「亡国のTPP」
安倍政権の暴走(上)
公約破り交渉旗振り役
軍事も経済も対米従属
(しんぶん赤旗)2015年10月7日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-10-07/2015100701_08_1.html
環太平洋連携協定(TPP)交渉は、参加12カ国の閣僚会合が当初の日程を再三延長した上での「大筋合意」となりました。5年半越しの交渉。日本は率先して大幅な譲歩を重ねながら交渉の旗振り役を果たしました。そこにあるのは、日米同盟を優先し、日本の国民の利益と経済主権をアメリカの多国籍企業に売り渡す「亡国政治」の姿でした。
安倍首相がTPP交渉入りを表明したのは2013年3月のことでした。交渉の中では、「TPP反対」の公約を破り、農産物重要5品目(米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖)を守るとした国会決議をないがしろにしてきました。さらに、TPP交渉の過程はいっさい国民に知らせない秘密主義を貫き、民主主義を踏みつけにしてきました。
「大筋合意」へ
今回の閣僚会合では、交渉を妥結に導く旗振り役を果たしました。「最後の最後だ」と位置付けた甘利明TPP担当相。現地からの報道によると、各国の利害が対立し交渉が行き詰まると「某国は過大な要求をしている。妥当な要求に頭を冷やしてもらわなければ」と交渉国をおさえつける姿勢を示しました。交渉が最終盤にさしかかると「全体会合は最終段階にあるため、ゲームはやめて」と呼び掛けました。率先して「国益」を投げ捨てた日本が、「国益」をかけた他国の交渉を「ゲーム」呼ばわりし、「大筋合意」の舞台づくりにまい進したのです。
TPPは、モノの関税だけではありません。投資の自由化や知的財産、電子商取引、国有企業の活動、環境問題など幅広い分野で多国籍企業に有利な経済ルールをつくろうというもの。地域経済、雇用、農業、医療・保険、食品の安全など国民生活と営業にはかり知れない重大な影響を与えます。
この日本の姿勢の背景には交渉全体を主導するアメリカの存在がありました。米オバマ大統領は就任1年目の2009年に「アジアの成長を取り込む」として交渉参加を表明。米通商代表部(USTR)はアメリカの多国籍企業に有利な貿易・投資のルール整備を目指してきました。オバマ大統領は、今年1月以降、「中国のような国ではなく、米国が国際ルールを築く」と再三にわたって強調してきました。
日本売り渡す
今年4月。アメリカの上下両院合同会議の演壇に立った安倍首相は、日米同盟を「希望の同盟」と言い放ちました。その演説の中で「TPPには、単なる経済的利益を超えた、長期的な、安全保障上の大きな意義があることを、忘れてはなりません」「日米間の交渉は、出口がすぐそこに見えています。米国と、日本のリーダーシップで、TPPを一緒に成し遂げましょう」と決意を披歴していました。
国民の広範な反対を押し切って戦争法を強行した安倍内閣は、経済分野でもアメリカに日本を売り渡すTPPの「大筋合意」を推進。しかし、暴走政治を阻止する世論と運動が、とどまることはありません。
「亡国のTPP」
安倍政権の暴走(下)
各国民の利益脅かす
多国籍企業中心の秩序
(しんぶん赤旗)2015年10月8日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-10-08/2015100801_04_1.html
環太平洋連携協定(TPP)交渉の「大筋合意」を受け、オバマ米大統領は5日、「アメリカの価値観を反映した協定の交渉を完了した」と宣言しました。
TPPは、貿易協定の枠を越え、多国籍企業中心の経済秩序を目指す協定です。米国が主導し、米国基準を押し付けるものです。安倍晋三政権は、「米国とともに新しい経済圏をつくる」ため、国内経済への甚大な影響を度外視して、「大筋合意」を急いだのです。
TPPは、各国国民の利益と軋轢(あつれき)を起こさざるをえません。それを如実に示したのが、バイオ医薬品のデータ保護期間をめぐるせめぎ合いでした。
独占販売延長
製薬大企業の利益を担った米国は、現状で多くの国が5年、日本が8年のところ、米国基準の12年を要求。5年を望むオーストラリアや途上国と「大筋合意」寸前まで対立しました。しかし、最終的には、実質8年で決着し、米国は期間延長に成功したのです。
データ保護期間が長いほど、製薬大企業が高値で独占販売できる期間が長くなります。
