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Channel: 私にとって人間的なもので無縁なものはない
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母ちゃんの嘆き…子どもの叫び…過去を心に刻もうとしないモノへ…(¬_¬)

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 罪の有無、老幼いずれを問わず、われわれ全員が過去を引き受けねばなりません。全員が過去からの帰結に関り合っており、過去に対する責任を負わされているのであります。
 心に刻みつづけることがなぜかくも重要であるかを理解するため、老幼たがいに助け合わねばなりません。また助け合えるのであります。
 問題は過去を克服することではありません。さようなことができるわけはありません。後になって過去を変えたり、起こらなかったことにするわけにはまいりません。しかし過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです。

 他の人びとの重荷に目を開き、常に相ともにこの重荷を担い、忘れ去ることをしないという、人間としての力が試されていたのであります。


荒れ野の40年(1985)より

リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー





母が初告発!
福島・見捨てられた
急増 甲状腺がん患者、
母と子の怒り

「二次検査まで半年待たされたあげく、がんと判明」
(女性自身)
http://jisin.jp/serial/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84/social/23752
がん告知説明たった10分、
セカンドオピニオンなし、
被ばくの影響も否定、不必要な手術の可能性も?
…無責任医療体制の実態

被ばくの健康に対する影響が懸念されている福島県で、子供の甲状腺がん患者が増えている。先が見えない患者と家族にきちんと向き合わない医療が、その不安に輪をかけている。

「311甲状腺がん家族の会」発足記者会見
(3月に都内で開かれた「311甲状腺がん家族の会」発足記者会見(家族の会提供)

福島・見捨てられた甲状腺がん患者の怒り_1

「僕が、がんになったのは、こんな体に産んだお母さんのせいだ! 僕は、どうせ長生きできないんだから、もう放射能の話なんてしないで!」
 '13年の春、郡山市内に住む川向アキさん(仮名・52)は、次男の隆くん(仮名・事故当時中2)に夜通し泣きながら責められた。
「だから私、隆に言ったんです。『お母さんのせいで、アンタががんになったんだったら、死ぬときは、お母さんも一緒に死ぬべ。ぜったいにアンタ一人では死なせねぇ』って」
 隆くんは'13年に、県が実施する甲状腺検査で、がんと診断され、'14年に、福島県が検査や治療をすべて委託している福島県立医科大学附属病院(以下、県立医大)で、甲状腺の片側を切除する手術を受けた。
 14歳の子どもが”がん”と宣告され、病と向き合う恐怖はいかばかりか。また、見守る親の心情は……。
 川向さんが、今回、本誌に胸の内を語ろうと思ったのは、治療を受けている県立医大や福島県の対応が、あまりにも患者の心を踏みにじるようなひどいものだったので、「誰かが訴えなくては」と考えたからだ。
 福島県では、原発事故以降、子どもの甲状腺がんが”多発”している。福島県が、原発事故当時18歳以下だった県内の対象者約38万人(受診者は約30万人)に対して甲状腺検査を実施したところ、11年から15年12月31日までに、甲状腺がんの”悪性”ないし”悪性疑い”と診断された子どもは166人、手術の結果、隆くんのように悪性(がん)と確定した子どもは116人にものぼった。(53ページ図参照)

福島・見捨てられた甲状腺がん患者の怒り_図版

 '12年ごろから、「福島県では小児甲状腺がんが多発している」と警鐘を鳴らしていた津田敏秀氏(岡山大学大学院環境生命科学研究科教授)は、「もともと小児甲状腺がんの発症率は、全国平均で年間100万人当たり約3人。ところが福島県内では、この4年間で約30万人中、がんと確定した人が116人。これは、全国平均の約30倍。あきらかな多発です」と、その深刻さを訴える。
 小児甲状腺がんは、86年に起きたチェルノブイリ原発事故のあと、ロシアやウクライナ、ベラルーシなどで多発。原子力を推進するIAEA(国際原子力機関)でさえ、被ばくとの因果関係を認めざるをえなくなった唯一の病だ
 しかし、これまで国や福島県は、これほど福島で小児甲状腺がんが増えているにもかかわらず「いっせいにエコー検査したことで、将来見つかるがんを前倒しで見つけている。いわゆる”スクリーニング効果”だ」として、多発すら認めていなかった
 ところが、県民健康調査(注)に対して専門家の立場から助言するためにつくられた、「県民健康調査検討委員会(以下、検討委員会)」が、3月末に発表した「中間取りまとめ」では、福島県で小児甲状線がんが”多発”していることを、ようやく正式に認める形となった。つまり、スクリーニング効果では説明がつかないほど増えてしまったというわけだ

