中東の機雷掃海 行使可能 「日本への攻撃と同様」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015021702000136.html
集団的自衛権「砂川事件判決根拠は無効」
元被告ら怒りの決起
(東京新聞【こちら特報部】)2015年1月18日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2015011802000125.html
安倍政権は二十六日開会の通常国会で、集団的自衛権行使容認の閣議決定に沿った安全保障関連法案の成立をもくろむ。閣議決定の際、根拠として持ち出したのが、米軍立川基地の拡張計画に反対した学生らが逮捕された「砂川事件」の最高裁判決だった。日本の集団的自衛権の有無が争われたわけではないが、政府・自民党は「判決は必要最小限の集団的自衛権を排除していない」などとご都合主義的に解釈した。こんなことが許されていいのか。砂川事件の当事者の声にあらためて耳を傾けた。
(篠ケ瀬祐司)
「判決文を都合よく利用」
陸上自衛隊立川駐屯地(東京都立川市)に隣接する米軍立川基地の滑走路跡。自衛隊ヘリの爆音が響いている。元立川市議の島田清作さん(七六)は「米軍機の離着陸時の音は、こんなもんじゃなかった」と苦笑いを浮かべて回想した。
戦前、戦中に農地接収を繰り返して拡大した旧日本軍の立川飛行場は、一九四五年の終戦後、米軍基地として朝鮮戦争やベトナム戦争の拠点となった。
五五年、東京調達局(現・北関東防衛局)は滑走路を北に延ばす計画を砂川町(現・立川市)に伝えた。これ以上土地を取られたらふるさとを追われる。「砂川闘争」と呼ばれる反対運動が起き、基地外での測量は五六年に中止された。
五七年七月八日、基地内の測量も阻止しようと、労働者や学生らが柵を倒して基地内に入った。「砂川事件」だ。島田さんもその一人。「大学一年で十九歳の誕生日だった。未成年者は逮捕されてもすぐに出られるといわれ、先頭に立った」。島田さんは逮捕を免
れたものの、二十三人が捕らえられ、七人が日米安保協定に伴う刑事特別法違反罪で起訴された。
東京地裁は五九年に無罪判決を下した。「駐留米軍は外国に軍隊を出動し得る。米軍駐留は日本政府の要請や土地の提供、費用負担などがあって可能。憲法九条二項で禁止されている戦力の保持違反だ」との内容だ。島田さんは「憲法にそういうことも書いてあるのかと驚いた」と振り返る。
ところが最高裁は「安保条約のような高度な政治性を有するものは、裁判所の判断になじまない」などと一審地裁判決を破棄した。「わが国の存立を全うするために必要な自衛の措置を取り得る」との憲法解釈も示した。差し戻し審で有罪(罰金)とされ、六四年に確定した。
集団的自衛権行使容認の理屈を探していた安倍政権は、この最高裁判決の「わが国の存立…」に飛び付いた。「最高裁は個別的、集団的を区別せず自衛権を認めている」(高村正彦自民党副総裁)というのだ。首相の私的諮問機関「安保法制懇」の報告書でも同様の解釈が採用され、昨年七月の閣議決定につながった。
島田さんは強く批判する。「都合のいいことだけを利用している。判決当時、日本の『戦力』が海外に出る発想はなかったし、出る力もなかった」
そして今、安倍政権は新たな安保法制の整備へと突き進む。島田さんは声を上げ続けていくつもりだ。
「砂川事件は思い出話ではない。沖縄の辺野古では、砂川と同じように新基地が建設されようとしている。市民や地方の声を無視した国の押し付けは許せない。闘わなければ生活も権利も自由も守れない」
「闘わなければ生活も権利も守れぬ」
米軍事戦略に盲従するな
砂川事件元被告の土屋源太郎さん(八〇)も、集団的自衛権行使容認の閣議決定や、新たな安保法制整備への怒りを隠さない。
「日本は戦後、戦争をしない国として国際社会で評価されてきた。それを解釈改憲で憲法をないがしろにして、あえて戦争をする国にしようとしている。平和を守ることや国民の人権を考えたら許せない」
土屋さんら元被告三人と遺族一人は昨年六月、「公平な裁判を受ける権利を侵害された」として東京地裁に再審を請求した。「立憲主義を根底から覆そうとする安倍政権への抗議の意思表示でもある」。土屋さんらは記者会見でそう訴えた。
土屋さんらは、米公文書三通を新証拠として提出した。当時の田中耕太郎最高裁長官(故人)が地裁の無罪判決後に駐日米大使と接触し、裁判官の非公開評議内容などを伝えていた。米国立公文書館で文書を見つけたのは、日米史家の新原昭治さん(八三)や、ジャーナリストの末浪靖司さん(七もらだ。