他方、医薬品を主に輸入するオーストラリアは、医薬品供給制度(PBS)に基づき、財政支出で薬価を抑制しています。データ保護期間延長で安価な後発医薬品(ジェネリック)の市販が遅れるほど、財政支出や患者負担が増えます。オーストラリア公正貿易投資ネットワーク(AFTINET)によると、延長1年当たり、2億500万ドルの支出増になるとする試算もあります。
主権と衝突も
投資家対国家紛争解決(ISDS)の条項も、各国の主権と衝突する恐れがあります。進出先の国の制度や政策の変更で損害を受けたとする企業が、その国を相手取って訴訟を起こせる規定です。
TPPでは、ISDS条項の適用対象からたばこが除外されたと報じられていますが、米国のたばこ企業がオーストラリア政府を訴えた前例があります。オーストラリアと香港の投資協定のISDS条項に依拠したもので、国民の健康に配慮し、たばこの包装デザインを規制する法律を不服としています。
オーストラリアのエイジ紙(電子版)7月28日付によると、シンガポールで4年越しに行われている裁判のオーストラリア政府の費用が5000万ドルにのぼる見込みだといいます。
韓国で2012年11月、CO2排出規制の「低炭素車協力金制度」の導入が突如取りやめになったことも、米韓FTA(自由貿易協定)のISDS条項が影響したと指摘されています。
米国の消費者団体パブリック・シティズンは、国民の利益を脅かす内容が明らかになるにつれ、TPPは「大規模な反対に見舞われるだろう」と述べています。
(おわり)
(金子豊弘、北川俊文が担当しました)
TPP「大筋合意」識者はこう見る
ぶつかっているのは「国益」でなく
多国籍企業の利益と諸国民の利益
大妻女子大学教授 田代洋一さん
(しんぶん赤旗)2015年10月7日
延長に次ぐ延長の末の「大筋合意」です。米国の猪突猛進的な強引さ、日本の前のめり、その他の国々の強い抵抗がうかがわれます。拙速の「合意」には、残されたり、隠されたりした部分が多いでしょうし、後で問題が噴出するでしょう。
米国「二つの目的」
ここで、改めて環太平洋連携協定(TPP)の本質を確認する必要があります。
自動車部品の域内調達率では、40%程度を主張していた日本が55%で妥協し、バイオ新薬データの保護期間では、12年を主張していた米国が実質8年で妥協し、米日が大いに譲歩したかにみえます。しかし、それは織り込み済みのシナリオで、より大きな譲歩を他の国々から引き出すためのテコです。
米国はTPPで二つの目的を追求しています。第一は中国をにらんだ経済軍事同盟の土台を固めることで、日本も大いに同調しています。第二はTPPに囲い込んだ国々に徹底的に吸血し、自国の多国籍企業を肥え太らせることです。
バイオ新薬のデータ保護期間は、長くなればなるほど米日製薬資本の利益になりますが、国民の健康は害され、医療費の高騰を招きます。ISDS(投資家対国家紛争解決)条項は、国民の安全・健康・環境等を守るための国の規制が外国投資家にとって不利な場合、投資家がその国を提訴し、規制を取り払わせるというものです。著作権保護期間は、著作者死後70年に延長されました。
このように、TPPは、国益のぶつかり合いなどではなく、内外多国籍企業の利益と諸国民の利益のぶつかり合いです。
″農業の総安売り″
日本は、既に2014年4月の日米首脳会談、15年7月のTPP交渉閣僚会合で、牛肉、豚肉、米、麦、乳製品、甘味資源作物などの関税引き下げ等を約束してしまいました。これらの重要品目は、国会決議で「除外又は再協議する」とされたもので、明白な違反です。
加えて今回、ミニマムアクセス(最低輸入機会)の枠外での米・豪からの主食用米の輸入枠7万8400トンの設定、セーフガード(緊急輸入制限措置)の将来的撤廃などの要求に屈しました。まるで「日本農業の総バーゲンセール」です。
安倍政権がしたことは、自動車や製薬等の多国籍企業の利益を優先し、国民の安全・健康や農業を犠牲にすることにほかなりません。
「大筋合意」といっても、政府間のそれにすぎません。米国では、大統領が署名するには90日前に議会へ通知する必要がありますから、署名は年を越し、大統領選に突入しています。日本の国会批准はその後になり、参院選間近です。
こういう政治日程をにらみ、合意内容の詳細を国民にきちんと報告させ、国会決議を武器に、「安保法制」反対の力をTPPの批准阻止、国政選挙につなげていく必要があります。
国内外で批判の声
米国追従■恥ずべき取引
環太平洋連携協定(TPP)交渉が各国国民の強い反対を無視して「大筋合意」したことに対し、内外で厳しい批判の声が上がっています。
