元自衛官が、集団的自衛権に反対する理由
(ラジオフォーラム#153)
■国防の任に当たる自衛官は、安保法制には賛成するのは当たり前のことなのでしょうか? まだ強行採決のシーンが記憶に生々しい安保法制ですが、集団的自衛権に反対する自衛官が少なくないのも現実です。
その理由こそ、「自衛隊は日本最大の反戦組織である」ため。自衛隊がアメリカのために血を流したら本当に守ってくれるのか? 憲法9条は無力なのか? 防衛の実情を知り尽くした者だけが語ることのできる、非常に奥深いその理由を、安保法制成立後も講演依頼が絶えないという元自衛官の泥憲和さんをゲストにお聞きします。
■『誰が“橋下徹”をつくったか~大阪都構想とメディアの迷走』著者に聞く~みんなジャーナル
皆さんは、『誰が「橋下徹」をつくったか ~大阪都構想とメディアの迷走』という本をご存じでしょうか。11月22日の大阪府知事・市長ダブル選挙直前に、橋下徹とマスメディアの関係を検証する初の書として注目を集めました。
「大阪都構想」の是非を問う住民投票は、反対多数で否決されましたが、そこに至る橋下氏と在阪メディアのいびつな関係性は、非常に注目を集めました。
「権力監視がメディアの仕事」と説きながら、批判されれば恫喝や責任転嫁とも取れる言動に終始し、「言論の自由が民主主義の根幹」と言いながら、メディアに圧力とも取れる行動をする。「言論の自由」や「民主主義」とは何なのか? 著者の松本創さんにお聞きします。
https://youtu.be/Fg6Kg7eQAIE?t=15m38s
15分37秒~第153回小出裕章ジャーナル
原発の運転延長「当初予定していた40年という寿命がもう来てしまうわけです。そんな原子炉をこれから再稼働させるというようなことは、こんな愚かな選択はあり得ないと私は思います」
http://www.rafjp.org/koidejournal/no153/
蒸気漏れ事故が起きた美浜原発3号機の前に集まった関係者と消防車=2004年8月9日午後5時45分、美浜町で共同通信社ヘリから
矢野宏:
関西電力が来年11月に運転開始から40年を迎える美浜原発3号機について、20年間の運転延長を原子力規制委員会に申請しました。原発の運転期間は原則40年間と定められているのに、規制委員会が認めれば1回に限り20年間延長できるというものですが、これ大丈夫なんでしょうか?
小出さん:
大丈夫かと聞かれてしまえば、大丈夫でないとお答えするしかないわけですし、私はもともと原子力発電所というのは機械であって、壊れない機械はない。そして、運転してるのが人間で、人間は神ではないわけですから、必ず間違いを犯すし、原子力発電所にしても大きな事故を起こす可能性は必ずあると訴えてきまして、大きな事故が起きる前に原子力発電所は止めたいと思ってきたのですが、残念ながら福島第一原子力発電所の事故が起きてしまったわけです。
それまでも原子力発電所というのは、厳重な安全審査をして安全性を確認して認められているんだから大きな事故なんて決して起きないと言われてきたにも関わらず、福島第一原子力発電所の事故が起きてしまいました。その事故は未だに継続しているわけですし、事故現場に行くことすらできない。どんな原因で壊れたのかすらが確定できないという状態なのであって、それができないならば、新たに原子力発電所を運転するなどということは初めから論外だと私は思ってきました。
しかし残念ながら原子力を進めてきた人達は、新しい規制基準をつくって、それに合致したらばもういいんだというようなことを言い出したわけです。しかし新しい基準を作った原子力規制委員会自身が、新しい基準に合致したからといって安全だとは申し上げないということを言ってるわけですから、到底安全などということは言えません。
特に今、聞いて下さったように美浜原子力発電所というのは、すでに当初予定していた40年という寿命がもう来てしまうわけです。そんな原子炉をこれから再稼働させるというようなことは、私から見れば全く馬鹿げたことだし、こんな愚かな選択はあり得ないと私は思います。
矢野:
そうですよね。美浜原発の3号機というのは、これ2004年の8月に大変な事故を起こしてますねえ。配管の破断で蒸気が噴出して、11人の死傷者を出した。
頭を下げる藤社長の顔をのぞきこみ怒りをぶつける高鳥裕也さんの父、実さん。右は母の千津江さん=2004年8月10日午後7時50分ごろ、小浜市北塩屋
小出さん:
そうです。管理も全くできていない状態で、熱水が流れているパイプがいつの間にか薄くなってしまって突然破れてしまう。そこで作業をしていた人達が、熱湯を浴びて焼け死んでしまうというような事故を起こしました。
※美浜3号炉事故の全体像と課題 2004 年 10 月 7 日 小出裕章
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No98/koide041007.pdf
本当に原子力発電所というのは油断も隙もない、どこかでちょっとした油断があれば、それが大事故につながってしまうというそういうものなわけですから、特に寿命を尽きたような原子炉というのはその段階で諦めるというのが、本当の選択だろうと私は思います。
矢野:
そうですよねえ。美浜原発の場合は小出さんおっしゃったように、1号機と2号機はもう廃炉になると。3号機しかないのに、敢えてその3号機を再稼働させる。なぜ必要なんでしょうか?