新原さんには当時と現在が重なって見える。「最高裁判決には米国の重大な干渉があった。その判決を集団的自衛権行使の根拠にして閣議決定をし、法案づくりを進めている。米国の求めることなら、理屈に合わなくても従っている」
末浪さんは「安倍政権は、憲法が定める司法の独立に反し無効な最高裁判決を持ち出した。閣議決定しただけなのに、二〇一五年度予算案で、集団的自衛権の行使容認を踏まえた過去最高額の防衛予算を決めた。こうした進め方は危険だ」と警鐘を鳴らす。
政治評論家の森田実さん(八二)は砂川事件当時、全日本学生自治会総連合(全学連)の中央執行委員として学生の支援活動を指揮した。森田さんは、砂川事件の最高裁判決が、一九六〇年の日米安保条約改定に向けた必然的な措置だったと分析する。
「六〇年改定は、日本は武力を持たないが米軍駐留を認めさせる内容から、武装平和路線への転換点だった。当時の岸信介政権の論理を『積極的平和主義』を掲げる安倍政権が完成させようとしている」
森田さんは、安保法制の議論が本格化するこれからが「闘いの本番」ととらえる。「海外に武力を出せる国にしたいという安倍路線を葬り去る好機だ」
政府・自民党は中東ペルシャ湾での機雷掃海に欲を見せるが、連立を組む公明党内には慎重論が残る。「国会論戦を通じ、関連法案には無理があることが明らかになるだろう。そうなれば、公明党もついていけないのではないか」(森田さん)
作家の鈴木茂夫さん(八三)は、民放の記者として砂川闘争を取材した。請われれば、事件の現場を案内して回っている。
鈴木さんは安保条約の枠内であれば、緊急事態での集団的自衛権発動は当然だとの立場だ。そんな鈴木さんも、安倍政権に注文をつける。
「日本と関係のない米軍事戦略に関与してはならない。自制の効いた抑止力であるため、集団的自衛権の関連法整備は丁寧に進めるべきだ」
「米軍違憲」破棄へ圧力
砂川事件、公文書で判明
(共同通信)2008/04/29
http://www.47news.jp/CN/200804/CN2008042901000464.html
米軍の旧立川基地の拡張計画に絡む「砂川事件」をめぐり、1959年3月に出された「米軍駐留は憲法違反」との東京地裁判決(伊達判決)に衝撃を受けたマッカーサー駐日米大使(当時、以下同)が、同判決の破棄を狙って藤山愛一郎外相に最高裁への「跳躍上告」を促す外交圧力をかけたり、最高裁長官と密談するなど露骨な介入を行っていたことが29日、機密指定を解除された米公文書から分かった。
「米軍駐留違憲判決」を受け、米政府が破棄へ向けた秘密工作を進めていた真相が初めて明らかになった。内政干渉の疑いが色濃く、当時のいびつな日米関係の内実を示している。最高裁はこの後、審理を行い、同年12月16日に1審判決を破棄、差し戻す判決を下した。
公文書は日米関係史を長年研究する専門家の新原昭治氏が今月、米国立公文書館で発見した。(共同)
国務省・受信電報〔極秘〕
最高裁長官「一審は誤り」
砂川事件、米大使に破棄を示唆
(共同通信)2013/01/17
http://www.47news.jp/CN/201301/CN2013011701001667.html
米軍旧立川基地の拡張計画をめぐり、1957年に起きた「砂川事件」で、米軍駐留を違憲とした東京地裁判決(伊達判決)を破棄した最高裁の田中耕太郎長官(当時、以下同)がマッカーサー駐日米大使と会談し「伊達判決は全くの誤りだ」などと判決の見通しを示唆していたことが17日、分かった。
外交問題に詳しいフリージャーナリスト末浪靖司氏が2011年9月、米公文書館で、機密指定を解除された公文書に会談内容が書かれているのを見つけた。末浪氏によると、内容に踏み込んだ文書が見つかったのは初めてとみられる。
在日米軍裁判権放棄密約事件 - Wikipedia
統治行為論 - Wikipedia
9条「解釈改憲」から密約まで
対米従属の正体
米公文書館からの報告
http://www.koubunken.co.jp/0500/0482.html
「戦力」保持を禁じる憲法9条をもつ日本に、米軍駐留は許されない。だが、日本に軍事基地を確保したいアメリカは、9条の「新解釈」を日本政府に教え込む―
米公文書館に通うこと七年、今に続く対米従属の源流をここに突きとめる!
