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小出裕章先生:安倍さんもマスコミも「安全性を確認した」と言うかのようにねじ曲げて発言している

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警察、原発、そして政治家…権力の闇について考える
(ラジオフォーラム#111)

http://youtu.be/f_vwKWX5TVM?t=14m20s
14分20秒~第111回小出裕章ジャーナル
高まる再稼働の機運「原子力発電所が決して安全なんていうことは、誰も専門家は思っていませんし、規制委員会自身がそうではないと明言しています」

http://www.rafjp.org/koidejournal/no111/
explosion at the Fukushima Daiichi plant
Fukushima nuclear Radiation
今西憲之:
小出さん、あと1か月ほどしましたら、東日本大震災、そして福島第一原発の事故から4年が経過します。

小出さん:
そうですね。

今西:
にも関わらず、またまた原発再稼働という機運が高まってまいりました。そのトップバッター、九州電力の川内原発1号機、2号機、鹿児島県にありますけれども。川内原発ですね、昨年の9月、規制委員会が安全というお墨付きを与えてから、一気に再稼働の機運が加速しました。
原子力規制委員会

小出さん:
今、今西さんが「原子力規制委員会が安全のお墨付きを与えた」という言葉を使われたわけですけれども、原子力規制委員会は、そんなことを決して言っていません

もともと原子力規制委員会が、今使っている基準というのは、規制基準という基準です。それは、初めは安全基準という名前にしたかったのですけれども、「原子力発電所の安全というようなことは言えない」ということで、あえて規制基準という名前に変えたのです
新規制基準
その原子力規制委員会が川内原子力発電所に対して、新しい規制基準に適合するかどうかという審査を続けてきたわけですが、その結論として、「規制基準に適合したことを認める」と規制委員会は言いました。しかし、同時に、規制委員会の委員長である方が…

今西:
田中さんですね? はい。


小出さん:
はい。田中俊一さんが「安全だとは申し上げない」と、はっきりと明言しているのです。ですから、規制委員会は、何も川内原子力発電所が安全だとお墨付きを与えたわけではないのです。
委員長「安全だとは申し上げない」
ところが、政治の場では、安倍さんもそうですけれども「安全性を確認した」と言うかのようにねじ曲げて発言をしているわけですし、マスコミもそのねじ曲がったまま報道をしているということなのです
再稼働に求められている安全性は確保されてい安倍
原子力発電所が決して安全なんていうことは、誰も専門家は思っていませんし、規制委員会自身が「そうではない」と明言しています

今西:
なるほど。ということはですね、「定められた基準をクリアした」というそういう程度に考えればいいんでしょうか?

小出さん:
その通りです。規制委員会がそう言っているのです。
新安全神話というリスク原子力規制委員会の虚妄1

今西:
そして、鹿児島には桜島があります。桜島ですね、今年に入ってから、かなり激しい火山活動をしておるような報道もあります。九州電力ですね、この桜島について問われると、シュミレーションを出し、桜島に万が一のことがあっても、原発の手前で止まるみたいなですね、火砕流がですね、というようなシュミレーションを出してですね。どう言ったらいいんですかね。もうとんでもない内容のものを出してきました。こういう立地にある川内原発。このまま規制基準をクリアしたからという程度で再稼働する、これがですね、福島第一原発で事故があったにも関わらず、こういうことが続くというのが、私ちょっと信じられないんですけれども。原子力ムラでは、こういうことが当たり前なんでしょうか?
桜島 噴火シュミレーション

小出さん:
私自身も今西さんと同じように、信じられません。実に愚かなことだろうと思います。福島第一原子力発電所の事故にしても、東京電力を含め決してそんなことは起きない。どんなに地震が来ても、どんな津波が来ても、決して壊れないと言っていたけれども壊れてしまった。
(事故の)可能性があることをいうことは…
もちろん原子力発電所の危険性というのは、地震や津波だけにとどまらないで、他の要因だってあるわけですし、今、今西さんがご指摘くださったような火山の噴火というようなことだって、九州の場合には巨大なカルデラが5個も存在しているというような所であって、
九州南部のカルデラ
どんなに安全だと言ったとしても、やはり起きてしまう時には起きるだろうと、どんなに大事故が起きてほしくないと、人間が期待しても、やはり、ダメな時はあるということを覚悟しなければいけないと私は思いますし、その覚悟というのが、原子力発電所の事故の場合にはあまりにも悲惨なことになるので、私はするべきでないと思います