福島・見捨てられた甲状腺がん患者の怒り_2

「息子の目の前でがん告知で、顔面蒼白に」

 この発表に先立ち、去る3月12日には、福島県の検査で、子どもが小児甲状腺がんと診断された5人の子供の家族が、「311甲状腺がん家族の会」(以下、家族の会)を発足。東京都内で記者会見を開いた。
 冒頭の川向さんや、記者会見に出席していた患者の親の話を聞いていると、福島県から委託されて甲状腺がんの検査や治療、分析まで一手に引き受けている、福島県立医大の対応のマズさ、ずさんさが見えてきた。
息子の目の前で、あなたはがんですよ、と伝えられたときはものすごくショックでした。息子は顔面蒼白になって、イスにも座っていられないような状態でしたから。私自身も、目の前が真っ暗になって……。気が遠くなりましたね。息子も、その後数日間は、かなりふさぎこんでいました
 記者会見でそう話していたのは、福島県中通り地方に住む、事故当時10代だった息子の父親。がんの告知も含め、医師からの説明は、わずか10分足らず。いまや常識となっているセカンドオピニオンの説明もなかったという。
「思春期の子どもに対して、あの告知の仕方はないんじゃないかな……」
 父親は記者会見で、そうもらした。
 家族は福島から中継で、顔を隠しながらの会見だった。
 実際に子どもが県立医大で治療を受けている手前、表立って批判しづらいという事情もある。
子どもを人質にとられているようなものだ」と話してくれた患者の母親もいた。
 今回、つらい心情を語ってくれた川向さんの場合も、告知のされ方はひどいものだった。
「私たちが診察室に入ると、先生は、しばらくパソコンの画面やエコー画像を眺めて『う―ん』とうなっていたんですが、いきなり「乳頭がんですね、手術しましょう」と言われました」
 川向さんの次男、隆君も顔面蒼白になり、親子共々、なにも言葉を発せなかったという。通常は行われるエコー画像を見せての詳しい病状の説明もなく、次の検査の予約をとっておきます、と告げられ、10分ほどで終了。
「病院の廊下は、二次検査を受けるために来た子どもたちでいっぱいでした。告知がわずか10分で終わってしまうのも、人手が足りないからでしょう」(川向さん)
 通常は、病院の対応が気に入らなければ、病院を変えればすむ。しかし、福島県内には甲状腺の専門医が少ないうえ、国や福島県は、原発事故による被ばくの影響を調べるために、すべての検査データを県立医大に集約しようとしているためマンパワーが不足している。さらに、県が実施している検査の枠組みから外れると、受診しづらいという事情があるのだ。実際に、患者が一般の病院を受診しようとしても、拒否されるケースがあった
 記者が取材した別の母親は、子どもが県で受けた甲状腺検査でB判定(二次検査が必要)の通知が送られてきたので、県立医大に「二次検査はいつ受けられますか?」と問い合わせたが、「いつできるかわからない」との回答を受けた。「早く二次検査を受けて安心したい」と思った母親は、県内の別の医療機関で検査の予約をとり、子どもを連れて行くことに。しかし、検査当日に病院に行くと、医師から、「うちでは診られません。県立医大に行ってください。これからずっと医大で診てもらうようになるんだから、個人の病院で検査することはできないんです」と言って帰されたという。