地方紙が抗議
日本では関税撤廃によって存亡の危機にさらされる農産物の産地を中心に、6日付の地方紙がいっせいに抗議の論陣を張っています。
北海道新聞は「これで国益を守ったと言えるのか。米国に追従し、農業分野で譲歩を重ねた秘密交渉たった」と指摘しました。「交渉過程で犠牲になっだの
は、日本の農業だ」とし、「食料基地の北海道は長期にわたり、大きな影響を受けるだろう」「広範な影響は、地域の衰退につながりかねない」と危機感を表明しました。
福井新聞は「小規模農業が淘汰されれば地域衰退に拍車が掛かる。来夏の参院選に向け安倍政権への風当たりも強まるだろう」と論評しました。
愛媛新聞は「交渉が非公開であることを言い訳に説明も尽くさず、なし崩し的に国民との約東をほごにしたことは、断じて容認できない」と強調しました。
宮崎日日新聞は「地方が犠牲になっていいのか。地方創生に逆行する愚策だと断言したい」、南日本新聞は「国民は『白紙委任』した覚えなどない」と安倍政権の暴走に抗議しました。
米・豪・NZでも
交渉で自国の要求をごり押しした米国でも労働組合や消費者団体が「合意」に反対しているほか、交渉参加国ではオーストラリア、ニュージ圭フンドの市民団体、活動家が声明を発表しました。
オーストラリア公正貿易投資ネットワークのパトリシア・ラナルド博士は6日、医薬品のデータ保護期間や「投資家対国家の紛争」(ISD)条項などで「恥ずべき取引を隠している」と秘密交渉を批判しました。医薬品の問題では「安価な後発医薬品を入手できることが1年遅れるごとに、医薬品給付制度に数億ドルを支出することになる」と述べ、医薬品に国が補助金を支出している同国の制度が危うくなると懸念を表明しました。
ニュージーランド・オークランド大学のジェーン・ケルシー教授は「われわれの権利を犠牲にする権利を誰が首相と貿易相に与えたというのか」と非難しました。「彼らが秘密取引で合意し、既成事実にしようとしても、われわれは安価な医薬品を入手したり、外国企業の投資を規制したり、自前の著作権法を決定したり、新たな国有企業を設立したりする権利を持っている」と主権を守るたたかいを呼びかけました。
ジェーン・ケルシー教授
:TPPをテコに日本に譲歩を迫る米の戦術に気づいて
https://youtu.be/1ugHI83ma4E
安倍政権はイカサマ麻雀にハメられた
注目の人直撃インタビュー
首藤信彦 TPP阻止国民会議事務局長
(日刊ゲンダイ)2015年10月16日
4日間も延長し、「大筋合意」したとされるTPP交渉。安倍首相は「国家百年の計」「国益にかなう最善の結果を得た」と悦に入り、大マスコミは〈巨大経済圏の誕生〉〈参加12力国の経済活性化〉と手放しでホメちぎっているが、真に受けたらダメだ。衆院議員時代からTPPの危険性を指摘し、米アトランタで開かれた閣僚会合をウオッチした反対派の急先鋒は、「安倍政権はTPPの罠(わな)に見事に引っかかり、タヌキの葉っぱを買わされた」と断じる。
米国、カナダ、メキシコはグル
-甘利TPP担当相が行司役として「大筋合意」をまとめたと伝えられています。
甘利大臣は行司すらやってませんし、日本は交渉なんかしていません。他国は2国間協議で丁々発止やりあっているのに、日本は蚊帳の外たった。日本の交渉団メンバーは所在なさげに街中をぶらついたり、近くのホテルでコーヒーを飲んで時間を潰すありさまだっだんです。アトランタ会合は猿芝纈つまりヤラセだった。開催前から内閣府が自民党議員や農業関係団体などに「必ず決めますから、ぜひ現地入りしてください」と触れ回っていたんです。おかしな話でしょう。自動車の原産地規制をはじめ、新薬のデータ保護期間や農産品など、問題は山積みなのに。前回のハワイ会合から2ヵ月足らず、たった2日間でまとまるなんて考えられない。「大筋合意らしきモノ」をつくりたかった日本の強い働きかけで形式的に集まっただけだったんです。
-アトランタ会合前に話はついていたということですか。
要するにジャンジャン総会だったんです。閣僚会見後に行われた渋谷内閣審議官によるブリーフィングで、内閣府と農水省が大量のペーパー資料を配布したことでも分かるように、東京でお膳立てしてあったんです。来夏の参院選での争点化を避けたい安倍政権は、一刻も早く「大筋合意」という形をつくって予算をバラまき、批判の矛先をそらそうと焦っていた。それで、7月に開催された前回のハワイ会合ですべてのカードを切って決着させようとしたんです。ところが、思わぬ誤算が生じた。乳製品の輸出拡大を狙うニュージーランドと自動車の原産地規制にこだわったメキシコです。日本から見れば、最後の瞬間に会合をブチ壊され、米国はそれを止めようともしなかった。結果、(ワイは見送り。9月21~22日にサンフランシスコで日本、米国、カナダ、メキシコの4力国が自動車をめぐって協議した。パニクつだ日本が折れて、部品の域内調達率を45%程度とすることになったのです。