小出裕章ジャーナル

今西:
はい。それでですね、今、鹿児島の方で何とか再稼働を阻止しようと頑張っておられる仙波さんにちょっと質問をして頂きます。お願いします。

仙波敏郎さん:
先生、元姫路県警の仙波でございます。

小出さん:
はい、お話できてありがたいです。

仙波さん:
いえ、ほんとに先生の名前、私よくお聞きしとんですけども。私、現在、反原発の会阿久根の代表をしてるんです。その中で、いろんな反対運動して、いろんな勉強会もするんですけども、国民の皆さんがほんとに放射能がどれだけ危険かということがあまり理解してないかと思うんですが、先生、その点はいかがですか?
放射能と放射線について

小出さん:
はい。仙波さん、おっしゃる通りだと思います。これまで国、電力会社、マスコミを含めて、全部が「原子力は安全だ、いいものだ」としか、報道してこなかったわけですし、日本人のほとんどの人達が原子力発電の問題、被ばくの問題というものを知らないまま今日まで来てしまったと思います。
産業界の活躍を期待 原子力委員長 正力松太郎
ただしもうひとつたぶん要因があって、危険だということは承知してでも、自分達の生活のため、自分達の街の発展のためには原子力を受け入れるしかないというふうに思ってる方々も結構いるのではないかと、私は心配しています。
原子力明るい未来のエネルギー

仙波さん:
はい。いろんな方にアンケート取るんですね。60歳を超えた方が、平気で賛成しちゃうんですね。

小出さん:
そうですね、はい。

仙波さん:
「明日の生活のため」と言うんですね。でも、あなた方はもう子供産むこともないでしょうと。だけど今、10代の子供さんが、この放射能によって子供が産めなくなるかも分かんないと。そういこと考えてもほんとに賛成ですか?と問い詰めると、「いや、それは困ります」と。だから、ほんとに理解がしていない。どこともそうですけど、警察もそうですけど、毒まんじゅうを食らった方が多いと思うんですね。

わたしは、何さいまで生きられますか?
わたしは、何さいまで生きられますか?(´;ω;`)
※改ざんされています

小出さん:
はい、おっしゃる通りです。原子力というのは、私は麻薬だと呼んでいるのですけれども、一度、麻薬を掴まされてしまって、地域の経済がみんなそれに飲み込まれてしまうと、その麻薬から逃れることはほとんどできないという状況に今、地域の方々が追い詰められているのだと思います。
原発は麻薬 財政圧迫

仙波さん:
そうなんですね。私、ですから就任して、一番最初にお祝いに市役所へ来たのが原発の責任者なんです。

小出さん:
そうでしたか。ありそうな話ですね。

仙波さん:
でっかい胡蝶蘭持ってきましてね。「私がどういう立場でここ来たか分かるでしょ?」と。「名刺以外の物を持ってこられたら困る」ということで、厳しくお伝えしましてね。それがまだ原発事故のある前なんですよ。ところが他の市町村は、鹿児島26あるんですけども、全て行ってるんですね。

小出さん:
当然だと思います、はい。

仙波さん:
そうですか。私、それを拒否したんですけれど。

小出さん:
多分、仙波さん以外は皆さん受け取ったんではないかと私は思います。

仙波さん:
いや、それがですね。その後、事故があってですね。反対活動してるんですけども、ほんとに止めないと明日はどうなるだか思うんですけど先生、原子力ムラにおいでましてですね、今のようなご意見を言って、よくその立場でいれるなと思って。私それをですね。