米軍人・軍属が日本で犯罪を犯しても、日本の裁判所では裁かれない。
それはなぜか?
米軍機は、深夜も早朝も爆音をとどろかせ、また住宅地での低空飛行をやめない。
それはなぜか?
その原因を突きとめるため、著者は新聞社を定年退職後、七年にわたりメリーランド州の米公文書館に通いつづけ、膨大な公文書を渉猟、日米政府間で交わされた密約の数々を発見する。
本書は、その公文書にもとづき、日本政府の従属的な対米関係がどうして生じたかを明らかにする。
必聴です!
130502末浪靖司氏インタビュー
http://youtu.be/Y8jlHUU0IdQ
【超必見】末浪靖司氏・独占インタビュー動画 2013/05/02
『9条「解釈改憲」から密約まで 対米従属の正体―米公文書館からの報告』著者でフリージャーナリスト、元赤旗論説委員の末浪靖司氏に山崎淑子がロングインタビュー。
砂川事件最高裁判決を根拠とする集団的自衛権の限定容認論を強く批判し,憲法9条の解釈変更に断固反対する声明
(自由法曹団)
http://www.jlaf.jp/menu/pdf/2014/140428_01.pdf
「人質事件に便乗」 安保法制に走る安倍政権
(東京新聞【こちら特報部】)2015年1月28日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2015012802000161.html
「イスラム国」による日本人人質事件の緊張が続く中、通常国会が始まった。安倍政権は昨年七月の閣議決定を受け、今国会での安保関連法案の成立を期している。しかし、今回の事件であらわになったのは安保法制が目指す日米「血盟」化がもたらすリスクだ。ところが、国会召集前日の首相の発言からは、人質事件に便乗し、この「血盟」化路線を突き進もうという意図が透けて見える。
(沢田千秋、三沢典丈)
在外邦人救出 自衛隊活用「逸脱で無謀
人質になった湯川遥菜さんが殺害されたとみられる写真が公開された翌朝(二十五日)、安倍首相はNHKの「日曜討論」に出演。人質事件に続き、今国会で審議予定の安保関連法制について、こう発言した。
「このように海外で邦人が危害に遭った時、その邦人を自衛隊が救出するため、(現在の法律では)自衛隊が持てる能力を十分に生かすことはできない。そうした法制も含めて、今回、法整備を進める」
首相は安保関連法制が成立すれば、今回のようなケースで自衛隊が救出に向かえると考えているのか。
昨年七月、政府は自衛隊の集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈の変更を閣議決定した。今回の関連法案はその具体化だ。
閣議決定では、自衛隊の
海外での武器使用について「多くの日本人が海外で活躍し、テロなどの緊急事態に巻き込まれる可能性がある中で、当該領域国の受け入れ同意がある場合、武器使用を伴う在外邦人の救出に対応できるようにする必要がある」と規定した。
重要なのは「領域国の同意」について「同意が及ぶ範囲は(領域国政府の)権力が維持され、国家に準ずる組織は存在していないこと」と明示した点だ。
これは現在の「イスラム国」に当てはまらない。シリアでのその実効支配地域は、同国のアサド政権でも容易には近寄れない。
ほかにも矛盾がある。軍事評論家の田岡俊次氏は「閣議決定は海外での有事や災害の際、孤立した邦人の避難を助けるのが目的だ。首相は避難と、今回のような人質事件の救出作戦を混同している。あるいは視聴者に自衛隊が救出できるかのような印象操作を行っている」と批判する。
救出作戦の実現可能性にも疑問がある。昨年八月、「イスラム国」に拘束されていた米国人ジャーナリストの殺害映像が公開された翌日、米政府は人質救出作戦が失敗していたことを明らかにした。米軍特殊部隊はヘリコプターからパラシュートで目的地に降下。イスラム国の戦闘員と銃撃戦となったが、人質は見つけられなかったという。
