安倍政権が国民の声を無視して強行成立させた安保法は、連休に突入しても「反対」の声は冷めやらず。それどころか、「反原発」や「反米軍基地」の運動と、"合体"し、さらにヒートアップ。19~23日は少なくとも、全国33の会場で「反安倍政権」の集会が開かれ、きょう(24日)も18時半から、国会前で「安倍退陣」の抗議活動が行われる。もはや倒閣運動は中東の「アラブの春」に匹敵する勢いで広がり続けている。
違憲の上、採決不存在
きのう、東京・代々木公園で行われた「さようなら原発 さようなら戦争全国集会」には約2万5000人が集まった。
福島原発告訴団の代表である河合弘之弁護士や、沖縄米軍基地問題に取り組む木村辰彦氏、安保法に反対する社会学者の上野千鶴子氏らがそれぞれ登壇し、そろって安倍政権に「NO」を突きつけた。
集会に参加した「SEALDs(シールズ)」の中心メンバー奥田愛基氏(23)は本紙にこう言った。
「安保法や反原発、米軍基地問題と、立場を超えて『打倒安倍』で協力すべきです。来年の参院選では、しっかりと僕だもの意思を示したいと思います」
安倍政権は、選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げた。来年の参院選で新たに生まれる約240万人の有権者の票が自公などの与党に流れるーと見込んでいたのだろうが、大間違い。神戸女学院大学名誉教授の内田樹氏は、毎日新聞のインタビューで「240万人に今一番影響力を持つのは『SEALDs』」と答えていた。つまり、新たな若者票はそのまま「反自公政権票」となる可能性が高いのだ。
さらに、ここにきて17日の参院特別委の「安保法案」の採決が「無効」という指摘も広かっている。「委員長席周辺が騒然とし、委員会再開の宣言がなされなかった。いつ採決されたのかも分からない」(野党議員)といい、速記録(未定稿)にも「議事騒然、聴取不能」と記されているだけで、委員長の発言も質疑打ち切り動議の提案も記されていないためだ。
この問題で、東大名誉教授の醍醐聰氏は「採決不存在」と断じ、25日に2万人以上の署名を鴻池祥肇委員長に提出するという。
「17日の委員会では、参院規則が定める『表決』の条件を満たしていません。第136条に規定される『委員長の宣言』を聞き取れた委員はいたのか。また、委員長は『問題を可とする者を起立させ、その多少を認定』(第137条)しなければいけませんが、与党議員に取り囲まれる中、確認できたとは思えない。こんな乱暴なやり方で国民が納得するワケがありません。採決は無効です」(醍醐聰氏)
違憲の上、国会審議も「不存在」の法律がマトモなはずがない。そんな国民のまっとうな指摘に頬かむりし、別荘に泊まって趣味のゴルフに興じている安倍首相は狂っているとしかいいようがない。国民をなめ切った安倍政権が世論の鉄槌を思い知る日は近い。
注目の人直撃インタビュー
政治学者中野晃一上智大学教授
(日刊ゲンダイ)2015年9月25日
安保法案反対の運動が「アベ政治を許さない」になり、いま「安倍やめろ」に変わった。反安倍のうねりは安保法が成立しても止まらないというのが、大方の見方だ。「立憲デモクラシーの会」や「安全保障関連法案に反対する学者の会」のメンバーとして、デモの先頭にも立ってきた気鋭の政治学者が、新しい社会運動のこれからを語るとともに、安倍政治をメッタ切り。
-安保法案を強行採決で無理やり成立させた安倍首相は、「成立してから国民の理解は進む」というふざけた態度でした。
そこまで開き直ると、結局、戦争に加わる時も同じことを言うんだろうなというのが見えますよね。まともな説明はしない、情報はねじ曲げる、そして、後になったら分かるとうそぶく。民主政治にかかる厳粛さや慎みといったものが一切感じられない。最高責任者という言葉が出てくるぐらいですから、国家権力は自分に帰属するものだ、ぐらいに思っているんでしょう。
-シールズに代表される今回のデモの広がりをどうご覧になりましたか。
画期的なことだと思います。今回の運動は徹底して個人主義なんです。これまでいわゆる左翼動員、革新陣営といったくくりの運動はありましたが、今回はリベラリズム、自由主義を基調としている。自由と民主主義、立憲主義を守るために個人が立ち上がり、それが連帯している。シールズの奥田君の国会での公述も
まさにそういう内容でした。個人の尊厳、自由をあくまでも重視していて、どこかにドグマ(教義)があったり、従わなければならないリーダーがいるわけではない。普段の生活をしながら、主権者のひとりとして政治に関わっていく。そういう人たちが集まった運動は、戦後の日本で初めてのことだと思います。
-安倍首相の存在がそうした運動を芽生えさせたのでしょうか?