小出さん:
いやいや、仙波さんだって、まだ殺されずに生きてらっしゃるわけですし。はい、私なんか仙波さんに比べれば、ぬるま湯のような所です。

仙波さん:
いえいえ。私、実は今、東京来ましてですね。今でもホームに立つ時、駅のホームに立つ時は電車に背を向けて立ってます。
写真

小出さん:
そうですか。私の友人も私に、「ホームでは決して一番前に立つなよ」とか言ってくれる人がいます。

仙波さん:
その通りです。もう当然です。

小出さん:
ただ、私自身一切そんなこと気にしないまま、今でも生きていますので、たぶん仙波さんほど厳しい状況ではないのだと思います。

仙波さん:
でも、ほんとにこの原発問題はですね、力は小さいですけど、一歩一歩反対を徹底して、再稼働を阻止したいというふうに思っています。

小出さん:
ありがとうございます。

仙波さん:
よろしくお願いします。

小出さん:
こちらこそ。

今西:
元警官と大学の偉い先生のトークとは思えない、非常に過激なトークでした。ほんとに。もうたぶん、ラジオフォーラム始まって以来の過激さだったかなあと思いますが。はい。小出さん、ありがとうございました。

小出さん:
こちらこそ、ありがとうございました。

仙波さん:
失礼します。

小出さん:
はい、失礼します。

忘れさせようとする策謀

福島市 小学5年生の女の子
わたしは、ふつうの子供を産めますか?

「わたしは、ふつうの子供を産めますか?何さいまで生きられますか?」

 なんで、わたしだけ、転校しないといけないんですか。

 毎日、長そで、長ズボン、マスク、ボウシでとても暑い日もいっています。

 外でも遊べません。まども、去年のようにはあけられません。

 わたしのお母さんは、いつもニュースを見るかパソコンをしています。

 わたしは2学期から転校します。あと7日しか、学校にいれません。とってもいやでとってもかなしいです。

 TVでは、福島市○○○は安全ですといっているけど、じっさいに、こうえん会にいくと、いろいろな人があぶないと言っています。

 他の県の人達も、福島の子供、わたしたちを福島県からにがそうと、いろいろプロジェクトを考えてくれています。

 なぜ福島市は、ひなんにならないのですか。

 「わたしの夢は去年とは全くちがいます」

*放射線をなくしてほしいです。
*ひなんくいきにしてほしいです。
*平和な国にもどってほしいです。
*ふつうの子供を産みたいです。
*長生きしたいです。
*本当にだいじょうぶと思っているのかを知りたいです。
*もう、じしんの国、日本に、げんぱつをなくしてほしいです。
*ひなんしている人を元気づけたいです。
*みんなが自然のえがおでみんなを元気にしたいです。
*日本中のみんなの力を合わせてふっこうしたいです。
*放射線がなくなって、外で犬をかいたいです。
*しゅくはくくんれんに今の学校の仲間といきたいです。

 お願いします。私たちを守ってください。



「安心して暮らしたい」福島の子どもが政府に訴え

http://youtu.be/uP2LCHHnero
福島の小中学生4人が上京し、原発事故の影響で辛い生活を強いられている自分たちの思いを綴った手紙約40通を、内閣府原子力災害対策本部と文部科学省の担当者に手渡し、「どうしてこんな思いをしなくてはいけないのか」と訴えた。
 
主催したのは、子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク。原発事故の一番の被害者である福島の子どもたちの声を永田町に届けようと企画したもので、会場の衆院議員会館には、首都圏だけでなく、京都や山口県からの参加者もあり、子どもたちの声に耳を傾けた。
 
中学2年生の橋本伽耶さんは、「わたしは6月に転校をしてとても悲しい思いをしました。友達も泣いて別れを惜しんでくれました。こんなふうにバラバラになっていくのは、わたしたちにとって耐え難く悲しいことです。出て行った人も残った人もお互いのことが心配でたまりません。ですから、わたしたちが学校の友だちとみんなで安全な場所に避難できるよう、真剣に考えてください。そして、わたしたちが避難している間に、森も山も川も田畑も、福島県全域を徹底的にきれいにする計画を立てて、実行してください。わたしたちが将来安心して暮らせるよう、最大限の努力をしてください」と訴え、避難範囲を見直し、学校ごと集団疎開できるよう訴えた。
 
子どもたちのストレートな問いに対し、政府の担当者は、「除染が期待されていると思うので
頑張ります」と回答。子どもたちの悲しい思いはそういうことではない。疎開については
どう思うのかと指摘されると、マイクをたらい回しにし、10人出席した政府関係者は誰ひとり、きちんとした回答をしなかった。

