現在の天地真理が悲惨・老後破産の壮絶な人生
https://youtu.be/rzj04LUWfM4
急増する「下流老人」
(東京新聞【こちら特報部】)2015年10月25日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2015102502000132.html
生活保護基準と同じ水準か、それ以下で暮らす「下流老人」が問題になっている。老後はお金の心配をせず悠々自適に暮らす、というイメージはすでに過去のもの。年金だけでは暮らしていけない高齢者が数多くいる。認知症や病気で介護が必要になれば、子どもを巻き込み一家が共倒れになるケースもある。事態は深刻化の一路だ。下流老人に陥る懸念は現役世代にもつきまとう。
(白名正和)
減る年金、増える医療費負担…
暮らし 生活保護並み
「私も下流老人です」
年金アドバイザーとして高齢者の生活相談を受けている全日本年金者組合東京都本部の芝宮忠美さん(七三)はそう切り出した。
外資系のホテルマンとして働いていたが、約三十年間の海外勤務時は年金未加入の扱いになり、自身の厚生年金は七万円。妻が腎不全で人工透析を受けているため、月十万円の障害年金があり、夫婦合わせて十七万円で暮らしている。
都営住宅に住み、家賃は四千円と住居費の負担こそ軽い。だが、妻はデイケアに週二回、透析に週三回、病院に通う。その交通費に月約三万円かかる。さらに妻には食事制限があり、自身は半額になったスーパーの弁当などでしのいでも食
費に月六万円はかかる。
それだけではない。「妻は定期的に入院しなければならない。入院先から透析場までは看護師をタクシーに乗せねばならず、一回の往復で一万八千円。これも自己負担。貯金を取り崩して何とかしのいでいる」
芝宮さんは「高齢になれば、誰もが何かしらの病気をする。自分たちは例外ではない。もっと厳しい生活を余儀なくされている人もいる」と語る。
芝宮さんが過去に受けた相談事例を聞いた。
都営住宅で生活する七十代の夫婦がいた。子どもはいなかった。夫は現役時代に自営の塗装業者だったため、二人とも国民年金を受給していた。月額はそれぞれ五万円ずつ、計十万円。都営住宅は家賃が収入に応じて減額され、この夫婦の場合は八千円たった。
だが、夫が亡くなり、妻の生活は一変する。世帯収入は半減し、生活費に回せるのは四万円強だ。「食費はどうしても一日千円はかかる。医療費も介護保険の自己負担分ち払えなくなってしまう」(芝宮さん)
厚生年金を受け取っていても安心ではない。六十五歳の男性は定年退職と同時に自らの浮気が原因で、熟年離婚した。月額二十三万円の年金は等分された。
半額になった年金から家賃を負担すれば、生活はギリギリに。公営住宅に入りたくても希望者が多く、百倍を超える倍率になることは珍しくない。持ち家に残っても、一人で十一万円強では、病気になれば、途端に生活に行き詰まる。
同じように都営住宅に暮らす五十代の女性は、認知症の九十代の母親を介護している。親のことで放置はできない。介護のため、正規雇用の事務職の仕事を辞めた。収入は母親の年金、月約五万円だけ。女性は「生活保護は受けたくない」と話し、蓄えを切り崩しながら生活している。
仮に特別養護老人ホーム(特養)に入れるお金があったとしても、特養側の受け皿が足りず、全国で約五十二万人が入居待ちだ。
親の介護で子の世代共倒れ懸念
「誰にでも起こりうる」
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、全国の約五千四十万世帯のうち、高齢者の単身、または高齢者夫婦は約千二百二十万世帯(全体の24・2%)。三十年前に比べ、五倍以上に増えた。高齢者世帯の56・7%が、公的年金だけを頼りに生活している。
では、高齢者の生活にはいくらかかるのか。総務省の二〇一四年の家計調査年報によると、六十歳以上の家庭で税金を差し引いた平均的な可処分所得は月約十四万七千円。これに対し、同じく税金分を除いた平均的な支出は約二十万七千円に上る。単純計で、一ヵ月六万円の赤字だ。
