2015/02/11 敗戦70年と象徴天皇制の70年を撃つ 2・11反「紀元節」行動 集会とデモ(東京・原宿)
http://2015211.blogspot.jp/
より
▼ 12月の衆院選で「勝利」した安倍政権は、どのような無茶も「国民の信任」のもとで強行できると思い上がっているようだ。もはや法も人権も民主主義もない、傍若無人に戦争をする国づくりに突き進む姿しかみえない。
▼ 侵略戦争と植民地支配の歴史。戦前より一貫して利用し尽くすだけの支配的関係を強いてきた沖縄の基地問題。原爆被害をまんまと原発推進にすり替えた詐欺の政治。歴史に頬被りを決め、戦争を「平和」と言いくるめてきた日本政府は、米国との密約を重ねることで無反省・無責任な「敗戦処理」と「戦後復興」を果たした。
▼ その結果とも言える差別・排外主義、偏狭なナショナリズムに社会は席巻され、あらたな棄民政策による貧富の格差は拡大するばかり。憲法破壊と戦争国家のゴールがそこに見えている。
神の国発言 - Wikipedia
NHK・神の国発言「指南書」事件のその後
http://voicejapan2.heteml.jp/janjan/media/0707/0707279895/1.php
川崎泰資氏は「NHKはまったく間違ったメッセージ、つまり、正直で真面目に働いているものは損をし、権力にこびるものが得をするというメッセージを世に送っている」と言う。
首相就任直後の2000年5月、森喜朗首相(当時)は、いわゆる“神の国”発言で注目を集めた。このとき、首相は一人の記者からある指示を受けていたという。
首相のために用意された極秘メモ(いわゆる指南書)によると、その記者は、他社の記者たちが今回の発言で厳しく追及するつもりだと首相に警告、また、「質問をはぐらかすべき」「時間がきたら[役人に]会見を強引に打ち切らせるべき」だと助言した。元・NHK政治部記者(前・椙山女学園大学教授)の川崎泰資氏らの著書『検証 日本の組織ジャーナリズム-NHKと朝日新聞』(岩波書店)や複数の関係者によると、その記者とは当時首相官邸を担当していたNHK政治部記者の大木潤氏だという。
地方紙の西日本新聞の記者は、首相官邸記者クラブ内のコピー機に忘れられていたこのメモを見つけ、そのメモとこの問題に関する記事を掲載したが、ほとんどの大手メディアは無視を決め込んだ。大手の記者の中にはいわゆる「内輪話」であるはずのものを暴露したと西日本新聞の記者を叱ったものまでもいた。西日本新聞の記者らは自分たちの仕事、つまりニュースの報道、をしただけだという。
「首相官邸記者クラブの多数派がまさに首相に飼われる『番犬』に成り下がり、指南書を書いた記者と同一水準にあることを示すことにもつながる」と川崎氏は大メディアの背信行為を厳しく批判している。大木氏(当時は名前を伏せられていた)の解雇を求める声や、NHKが説明責任を怠っているという批判する声もあった。しかし、大木氏もNHKも過ちを犯したことを正式には認めなかった。
同志社大学社会学部メディア学科の浅野健一教授は、この問題は「日本政治の重要な歴史的局面において、森元首相の“神の国発言”の責任をあいまいにしたという点でかなりひどい」ことであると指摘する。また、この問題は日本の政府とメディアのもたれ合い関係の典型的な例だと専門家は言う。自民党が戦後のほとんどの時期で与党であったため、日本は、政権交代をほとんど経験したことのない世界でも数少ない先進国である。メディアが自民党の一党支配を助長してきたと指摘する専門家も少なくない。
「長い間、大メディアは自民党の意のままになってきました。これは自民党の長期政権の秘密の一つです」と政治評論家・森田実氏は言う。ここ数年間鳴りを潜めていた大木氏だが、最近朝のニュース番組の編集責任者に昇進した。大木氏が森首相に「指南書」を書いたのかどうかを聞いたところ「書いてませんって。うるさい」と言い電話を切った。