田岡氏は「偵察機や無線傍受、電話の盗聴を活用する米軍特殊部隊ですら、人質や捕虜の場所を特定するのは至難の業。仮に自衛隊が救出作戦を実施しても、成功する可能性は限りなくゼロに近い」とみる。
この番組では、もうひとつ重要な発言があった。
首相は「イスラム国」への空爆など、国連決議を伴わない有志国連合による軍事行動について、「(自衛隊による)後方支援は武力行使ではないので、国連決議がある場合、そうでない場合でも憲法上、可能だ」と述べた。だが、昨年七月の閣議決定を経た現在、「後方支援」の意味は以前とは大きく異なっている。
危うい「やっつけろ」機運
「米と一体視」強まる恐れ
自衛隊の他国軍への後方支援は、米軍など多国籍軍のアフガニスタン攻撃を支援するテロ対策特措法と、イラク戦争でのイラク復興支援特措法に基づく海外派遣の二つの前例がある。
ただ、当時の憲法解釈では、他国の戦闘を補給などで支援することは九条が禁じる「戦争」や「武力行使」に当たらないが、戦闘との一体化は違憲とされた。このため、特措法でも自衛隊の活動地域を「非戦闘地域」に限定してきた。
だが、昨年の閣議決定では「非戦闘地域」の規定をなくし、「『現に戦闘が行われている現場』以外」に拡大。これには当然、活動中に戦闘が始まる可能性がある地域も含まれる。つまり、「武力行使」を黙認する事実上の憲法違反だ。
軍事評論家の前田哲男氏は「閣議決定によって、戦闘地域と後方支援の距離は一気に縮まった」と指摘する。加えて、安倍首相は今国会で、いつでも自衛隊を海外に派遣できる恒久法の制定を目指している。
前田氏は「閣議决定までの議論で、ペルシャ湾の機雷掃海の是非が論じられ、安倍政権はこれも可能としている。中東で『日本軍』が、米軍と共同作戦を展開すると受け止められても不思議ではない」と語る。
こうした中、今回の中東外遊があったが、元防衛官僚の柳沢協二氏は「外遊で表明した二億ドルの人道支援について、首相は十七日のエジプトでの演説で『イスラム国のもたらす脅威を食い止めるため』と理由付けした。資金援助だけで、過激派からは日本人が敵とみなされた。これが軍事の後方支援となれば、日本人は世界中でテロの標的となるだろう」と懸念する。
そのリスクより、首相は日米同盟の「血盟」化を優先しているかに見える。
成蹊大アジア太平洋研究センターの田浪亜央江・主任研究員(中東地域研究)は「思い出すべきことは、『イスラム国』とは米国が中東に民主化をもたらすとしてイラクを攻撃し、その占領の泥沼状態で生まれたという事実。だから、米国との同盟関係の枠内での中東への『貢献』などあり得ない。根本的にそこから考え直さねば」と話す。
ただ、現在のイスラム過激派を放置することは、国際社会の一員としては無責任に違いない。どうした貢献をなすべきなのか。
日本女子大の臼杵陽教授(現代中東政治)は「アラブ諸国やイスラエルが日本に期待するのは、経済関係の強化。歴史的にも、政治的にもほぽ関係がなかった国に軍事支援と出てこられても迷惑だ」と説く。
「しかし、できることはある。例えば、イランとはきちんとお付き合いをした方がいい。『イスラム国』が目の敵にするシーア派の大国で、対『イスラム国』の行方を握っている。イランからは日本にさまざまな関係強化の呼び掛けがあったのに、日米同盟から冷遇してきた。今後、イランを重視することが、国益にかなうのではないか」
二十七日の衆院代表質問で、安倍首相はイスラム国の人質事件について「人命第一」を繰り返した。
だが、人質救出の動きの傍ら、自衛隊による救出作戦に言及する。「人命第この本気度を疑うが、世論調査では事件への政権の対応を六割が評価した。
前出の田岡氏は、人質事件と政権の安保関連法制に対する前のめり姿勢について、こう警鐘を鳴らす。