不足分を貯蓄で補うとすると年七十二万円、十年で七百二十万円かかる。六十五歳で老後を迎えた時点で貯蓄が一千万円あったとしても、十三年で底をつき、男性八十歳、女性八十六歳の平均寿命に達する前に生活が困窮してしまう。
年を取るごとに疾病の恐れは高まり、さらに支出を余儀なくされる。こうなるとますます生活は苦しくなり、下流化していく。
その受け皿になっているのが生活保護だ。今年七月時点で受給する全世帯は約百六十二万世帯だが、このうち49・3%にあたる約七十九万八千世帯が高齢者世帯だ。高齢者世帯だけが二年前に比べ、八万三千世帯も増え、生活保護世帯数が過去最多を更新し続ける要因となっている。
「下流老人は現在の高齢者だけでなく、これから老後を迎える人も含め、誰が陥ってもおかしくない」
下流老人という言葉をつくり、同名の著書を六月に出版したNPO法人・ほっとプラス代表理事で、聖学院大客員准教授の藤田孝典さんはそう指摘する。
厚生労働省が一四年に実施した年金の財政検証によると、モデル世帯の年金給付水準は同年度時点で、現役時代の手取り額の62・7%だった。ところが四〇年度ごろには、仮に経済の高成長を続けたとしても50%前後に減少する見込みだという。受け取る額は約二割減ることになる。
藤田さんは「いま六十五歳で、平均的な四百万円の年収があった人が受け取れる年金は月額十六万円ほどだが、試算では今後、月十三~十四万円になる。これは生活保護費のうち、家賃と生活費を合わせた額と同じ。医療費などが無料となる分、生活保護の方が有利になる」と解説する。
ただ、これはまだいい方かもしれない。労働人口の四割近くを占める非正規雇用の人々はボーナスや昇給がなく、国民年金に入るケースが多いが、現時点では満額でも一人月約六万五千円しか受給できない。
加えて、身内の誰かが下流化すれば、家族にも影響が及びかねない。「経済的に立ちゆかない高齢者を扶養すれば、子ども世代に負担がかかり、共倒れする恐れが生じる。若い世代が消費を控えたり、子どもを持つことを躊躇してしまうのは当然。下流老人は特定の世代だけの問題ではなく、一億総老後崩壊につながる問題だ」(藤田さん)
「現役時代から人生プラン設計を」
これから事態はますます深刻化していく。どう向き合ったらよいのか。
藤田さんは現役時代のうちからもらえる年金額を計算し、老後の人生プランを立てておくことを求める一方で、年金制度の見直しも必要だと訴える。
「このままでいくと、非正規雇用や年金額が少ない国民年金の受給者が、生活保護に流れ込んでくるのは明らか。そうなってしまう前に、働けなくなった高齢者には一定額を配る最低保障年金のような仕組みを導入しないと、悲惨な事態は免れないだろう」
NHKスペシャル2005年9月24日
ひとり 団地の一室で
https://youtu.be/m3TlR10joXM
千葉県松戸市にある常盤平団地。3年前、その一室で死後3か月経った男性の遺体が見つかった。男性は当時50歳。病気で職を失ったあと家族と別居し、一人で暮らしていた。
いま、全国各地の団地では、誰にも看取られずに亡くなる、いわゆる“孤独死”が相次いでいる。常盤平団地でもこの3年間で21人が孤独死した。その半数が40代、50代そして60代前半までの比較的若い世代の男性だった。社会や家族とのつながりを失った人たちが、老後を迎える前に、亡くなっているのだ。
番組では、団地に去年できた「孤独死予防センター」にカメラを据えて“孤独死”の実情を追い、団地に凝縮された日本の現実を見つめる。
NHKスペシャル2013年1月20日
「終(つい)の住処(すみか)はどこに 老人漂流社会」
いま、ひとりで暮らせなくなった高齢者が、病院にもいられず、介護施設にも入れず、行き場を失っています。
https://youtu.be/niCokOEPrd8
『歳をとることは罪なのか―』
今、高齢者が自らの意志で「死に場所」すら決められない現実が広がっている。
ひとり暮らしで体調を壊し、自宅にいられなくなり、病院や介護施設も満床で入れない・・・「死に場所」なき高齢者は、短期入所できるタイプの一時的に高齢者を預かってくれる施設を数か月おきに漂流し続けなければならない。