前兆はありました。冷凍庫でガチンガチンの保革対立たった日本の政治は、冷戦崩壊によって溶け、流動化した。その状況下で最終的に民主党の政権交代が起きた。しかしその後、東日本大震災と原発事故があり、「個々人」が誕生せざるを得なくなったのです。政府の発表やNHKの報道を信じていいのか分からなくなり、個々人が自分で情報を集め、自分で判断して行動した。そこで新しい社会運動か生まれました。そういう意味では、民主党政権下ですでに始まっていた新しい市民参画や抗議行動が、安倍さんの登場によってさらに深化したのだと思う。そして、アンチヘイトや特定秘密保護法に対する反対などで洗練され、あるいは失敗の中で学んだ。新しい社会運動はまだ発展途上ですが、安倍さんが次々と暴挙を重ねていく中で、強靭なものになってきていると思います。
日常生活心中で「反安倍」運動は持続
-それだから、安保法が成立しても運動は終わらないのですね。
個々人が立憲主義や民主主義を体現する運動ですから、ますます多様になっていくでしょう。受け身ではない自分たちが自由民主主義を担っているんだというような形で、情報共有したり、勉強会を開いたり、あるいは商業的に成功するようなもので、右翼メディアやヘイト本に対抗していく。いろんな形で、日本の市民社会を変えていこう、政治を変えていこう、ということになる。今のような国会前での抗議がずっと持続されるということではない。日常生活の中で、それぞれが自分なりのやり方、自分で持続できる方法で、かっこいいなと思ったり、面白いなと思えるような形で運動していく。そして、何か大きな焦点になるような動きが出た時には、またグワッとつながっていくんだと思います。
-今回、若者に引っ張られるように、学者も会をつくって反対運動に参加しました。
学者の大半が声を上げているかといえば、割合からすれば少数派です。ただ、変わりつつあるのは間違いありません。1960年代の学生運動を経て、政治にはタッチしないのが学者のあり方だという空気があった。しかし安倍政権が、自由民主主義を前提とした政治の土俵そのものを壊すようなことをしているわけです。保守だとかリベラル、左とかではなく、自由民主主義を共有している人ならば声を上げなければいけない。そうしたことで運動への参加に踏み切った学者が一定数いました。
―それも、憲法学者が大勢いました。
私は政治学ですから驚いているんです。法学の方々というのは政治的と受け止められるような行動はされないものでした。法はある意味、政治の上にあるような、ましてや憲法はその上にあるような意識でしたし、学問的にもかなりお堅い。政府の審議会に入ることはあっても、デモに参加などしないような方が多かった。そうした方々が今回、立ち上がった。路上でトラメガを持って発言するなんていう事態は、ちょっと衝撃です。つまり、それだけ今の日本が危機的なんだということです。ですから、学者の運動も簡単には終わりません。法律ができちゃったから諦める、という話にはならない。違憲訴訟や選挙で自民党の暴走をせき止める。最終的には法律の廃止を目標に動いていくことになるでしょう。
-来夏の参院選に向けての運動は?