人の心を蝕む原発の魔性_1
人の心を蝕む原発の魔性_2
人の心を蝕む原発の魔性_3



NHKスペシャル シリーズ原発危機
「安全神話 ~当事者が語る事故の深層~」

http://v.youku.com/v_show/id_XMzI3Njk1ODMy.html
安全神話
大津波による全電源喪失、メルトダウン、水素爆発、そして放射性物質の拡散・・・。未曾有の大災害を引き起こした『福島第一原子力発電所』の事故で、これまで「絶対安全」とされてきた日本の原発の“安全神話”はもろくも崩れ去った。
長年、安全性の根拠となってきたのが、原子力安全委員会が定める『安全審査指針』だ。指針の策定や改訂をめぐって、専門家や官僚、電力会社は何を議論し、原発の安全を確保しようとしてきたのか。

調査報告 原発マネー
~“3兆円”は地域をどう変えたのか~

http://v.youku.com/v_show/id_XMzYzNDUxODQw.html
調査報告 原発マネー
福島第一原子力発電所の事故から1年。
東京電力は燃料費の高騰を理由に電気料金の値上げを予定している。その前提となる現在の電気料金制度が妥当なのかどうか。政府は複数の有識者会議を設け、検証を進めている。
焦点の一つが、原発の建設・運転にともない自治体に入ってくる、国からの「交付金」、電力会社からの「寄付金」などの原発関連コスト、いわゆる“原発マネー”である。
私たちの税金や電気料金から賄われているが、どれだけのカネが何の目的で自治体に渡されたのか、今もよくわかっていないものが多く、その全貌は明らかになっていない。
今回、NHKでは、44ある原発の立地自治体にアンケートを実施。
これまで自治体側に支払われた総額が3兆円に上ることが、初めて明らかになった。そして、自治体の行政サービスが、このカネに深く依存していた事が分かってきた。
国策としての「原発推進」と「地方振興」を両立させるという理念から、国・電力会社・立地自治体の間でやりとりされてきた原発マネー。
番組では、その使途を検証するとともに、私たちの払った税金や電気料金がどのように使われたかを明らかにする。




福島第1原発 排気筒 耐用基準超えか
倒壊なら放射性物質飛散も

(しんぶん赤旗)2015年2月20日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-02-20/2015022001_01_1.html
福島第一原発 排気筒耐用基準超えか


停滞する住宅再建 今春にも帰還の楢葉町
(東京新聞【こちら特報部】)2015年2月15日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2015021502000152.html
 福島原発事故の被災地で昨年来、避難指示解除が本格化しつつある。事故直後に町域の大半が立ち入り禁止となり、全町的な避難が続く福島県楢葉町は、今春にも解除を受け入れることを検討している。しかし、同町では肝心の住宅再建が滞っている。傷んだ家屋の修繕が進まず、帰るに帰れない状況だ。復興ムードを演出したい国は解除に前のめりだが、生活現場では山積する問題が放置されたままだ。
(榊原崇仁)