小出さん:
それも私はよくわかりませんが、とにかく形があるし、造った時に何千億円かかけているわけですから、形のあるものは、動かした方が金儲けになるという判断を多分したんだろうと思います。それからもうひとつは、これはよくわかりませんが、いわゆる立地自治体である美浜町が原子力発電所がなくなってしまうと、交付金などが得られなくなる、「なんとか動かしてくれ」というような政治的な思惑というのがあったかもしれないと思います。
矢野:
なるほど。例えばですよ、今度この4号機を造るということになった場合に、美浜にそういう恩を売っていたら、関西電力の側からですね、恩を売っておけば、また4号機を造ることができるんではないかというような思惑もちょっと私は見え隠れするような気がするんですけど、どうでしょう?
小出さん:
はい、あるかもしれませんね。敦賀の場合も1号機はもう廃炉になりましたし、2号機もたぶん廃炉になると思いますけれども、そうなると今度は3号機、4号機を造るというような話があるわけですし、美浜の場合にも1号機、2号機はもうダメだけど、3号機を動かすことで4号機を踏み台に使うということはあり得るだろうと思います。
矢野:
しかしこの美浜原発だけではなくって、高浜1号機、2号機ももう40年近いですよね。もちろん40年超えてますよね。これをまた再び動かそうという運転延長申請もしてます。こんな老朽原発を動かして再稼働させて果たしていいのかなあと私は思うんですが。
小出さん:
はい。私としては、そんなことは安全性を考えればもちろんあり得ないし、経営判断としてもあり得ない選択だろうと私自身は思います。
矢野:
これからその原子力規制委員会の判断に委ねられるわけですけれども、もしかすると、これは20年の運転延長というのが認められる可能性もありますよね?
小出さん:
はい、可能性もありますけれども、でも来年の11月というのが美浜3号機の場合には、最終的なタイムリミットになってしまうわけで、それまでに老朽化した原子炉が新しい規制基準に合致するように関西電力の方できちっとした準備をしなければいけないわけで、その準備が間に合わないという可能性はかなり私はあると思いますので、美浜3号機に関しては、結局再稼働できないという可能性もかなり高いだろうと私は思います。
矢野:
そうですか。それだったら、ちょっと安心なんですけれども。
小出さん:
油断はできませんけれども。
矢野:
ですね、はい。我々はこの関西電力のこうした再稼働の動きに対して、どんな行動をすべき、どう声をあげていけばいいのかなというふうに私は今迷ってるんですけれども。どうでしょうか?