シールズやママの会、学者の会など、今回できた連携の枠組みは今後も続いていく。すでに定期的な会議のような形もできています。それをどう発展させていくか。何力月か経った段階で、日比谷で大きな集会を開くようなこともあると思います。法律が成立し、しばらくは何もしないということではなく、やはり反対を可視化する必要がありますから。もちろん学者たちは、シンポジウムや勉強会、講演会で引き続き訴えていきます。
ネトウヨが首相になった悲劇
-安保法案反対運動は安倍首相の退陣を求める運動に変わりました。
政治家というのは、われわれの代理人にすぎません。代理人が暴走した時は、主権者としてきちんと処罰しなければいけない。動物のしつけじゃないですけど、こういったことをしてはダメだと、鼻づらをた
たいて教えてあげなければいけません。「安倍やめろ」というのは、そういうことだと思います。
-かつて自民党は自ら「国民政党」と呼んでいたように、もう少し国民の声に耳を傾けていたと思うのですが。
強権政治は安倍さんが顕著だと思います。もちろん転換点は小泉さんくらいから始まっているのですが、あの時は民主党が上り調子だったので、一定のチェック機能が働いていた。安倍さんの第2次政権は、民主党政権崩壊後の焼け野原みたいなところで誕生したので、緊張感がないのです。加えて、(現在政権中枢にいる)小泉さんが登用した当時の若手・中堅は、世襲議員や右に寄っている人が多かった。ある種の特権階級意識があるんだと思います。普通の人には興味がないと言いますか、分からないし、ある種の蔑みの対象にさえなっているんでしょう。自分だちと異質なものは、すべて左翼。仲間か左翼か、なんです。国会でのヤジもそうですが、首相でありながら、囗をとがらせ、日教組と言う。やは
り、ネトウヨが首相になってしまったということです。今までいろんな首相がいましたが、あそこまで知性も品性もない人は珍しい。一方で、それが右寄りの人には支持される。
自民党は破滅に向かう以外にない
-ネトウヨ首相が無投票再選する自民党に未来はあるのでしょうか?
もともと焼け野原に成立した政権が、さらに野に火を放つような政策や政治手法で永続できると幻想している。果たしてこれが保守政治なのか。保守ならば、持続可能で、将来世代につなげることが大きな価値のはずです。いまの自民党にはそうしたものが見えない。その場しのぎで、今がよければいいという政治をやっている。この先、自民党は破滅に向かっていく以外にないと思います。内部分裂して破裂する、あるいは国際社会から本当に追放されてしまうようなネオナチの暴走みたいなこともあり得る。日本にとって悲劇的なことになるかもしれません。だからこそ、新しい社会運動や主権者意識の高まりが政洽的になんらかの形をとって、オルタナティブ(代替)を次に用意していくということを、慎重に、しかし急がなければならないのです。根気よく石を積んでいくような作業にはなるけれども、政治のバランスを回復するためにも、市民社会の側からそれを進めていく必要があると思います。
シリーズ
廃止しかない
戦争法
(しんぶん赤旗)
より
国民の命危険にさらす
「平和安全法制は国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要な法制だ」。戦争法(安保法制)が成立した19日未明、安倍晋三首相は記者団にこう述べ、国民世論を無視しての成立強行を正当化しました。しかし、戦争法は国民を「海外で戦争する国」づくりに組み込み、逆に危険にさらすものです。国民の命、暮らしを守るためには、戦争法の廃止しかありません。
戦争法の核心は、自衛隊が従来の海外派兵法では活動を禁じられていた「戦闘地域」まで踏み込んで、米軍のために補給や輸送などの兵站支援を行うことです。
日本共産党の小池晃議員が7月29日の参院安保法制特別委員会で暴露した米陸軍報告書は、イラクーアフガン戦争での死傷者の10~12%は補給任務中であり、「戦場での燃料・水の補給は命がけ」だと指摘しています。こうした、攻撃対象にされやすい補給活動を
自衛隊が肩代わりするものです。
米軍への補給や輸送
”殺し、殺される″道に
攻撃を受けたらどうなるか。安倍首相は志位和夫委員長に対して、「武器を使用する」と認めました(5月27日、衆院安保特)。これは憲法違反の「海外での武力行使」そのものであり、自衛隊が、殺し、殺される”道に踏み込むことになります。