福島・見捨てられた甲状腺がん患者の怒り_3

 結局、県立医大で二次検査を受けられたのは、B判定の通知が送られてから約半年後。その間、母親も子どもも、「がんだったら、どうしよう」と、不安な日々を過ごした。結果は、がん。リンパ節にも転移が見られた。
検査を待たされている間に、もっと進行していたら、と思うと、今考えてもおそろしい」と、母親は振り返る。
 病院の対応が後手にまわり、患者がおきざりにされている現実があった。

診療のやり取りが記録された川向さんのノート
県立医大との診療のやり取りが克明に記録せれた川向さんのノート

過去の公害問題の過ちを繰り返そうとしている

 ほかに母親が疑問に思うことは、なぜ、わが子が甲状腺がんになったのかということ。
原発事故の影響で甲状腺がんになるかもしれないと言われ、実際に受けた検査でがんが見つかったんです。それが放射能のせいかどうか、知りたいのは当たり前です」と、前出の川向さんは言う。
 しかし、いままで医師からきちんとした説明はない。それどころか、川向さんが主治医に「どうして、うちの子は甲状腺がんになったのでしょうか。やっぱり、放射能の影響なんでしょうか」と尋ねたら、主治医は、頭ごなしに、こう言った。
そんなのは(がんは)前々からあったんだ!
 川向さんは、それ以上聞けなくなり、「そうですか……」と、うつむくしかなかった。
 それ以来、次男の隆くんは、「がんになったのは、お母さんのせいだ。放射能の話はするな」と言うようになった。夫からも、「騒いだって、切ってしまった息子の甲状腺は戻ってこねえ。放射能のせいでがんになったのなら、うちだけじゃなくて、ほかの子もなるはずだ。隆が、がんになったのは、体質だっぺ」と、諭された。川向さんは、「私のせいだ」と、自分を責めた。
前出の「検討委員会」の中間取りまとめでは、(現時点で完全に影響は否定できないものの)「放射線の影響で多発しているとは考えにくい」と結論づけている。
 その理由として、あげている主なものが、「将来的に臨床診断されたり、死に結びついたりすることがないがんを、(いっせいに大規模に検査することで)多数診断している可能性がある」という点だ。これを”過剰診断”という。
 この説明に従えば、これまで手術を受けた116人の子どもたちの中には、「しなくてよい手術を受けた子どもが含まれている可能性がある」ということになる
 県立医大で甲状腺がんの手術を行っている鈴木眞一教授に尋ねてみたところ、「手術は、診療ガイドラインに沿って行っています。手術をせずに経過観察をしていたらどうなっていたかを知る術はありません」という趣旨の回答が文書で寄せられた。
 だが、実際に、手術を受けた子どもや保護者は、心中穏やかではない。
「家族の会」は4月12日、「ほんとうに不必要な手術が行われていたのなら、許されない」として、現在までに施行されている手術のうち、何例が必要のない手術だったのか明らかにすることや、医療過誤に詳しい専門家を集めた第三者検証機関を大至急設置し、手術の検証を行うことなどを求める要望書を、検討委員会に提出した。
「家族の会」の世話人を務める武本泰さん(郡山市在住)は、「過剰診断説が声高に叫ばれたら、検査を受けないほうがよい思う県民が増える。そのせいで、重篤な症状に陥る患者が出てきた場合、福島県や医大は訴えられる可能性もあるのでは」と危惧する。
 実際に、最近では検査の受診率が低下しているのだ
 こうした現状を、福島県はどう見ているのか。担当者に問い合わせたところ、「県としては、検査を受けたい人が受けられるように案内していく。検査を受けていない人が、万が一、予後の悪い甲状腺がんになった場合は、自覚症状が出るハズ。それから受診したらいいのでは」と、無責任な回答だった。なにこれ!( ̄^ ̄)凸
 これに対し、早くから福島県での甲状腺がん多発を警告していた前出の津田氏は、「過去の公害問題などでくり返されて来た過ちを、再び堂々とくり返そうとしている。犯罪的だ」と述べた。
 さらに、「すでに議論をしている時期はすぎた」として、医療体制の整備や、県民へのリスク喚起など対策を急ぐべきだと語る。最後に川向さんはこう訴えた。
甲状腺がんは、予後がいいから大丈夫、なんていう専門家もいますが、急にしこりが大きくなったり、すでに肺転移や再発をしたりしている子もいる。盲腸じゃないんですよ、がんなんです。私たちは日々、転移や再発を心配しながら生活しているんです