大木氏の昇進は、日本軍の戦時中の性奴隷制度を裁く市民法廷のドキュメンタリー番組制作に関わった二人のプロデューサーを左遷にした人事とまったく対照的である。市民法廷では、第二次世界大戦中何万人もの女性を性奴隷にすることを許可した罪で昭和天皇が有罪となった。二人のプロデューサーは、政治的圧力により番組の内容を変更するように命令されたと証言している。
川崎氏は「NHKはまったく間違ったメッセージ、つまり、正直で真面目に働いているものは損をし、権力にこびるものが得をするというメッセージを世に送っている」と言う。氏は、田中角栄元首相の派閥に関する番組が自民党からの圧力で放映中止にさせられると、同じように左遷させられたのだ。
市民法廷の番組では、当時、自民党副幹事長であった安倍晋三氏や経済産業大臣の中川昭一氏(現・自民党政調会長)らがNHKに圧力をかけたと報じられたが、NHK、安倍、中川の両氏とも繰り返し否定した。「国会でNHK予算案が審議されている時期には自民党政治家に従うべきだ」というNHK幹部からの命令が下ったのだと関係者やジャーナリストは言う。
今年1月下旬、東京高等裁判所はNHKが性奴隷制度に関するドキュメンタリー番組の内容を政治家の意見を重く受け止め変更したと認定、また、NHKは「その番組における編集権を乱用した」と述べた。東京高裁は、NHKと子会社の二社にドキュメンタリー番組の制作に協力した市民グループVAWW-NETジャパン(「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク)に賠償金を払うよう命じた。この問題に関して報道を続けてきたジャーナリストの魚住昭氏は、「NHKを報道機関と考えるべきではない」と結論付けている。
「NHKには報道の自由や表現の自由はまったく存在しません」と川崎氏は強調した。NHKは失脚したはずの海老沢元会長の「恐怖政治」下にあり、海老沢氏が今も強大な影響力を行使しているという。NHKのアナウンサーやプロデューサー、支局長が様々な犯罪で逮捕されるなか、東京高裁の判決はNHKの評判を汚す一連のスキャンダルの一部分であった。
以下略
きょうの潮流
(しんぶん赤旗)2015年2月11日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-02-11/2015021101_06_0.html
建国記念日の定義や性格は国それぞれ。アメリカやインドのように独立を祝ったり、革命を記念するフランスやキューバみたいに。ドイツは東西が統一した日をあてています
▼きょう、2月11日は「建国記念の日」。「建国をしのび、国を愛する心を養う」という趣旨で1967年から「国民の祝日」として適用されてきました。しかし、史実ではなく神話を基にしている日本の建国記念は、世界でもまれです
▼かつて、この日は「紀元節」と呼ばれました。『日本書紀』の日本神話のなかで初代天皇とされる神武天皇。その架空の人物が即位した日を明治政府が算出し、国民が祝う日として定めたのです
▼神の子孫である神武天皇から日本の歴史が始まり、その子孫による統治は永遠に変わらない。日本は神の国である、という天皇中心の歴史観を国民に植えつけるためでした。偏狭な愛国心の押しつけは国の破滅を招きました
▼戦後、紀元節は廃止されましたが、自民党政府が「建国記念の日」として復活させます。根拠のなさを指摘する歴史学者、ウソを教えることはできないと反対する教育者。歴史の過ちをくり返してはならない、の声は上がりつづけます
▼安倍首相は今年も“建国神話の日”を前にメッセージを出しました。「今日の我が国に至るまでの古(いにしえ)からの先人の努力に思いをはせ、さらなる国の発展を願う」と。彼のいう先人が何を指しているのかは分かりませんが、この国を建ててきたのは神話ではありません。無数の民の力です。
右傾化の流れと「建国記念の日」
纐纈厚 「ニッポン」復活
文化学問(しんぶん赤旗)2015年2月10日
成熟した民主主義社会へ
原点に返り再考するとき