「歳をとり、周囲に迷惑をかけるだけの存在になりたくない…」施設を転々とする高齢者は同じようにつぶやき、そしてじっと耐え続けている。
超高齢社会を迎え、ひとり暮らしの高齢者(単身世帯)は、今年(2013年)500万人を突破。「住まい」を追われ、“死に場所”を求めて漂流する高齢者があふれ出す異常事態が、すでに起き始めている。
ひとりで暮らせなくなった高齢者が殺到している場所のひとつがNPOが運営する通称「無料低額宿泊所」。かつてホームレスの臨時の保護施設だった無料低額宿泊所に、自治体から相次いで高齢者が斡旋されてくる事態が広がっているのだ。
しかし、こうした民間の施設は「認知症」を患うといられなくなる。多くは、認知症を一時的に受け入れてくれる精神科病院へ移送。
症状が治まれば退院するが、その先も、病院→無届け施設→病院・・・と自らの意志とは無関係に延々と漂流が続いていく。
ささいなきっかけで漂流が始まり、自宅へ帰ることなく施設を転々とし続ける「老人漂流社会」に迫り、誰しもが他人事ではない老後の現実を描き出す。さらに国や自治体で始まった単身高齢者の受け皿作りについて検証する。その上で、高齢者が「尊厳」と「希望」を持って生きられる社会をどう実現できるのか、専門家の提言も交えて考えていく。
NHKスペシャル 2014年9月28日
「老人漂流社会 “老後破産”の現実」
http://dai.ly/x26xown
高齢者人口が3000万を突破し、超高齢社会となった日本。とりわけ深刻なのが、600万人を超えようとする、独り暮らしの高齢者の問題だ。その半数、およそ300万人が生活保護水準以下の年金収入しかない。生活保護を受けているのは70万人ほど、残り200万人余りは生活保護を受けずに暮らしている。
年金が引き下げられ、医療や介護の負担が重くなる中、貯蓄もなくギリギリの暮らしを続けてきた高齢者が“破産”寸前の状況に追い込まれている。
在宅医療や介護の現場では「年金が足りず医療や介護サービスを安心して受けられない」という訴えが相次いでいる。自治体のスタッフは、必要な治療や介護サービスを中断しないように、生活保護の申請手続きに追われている。
“老後破産”の厳しい現実を密着ルポで描くとともに、誰が、どういった枠組みで高齢者を支えていくべきか、専門家のインタビューを交えながら考える。
そもそも総研2015年8月27日
そもそも“一億総中流”からなぜ“下流老人”が続々生まれているのか?
http://dai.ly/x33cwir
かつては“一億総中流”と呼ばれた日本でしたが、現在では「6人に1人が貧困状態にある」と言われています。65歳以上の高齢者になると、その確率は「5人に1人」にまで高まるそうです。
「半貧困ネットワーク 埼玉」代表の藤田孝典さんは、「収入が著しく少ない」「十分な貯蓄がない」「頼れる人間がいない」という3条件に該当する高齢者を「下流老人」と命名し、警鐘を鳴らしています。
「現状が改善されなければ、この先9割の高齢者が“下流化”する」「もうすでに、コンビニの廃棄弁当をもらいに行ったり、野草をとって食べている人たちもいる」と藤田さんは指摘します。
半貧困ネットワークには、「月5万円程度で暮らしている人たち」が生活相談に来るそうですが、最も格差が大きいのが高齢者世代だといいます。元々貧しかった人だけが下流老人になるわけではなく、若い頃は年収300~400万円程度あった人が、頼れる近親者や知人がいないことで下流化する場合もあるといいます。
「子どもに頼ろうにも、子どもの方も下流化していて頼れない」といったケースもあるそうです。
下流老人が増える反面、高齢者の保有資産はかなりの額に上るそうです。「1598兆円」と言われる日本の“個人金融資産”のうち、60歳以上の方の資産はじつに「863兆円」にも上るといいます。こうした現状を受けて藤田さんは「お金を持っている高齢者が資産を分配するなどして助け合うことが必要」と語ります。
そもそも総研2015年10月1日
そもそも“下流老人”に転落するきっかけは何なのだろうか?