-メキシコはなぜそこまで強硬姿勢を貫けたのでしょうか。
日本以外の8力国は裏で握っていたとみています。メキシコ政府の後ろには
カナダ政府がいて、さらにその後ろにはカナダ自動車労組(CAW)、全米自動車労組(U
AW)、米国の民主党-とつなかっている。つまり、メキシコの主張は米国案。日本はイカサマ麻雀に誘い込まれたようなものだった。だから、アッという間に決着し、アトランタ会合への流れができたんです。
-日本はカモにされたんですね。
メキシコ、カナダにもメリットがありますが、最も利を得るのは米国。米国の中小企業から部品をどんどん買え、ということなんです。米国はアトランタ会合がスタートする前にキックオフパーティーを開いていたのですが、その席でUSTR(米通商代表部)のカトラー次席代表代行は「米国の中小企業のためには、世界の貿易協定に空白をつくってはならない」「われわれは死に物狂いでTPPに取り組んでいる」と強調していました。TPPは対中国戦略の側面もある。中国がAIIB(アジアインフラ投資銀行)を創設して攻勢を強める一方、米国の衰退は誰の目にも明らか。米国は何としても身内の仕組みが欲しい。内容はともかくとして、形だけはつくって
おこうと。だからTPPは竜頭蛇尾で十分なんです。日本にとってTPPは農業には大ダメージだけれど、商工業は輸出増で潤うと思われているようです顯それは大間違いです。日本企業の輸出が増えるのではなく、米国の中小企業が日本にどんどん輸出してくるのです。日本政府が外国企業の活動を後押しすることも取り決められています。
会見で「おめでとう」と言った日本メディア
-日本の大マスコミはそうした情報を一切伝えず、お祝いムードに加担しています。
閣僚会見の質疑で「おめでとうございます!」と切り出した日本のメディアにはあきれました。その時点ではロクに情報を得ていなかったはずです。政府は交渉内容を明かそうとしなかったし、会合の会場は出入り禁止たった。渋谷審議官のブリーフィング資料でようやく概要が分かった程度でしょう。そもそも、日本では「大筋合意」に達したと報道されていますが、それ自体も怪しいものです。〈大筋合意したのか?〉と問われたUSTRのフロマン代表はイエスともノーとも答えず、言葉を濁していた。共同宣言もありません。それもそのはずで、貿易協定が一変する重要な会合だったにもかかわらず、3力国は代理出席たった。「大筋合意することに合意した」というのが真相に近いという感触です。
-日本からむしり取ろうとする米国も妥結を急いでいたのでは?
一言で言えば、TPPは米国が周到に仕掛けた罠なんです。TPPは表部隊と裏部隊がワンセット。表のTPPと裏の2国間協議は一体化されていて、TPPが発効しなくても2国間協議の合意事項は効力を発する仕組みになっているんです。米国はTPPがどう転んでもオイシイ思いができる。渋谷審議官の会見で配布されたペーパーにも記してありますが、日米間はあらゆる分野で交換文書をまとめている。例えば、自動車の非関税措置はTPP発効までに実行することになっています。
軍事オンチの日本は安保で揺さぶればヘタる
-日米並行協議ですね。いつの間にそんな不平等条約を押し付けられたのですか。
安倍首相は野党時代はTPPに反対していました。それなのに、政権に返り咲くと手のひらを返し、アベノミクスを進めるために米国にTPP参加を頼み込んだ。それで突き付けられたのが日米並行協議です。米国は日本との間に経済問題が持ち上がると、必ず安全保障問題で攻めてきます。50年代に起きた日米貿易摩擦は「糸と綱を取り換えた」と言われた。糸は繊維、綱は沖縄。繊維で譲歩して、沖縄返還に至ったのです。TPPでは中国の尖閣諸島進出や北朝鮮の核・ミサイル開発をネタに揺さぶられ、バンザイしてしまった。どれも架空の話で、まるでタヌ牛の葉っぱですよ。日本は米軍の力を借りなければ情報収集はおるか、自国防衛もままならない。軍事オンチだからシーレーン(海上交通路)の脅威をあおればたちまちヘタる、というのが米国の認識なんです。
-TPPはどこに向かっていくのでしょうか?