2月11日の「建国記念の日」がやってくる。旧暦の2月11日は、7世紀に成立した皇室神話の初代天皇とされた「神武天皇」の即位の日とされる。戦前に「紀元節」と命名され、日本にとって最も重要な日となった。日本が「神の国」であることを示す日として、日本人の精神をも支配する象徴の日であった。
それはまた、天皇制が、この国の価値や制度など全ての基礎だと認識させる「国体」の思想に直結した。敗戦を機会に、「国体」の思想も制度も清算し、「国体」によって支えられていた軍国主義に代わって民主主義が、この国の基本軸に据え置かれた。
だが、戦後出発して間もない時代から、戦前回帰の思想や精神が復活してくる。その動きは佐藤栄作内閣の折、1966年6月25日に「国民の祝日に関する法律改正」が公布されたことから本格化する。次々に祝日が設定されていく流れに便乗する格好で、同年12月8日、建国記念日審議会が「建国記念の日を旧紀元節の2月11日とする」との答申を政府に提出し、これを受けて翌日9日に政令として公布された。
すなわち、佐藤内閣は国民の合意としてではなく、政府の意思として政令で、事実上の戦前への回帰を強行したのである。政令公布当時には、法制化を望む側と戦前への回帰に反対する側の双方から抗議がなされた。「建国記念の日」制定以後、日本の内外から右傾化や軍事化を憂える声も活発となった。67年4月15日の統一地方選挙で、社共推薦の美濃部亮吉氏が東京都知事に当選したのも、その証明でもあった。
現在では記憶が薄らいでいるようだが、70年7月14日、佐藤内閣は日本の呼称を「ニホン」から「ニッポン」と破裂音にすることに統一した。すなわち、戦前の日本社会で通用していた呼び方を復活させたのである。それは「大日本帝国(ダイニッポンテイコク)」を想起させるものであった。
以後、時代が下がって79年6月6日に元号が法制化され、80年代以降、タカ派首相とされた中曽根康弘内閣の登場もあって、日本社会は一段と右傾化・軍国主義化の傾向を強めていく。
誤った愛国主義
昨年7月1日、安倍内閣は集団的自衛権行使容認を閣議決定する。今後国会で関連法案の審議が始まる予定だが、自衛隊の海外派兵が法制化・制度化される段階に達した今日、誤った愛国主義の普及に拍車がかけられる状況にある。愛国主義の掛け声が国家の安全保障確保を理由に宣伝され、本当の意味での国民の生活や安全が蔑ろにされかねない方向にある。だが、それは平和憲法を掲げるわが国の歩むべき道ではない。
いまこそ、どうすれば成熟した民主主義社会を創り出していけるのか、今一度原点に立ち返って再考する時であろう。国際社会から信頼される普遍的な平和や民主主義を実現することが、本当の平和や安全確保への方途であることを確認したいのである。そして私は、日本国憲法が公布された「11月3日」を「文化の日」ではなく、「日本国生誕の日」とすべきではないかとさえ思う。
「戦場に行ったこともない奴が語る愛国主義には吐き気がするよ」
オリバー・ストーン監督に聞く 戦争と歴史
2013年08月16日
http://www.huffingtonpost.jp/2013/08/13/oliver-stone_n_3752018.html
より
■ストーン監督が徹底して歴史の真実と権力批判にこだわるのは、ベトナム戦争での経験が影響しているのか
ストーン氏:
それは間違いない。私はウォール街で働く父を持ち、ニューヨークで生まれ育った。極めて保守的な人間だったが、ベトナム戦争で価値観が完全に変わった。80年代にレーガン政権がベトナムと同じようなことを南米でしようとしたとき「政府は信じられない」と確信し、積極的に批判をするようになった。90年代になると『JFK』や『ニクソン』など、さらに政治的に踏み込んだ映画を作った。2008年には当時現職だったブッシュ大統領を批判する『ブッシュ』を作った。
戦場経験がある人間とそうでない人間では戦争に対して明らかな考え方の違いがあると思う。みんなが戦争のことを正しく理解できるとは思わないが、より注意深くそのことを考える必要がある。アメリカでは、第二次世界大戦でもベトナム戦争でも帰還兵と国内にいた人の間で何度も摩擦が起きた。戦争に行っていたものは理由なく「殺人者」とか「異常者」とみなされ批判された。