http://dai.ly/x38ad07
人生の“選択”を誤ったことで下流老人となったお二人
8月に放送して反響を呼んだ「下流老人」の問題。下流老人とは「収入が著しく少ない」「十分な貯蓄がない」「頼れる人間がいない」という3つの悪条件が重なった高齢者のことを言うのだそうです。今回は「もともとは“中流”だった」というお二人にご登場いただき、「下流に転落してしまった理由」を伺いました。
一人目は、森實桂子(もりざね・けいこ)さん(73)です。30代の頃には「自宅に加えて、老後に備えるための賃貸用不動産まで所有していた」という森實さんですが、現在は家賃5万円のマンションで一人暮らしで、国民年金の不足分(およそ6万円)を貯金を切り崩して補う生活をしています。
夫婦で会社を経営していた頃は裕福だった森實さんでしたが、34歳で離婚した際、財産分与で「家か会社か」という選択を迫られ、会社を選んだところから運命が変わり始めました。40歳で再婚したものの57歳で再び離婚となり、同じ年に財産だった会社も倒産してしまったのです。
「もしも離婚していなかったら中流のままでいられたと思いますか?」という玉川徹さんの問いに、森實さんは「今よりは良いと思う」と答えておられました。
二人目は、かつて大手損害保険会社に勤めていたという川村貞男(かわむら・さだお)さん(74)です。現在はマンション管理人の仕事と国民年金で20万円ほどの収入があるそうですが、「いずれ働けなくなることを考えると不安」と語っておられます。
川村さんが下流に転落した原因は「転職の失敗」だったそうです。40代の時に「脱サラ」して友人の会社に移ったものの上手くいかず、やがて退職。その後に離婚をして、養育費のためにマイホームも売却したそうです。
60歳になる頃には、10カ月ほど路上生活も体験したといいます。生活保護を受けたのをきっかけに立ち直り、現在の生活に至ったそうですが、「かつての自分は自信過剰でおごりがあった。最初の会社で地道に働いていれば、下流に転落することはなかった」と川村さんは自己分析をしていました。
お二人の取材を終えた玉川さんは「人生の選択を誤ると、今の日本では“下流老人”も不思議ではない」という結論に達しました。
何が餓死した31歳女性の生活保護を遠ざけたのか
生活困窮者を見捨てる「追い返す」だけの対応
池上正樹(週刊ダイヤモンド)2013年11月27日
http://diamond.jp/articles/-/45141
NNNドキュメント2006年1月16日
ニッポン貧困社会~生活保護は助けてくれない
https://youtu.be/K7JOftqBcZY
NHK・クローズアップ現代2012年5月29日
もう病院で死ねない ~医療費抑制の波紋~
http://dai.ly/xwxh75
過去最悪の16.3%。国が発表している「子どもの相対的貧困率」は年々悪化し、今(2014年12月28日放送)、子どもの6人に1人、およそ300万人が国が基準としている“貧困ライン”(一人世帯122万円未満)以下で暮らしている。
今年(2014年)8月、政府は「子供の貧困対策に関する大綱」を閣議決定し、関連法の整備に乗り出すなど、国をあげた課題となっている。
「子どもの貧困」の背景にあるのが「女性の貧困」
日本のひとり親世帯の8割以上が母子家庭だが、全体の半数以上が貧困ライン以下の状態にあるといわれている。そうした世帯で育った子ども、中でも女性は、成人しても貧困状態に陥ることが多く、さらなる連鎖を生む悪循環が起きているのだ。
番組では、現場の克明なルポを通して、連鎖の実態や社会保障制度の課題を探る。識者との議論も交えながら、次の世代へ「貧困の連鎖」を生まない社会のあり方を考えていく。
政府は、2020年度までに基礎的財政収支を黒字化する目標の達成に向けて経済財政諮問会議の下に有識者会議を設置して、今後5年間の歳出を抑制するための実行計画の検討を進めていて、このほど有識者会議がその案を取りまとめました。
それによりますと、最も歳出規模が大きい社会保障費を巡って、医療費の自己負担に上限を設けている高額療養費制度を来年末までに、現在、自己負担が原則1割になっている75歳以上の高齢者の医療費の窓口負担を3年後までに、それぞれ見直すことを目標に掲げています。