17年に誕生する米国の次期大統領が新体制を敷くまで進展しないでしょう。TPPは[参加6力国以上、GDP合計が85%以上]という条件をクリアしなければ発効できず、日米のどちらが欠けてもパーです。これから事務レベルで内容を詰め、2~3ヵ月以内に最終的な協定案をまとめて署名する。その後、議会で批准する手続きを踏まなければなりませんが、米国は署名90日前に議会への通知を求められる。急ピッチで作業が進んだとしても署名は来年1月。経済効果などの調査もありますから、審議入りは2月以降でしょう。その頃は大統領選の予備選挙が本格化していて、TPPどころではありません。
-有力候補とされる民主党のヒラリー・クリントン前国務長官やバーニー・サンダース上院議員は反対派。共和党のドナルドートランプ氏も猛批判しています。
過去にも、国連の前身の国際連盟や40年代のITO(国際貿易機構)など、主導した米国が議会に拒否されて参加しなかった例はいくつもある。米国はTPPにこだわる必要がありませんから、発効しない可能性が高いとみています。しかし、日本は日米並行協議を背負わされてしまった。全産業がリスクにさらされ、国のあり方そのものが変容する危機に直面しているのです。
TPP「大筋合意」で終わりじゃない
警鐘鳴らすNPO内田聖子さんに聞く
(東京新聞【こちら特報部】)2015年10月9日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2015100902000126.html
まさに国民不在の「大筋合意」である。環太平洋連携協定(TPP)交渉は、「守秘義務」を盾に非公開で進められ、ふたを開けてみれば、米国主導の貿易ルールづくりに加担した格好だ。しかし、まだ終わったわけではない。日本では「安倍一強」の国会が強引に承認してしまいそうだが、米国などの議会審議の行方は予断を許さない。TPP交渉に警鐘を鳴らしてきたNPO法人アジア太平洋資料センター事務局長の内田聖子さん(44)に聞いた。
(木村留美、鈴木伸幸)
前のめり日本「成長戦略」優先
「交渉カードがなくなった日本は、合意したくて仕方がない状況だった。米国がつくった一人勝ちのルールのカモになった」
米アトランタの閣僚交渉会合を現地で監視した内田さんは「大筋合意」に強く抗議する。
内田さんによれば、各国の交渉がなお続いていた四日、いち早く「大筋合意」の情報を流したのが日本だった。そのとき既に予定されていた二日間の日程を大幅に超えていた。何としても合意にこぎ着けたい日本の焦りの反映だ。
はやる日本の姿は、「今回が最後」と位置付けながらも合意できなかった七月末の米ハワイ会合から浮かび上がっていた。甘利明TPP担当相は会合後の記者会見で、乳製品の大幅な輸出拡大を求めるニュージーランドを念頭に「合意への障害になっている。頭を冷やしてもらいたい」とまで踏み込んだ。
内田さんは「各国は国益のために主張しただけなのに、日本は中傷に近い形でニュージーランドなどを悪者にした」とあきれる。
前のめりの日本と他国の温度差は、出席者の「ランク」にも表れていた。アトランタ会合は大筋合意の局面だったにもかかわらず、シンガポールは大臣ではなく副大臣が出席、マレーシアは交渉半ばで大臣が離脱して代理を立てた。
日本の焦りの背景を探ると、アベノミクスの旧三本の矢の一つである「成長戦略」に行き着く。TPPを成果にしたいわけだ。「TPPもダメでは話にならないと思ったのではないか。安全保障関連法の強行成立と同様、結論ありきでやっている」
ただし、来年夏の参院選を見据えれば、農家の保護策が欠かせない。予算化の時間を考えれば、ギリギリのタイミングだった。
日本は交渉中、国会議員にさえ詳しい交渉経過を伏せてきた。「過去の貿易交渉では事後説明や簡単な紙は出てきていたが、TPPはなかった」
では「秘密交渉」のツケは回ってくるのか。大筋合意では、衆参両院の国会決議が「聖域」として関税協議の対象から外すように求めていたコメ、麦、乳製品など五項目でも、コメ加工品の一部やクリームチーズ類で関税の撤廃に応じた。野党は当然、反発しているが、国会は与党が圧倒的多数を占めている。
内田さんは「来年度予算で短期・中期の農家への対応を打ち出せば、参院選のころには影響が薄れると考えているのだろう」と指摘した上で、「国会の状況が安倍政権の横暴を許しているのだろうが、国会審議よりも予算の検討が先行するのはおかしい」と憤る。
日本は強引に承認―?