小出さん:
はい。私はずっと41年間原子炉実験所という所で働いてきましたし、その間も原子力発電所というのは一刻も早く止めなければいけないと発言を続けてきました。しかし私の発言などは、国家が進めようとした原子力、巨大な電力会社、巨大な原子力産業、マスコミ、学会、裁判所まで、全てがグルになって進めてきたわけで、私の声などは簡単に掻き消されてきてしまったわけです。
しかし福島第一原子力発電所の事故が起きて、ほんとに悲惨なことが起きるということが事実として示されているわけですから、やはり多くの人に、この事実に気がついてもらって、お一人お一人の方が声をあげて下さるようになる。このラジオフォーラムという番組もきちっとその情報を伝えて下さるようになってるわけですから、それを受けてお一人お一人の方がやはり気がついてくれると、それになければ、やはりダメなんだろうなと私は思います。
矢野:
やはり、諦めずに声をあげ続けるということが大事なわけですね。
小出さん:
はい、この番組がずっと続いてくださったことは有難いと思いますし、地道な努力を積み重ねる以外にはないんだろうと思います。
矢野:
わかりました。小出さん、どうもありがとうございました。
小出さん:
こちらこそ、ありがとうございました。
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<社説>インドへ原発輸出 核なき世界追求に逆行する
(琉球新報)2015年12月14日
http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-188044.html
インドを訪問した安倍晋三首相はモディ首相と会談し、日本の原発輸出を可能にする原子力協定締結に原則合意した。インドは核拡散防止条約(NPT)にも包括的核実験禁止条約(CTBT)にも加盟していない。日本がNPT未加盟国と原子力協定を結ぶのは初めてだ。日本の原子力政策の転換であり、唯一の被爆国として追求してきた「核なき世界」に逆行し、日本の外交に大きな禍根を残した。
日本政府は軍事転用を防ぐ歯止め策として、インドが核実験を行った場合、協力を停止する考えだが、どういう仕組みや文言で担保するかは明らかにしていない。
インドは1974年、米国とカナダが提供した重水と原子炉を使って核実験を実施している。このため日米欧などの原子力供給国集団(NSG)が2008年まで原子力協力を禁じてきた。
しかし当時のブッシュ米政権がインドとの関係を重視し、原子力輸出を解禁するNSGルールの改定を提案した。日本も米国の圧力を受けて追認してしまった。改定後は米国、フランスなどが次々とインドと原子力協定を締結した。米国やフランスの原発大手と企業連合を組む日本がその潮流に組み込まれた形だ。核廃絶より経済利益を優先させたと批判されても仕方ない。
さらに日本は、輸出した資機材を使った原発から出る使用済み核燃料の再処理を認める方針を決めている。再処理は核兵器に転用できるプルトニウムを量産することになる。インドが軍事転用しない仕組みをどう作るのか。たとえプルトニウムが民生利用だけに限定されたとしても、インド国内にある希少なウランを核兵器製造だけに集中投入することに道を開くことになる。
インドと隣国パキスタンは長年対立を続け、共に核兵器を保有しているとみられている。パキスタンはインドの動きを警戒しており、核物質と核兵器の増産を着々と進めてきた。日本の原発輸出によって、インドの核兵器開発が進み、地域が不安定化したら、日本はどう責任を取るのか。
東京電力福島第1原発事故の収束のめども立っていない。原発を輸出している場合だろうか。インドとの原子力協定の締結は、被爆国としてあまりに短絡的で許されるものではない。
変質する原子力協定
国内で新設困難 海外輸出に活路
(東京新聞【こちら特報部】)2015年6月24日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2015062402000128.html
日本からインドに原発を輸出できるようにする原子力協定交渉が進んでいる。原発の安全性も問題だが、協定にはさらに大きな問題がある。日本が輸出した原発で核燃料を使用した後、プルトニウムを取り出す再処理をインドに認めようとしている。プルトニウムは核兵器への転用が容易だ。日本が掲げる「原子力の平和利用」が破られてしまわないか-。
(沢田千秋、榊原崇仁)
原発マーケット魅力