「下流中年」激増の危機 氷河期世代も40代
(東京新聞【こちら特報部】)2015年11月25日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2015112502000164.html
パートや派遣社員など非正社員の割合が初めて労働者の4割に達した。中でも深刻なのは、就職氷河期世代などで「中年フリーター」とも呼ばれる人たちが激増していることだ。低賃金で社会保険に未加入の人も多く、生活が破綻すれば、一気に「下流中年」となる恐れもある。生活困窮者層の増大は、社会全体にツケとなって跳ね返る。
(木村留美、池田悌一)
中年フリーター270万人時代
月給差2倍にも
厚生労働省が今月四日に発表した「就業形態の多様化に関する総合実態調査」。パートや契約社員、派遣社員など正社員以外の労働者の割合は40・O%(昨年十月一日時点)で、一九八七年の調査開始以来、初めて四割に達した。
パートの増加などの要因もあるが、とりわけ深刻な問題となりつつあるのは、働き盛りの世代で非正規社員が急増していることだ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの推計によると、三十五歳~五十四歳の非正規雇用の職員・従業員(学生と既婚女性を除く)、いわゆる「中年フリーター」は二〇〇〇年に百六万人だったのが、一五年には二百七十三万人まで増加。非正規の一割以上を占める。
一九九〇年代後半から二〇〇〇年代前半の「就職氷河期」に学校を卒業したが、就職口がなく、正社員になれないままずっと非正規でやってきた人たちが、続々と四十代を迎えている。もともとは正規で働いていたものの、リーマンーショツク後の不景気でリストラされたことをきっかけに非正規に変わらざるを得なかった人もいる。
正社員と非正規社員の収入の差は歴然としている。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(一四年)によると、二十~二四歳では正社員が月額二十万二千四百円で、非正規は十七万百円とその差は三万円ほど。だが、年齢が上がるにつれ格差は拡大。五十~五十四歳では、正社員は三十九万八千七百円なのに対し、非正規が十九万七千円と差は二倍にまで広がる。非正規は年を重ねても給与の上昇は見込めない。
非正規にとっては、アベノミクスが目指す賃上げの恩恵も薄い。東京都の最低賃金が今年十月に十九円引き上げられ時給九百七円となるなどわずかに上昇傾向にあるが、非正規労働者を支援する労働組合「プレカリアートユニオン」の清水直子執行委員長は実態は「最低賃金に張り付いている状況だ」と話す。
厚生労働省の毎月勤労統計調査(確報、従業員五人以上の事業所)では、一四年
度の正社員などフルタイムで働く一般労働者の給与総額が一・O%増だったのに対し、パートタイム労働者はO・4%増にとどまった。
社会保障に目を向けても、非正規では雇用保険の加入こそ七割近くあるが、健康保険や厚生年金の加入は五割強にとどまる。低賃金で貯金もない状態で、病気や事故、親の介護など不測の事態が起きた場合、一気に生活の困窮に陥る恐れがある。 ・
社会にツケ
景気停滞
非正規4割改正派遣法で悪化も
まず低賃金でも暮らせる仕組みを
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの藤田隼平研究員は「年齢が上がるほど非正規から正規に転じるチャンスは少なくなっていく」と中年フリーターの厳しい現実を指摘。「企業はコストが低い非正規社員を増やしたい。今後も非正規社員の増加が緩やかになることはあっても、減ることはないだろう」とみる。
現時点で正社員の立場にいる人も人ごとではない。「今のところは景気がいいが、いったん景気が悪くなると再びリストラなどが起こり、非正規に転じざるを得ない人が出てくる。いったん非正規になれば、なかなか正社員には戻れない」
「下流老人」の著書がある藤田孝典・聖学院大客員准教授は「いわば『下流中年』で、下流老人の予備軍とも言える。深刻な状況だ」と危ぶむ。