予断許さぬ米議会
農家対応予算もう検討とは
米国ではオバマ大統領が積極的にTPPを推進しているが、来年十一月の大統領選も絡み、議会の承認は難航が予想される。
焦点の一つは、知的財産分野での医薬品の特許保護だ。新薬開発では、多額の費用を投入する見返りに、独占的な販売期間が認められている。国際的な製薬会社を抱える米国は十二年を主張したが、オーストラリアなどの五年と対立した末、大筋合意では八年で妥結した。米メディアによれば、経済界と関係が強い共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏が「とんでもない」と一蹴した。
労組が支援する民主党の大統領候補の中でも、バーニー・サンダース氏が、TPPが発効すれば企業の海外進出で雇用が失われる懸念から反対を表明。ヒラリー・クリントン氏も反対姿勢を打ち出した。
国際競争力の低い自動車会社は軒並み慎重姿勢で、フォードーモーターは大筋合意を批判。同社の本拠地デトロイトが選挙区のザンダー・レビン氏ら共和、民主を問わず有力議員の多くは後ろ向きだ。
内田さんは「米国は最終的に大筋合意を優先させたが、多額の政治献金を拠出する製薬会社が八年での妥協に黙っていない。労組も一九九四年の北米自由貿易協定で失業者が増えた苦い経験がある。議会は大もめになる」とみる。
医薬品の特許保護が強化されれば、同じ成分で安価なジェネリック薬品がっくりにくくなる。低所得者が多い発展途上国の打撃は避けられず、五年を強く主張したマレーシアやチリなどは国内の同意が得られず、TPPから脱退する可能性もある。オーストラリアでも反発の声が上がり始めている。
TPP発効には異例の条項がある。参加国が正式の協定文に署名してから二年以内に議会承認を得られなかった場合に「参加国の国内総生産(GDP)総額の85%を占める六力国以上で国内手続きが済めば発効する」というものだ。ともにGDPが総額の15%を超える日米にプラス四力国が条件。つまりは「GDPの小さい六力国は抜けても構わない」と受け取れる。一般的な通商交渉では一力国一票が原則だ。内田さんは「TPPの本質が表れている。民主的ではなく、一部の巨大資本のための交渉。条項の一つ一つに特定企業の利益が絡んでいるとみるべきだ」と強調する。
TPPは参加国を一体化した自由貿易圈にしようとする構想だ。巨大資本が恩恵を被る傍ら、世界的に大きな社会問題となっている格差を拡大させかねない。
「一部の日本企業には福音だろうが、安価な食料品の輸入拡大には残留農薬など安心、安全の問題が付きまどう。それによって零細な生産者が大打撃を受ける。トータルで日本にプラスとなるのか疑問だ。なぜ安倍政権は突っ走れるのか」
通商交渉ではルールづくりを主導した方が有利だ。それなのに米国でさえ異論が噴出する。実は、TPPの大筋合意で株価を上げた「TPP銘柄」がある。輸出増が見込まれる自動車や、原材料が安くなる食品加工業などがそれだ。
バラ色ではない 議員は分析して
内田さんは「日本の国会議員も合意内容をしっかり分析し、本当に発効していいのかをよく考えてほしい」と訴える。
「個別の企業にはメリットはあるだろうが、全てカネ、カネ、カネ。TPPは国際社会を弱肉強食化して、弱者をより弱くする。薬価の高騰は低所得者には命の問題ともなる。決してバラ色の構想ではない」
岩上安身氏「隠されたフクシマの真実と教訓」佐賀20120513 TPP部分
https://youtu.be/ZYszRvnSfBA
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吸血者からの理由「だから戦争法が必要なのだ」…亡国のTPP・ここはどこの国じゃ!(`・ω・´)ゞ
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