ほかの原因が説明できない現状において、甲状腺がん多発の原因は、被ばくしかない
岡山大学大学院・津田敏英教授

 福島県で多発している小児甲状腺がん。依然、「被ばくによる多発だとは考えにくい」という見解を示している県の検討委員会だが、疫学者の津田敏秀氏は、「甲状腺がん(おもに乳頭がん)の外的要因は、放射線被ぱくであることは、国際的にも認められており、ほかの原因が説明できない現状においで、甲状腺がん多発の原因は、被ばくしかない」と断言する。
 津田氏が、被ばくの影響を裏付けるデータとして挙げて・いるのが、・チェルノブイリ原発事故の影響を受けたベラルーシで、〈被ばくの影響を受けていない14歳以下の子ども4万7203人を対象に行った甲状腺エコー検査〉の結果。
 「被ばくしていない地域の子どもたちには、一例も甲状腺がんが見つかっていません。チェルノブイリでも、原発事故後、今の日本と同じように10年以上にわたって、甲状腺がんの多発は、『スクリニーング効果だ、過剰診断だ』と論争が続いていました。でも、このデータが、論争に終止符を打ったんです。やっぱり被ばくの影響だ、という確証になりました」(津田氏)。
 また、「チェルノブイリで甲状腺がんが増えたのぱ、原発事故後5年目から。福島は早すぎるので被ばくの影響とは考えにくい」とする検討委員会の意見に対しても、
チェルノブイリでは、爆発的に甲状腺がんが増加したのが事故後5年目以降であって、事故の翌年からはっきりとした甲状腺がんの多発が始まっていました」と反論する。
 『ぜひ、みなさんには、こうしたデータをしっかりご覧になったうえで検証してぼしい』と話す。
 また、津田氏は、チェルノブイリ原発事故のあと、小児甲状腺がん以上に、大人の甲状腺がんが増えたことや、そのほかの疾病も増えたこどなどを例に挙げ、「今後でどんな疾病が増えていくのか、症例を把握していく必要がある」と警鐘を鴫らしている


甲状腺がん「チェルノブイリの多発傾向と酷似」~疫学専門家

https://youtu.be/NORBfsfSxV8
福島県内の子どもの甲状腺がんが多発している問題で8日、岡山大学の津田敏秀教授が外­国人特派員協会で記者会見を開き、多発の原因が「被ばくによる過剰発生」であるとした­論文の概要を説明した。津田教授は現在の状況について、「チェルノブイリにおいて、4­年以内に観察された甲状腺がんと同じような状況にある」などと述べ、今後さらに大規模­な多発が起きる可能性があると警告した。

「日本では年間100ミリシーベルト以下の被ばくによるがんは発生しない、または発生してもわからない、としか説明されない」
「若い人は放射線の影響が出やすいと教え、コストを掛けずに対策することは可能だ。線量が多い場所を探して滞在時間を短くすれば被ばくを減らせる。福島に住む人こそそうした知識が必要だ」
「過剰診断やスクリーニング効果を指摘する論文では、それらによる検出はせいぜい2~7倍に過ぎない。ところが福島では1桁多い過剰発生が見られる。スクリーニング効果はその一部にすぎない」


矢ケ崎克馬教授
福島県の甲状腺がんはスクリーニング効果ではない

(福島原発事故の真実と放射能健康被害)
http://www.sting-wl.com/yagasakikatsuma2.html



チェルノブイリ事故30年
ドイツでフランスでスイスで危険訴えデモ
国境超えて「原発閉鎖を」

(しんぶん赤旗)2016年4月26日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-26/2016042607_01_1.html
チェルノブイリ事故30年


続 チェルノブイリ原発事故から10年後 子供の甲状腺がん多発

http://dai.ly/x2lme4l


THE放射能 科学は放射線の影響にどこまで迫れるのか?