NPO法人・ほっとプラスの代表理事でもある藤田准教授はこれまで、中年フリーターらの悩みにも耳を傾けてきた。結婚して家を買い、子どもを持つといった「これまでの日本社会で普通だったことが享受できなくなった」ことから、自分はダメなんだと思い込み、うつ病になったり自殺したりするケースがあったという。
就職氷河期に卒業時期を迎えて正社員から漏れ、そのまま中年フリーターとなった人たち。田中俊之・武蔵大助教(男性学)は「ここ二十年、いずれ景気が良くなれば正社員の道もあるだろうと考えられてきた。でもいつまでたっても景気は回復せず、いつの間にかフリーターが中年世代に入ってしまったのが現状」と説明する。
九月に施行された改正労働者派遣法では、これまで派遣期間に上限がなかった専門職二十六業務が撤廃された。派遣期間の上限は一律三年となり、企業は三年ごとに人を入れ替えれば、無制限に派遣社員を使えるようになった。
派遣法では、派遣会社に対し、派遣先に直接雇用の依頼をすることなどが義務付けられたが、あくまで「お願い」ベース。直接雇用してくれる保証はない。
藤田准教授は「改正派遣法により、生涯派遣でしか生きられない人は確実に増える」とみる。
働き盛りの世代で、非正規が増大すれば、どうなるか。消費は落ち込み、景気はいつまでたっても上向かない。結婚したくてもできないから少子化も進む。生活保護を受けざるを得ない人も増えるだろう。社会全体が大きな悪影響を受ける。藤田准教授は「結果的に国民の税負担は増すばかりで、そのツケは未来の若い世代が負うことになる」と警告する。
ではどのような対策が求められるのか。
大内裕和・中京大教授(教育学)は「日本の企業は、高校や大学を卒業する際に新規一括採用する土壌が根づいており、中途入社のハードルが高い。これをあらためるべきだ」と指摘する。
安倍晋三首相は二十四日、最低賃金を年3%をめどに引き上げるよう指示、将来的には千円を目指すと表明したが、大内教授は「千五百円程度まで引き上げるべきだ」とする。
大内教授は「政府は規制の強化によって、非正規の増加に歯止めをかけなければいけない」と指摘する。
「社会保険への加入を促し、自立を可能にする社会的条件を整えることが重要だ」と提案する。
九月に同一労働同一賃金推進法が成立したが、浸透するかは不透明だ。
藤田准教授は「国は将来の税負担を増やさないための先行投資と考え、たとえ低賃金でも暮らせる仕組みづくりを考える必要がある。住宅の家賃補助や医療費の窓口負担の無償化な
ど、やれることはいくらでもある。十年、二十年後に下流老人を生み出してからでは遅い」と話した。
年収200万円以下のワーキング・プアー最多1139万人
(しんぶん赤旗)2015年11月18日
【大竹まこと×金子勝×室井佑月】
〈年金株式運用〉世界同時株安で9.4兆円の損!誰も取らない責任
https://youtu.be/9T8Z9NuvkSU
時事評論
谷本諭
アベノミクスの欺瞞つく
国民運動と民主主義の前進語る
文化・学問(しんぶん赤旗)2015年11月25日
戦争法を強行した安倍政権は、国民の怒りをかわすかのように、アペノミクスの「第2ステージ」「新3本の矢」を打ち出しました。しかし、今月発表された7~9月期のGDP(国内総生産)は2期連続マイナスを記録。論壇誌でもアベノミクスの是非が根本か
ら問われる状況となっています。
政府宣伝覆し
危険性を説く
安倍晋三首相は『文芸春秋』に「『一億総活躍』わが真意」を掲載し、自らの経済政策を売り込みました。株価上昇や米アップル社の研究開発拠点の誘致など「成果」を語ろうとする首相ですが、論考の大半は、金融緩和、消費税増税、「一億総活躍」の標語、TPPなどに対する「批判」への弁明に費やされています。
こうした政権側の宣伝文句を全面的にくつがえすのが金子勝(慶応大学教授)「また大嘘が始まった」(『世界』)です。金子氏は、「新3本の矢」がかかげる「GDP600兆円」「希望出生1.8」「介護離職ガロ」の目標と、安倍政権が進める非正規雇用の拡大、介護報酬の削減、法人税減税などの政策が相反していることを指摘。もとの「3本の矢」についても、GDPのマイナス、家計消費の傾向的低下、輸出の減少、財政赤字の悪化などでことごとく破綻し、「官製相場」による株価吊り上げと内部留保の滞留だけが続いていることをデータと実態から告発します。長引く停滞に疲れ、少しでも経済を良くしてほしいという「選挙民の願い」に乗じて「戦前回帰の体制づくり」を進めるのが、「安倍政権の危険性」だという、同氏の警句が重く響きます。