インドとの原子力協定交渉は二〇一〇年に始まった。五年たっても合意に至らないのは、日本製原発で使用した核燃料の再処理の容認を求めるインドに対し、日本が慎重姿勢を貫いてきたからだ。
日本は現在、十四の国・機関と協定を結ぶ。そのうちの七つは福島第一原発事故が起きた一一年以降に発効した。相手は、電力需要の増す新興国が多く、原発の輸出を目指す。
だが、日本が原発輸出国の立場で、核兵器に転用可能なプルトニウムを取り出す再処理を認めた協定はない。ヨルダンとUAEに対しては再処理を禁止。トルコやベトナムに対しては、再処理をするには書面による合意を必要とする。岸田文雄外相は昨年四月、衆院外務委員会で「トルコの濃縮、再処理を認めることはない」と強調した。
では、なぜインドに対しては再処理を認める方針なのか。
インドの人口は現在、十二億五千万人。国連の予測では、二八年に十四億五千万人になり世界一になるという。電力需要は高まる。国際原子力機関(IAEA)の予測では、インドを含む中東・南アジア地域の原発の数は、三〇年には最大で、現在の九倍にあたる五十五基に増える。(。-_-。)
安倍晋三首相は一三年五月、滞っていた原子力協定の再開について、インドのシン首相(当時)と合意した。この時期、野党の質問に対し、「福島第一原発事故の経験と教訓を世界と共有することにより、世界の原子力安全の向上に貢献していくことがわが国の責務」と答弁書で答えている。
福島の原発事故が国内の原発メーカーに与えた影響は大きい。日立製作所、東芝、三菱重工業が原発製造の技術を持っているが現在、国内での原発新設は極めて困難な状況にある。そこで、海外輸出を目指そうとしている。
拓殖大大学院講師の竹内幸史氏(南アジア研究)はインド政府は原発増設を長期的計画として表明している。日本にとって大きなマーヶツトになる」とみる。
しかし、インドは一九七四年、カナダから輸入した研究炉で得た使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して核実験を行い、核兵器保有国になった。核兵器の製造などを禁じる核拡散防止条約(NPT)には加盟していない。
再処理容認に当たり、取り出したプルトニウムの量や所在を記した目録提出の義務付けを求めても、インドは「IAEAの査察協定があるので転用の懸念はない」と拒否しているという。再処理を認めた場合、核軍縮・不拡散の観点から問題はないのか。
竹内氏は「IAEAの査察はインドの原発の全てに目が届くわけではない。日本政府は被爆国として核軍縮を進めるリーダーの役割を果たしたい一方で、インドを特別扱いして関係を深めて中国を載制したいという狙いもある。安倍政権は後者を優先している」とみる。
プルトニウム抽出
インドに初容認へ
核拡散促しかねない
今でこそ原発輸出国として欧米諸国と肩を並べるようになった日本も、原発技術を導入する際、外国を頼った。
一九五五年、米国との間で原子力研究のための協定を結んだ。日本は有償で濃縮ウランを借り受け、茨城県東海村の日本原子力研究所(当時)に米国製の研究炉を設けた。五七年に臨界を達成し、最初の「原子の火」をともすことに成功した。
この協定では、使用済み核燃料は米政府に返還することが決められていた。元外交官で、原子力委員会委員長代理を務めた遠藤哲也氏は「原子力には『二重人格性(二つの面)』がある。平和利用の側面と核開発という軍事転用の側面だ。日本は原子力の平和利用を夢見たが、米国は核兵器の拡散を懸念し、協定を通じて規制をかけた」と説明する。
六八年には日米原子力協定が結ばれた。この原子力協定では、国内における使用済み核燃料の再処理、つまりプルトニウムを取り出すことが認められた。返還しないで他国に輸送することも容認されたが、一回ごとに、米国の承認が必要だった。
状況を変えたのは、八八年に新たに発効した現在の原子力協定だ。核燃料サイクル事業を進めたい日本の要求が通り、一回ごとの米国の承認を不要とする「包括的事前同意」に変更された。
この協定を結ぶときの交渉で日本側の首席代表を務めた遠藤氏はこう説明する。
「包括的事前同意は日本だけに対する特例措置だった。米国が冷戦構造の中で日本の存在を重んじたほか、当時の中曽根康弘首相とレーガン大統領の仲もあって認められた」
当時、日本が軍事転用をしないという信頼関係も米国と築けていた。だが、日本はいま、インドと原発を軍事転用しないという信頼関係を築けているのか。
実は、米国は既に、インドと原子力協定を結び、使用済み核燃料の再処理を容認している。遠藤氏は「インドは核拡散防止条約(NPT)への加盟を求められても聞く耳を持ってこなかった。対話のテーブルに着くよう、日米共同歩調で手を打とうとしているのではないか」とみる。