http://dai.ly/x3xkahg
福島第一原発事故は、推定90万テラベクレルという膨大な放射能を放出した。セシウム、ストロンチウムをはじめ、聞いた事もないテルルといった多様な核種が大地を汚染した。人も動物も昆虫も植物もその中で生きていかねばならない。
THE放射能 科学は放射線の影響にどこまで迫れる
「放射能」は、人や生態にどんな影響を与えるのか。100ミリ以下=低線量被ばくの健康への影響はあるのかないのか?科学者の間でも意見が真っ二つに分かれるのはなぜか?最先端の研究と映像で迫る。





熊本地震どこ吹く風 復活する原発広告
(東京新聞【こちら特報部】)2016年4月24日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2016042402000158.html
 東京電力が、再稼働を目指す柏崎刈羽原発(新潟県)のCMを同県限定で流している。東電福島第一原発事故で福島から新潟に避難してきた人たちが放送中止を求めたが、東電は拒否した。東電を頂点とする原子力ムラが、巨額の広告費を投入して展開してきた「原発広告」。3・11で一度は途絶えたものの、全国を見渡せば東電に限らず、安倍政権の再稼働路線に連動する形で復活しつつある。熊本を中心に相次いでいる地震は「地震大国・日本」を再認識させたが、「再稼働プロパガンダ」は揺るぎそうもない。
(佐藤圭、池田悌一)

熊本地震どこ吹く風 復活する原発広告_1

避難者抗議「再び傷ついた」

 「どんな状況でも対応できるよう訓練に全力を注ぎます」。東電制作の三十秒CM「緊急時訓練編」では、重機を使ってがれきを取り除く様子などが紹介され、最後は職員らの「決意表明」で締めくくられる。

 東電は福島事故以降、おわびや節電の呼びかけ以外のCMを控えてきた。ところが、原子力規制委員会の審査が進む柏崎刈羽6、7号機の再稼働を視野に、新潟事務所を格上げした新潟本社を昨年四月に設立し、六月から県内限定でCMを再開した。テレビでは、民放四社が一局あたり月八十本、「緊急時訓練編」や「津波対策編」など五種類のCMを放送してきた。
 これに反発したのが避難者たちである。「再び傷つけられていると感じる」などと怒りの声が上がった。福島県の調べによると、福島から新潟への避難者数は
三月十日時点で三千五百四人。福島を除く都道府県で四番目に多い。
 避難者や脱原発団体メンバー、地元議員ら十一人が今月十八日、東京都千代田区の東電東京本社を訪れ、CMの中止を要請するとともに、ネットや街頭で集めた千九百三十七人分の署名を提出した。三月十五日に新潟本社へ申し入れたものの満足な回答が得られず、東京に乗り込んだのだ。
 当初の抗議文では「再稼働に向けて都合のいい情報だけを打ち出している」「多額の費用をかけている」と批判した上で、CMの中止と経費の公開、継続する場合は、トラブル隠しなど不祥事も含めた内容に変更することなどを迫った
 ところが案の定というべきか、東電は新潟本社代表名による今月五日付の文書で「安全対策について広報するのは新潟本社の責務」「今後もCMを継続する」と回答。経費の公開については「私契約なので差し控える」と突っぱねた。
 東京本社では、郡山市から娘二人と新潟市に避難する磯貝潤子さん(四二)が「再稼働目的のCMで『事故は起こらない』『東電は頑張っている』と思わせようというのは、私たちの存在を無視しすぎている」と訴えた。再稼働に反対する矢部忠夫柏崎市議も「CMに使う金があるなら福島事故の収束や、損害賠償に充てるべきだ」と主張した。
 この間、熊本県などで大地震が起きたが、応対した東電原子力・立地本部の吉
田明雄原子力センター所長は「再稼働のためのCMではない」などと従来の見解を繰り返した。
 CMをめぐっては、新潟県の泉田裕彦知事も記者会見で「再稼働のキャンペーンだとすると罪深い」と疑問を呈している。避難者らは抗議を続ける構えだ。
 呼びかけ人の中山均新潟市議は「熊本地震でも分かるとおり、日本全国で大地震が発生する可能性がある。他県の避難者とも連携しながら世論を喚起していきたい」と力を込める。