アベノミクスについては、『週刊エコノミスト』(17日号)も「景気回復のウソ」と題して特集を掲載しました。大企業の決算は良好なのに、中小企業の景況感、収益、資金繰りなどの指標は軒並み悪化。賃金は上がらず、個人消費も伸び悩む現状を、同誌は、富裕圜の富が低所得者にしたたり落ちる「トリクルダウン」が「いまだ起こらず」と結論づけます。
藤田孝典(NPO法人ほっとプラス代表理事)、今野晴貴(NPO法人POSSE代表理事)の対談「下流老人とブラック企業を解決せよ」(『文芸春秋』)も、アペノミクスの「トリクルダウン」が落ちてこないという事実を導入口に、プラツク企業や違法派遣の横行、低所得高齢者の激増や老後不安の深刻化など、貧困問題を語り合います。ここで両氏が、社会保障拡充こそ将来の負の遺産を減らし、働ける人・納税者を増やして、経済成長に貢献すると指摘しているのは重要です。
エコノミストの水野和夫氏も、『サンデー毎日』(22日号)誌上で、アペノミクスの大問題は「再分配の設計」がまったくないことだとし、「トリクルダウン理論は、夢か幻だった」と断じています。
注目あつめる
国民連合政府
戦争法反対の国民運動の広がりを受け、各分野の有識者が「民主主義」について語りだしています。
東京大学名誉教授の上野千鶴子氏は、『atプラス』(26号)誌上の対談のなかで、「正しいことは正しい」と堂々と主張する空気が日本全国に広がったことを「ひとつの転換」と表現。「私も変わりました」といいながら、かつて運動に冷笑的だった学者・知識人がいかに変化したかを論じています。
小熊英二(慶応大学教授)・宇野重規(東京大学教授)「民主主義のこれからについて話そう」(『中央公論』)も、戦争法反対や脱原発のデモの広がりを「日本の民主主義の前進」と評価し、それに見合った政党、システム、制度の構築が必要と主張しています。
こうしたなか、山口二郎・法政大学教授(『週刊東洋経済』7日号)、亀井静香衆院議員(『テーミス』)、倉重篤郎・元「毎日」論説委員(『サンデー毎日』15日号)らが、日本共産党が提案した「国民連合政府」構想を評価するメッセージを発信し、『週刊朝日』(97一日号)が、不破哲三前議長のインタビューを含む「日本共産党大研究」の特集記事を組んでいるのは、注目すべき状況といえるでしょう。
(たにもと・さとし)
労働政策の戦後70年と「新自由主義」
牧野富夫 日本大学名誉教授
より
…20世紀になって資本主義は独占資本主義の段階に入り、それがさらに第二次世界大戦後には国家独占資本主義=現代資本主義とよばれるステージにすすんだ。
そこでは、国家が生産・流通・消費ほか国民生活のさまざまな面にわたって関与・介入なしには、資本主義社会の管理・運営ができないのである。いくら国民が「自助・自立」で生活しようと思っても、一部の支配階級は別として、「自助・自立」ができない社会になってしまったのである。「自助・自立」論と「自己責任」論は裏腹の関係にある。「自助・自立」ができない人は、ホームレスになったり、自殺したりして「自己責任」をとらされる。国民の多くがそんな状態に追い込まれたら、その社会そのものが破綻に追い込まれる。
こうした歴史上の現実=必然の社会を無視して、「市場原理主義」の”哲学”にもとづき「自助・自立」そして「小さな政府」を主張し、その実践を迫っているのが「新自由主義」であり、その実践者にほかならない。かれらはテロリスト顔負けの破壊主義者である。…
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身に迫る辛い現実…これらは明日の・未来の、私たちの姿かもしれない…(´・_・`)
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