「どの国も戦争になると政権の支持率は高くなる。国民が団結し、好戦的ムードが生まれる。第一次大戦はオーストリア皇太子夫妻の死によって千六百万人が死んだ。人質事件を機に『やっつけろ』という世論の盛り上がりが危うい」
憲八おじさんとタマ
http://www.youtube.com/playlist?list=PL2hEjnCla-LOt4_HBXbBEXD9Z7WX4a9hk
自民草案から見た安倍政権の改憲意欲 環境権入り口に9条へ
(東京新聞【こちら特報部】)2015年2月14日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2015021402000171.html
安倍政権が改憲に対する意欲を鮮明にし始めた。来夏の参院選後の改憲発議を目指すという。安倍晋三首相は三日の参院予算委員会で、「わが党は既に九条改正案を示している。なぜ改正するかと言えば、国民の生命と財産を守る任務を全うするためだ」と発言した。案とは二〇一二年四月に自民党が発表した問題の多い改憲草案を指す。あらためてこの草案について考えた。
(三沢典丈、榊原崇仁)
安倍首相は十二日の国会での施政方針演説で、「憲法改正に向けた国民的議論を深めていこうではありませんか」と呼び掛けた。「『日本は変えられる』。全ては私たちの意志と行動にかかっています」という発言もあった。
二〇〇六年の第一次内閣発足時の所信表明演説や、一三年の第二次内閣の施政方針演説でも、安倍首相は「改憲」について触れてきた。だから、今回が特別なわけではないが、意味合いが違う。改憲時期の目標が初めて設定されているからだ。
四日、首相官邸で行われた自民党の船田元・憲法改正推進本部長との会談でのことだ。船田氏が一六年夏の参院選後に最初の改憲発議を目指す考えを伝えると、安倍首相は「それが常識だろう」と応じた。
参院選を考慮
慎重な発言に
自らが時期に言及せず、賛同する形を取るなど、安倍首相の言い回しは慎重だ。小林正弥・千葉大教授(政治哲学)は「現状では参院の勢力が足りず、自民党は改憲を発議できない。国民に抵抗感が強い九条改憲を前面に出し、来夏の参院選で負けては意味がないと考えているのだろう」と分析する。
改憲発議には衆参両院それぞれで、三分の二以上の賛成が必要となる。現在、衆院の自民・公明両党は計三百二十六議席と三分の二を超える。だが、参院は計百二十四議席で過半数は超えているが、改憲に前向きな野党の議席を加えても三分の二以上の百六十二議席には達しない。議席増のため、参院選を意識した発言になるというわけだ。
実際、連立を組む公明は警戒している。漆原良夫中央幹事会長は五日、改憲スケジュールについて、「初めて聞いた」と語り、困惑を隠さなかった。
公明に対する配慮からか、菅義偉官房長官は同日の記者会見でこう語った。
「国民の理解が深まらなければ、簡単にできることではない」。菅氏は一月十日のBS朝日の番組でも。「憲法改正は国民にまだ非常に拒否反応がある」と語っている。その上で、「全体というよりも欠けている部分、大事なところから入っていくべきだろう」などと公明の求める環境権創設などに言及した。自民憲法改正推進本部も、まずは環境権などを定める方向性で議論を進めるようだ。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「船田氏との会談での発言や菅官房長官の案はそれぞれ、改憲に向けたパターンの一つ。国民の反応を見て対応を決めるのではないか」とみる。
安倍政権は一三年にも改憲に向けて動いた。九六条を改定し、改憲発議の要件緩和を試みたが、与野党から反発が出て頓挫した。その結果、安倍首相は解釈改憲にかじを切った。
小林氏は「昨年の集団的自衛権の行使容認の閣議決定から今の安保法制の整備も一連の流れの中にある。今後、聞き心地がよい項目が出てきても、狙いが九条にあることを忘れてはならない」と話す。そして自民改憲草案の「九条」は、「近代立憲主義の観点から見て、非常に問題が多い」と、小林氏は言う。
