掘って,水爆を極秘裏に日本に持ち込んで,それを極秘裏に爆発させて・・・.
→何のためにやるんでしょうね.
-----ここまで-----
オカルト情報を作ったり拡散したりするのはオモシロイかも知れませんが、さすがにここまで根拠がしっかり書かれると、拡散することが恥ずかしくなってくると思うんですが、拡散したい人は、こういう記事を見つけても見なかったフリをするんでしょうねぇ。
何が楽しいんだか。
そもそも総研 2016年4月21
そもそも大地震が起きてるのに原発を動かして大丈夫?
http://dai.ly/x45y5zx
熊本地震でも原発を止めない
原子力規制委員会という「危険」
(東京新聞【こちら特報部】)2016年4月27日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2016042702000138.html
熊本、大分両県を中心とした今回の地震で、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)に不安を抱いた人は多いだろう。だが、原子力規制委員会の田中俊一委員長は「停止に科学的根拠なし」と断言し、丸川珠代原子力防災担当相も規制委の見解を引いて「停止の必要なし」と繰り返した。本当に規制委の判断は「科学的」なのか。事故の際の避難計画も十分でなく、責任の所在も曖昧なままだ。
(沢田千秋、三沢典丈)
「科学的」程遠い 火山分析
学者「川内の立地自体が問題」
熊本と大分両県を中心とした地震を受け、原子力規制委は十八日、臨時会議を開いた。焦点は稼働中の川内原発1、2号機。川内原発で観測された地震動か、原子炉を自動停止する地震動の設定値の約十八分の一だったことが報告され、停止の必要なしとした。田中委員長は記者会見で「今のところ(停止する)科学的根拠がない」と述べた。
だが、会議では、火山活動についてはほとんど触れられなかった。規制委は各火山のモニタリングなどにより、噴火の可能性を評価できるとしている。
阿蘇山(熊本県)は十六日に小規模噴火を起こしたが、会議では桜島(鹿児島県)、霧島連山・新燃岳(同)も含め、現在の噴火警戒レベルは2や3で「心配するような状況に至っていない」と結論付けた。
だが、こうした規制委の判断に火山、地質学者たちは異論をとなえる。この確執は川内原発の再稼働をめぐり、一四年十一月から続いている。当時、日本火山学会が規制委による原発への火山リスクの審査基準を「楽観的過ぎる」と見直しを求めたのに対し、田中委員長は「火山学会挙げて夜も寝ないで観測を」と一蹴した一件以来だ。
神戸大海洋底探査センター長の巽好幸教授(マグマ学)は「規制委の議論はとても科学的とは言えない」と批判する。「現在の研究レベルでは、巨大噴火を引き起こすようなマグマだまりが阿蘇山や桜島の地下にあるか分からず、予知などできない。それを『今は噴火はないだろう』と見なすか、『近く噴火するかもしれない』と考えるか。科学的には後者が正しい」
日本では、マグマが一気に噴き出す巨大噴火が六千~一万年に一回の頻度で発生するとされる。巽教授は巨大噴火の発生確率を「今後百年間に1%」と見積もり、「今回の主な震源域は深さ約十㌔。火山学者が想定するマグマだまりの深さと一致する。今回の地震と火山噴火に関連性がないとは言えない」と話す。
鹿児島大の井村隆介准教授(火山学)は「川内原発の立地そのものが重大な問題だ」と懸念する。
過去に巨大噴火でできたくぼ地をカルデラと呼ぶが、川内原発の周囲には姶良カルデラや阿蘇カルデラなどそれが数多い。
二万六千~二万九千年前に起きたとされる姶良の巨大噴火では、薩摩川内市まで火砕流が届いた。昨年八月には、桜島北端の二俣港で「たぎり」と呼ばれる火山ガスがわき出す現象が観測されている。
「噴火の可能性は否定できない。仮に原発が火砕流に巻き込まれれば、過酷事故に直結する」