停滞する住宅再建 今春にも帰還の楢葉町_1

ピークこれから帰るに帰れず

 楢葉町役場前にある仮設商店街。オープンから半年がたち、昼時になると、食堂やスーパーは復旧復興関連の作業員らでにぎわう。商店街が面している国道6号は昨年九月に全線開通した。町内では、二十四時間営業のコンビニエンスストアが再び店を開けた。
 復興の足音が近づいているように見えるが、役場裏手の丘に目を向けると、一階部分が崩れかけたままの民家があった。町内を車で回っていると、傷んだ屋根にシートが掛けられた家屋が目立つ。修繕が進んでいる家屋はほんのわずかだ。
 「去年の初めに楢葉の持ち家の修繕を頼んだけど、一年以上たっても作業は始まっていない」
 楢葉から、いわき市内の仮設住宅に避難する男性(五六)はそう明かした。「家の中はネズミの運動場。至る所をかじられ、ふん尿の臭いが染みついた。湿気がたまり、床はベコベコだ」
 同じくいわきに避難する主婦(五二)の自宅は昨年八月に修繕が始まった。だが、「直してもらったのは網戸ぐらい」。全工程の一割程度しか終わっていない。
 事故直後、福島第一原発の二十キロ圈は、立ち入りが禁じられる警戒区域に指定された。楢葉町の大半はその区域だった。二〇一二年八月の区域再編で避難指示解除準備区域となり、通行は自由になったが、避難指示は継続された。人けのない家屋は傷みが進んだ。
 松本幸英町長は昨年五月、町内の除染が完了したことなどを受け、「早ければ一五年春の帰町を目指す」と宣言。この時期の解除受け入れを視野に検討を進める考えを示した。
 しかし、修繕予定の家屋は町内世帯の三分の二に当たる約千八百戸あり、町の担当者は「修繕のピークはこれから」と明かす。町の住民意向調査では、半数近くが帰町に前向きだった。早期に相当数の修繕を済ませる必要がある。
 担当者は「町民の方々は昔からの縁を大切にして、修繕を町内の顔なじみの建築業者に頼っている。新築時にお願いした業者なら任せやすいのだろう。ただ、町内の業者は十社程度しかなく、年配の一人親方ばかり。結局、手が回らなくなっている」と語る。業者の一人は「現場を仕切る親方に加え、手足となる職人も足らない」と話す。
 たしかに町外の業者に頼む手もなくはない。しかし、その場合、業者が遠方なら高速道路の通行料や宿泊費などが必要になり、負担がかさんでしまう。
 いわき市など比較的人口が多い地域では、避難住民が仮設住宅を出て、自宅を新築する例が増えているという。先の業者は「利益が出やすい新築案件は、大手ハウスメーカーが力を入れている。職人も囲い込んでいるようだ」と漏らした。

停滞する住宅再建 今春にも帰還の楢葉町_2

住民不安…国は前のめり

避難解除、地元の関与必要

 傷んだ家を解体し、その場所に新しい自宅を建てるケースもある。
 環境省は東日本大震災で半壊以上と認定した家屋を無償で解体しており、楢葉町内では一五年度末までに約千戸を手掛ける。町によれば、約二百戸は解体後に同じ場所で新築する。
 ただ、解体に取りかかったのは、当初計画より半年ほど遅い昨年十月から。環境省福島環境再生事務所の担当者は「解体で出る廃材の仮置き場の確保に時間がかかった」と説明する。
 解体のペースも、今年三月末までに二百三十戸の解体を予定していたが、二月初めまでに終わったのは約五十戸だけ。新築にまで進んだ例は皆無に近い。
 町の担当者は「解体を担う土木業者も、被災地の間で取り合いの状況。解体のペースが、今後上がるかどうか…」と気をもむ。
 自宅の敷地内ではなく、町内の別の場所で自宅を新築するという考えもありそうだが、楢葉町のJR竜田駅前で自宅兼食堂を構えていた佐藤美由紀さん(五〇)は「戻るなら、昔と同じ場所がいい。事故の前の生活に戻すというのは、そういうこと」と語る。
 町が先月二十五日から町民向けに開いている懇談会では、出席者から「帰町しても住む家、帰る場所がないという事態が起きる可能性が膨らんでいる」といった不安の声が上がった。
 町は「今春にも帰町」と避難指示解除の受け入れの目安を示してきた。松本町長は「避難指示を出したのは国。だから解除を決めるのも国」という認識だ。
 しかし、国がこれまで、地元の意向をくんで避難指示の解除を慎重に考え、その後の支援を丁寧に実施してきたかといえば、疑問符を付けざるを得ない。むしろ、福島県内の先例を見る限り、生活環境が整わないまま、帰還を促してきたように思えてならない
 国は昨年四月に田村市、十月に川内村について「除染によって放射線量は下がった」などとして、それぞれ避難指示解除準備区域の指定を解除。十二月には、南相馬市でも特定避難勧奨地点の指定を解いた。
 除染が行き届いていないことを指摘する住民がいたにもかかわらずだ。
 田村市と川内村の住民は解除から一年後、南相馬市は今年三月で、避難に伴う賠償を打ち切られる。震災で仕事を失い、将来展望を持てない住民が少なからずいても、解除後に待っているのは「後は自力で」という冷徹な現実だ
 楢葉町の場合、「今春」という町の目標が国に都合良く引き合いに出され、住宅再建が進まない中で避難指示が早々に解除されてしまう可能性がある。
 その際、住まいの確保は死活問題だ。避難生活を続けるにせよ、仮設住宅や借り上げ住宅で暮らせる期限は、現時点では一六年三月までとなっている。
 国と福島県が協議して決めるこの期限は、すでに三回延長されてきた。もしも四回目がなければ、修繕が終わっていない家屋に住まざるを得なくなったり、最悪の場合、路頭に放り出される事態に至りかねない
 大阪市立大の除本理史(よけもとまさふみ)教授(環境政策論)は「そもそもの問題は、国が何か判断を下す際、地元がそこに関与できる手続きがルール化されていないことだ。地元側は歯止めをかける有効な手段がないため、国が都合良く物事を進めやすくなっている」と指摘する。
 「地元軽視の構図を変える努力をしなければ、実情とかけ離れた復興にしかならないだろう。これは他の自治体にも当てはまることだ。楢葉だけの問題で済ますことはできない