アメリカの上院には、ベトナム戦争で北ベトナム側の捕虜となって監禁・拷問などの地獄を味わったジョン・マケイン(John Mccain)と一度も戦争に行ったことがないのに他国への軍事介入に熱心なリンジー・グラハム(Lindsey Graham)という対照的な二人の議員がいる。彼らの考え方の違いを比べてみて欲しい。後者のような人間が語る「愛国主義」は吐き気がするほど不快だ。うんざりするよ。
カズニック氏:
イラクやアフガン戦争で話題になった「チキンホーク(Chicken Hawk)」という言葉がある。自分は戦争から逃げ続けてきたのに、戦争や軍事介入を積極的に支援する人たちのことだ。ブッシュやチェイニーが典型だろう。彼らは自分たちが避け続けた戦場へ若者たちを送り出し、危険にさらしている。
■日本は第二次大戦以来、戦争をした経験がない。そのことが歴史観に影響を与えているという考えもある
ストーン氏:
私たちが来日した理由の一つがそれだ。日本人にも現代史をこれまでとは違う視点から見て欲しいという思いでこのドキュメンタリーを作り、各地で話をしている。日本にもこのような種類のドキュメンタリーや歴史書があるのだろうか。
カズニック氏:
今回の訪問に非常に多くのメディアが注目していることは、歴史を違った視点から見るということへの関心が高いことの現れだろう。日本人にも「Untold History of Japan」を書いて欲しい。私たちはそれを待っている。日米関係はほかに類のないほど密接な二国間関係だ。血塗られた歴史もあるがそれを超えた強い絆を持っているのだから、お互いに歴史を語りあうべきだ。
■ストーン監督は「日本人はなぜ反戦・反核にもっと積極的にならないのか。声を上げる政治家もいない」と指摘した
ストーン氏:
第二次世界大戦後、日本ほど急速に「アメリカ化」した国はなかっただろう。マッカーサー将軍の上陸以降、アメリカ製の車や電化製品などがなだれこみ日本のライフスタイルは一変した。その時、日本人は自らの「個性」を保つことを意識したのだろうか。私は映画監督として、黒澤明や小津安二郎、溝口健二らが作品に込めた「日本人の精神性」や「宗教観」を尊敬している。そのようなものはまだどこかに残っているのか?
カズニック氏:
私の大学にも日本人学生がいるが、アメリカ人に比べればおとなしい印象がある。それは他人よりも目立つことで注目されることを恐れ、衝突を避けようとする国民性が影響しているのかもしれない。自由な意見を出そうと試みる人もいるが、社会的圧力がかかることもある。極端な例としては、1980年代から日本軍が太平洋戦争で犯した戦争犯罪についての議論が始まったが、長崎市長が天皇の戦争責任に言及したことに反感を持った右翼団体の幹部に銃撃された事件などがある。
チキンホーク = タカ派チキン = 誰かさん凸(゚Д゚#)
政権に巣食う改憲・右翼団体「日本会議」勢力
主張・言動に見る異常
(しんぶん赤旗)2014年9月7日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-07/2014090701_03_1.html
安倍晋三首相を含む19人の閣僚のうち15人が、改憲・右翼団体「日本会議国会議員懇談会」(日本会議議連)に加盟している第2次安倍改造内閣。その日本会議と同議連が展開する主張や活動はどのようなものなのでしょうか―。
侵略戦争を 「正義の戦争」
「諸悪の根源は、東京裁判史観」。日本会議議連の平沼赳夫会長(次世代の党党首)が日本会議設立10周年のさいに寄せたあいさつ文の言葉です。戦後、日本がサンフランシスコ条約で受諾し、国際社会復帰の基礎となった極東国際軍事裁判(東京裁判)が下した日本の侵略戦争に対する断罪を否定しようというのが、日本会議の根本思想です。