その上で、「日米協定では安全保障上の問題や核不拡散の懸念が生じた場合、包括的事前同意を停止する取り決めがあった。インドとの協定にも取り込むべきだ」と歯止めを求める。
明治大の勝田忠広准教授(原子力政策)はそもそもの日本の姿勢を問題視する。「いま、二政府が原発輸出にしっかりしたビジョンを持っているか疑わしい。産業界の意向第一、お金の問題として動いているようにしか見えない」と指摘する。輸出先の国々における原発の保守、点検の問題を
挙げ、「安全性をどう確保するのかという議論が乏しいように思えてならない」と危ぶむ。
「核兵器の原料となるプルトニウムを手にしやすい状況をなぜつくるのか。他の国が同じ条件の原子力協定を求めるケースが出てきて、核拡散を促すことになりかねない。広島と長崎の原爆投下と福島第一原発事故を経験した日本が果たすべき役割から大きくかけ離れている」と、原子力協定の締結では厳しい規制を設けるように求めた。
日印原子力協定「NO」
核兵器増産 加担しないで
インドの反核運動リーダー クマール氏
(東京新聞【こちら特報部】ニュースの追跡)2015年11月29日
安倍晋三首相が十二月にインドを訪問し、インドへの原発輸出を可能にする日印原子力協定交渉の進展が予想されている。そんな中、インドの反核・反原発運動のリーダーが来日し、核兵器増産への危機感を訴え、協定阻止に向け日本国民の協力を求めた。
(沢田千秋)
日本の有権者に阻止訴え
来日したクマール・スンダラム氏(三七)は、インド国内二百の市民団体や有識者、弁護士、芸術家らが参加する「核軍縮と平和のための連合(CNDP)」(本部・デリー)の事務局長を務める。CNDPは一九九八年五月のインドの核実験をきっかけに設立された。
クマール氏は「現在、インドでは沿岸、内陸の八ヵ所に原発建設計画があり、反対運動が起きている。フクイチ(福島第一原発)事故の前は、農民や漁民の土地を奪う政府の強引な手法や環境破壊が反対の理由だった。事故後は放射能汚染への恐れや安全対策の不備が主要な反対理由になった」と語る。
福島原発事故の様子は、インド国民の多くがテレビで見たという。インド政府は事故の三日後、「福島で起きたのは原発事故ではなく単なる化学事故」「放射能は出ていない」と国内向けに宣言した。「すでに米国やフランスからの原発輸入計画が進んでおり、計画を止めたくないインド政府は国民にウソの情報を流した」
それでも、事故によって原発への不信感を募らせたインド国民は激しい反対運動を展開した。「フクイチ事故は世界で初めてテレビで中継された原発事故だろう。原発建設予定地の住民たちは、人口密度が高い上に、政府の避難計画、安全対策も不十分なインドで同じことが起きたら、もっと恐ろしいことになると思い、必死に抵抗した。シャイダフールという町では運動を制圧に来た警察の発砲などで三人の死者が出た」
インド政府はなぜ、原発建設の強硬姿勢を貫くのか。クマール氏は「インド政府は電力供給という建前で原発を正規に輸入することでウラン燃料も輸入できる。そうなれば、国際的な監視の目が届かない国内産ウランを核兵器増産に向けられる。南アジアでの核兵器開発競争での勝利、それがインド政府の本当の目的だ」と断じる。
インドは包括的核実験禁止条約(CTBT)にも核拡散防止条約(NPT)にも非加盟のため、長年、世界の原子力貿易から外されていたが、○八年、米国と原子力協定を締結してから潮目が変わった。米国に続き、フランス、イギリス、カナダ、ロシアなどとも結んだ。
「フクイチ事故後、先進国では原発の新設が難しくなり、欧米などの原子力産業が復活のための新市場として目を付けたのがインドだった。インド市場は大国の『原発ルネサンス(復活)』の最高の舞台となりつつある。万が一の事故が起きた時、犠牲となるのは市民だ」
インド市場をめぐり、大国の経済、外交上の思惑が入り乱れる様は、大都市発展のために地方が収奪された日本の原発政策を想起させる。クマール氏は訴える。「フクイチ事故を起こした日本がなぜ原発を輸出するのか。日本がインドと原子力協定を結べば、大国として最後のお墨付きを与え、インドの核兵器増産にも加担することになる。安倍首相とインドのモディ首相は軍事的結び付きを強化しているが、市民はそんなことは望んでいない。どうか、日本の有権者の力で協定を結ばないよう止めてほしい」
日印原子力協定阻止 東京集会
(4) クマール・スンダラム [ 2015.11.25 ]
https://youtu.be/chCRu6wHfy0