停滞する住宅再建今春にも帰還の楢葉町デスクメモ



禍根残した記事取り消し 朝日の吉田調書報道を考える
(東京新聞【こちら特報部】)2015年2月7日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2015020702000143.html
 東京電力福島第一原発事故をめぐる「吉田調書」をスクープした朝日新聞社の記事は「虚報」「捏造(ねつぞう)」なのか。同社は「調書を読み解く過程で誤り」があったとして記事を取り消した。だが、「誤報ではない」と主張する弁護士らは記事取り消しの撤回を求めている。日本新聞労働組合連合は、新聞労連ジャーナリズム大賞の特別賞を吉田調書報道に贈った。政府が隠蔽(いんぺい)する情報を公にするのはジャーナリズムの使命だ。日本人人質事件で政権批判を自粛するムードが広がる中、吉田調書報道をいま一度考える。
(上田千秋、篠ケ瀬祐司)

禍根残した記事取り消し朝日の吉田調書報道を考_1

秘密資料
入手したのに

 脱原発弁護団全国連絡会共同代表の海渡雄一弁護士やジャーナリストの鎌田慧氏らは昨年十二月、吉田調書に閧する記事の取り消しと記者への処分を撤回するよう求める声明を出した。海渡氏は「非公開の資料を入手して報じたのだから、国民の知る権利に応えたといえる」と訴える。

 「誤報ではない」

 問題の記事は、昨年五月二十日付朝刊の一面トップに掲載された。福島第一原発の吉田昌郎(まさお)所長(当時=二〇一三年七月に死去)が政府事故調査・検証委員会の調べに答えた聴取結果杳「吉田調書」を独自に入手。事故時に原発の所員がどういった動きをしていたかを知る第一級の資料だ。
 見出しは「所長命令に違反原発撤退」。東日本大震災四日後の一一年三月十五日早朝、吉田所長が第一原発構内での待機をテレビ会議で命令しながら、所員の九割に当たる約六百五十人が十キロ南の福島第二原発に撤退したと指摘した。一部週刊誌は内容に異論を唱えたが、朝日は「外形的事実に誤りはない」との姿勢を崩さなかった。
 ところが、遅れて調書を入手した新聞やテレビが「吉田所長は全面撤退を否定している」などと報道すると、流れが変わった。政府が調書を公開した昨年九月十一日、木村伊量(ただかず)社長(当時)らが会見し、記事を取り消すと表明。「所員の多くに『命令』が伝わっていたかどうかを確認できていないなど、取材が不十分だった」と釈明した。
 さらに十一月中旬、弁護士と大学教授計三人でつくる社内の第三者機関「報道と人権委員会」がまとめた「所長命令に違反したと評価できる事実はなく、裏付け取材もされていない」とする見解を公表。同月末には、記事に関わった六人を停職や減給処分とした。
 では、海渡氏らが「誤報ではない」とする根拠は何か。最も重視するのが、吉田所長が原子力安全・保安院(現原子力規制委員会)に送ったファクスだ。十五日午前六時三十七分に「念のため対策本部を福島第二へ移すこととし、避難いたします」と発信し、午前七時には一先ほどの退避については監視、作業に必要な要員を除き、一時待避することに内容を訂正いたします」と変更されている
 加えて、東電の各部署や各原発と結ばれているテレビ会議を聞いていた柏崎刈羽原発(新潟県)の所員が残していたメモにも、午前六時四十二分に吉田所長が「構内の線量の低いエリア
で退避すること」と発言したとの記載
があった。
 海渡氏は「テレビ会議を聞いていた幹部が命令を理解していたことは状況から間違いない。下の所員まで伝わらなかったのは幹部が言わなかったからであり、その点は明確に命令違反だ」と断じる。