9月上旬に行われた米海兵隊と陸上自衛隊の共同演習「ドーン・ブリッツ」では、初めて陸自の後方支援(兵站)部隊が参加しました。すでに戦
争法の先取りが進んでいます。
また、戦争法では、PKO(国連平和維持活動)法を改悪して、「妨害排除」など任務遂行のための武器使用を解禁。「巡回」「検問」などの治安維持活動を可能にしています。
近年のPKOは「住民保護」が活動の中心になりつつあります。これに関して、現場では保護すべき住民と武装勢力との判別が難しく、自衛隊が住民を誤射しかねないとの指摘が相次いでいます。
戦後、1人の戦死者も出さず、1人の外国人も殺してこなかった日本の「平和ブランド」が揺らいでいます。
集団的自衛権
日本への武力攻撃に
戦争法では、「我が国の存立が根底から覆される明白な危険」(存立危機事態)が発生した場合、「限定的」に集団的自衛権を行使するとしています。しがし。安倍首相がその事例として、繰り返し用いてきた「邦人輸送中の米艦防護」「ホルムズ海峡の機雷掃海」などが「立法事実」(法案の必要性)になり得ないことは、衆参両院の審議で明らかになりました。
「限定的」であれ、集団的自衛権の行使は、日本が直接攻撃されていなくても他国を攻撃する、つまり公然と武力行使するということです。相手国から見れば事実上の先制攻撃になり、日本への武力攻撃の囗実になります。「国民を守る」どころか、進んで国民を危険にさらすのが、集団的自衛権の行使です。
加えて、集団的自衛権の脱法的行使を行う枠組みもあります。それが、自衛隊法95条2項改悪に伴う地球規模での米軍防護(武器等防護)です。
「我が国の防衛に資する活動」をしていれば、「存立危機事態」と認定しなくても、「平時」であっても、米軍の空母であれ戦闘機であれ、攻撃されたら自衛隊が武力で反撃する-その判断は現場の自衛官が行うことになっていますが、米軍の情報に基づいて判断せざる
を得ないため、事実上、米軍の指揮下に入ることになります。誰も知らない間に自衛隊が米軍の戦闘に参加する危険があります。
日常生活への影響
「徴兵制」・軍拡の不安
戦争法による「海外で戦争する国」づくりは、日常生活にも深刻な影響を与えます。
自衛隊の任務が拡大し、より危険になることで、「徴兵制」復活の不安が広がっています。首相は「ありえない」と繰り返していますが、▽自衛隊に入隊した場合は返還不要としている防衛省の奨学金制度の拡充▽奨学金返済に苦しむ学生を1~2年、自衛隊に入隊させる「インターンシップ」-なども議論されています。これらは「経済的徴兵制」とも言えるものです。
安倍政権の下で4年連続での軍拡の動きも出ています。2016年度軍事費概算要求が通れば、初めて当初予算で5兆円を超えます。
安倍政権が戦争法や軍拡で想定しているのは、中国に対抗するための「軍事バランス」の維持です。この道を進めば、国民の暮らしを犠牲にするだけでなく、北東アジアに軍拡競争を引き起こし、「軍事対軍事」の悪循環を導いてしまいます。国民を守るための「抑止力」を高めるどころか、不必要な緊張を高めるのは明白です。
自国民より米国最優先
安倍晋三首相が執念を示してきた戦争法。日本共産党が国会で暴露してきた一連の政府内部文書は、戦争法の本質が日本国民の意思も憲法の枠組みをも超えて、新日米ガイドライン(4月に再改定終了)に示された米国の要求の実行が真の狙いであることを浮き彫りにしました。
統合幕僚監部の内部文書
暴走・従属の実態
小池晃議員が7月29日の参院安保法制特別委員会で示した海上自衛隊の内部文書で、米軍ヘリの敵潜水艦攻撃作戦を海自のヘリ空母が洋上給油で支援する事例が判明しました。(図)
1999年に成立した周辺事態法など、従来の海外派兵法では、戦闘行動へ発進準備中の米軍機への給油は盛り込まれていませんでした。
同法制定当時、内閣法制局長官だった大森政輔氏は、この事例を米車の武力行使との「一体化」に該当し、「違憲」との見解を示しました。(8日、参院安保特)
海上作戦中の米軍機への洋上給油は、武力行使との「一体化」はいうまでもなく、米軍の武力行使への参加であり、「海外での武力行使」そのものです。
さらに小池氏は8月11日の参院安保特で、自衛隊統合幕僚監部作成の内部文書「『日米防衛協力のための指針』(ガイドライン)及び平和安全法制関連法案について」を暴露。文書はガイドラインと戦争法を表裏一体のものとして捉え、ガイドラインを実行する観点から課題を整理したものです。