今月六日の川内原発の再稼働差し止めをめぐる福岡高裁宮崎支部の決定は、再稼働容認たった。しかし、同決定は「噴火時期や規模を的確に予測できるとする規制委の前提は不合理」とも指摘。規制委の「非科学性」に苦言を呈している。
避難計画義務果たさず
政府も責任曖昧「住民守る気あるのか」
今回の地震が、日本最大級の断層帯の中央構造線に与えた影響も気になる。
東海大の地震予知・火山津波研究部門の長尾年恭教授は一五九六年、愛媛県内でマグニチュード(M)7規模の慶長伊予地震が発生した三日後、対岸の大分県で慶長豊後地震、さらにその直後、京都府内で慶長伏見地震と、中央構造線に沿
ってM7規模の地震が連続した例を挙げる。
「これらの地震の前、東北沖を震源とする巨大地震があったという説がある。今年は東日本大震災から五年。状況がよく似ている。一九四四年の東南海地震と四六年の南海地震でも、その十~十五年前から内陸で大きな地震が続いた。今回の地震が南海トラフ地震と無関係とも言えない」
中央構造線の近くには、四国電力伊方原発3号機がある。この夏にも再稼働される見通しだが、長尾教授は「原発が次々と建設された高度成長期は、地震が少ない時期。伊方原発は本来、あんな場所にあってはならなかった」と断じる。
そもそも原発抜きで電気は足りている。リスクの大小にかかわらず、住民が危険を背負う道理はない。
電気事業連合会によると、福島原発事故前の一〇年度、28・6%だった原発の電源構成比は一三年度に1%、一四年度はO%。川内原発が再稼働した一五年度の速報値でも、1%にとどまる見込みだ。
資源エネルギー庁の電力調査統計では、一四年度の企業や家庭による自家発電量は約一年六百億㌗時。十社合計の約八千九百億㌗時の30%に相当する。
だが、電力各社は原発停止による燃料費の増加を理由に再稼働を進める。ノンフィクション作家の広瀬隆氏は「燃料費の輸入額増は現政権が主導した円安が響いている。化石燃料の輸入量は一三年度より、○八年度の方が多い。むしろ、原発廃炉に伴う特別損失計上の赤字回避のため、電力会社は古い原発も稼働せざるを得ない」と説明する。
規制委はそうした電力会社に審査適合と「合格」のお墨付きを与えているが、その両者の間には不透明な結びつきが垣間見える。
一三年、規制委が招いた外部専門家のうち、少なくとも十五人が電力会社や原発メーカーから、共同研究費などの名目で三十万~二千七百万円を受け取っていたことが発覚した。規制委の田中知委員も原子力事業者から多額の寄付を得ていたことが問題となったが、国会は人事案を承認した。
今回の地震では、高速道路や新幹線が一時不通になり、川内原発の避難計画の不備があらためて浮き彫りになった。だが、田中委員長は会見で「(避難計画は)内閣官房でお答えしていると思う」と、規制委の任務外を言外に示唆した。(・3・)
だが、一二年成立の原子力規制委員会設置法は「付則」に、災害時に国、自治体、住民、電力会社が情報共有できる措置をとるよう政府に求めている。
この付則を盛り込むよう働きかけた元滋賀県知事の嘉田由紀子・びわこ成蹊スポーツ大学長は「『避難計画』の文言こそないが、情報共有とは避難計画そのもの。規制委は国に十分な避難計画を作るよう求める義務がある」と強調する。
しかし、その方向とは真逆に、規制委と政府は責任の所在を曖昧化している。丸川原子力防災担当相は規制委の判断から原発停止は必要ないとし、規制委の田中委員長は「(規制委が)予備的に止めなさいとは判断できない」と、あくまで政府次第としている。
嘉田氏は「機械的に基準をクリアしていればいいというだけで、規制委から住民を守る気持ちは感じられない。委員要件として定められた原発関連団体からのノーリターンルールも、なし崩しになった。国民はだまされていると言っても過言ではない」と憤った。