禍根残した記事取り消し朝日の吉田調書報道を考_2

翼賛体制進むのでは

人質事件
政府批判「萎縮」に危機感

 朝日新聞の「原発吉田調書をめぐる特報」が、第十九回新聞労連ジャーナリズム大賞の特別賞に選ばれたのは、記者への処分から1ヵ月余りが経過した今年一月初旬。問題を蒸し返した格好だ。
 選考評は「非公開とされていた調書を公に出すきっかけになったという点で、昨年一番のスクープと言っても過言ではない」と絶賛した上で、記事の取り消しについて「選考委員は『虚報や捏造と同列に論じるのはおかしい』との見解で一致した」と批判した

調書公開させた

 選考委員の一人でフリージャーナリストの青木理(おさむ)氏は「吉田調書に関する朝日の報じ方にはいろいろな評価があるが、権力側が隠す情報を手に入れて報道し、それをきっかけに調書を公開させた功績は評価すべきだ」と強調する。
 吉田調書の記事は、慰安婦が強制連行されたとする故吉田清治氏の証言記事などと同時期に取り消された。吉田調書自体は存在するにもかかわらず、「伊藤律架空会見」(一九五〇年)やサンゴ事件(八九年)と同様、報じられた事実そのものが捏造だったとみなしたに等しい。
 朝日広報部は、「こちら特報部」の取材に対し「新聞労連の表彰は、同団体の考えでなされたものであり、見解を述べる立場にない。記事取り消し、社員の処分について見直す考えはない」とコメントした。
 青木氏は「全部謝って済ませたいとの気持ちは理解できないではないが、吉田調書報道の取り消しは禍根を残した」と残念がる。
 「原発事故の実態や、調書を隠してきたことに焦点があたらず、朝日たたきの材料になってしまった。政権や原発再稼働を目指す側には一石三鳥だ。今後は『けがをするぐらいならやめておけ』とメディアの自主規制が強まりかねない
 実際、過激派組織「イスラム国」による日本人人質事件では、いまなお政府批判を自粛する空気が蔓延(まんえん)する。「政府批判はテロと同じ」といった極論まで飛び交う始末だ。
 青木氏は「メディアが秘密を暴いて短期的に国益を損ねても、問題を顕在化して解決に向かわせることで、中長期的な『市民益』になる。だが今は『なぜ国の秘密を暴くのか』と批判される」と危惧する。
 もちろん、自粛ムードに対抗する動きはある。作家や映画監督、俳優の有志らは九日、参院議員会館で「自粛という名の翼賛体制構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明」を発表する。「非常時は政権批判を自粛すべきだとの理屈を認めると、(戦前と同じ)翼賛体制の構築に寄与する」と警鐘を嗚らす予定だ。
 まさに翼賛体制のきっかけは、一九一八年に起きた大阪朝日新聞の「白虹筆禍事件」とされる。政府批判の関連記事で、君主への反乱を示唆する「白虹日を貫けり」の語句があったことから、当局は記者らを起訴。社長は辞任に追い込まれ、結局、政府に恭順の意を示すことになった。
 声明の賛同人の一人でジャーナリストの今井一氏は「既に危ない状態にある」と言論界の自覚を促す。
 「こんなご時世だから政府批判はよくないというのは、自粛ではなく萎縮だ。誰が、どの党が政権を担おうとも、批判すべきがあれば臆さずに書き、話さなければ戦前に戻ってしまう。戦前も『自分たちは遠慮をしていない。国のために自重しているだけだ』と言っていたではないか

禍根残した記事取り消し朝日の吉田調書報道をデス


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