日本会議は、過去の日本の侵略戦争を「アジア解放」の「正義の戦争」と美化してきた靖国神社への「二十万人参拝運動」を展開。天皇参拝実現に向け、歴代首相に参拝を強く要求してきました。
改憲目指して「愛国心」強制
日本会議は、日本国憲法、とりわけ不戦と戦力不保持を定めた憲法9条への攻撃を続け、「国防体制」充実のための改憲を主張。日本会議議連や「靖国」派の地方議員でつくる「日本会議地方議員連盟」が地方議会で「憲法改正の早期実現を求める意見書」を採択させる先頭に立っています。3日の内閣改造を受け、「この日が憲法改正運動のスタートとなる」(日本会議大阪のフェイスブック)と改憲に期待を寄せています。
日本会議は改憲に向けた世論構築のために「愛国心」教育強化などを求めてきました。
女性活躍相に就任した有村治子氏は、昨年の参院選で日本会議推薦候補として当選。推薦を受け有村氏は「戦後の教科書からは、万世一系という言葉は消えました。そこから始めていかなければいけない」(日本会議の月刊誌『日本の息吹』13年6月号)などと天皇中心の「日本の国柄」を教育に持ち込む狙いを語っています。
「慰安婦」記述教科書を攻撃
日本会議は、南京大虐殺や旧日本軍「慰安婦」問題での教科書の記述などを指して「わが国の歴史を悪しざまに断罪する自虐的な歴史教育」(「日本会議がめざすもの」=同会議ウェブサイト)などと攻撃しています。
通常国会で「慰安婦」問題で旧日本軍の関与を認め公式に謝罪した「河野談話」(1993年)の検証や見直しを政府に求めたのは山田宏議員(当時=日本維新の会所属、現・次世代の党幹事長)ら、日本会議議連所属の国会議員です。
今回入閣した山谷えり子国家公安委員長は12年5月、「慰安婦」記念碑を設置した米東部ニュージャージー州パリセーズパーク市を訪問し、同市市長らに記念碑撤去を求める行動に及んでいます。
「男女共同参画」に反対
男女の社会的差別をなくす「ジェンダーフリー」の運動や教育が世界で広がっていますが、これを否定しているのも日本会議です。
日本会議議連所属議員らも「性差別」の廃止をうたう政府や各県の「男女共同参画」の動きまで「男らしさや女らしさを否定する」ものと批判。10年3月に「日本の国柄と家族の絆を守るためストップ!夫婦別姓」と題して開いた集会には、今回初入閣した高市早苗総務相や山谷、有村両氏のほか、自民党政調会長に就任した稲田朋美氏が参加しました。
日本最大の右派組織 日本会議を検証
(東京新聞【こちら特報部】)2014年7月31日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2014073102000168.html
女性蔑視やじ、ツイッター上で差別的表現…。最近世間を騒がせた地方議員には、日本最大の右派組織といわれる「日本会議」の地方議員連盟メンバーが少なくない。その影響力は地方のみならず、政権中枢にも及ぶ。安倍晋三首相は、同会議に賛同する国会議員懇談会の特別顧問だ。憲法改正や集団的自衛権の行使、伝統的家族観の尊重などの主張は、首相の政治信条と重なる。知っているようで知られていない日本会議を徹底検証した。 (篠ケ瀬祐司、林啓太、佐藤圭)
女性蔑視やじ、ツイッター物議・・・地方議連のメンバー
今年六月の東京都議会で女性都議に「早く結婚したほうがいいんじゃないか」とやじを飛ばした鈴木章浩都議=自民党会派を離脱―は、日本会議の地方議連メンバーである。
「(日本会議とは)いろいろな分野でおおむね方向が一緒だ」
鈴木氏は「こちら特報部」の取材に淡々と語った。鈴木氏は二〇一二年八月、地方議連メンバーらとともに、政府が立ち入り禁止にしていた尖閣諸島(沖縄県石垣市)に上陸した。タカ派的な行動でも物議を醸した人物なのだ。
女性蔑視やじほどには話題にならなかったが、北海道でも、地方議連メンバーが一騒動起こした。道議会の自民党会派に所属する小野寺秀(まさる)道議がツイッター上で、集団的自衛権の行使容認に反対する男性が東京・新宿で焼身自殺を図ったことについて「愚行」と発言、これを批判したコメントヘの反論で差別的表現を使った。自民党は今月三日、道議に口頭で注意した。