熊本地震どこ吹く風 復活する原発広告_2

川内再稼働で「なし崩し」

福島事故の反省なし

 熊本地震の震源域の近くには、全国で唯一稼働している九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)や、海
を挾んで四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)がある。政府は川内原発の運転を止めず、その他の原発でも再稼働に向けた準備が着々と進んでいる
 九電は福島原発事故前の二〇〇九年、「自然力、原子力、人間力で地球環境のために」と銘うった連続広告を地元紙に掲載していた。地域共生本部の担当者は「原子力の安全性や必要性を訴える活動の一環だった」と振り返る。
 九電は昨年八月、住民避難などの課題を残したまま、川内1号機の再稼働に踏み切った。だが、3・11から現在に至るまで原発広告を打っていない。「費用対効果の関係もあるので、そのときの状況などを考慮して広告を出している。今は必要ないと考えており、今後の予定も決まっていない」(担当者)
 四電も事故前は、「安全性や原発の環境優位性をお客さまにご理解いただくため」(広報部)にテレビや新聞で原発広告を出していたが、現在は「自粛中」。その理由を「いまだ避難者がいるため配慮している」と説明する。
 一方、東電以外にも、原発広告を再開した電力会社がある。
 中部電力は昨年七月、浜岡原発(静岡県御前崎市)で働く社員を紹介する新聞広告やテレビCMを同県内でスタートさせた。
 広報部は「日々の業務に取り組む様子を伝えることで、安全性向上に対する社の姿勢を示すのが目的だ」と強調する。多くの避難者や原発に反対する人たちがいる中での再開には「原発に賛否があるのは承知しているが、すべてのお客さまに社の姿勢を伝えようと考えた」と理解を求める。
 高浜原発(福井県高浜町)を抱える関西電力は、高浜3号機が再稼働した直後の二月、「すべては、安全のために」というタイトルの新聞広告を福井で掲載した。原発について「経済の発展や豊かな暮らしを支えるための重要な電源」とアピールする。同時に福井限定のCMも流している。
 「今後も安全に安定運転を継続することをお知らせし、地域の皆さまに安心してもらうためだ」と広報室は広告の必要性を説く。
 いずれの電力会社も東電と同様、広告の経費については「広報戦略に関わる」などとして明らかにしなかったが、相当な額に上るとみられる。しかも原資は、われわれの電気料金から生じる巨大マネーだ
 電力会社の本音はどうなのか。
 原発広告に関する著書のある作家の本間龍氏は「各電力会社は福島原発事故が起きた途端、一斉に慌てて原発広告を引き揚げた。それなのに昨年夏ごろから原発広告に踏み切るようになり、イメージ広告も頻繁に打ち出し始めた。川内原発の再稼働後、『原発PRを再開しても問題ない』という判断が、なし崩し的になされた」と解説する。
 真の狙いは何なのか。本間氏は「再稼働に向けて揺るぎない信念を持っていると、世間に知らしめておきたいのだろう。原発推進派には存在感を見せたいし、社員の士気も高めたい。メディアにも、そろそろ餌をまいておこうという思惑もあるはずだ」とみる。
 しかし、まだ福島原発事故から五年余りしかたっていない。原発広告に走ることに問題はないのか。本間氏は「東電の広瀬直己社長が昨年八月、新体制発表会で身ぶり手ぶりを交えて得意げにスピーチしたところ、福島の地元紙に『福島県民の前でもそんな話し方ができるのか』と問われ、場の空気がしぽんだという一幕があった」とのエピソードを紹介した上で、電力会社の姿勢を指弾する。
 「いまだ十万人規模の避難者がいて、事故原因もはっきりしていない。八方ふさがりな状況は事故当時と何ら変わらないのに、また原発を動かしたいと発想すること自体がおかしい。電力会社が稼ぎたいだけの再稼働のために広告宣伝費をぱらまくのは、異常としか言いようがない

熊本地震どこ吹く風 復活する原発広告_デスクメ


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