同文書は5月に作成されましたが、その時点で「8月の法案成立」を見越して、法施行後の部隊運用計画を記した詳細なスケジュール表まで自衛隊幹部に説明していました。
さらに、米軍と自衛隊の「軍軍間の調整所」1日米共同軍事司令部の平時からの設置や共同戦争計画の策定など、国会には一度も説明していない事柄が列挙されています。
決定打となっだのは、仁比聡平議員が2日の参院安保特で示した河野克俊統合幕僚長と米高官らとの会談記録です。河野氏は昨年12月の時点で、米軍幹部から「安保法制について予定通り進んでいるか]と問われ、「来年夏までには終了する」と成立時期を約束していました。
自衛隊トップが政治家より先に対米公約する-実力組織の暴走の実態は、日本の若者の血を自ら差し出す究極の対米従属法という本質をさらけ出しました。
来春にも施行へ
訓練加速・任務拡大
戦争法は公布から6ヵ月以内の施行となり、内部文書のスケジュール表で示されていた運用計画が来年舂にも実行に移されようとしています。
最初の適用が狙われているのが、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)へ参加中の部隊です。南スーダンは2013年末に内戦状態に入って以降、繰り返し停戦合意が破られてきており、そもそも日本のPKO(国連平和維持活動)参加5原則を満たしていません。
そのような状態であるにも関わらず、戦争法では、「駆けつけ警護」や「宿営地の共同防衛」の武器使用権限拡大を検討しています。他国要員が現地民などに襲われた場合は、自衛隊が加勢しての戦闘が可能になります。
PKOの能力向上については、多国間共同訓練「カーン・クエスト」(6月、モンゴル)に訓練部隊を初めて送り、治安維持活動など実戦形式の訓練をすでに本格化させています。
このほかにも、小池氏が暴露した統幕内部文書には、▽「軍軍間の調整所」を含む同盟調整メカニズムの運用開始▽米車の武器等防護を行うための交戦規則(ROE)の策定-などを今後実施する方針が明記されています。
これらは現時点で実行されていないとみられますが、戦争法の施行を待たずに検討を具体化させるのは確実です。
また防衛省は、今年度予算で東アフリカ・ジブチの基地強化に向けた調査を先取りで進めており、来年度から事業化する可能性があります。米軍との会談記録で河野氏がジブチ基地の用途拡大にふれているように、現行の海賊対処活動での活用に限らず、PKOや中東・アフリカでの米軍の戦争を支援する「兵站(へいたん)」活動の拠点として強化するものです。
新ガイドラインを具体化し、自衛隊が米軍の戦争に地球規模で参戦する動きを食い止めるために、一刻も早い戦争法の廃止が求められます。
ニュースを解く
経団連の軍拡提言
(しんぶん赤旗)2015年9月23日
経団連が戦争法成立直前の15日に発表した「防衛産業政策の実行に向けた提言」は、軍事産業の利益拡大のため、安倍晋三政権に軍事費の拡大と、東アジア諸国などぺの武器輸出の推進を求めました。海外で戦争をする国づくりは、軍事産業にとってはビジネスチャンスの拡大です。
(金子豊弘、佐久間亮、杉本恒如)
戦争法で利益追求
軍事産業の役割強調
「政府の関連予算の拡充と実現に向けた強いリーダーシップの発揮が求められる」
安倍晋三政権に対し軍事費の拡大を求めた提言は、戦争法が成立すれば「自衛隊の国際的な役割の拡大」があるとの見通しを示し、そのために
「自衛隊の活動を支える」軍事産業の役割の高まりを強調しました。
自衛隊活動の拡大は、軍事産業にとっては利益拡大のビッグチャンス。そこで提言は、軍事企業の「努力が利益に適切に反映」されることを政府に迫り、さらに「固定費負担や生産が中断した場合のコスト負担などを適切に補填(ほてん)する仕組み」を求めました。軍事生産の場合は、契約の相手は政府であり、費用は税金によってまかなわれます。
これらの仕組みが整備されると、軍事費が増え続けるのは明らかです。切り捨てられるのは暮らしを支える社会保障費です。(#゚Д゚)
一方、経団連は消費税率10%への増税を求めています。消費税増税が軍事費拡大につながることは必至。戦争をする国づくりは、国民生活を疲弊させ、経済の土台を掘り崩すことになります。