「武力の行使」玉虫色記述
憲法九条が含まれる二章の表題は現行憲法では「戦争の放棄」だが、自民改憲草案では「安全保障」に変わっている。条文では現行の「戦力は保持しない」「交戦権は認めない」が削られ、「自衛権の発動を妨げるものではない」と全く異なったものになっている。
草案を解説する自民の「改憲草案Q&A」には、「自衛権の行使には憲法上の制約はなくなる」という説明がある。現行憲法では問題視される集団的自衛権の行使も認められる。
草案「九条の二」は「国防軍」を規定している。「二の3」で、国際社会の平和と安全のために国際的に協調した活動を行えると定める。関西大の高作正博教授(憲法学)は「政権が都合よく解釈できる記述だ。『イスラム国』に対する有志国連合の空爆にも参加できてしまう」と語る。
つじつまの合わない部分もある。草案「九条」は「武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない」とするが、Q&Aでは「国防軍は、軍隊である以上、法律の規定に基づいて、武力を行使することは可能」と説明する。
どういう意味か。高作氏は「条文だけなら『権限は持つが武力を行使しない』ということだろうが、Q&Aの説明を踏まえれば『原則的には行使しないが、場合によっては行使する』とも読みとれる」と語った。
草案「九条の二の5」には、軍事機密に関する罪の裁判のため国防軍に審判所を置く規定もあるが、草案「七六条」では、軍法会議のような特別裁判所を置かないと定める。高作氏は「単に矛盾しているのか、例外を設けようとしているのか」と首をかしげる。
国益のために
国民が犠牲?
草案「九条の三」にはかなり問題がある。「国は(中略)国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し」とある。琉球大の高良鉄美教授(憲法学)は「米軍基地問題をめぐっては、政府には『国益のため沖縄の犠牲もやむなし』という意図があるようだが、草案通り改憲されたら、国民が犠牲になる構図が次々に生まれかねない」と危ぶむ。
「2020年へ共通目標」東京五輪の機運利用される?
今後の改憲関連の動きはどうなるのか。まず、近年の経緯を確認しておく。
二〇〇〇年、衆参両院に憲法調査会が設けられた。○五年の最終報告書で、衆院側は九条改定の方向を明確に示し、参院側は「意見が分かれた」と記した。
改憲に関する法整備はそれ以降に進められた。憲法九六条は、国会が発議した改憲案を国民投票にかけると定めるが、投票に関する法律がなかった。○七年、具体的な手続きを定めた国民投票法が成立した。しかし、投票年齢を確定させられず、政権交代などがあったため、改憲に向けた歩みはいったん止まった。
自民の政権復帰前後、動きが再開し、昨年六月に「投票年齢は二十歳以上」「施行四年以降は十八歳以上とする改正国民投票法が成立し、改憲手続き自体は整った。
高良氏は、安倍首相の施政方針演説の中の「私たち日本人に二〇二〇年という共通の目標ができた」という発言に警戒感を強める。
「二〇年の東京五輪が近づくにつれて『新しい時代を迎える』という空気がつくられ、国威高揚の動きも強まる。これを利用し、改憲の動きが加速するのではないか。十分な議論がなく、何となくの雰囲気の中で質の悪い改憲案が通るのが怖い」と語った。
立憲主義と憲法9条をまもる新潟県民の集い 2013.1027
講師:浅井基文さん
http://youtu.be/TUZBC45Ge9Y
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ここはどこの国??知れば知るほど”ブルッ((((;゚Д゚))))”とくるわい…(゚д゚)!
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