”死の商人”育成要求
経団連提言は、武器輸出を「国家戦略として推進すべきである」と迫りました。これまで輸出を禁じられていた軍事産業には「国際市場における実績がほとんどない」ので、「官民」で輸出を進める「仕組みが必要」だというのです。「適切な収益の確保も重要」だと付
け加えました。
世界に武器をばらまく”死の商人”となって利益を追求する姿勢があらわです。2014年4月に安倍政権が武器輸出三原則を撤廃したことで、たがが外れた格好です。
政府には武器輸出の全面的な後押しを要求。「装備品(武器)の供与だけでは相手国の要求が満たせない場合、オフセット要求への対応、装備品の運用、教育・訓練等の提供なども行う必要がある」と主張しました。
オフセットとは「購買国への見返りとして、供給国が何らかの代償を与えること」。日本防衛装備工業会の会誌『月刊JADI』(2014年10月号)によれば、「東南アジアでは見返り貿易が、よく使われます」。「戦闘機を買う代わりに、パーム油やコーヒー、鶏肉、ゴムを売るなどというやり方」です。
防衛省が設置した武器輸出に関する検討会はすでに、オフセットを検討課題にあげています。武器購買国の軍隊への「教育・訓練」を、自衛隊や自衛隊OBが実施することも検討しています。武器輸出のお膳立てを政府が行い、武器輸出を通じて他国軍との軍事的関係を強める方向です。
F35輸出狙う
経団連提言は推進すべき「具体的なプログラム」もあげました。
一つは次期戦闘機F35の「生産への参画および維持・整備事業」です。米国を中心に9力国で共同開発されたF35の製造に、日本では三菱重工業、三菱電機、IHIの3社が参加。三菱重工とIHIはアジア太平洋地域の機体・エンジン整備拠点としての役割も担う予定です。これらの企業がつくったF35の部品は、他国へ輸出されることが想定されています。
提言はこれに加え、「他国向けのF35の製造への参画を目指すべきである」と迫りました。部品だけでなく、完成した機体を他国へ輸出できるようにせよ、というのです。F35の最終組み立てを担う三菱重工が最大の受益者となります。
二つ目は、オーストラリアとの「潜水艦の共同開発・生産」です。「わが国の提案の選定に向けて、官民が連携して対応すべきである」と迫りました。潜水艦を建造している三菱重工と川崎重工業のビジネスを拡大するための策動です。
三つ目は、「ASEAN(東南アジア諸国連合)全体」への「装備品(武器)の供与や共同開発と運用や維持も含めた提供」です。
経団連提言は、これらの事例をはじめとする武器輸出に向け、「内閣官房、防衛省、外務省、経済産業省等の関係省庁と企業」の連携が必要だと強調しました。国の機能を総動員して。死の商人”を育成するよう求めたのです。
大学を軍事研究利用
経団連提言は「基礎研究の中核となる大学との連携を強化すべきである」として、大学を軍事研究に利用しようとしています。
大学との共同研究は防衛省と軍事産業にとっての悲願でした。防衛省技術研究本部の渡辺秀明本部長は「一部には『大学
は軍事研究に関わるべきでない』との考えから、防衛省との協力に消極的なように見える大学もあるので、こうした環境が変わっていくことを願っています」と語っています(『防衛技術ジャーナル』2014年1月号)。
大学を軍事研究に誘導するための手段として今年度から始まっだのが防衛省の「安全保障技術研究推進制度」です。大学や独立行政法人、企業から防衛装備に関する技術提案を募り、資金を交付するものです。15年度は3億円。16年度概算要求では倍の6億円を要望しています。
「デュアルユース(軍事にも民生にも利用できる技術)の研究」「研究成果は公開」などの甘い言葉で、研究資金の確保に苦しむ研究者を軍事研究の道に引き込もうとしています。
経団連提言は「大学には、情報管理に留意しつつ、安全保障に貢献する研究開発に積極的に取り組むことが求められる」と、軍事研究に当たって大学の情報管理の強化を提言しています。軍事機密を理由に研究成果が非公開になる危険性があります。
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誰がために弾はある…(・ω・`)誰のための法律…?(*`・ω・)ゞ
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