ネット上では、小野寺氏‘を「ネトウヨ(ネット右翼)議員」と揶揄する向きもあるが、小野寺氏は「日本が好きで、次の世代にどう良い国を残すかという思いでやっている。ネット右翼と言われるのは不本意だ」と話す。
そもそも日本会議とは何か。
結成は一九九七年五月。保守系宗教団体などでつくる「日本を守る会」と、保守系文化人や旧軍関係者などを中心とする「日本を守る国民会議」が統合した。現会長は元最高裁判所長官の三好達氏だ。
「誇りある国づくり」を目指す運動方針では、皇室を尊び、同胞感をかん養する▽新憲法制定▽祖国への誇りと愛情を持った青少年の育成▽安全を保障する防衛力を整備し世界平和に貢献-などを掲げる。
その規模は、右派の民間組織としては国内最大級だ。同会議の広報によれぱ、会員数は三万五千人にのぽる。四十七都道府県本部のほか、二百二十八支部を擁する。
中央政界とのパイプも太い。日本会議の発足と同時一に立ち上げた「日本会議国会議員懇談会」(会長・平沼赳夫衆院議員)は五月現在で二百八十九人が加盟する。役員には政権の主要メンバーが並ぶ。安倍首相と麻生太郎副総理兼財務相は特別顧問、幹事長は衛藤晟一首相補佐官だ。会員向けの月刊誌「日本の息吹」○九年九月号で紹介された加盟議員と照らし合わせると、安倍内閣の閣僚十九人のうち十三人が懇談会メンバー。「日本会議内閣」との声も漏れる。
冒頭で紹介した地方議連は、会議設立十周年の○七年にスタートした。加盟議員は千六百人に達する。
国旗国歌法、改正教育基本法 首相の政治信条と重なる
「日本の安全は守られるのかと考える若者は増えている。大手メディアの報道に疑問を持つ人が日本会議の門をたたいている」
日本会議広報担当の村主(むらぬし)真人氏は、これまでの運動の成果に自信を見せる。
実際、国旗国歌法(99年)や、第一安倍政権での改正教育基本法(06年)、尖閣諸島付近の中国漁船衝突事件を機に海上警察権が強化された改正海上保安庁法と改正外国船舶航行法(12年)などは、会議の主張に合致している。
会報の8月号には「集団的自衛権行使、限定容認へ」の大見出しが躍った。「今後は、集団的自衛権行使の関連法案の成立を急ぐよう政界に働き掛けるとともに、憲法改正に向けた運動を全国で展開していく」(村主氏)
なるほど日本会議は、日本の政治に強い影響力を持つにいたった。ところが、日本会議に関する研究はあまりない。数少ない「日本会議ウォッチャー」は現状をどう見るか。
山口智美モンタナ州立大准教授(文化人類学)は「国会議員のみならず、地方議員や宗教関係者の動員力を駆使した運動は、教育基本法改正や首相の靖国神社参拝、選択的夫婦別姓導入の阻止など90年代後半からの右傾化の流れを確実にした」と強調する。
山口氏は、共著『社会運動の戸惑い』の中で、日本会議の反フェミニズム運動を取り上げた。03年、東京都立七生(ななお)養護学校(日野市、現七生特別支援学校)の性教育を非難した都議には、のちに日本会議地方議連に加わった人もいた。「00年代前半、日本会議は集中的に反フェミニズム運動を展開した。その中心にいたのが安倍首相。都議会での女性蔑視やじの主が地方議連メンバーだったことは、伝統的家族重視という日本会議の方向性からして全く驚かない」
山口氏は、ヘイトスピーチ(差別扇動表現)が社会問題化している在日特権を許さない市民の会(在特会)などとの関連にも注目する。「在特会などの『行動する保守』は、日本会議などの主流保守運動を『きれいごと保守』として批判してきたが、慰安婦問題などの歴史修正主義や排外主義のおおもとは、日本会議などの運動の中で培われたものだ」
右傾化「草の根で対抗を」
「議員を通じて中央と地方の政治を動かしている」と指摘するのは、市民団体「子どもと教科書全国ネット21」の俵義文事務局長だ。特に地方の動きを危惧する。
俵氏の独自集計によれば、地方議連メンバーが4割を超える県議会は15に及ぶ。そのひとつの群馬県議会は今年6月、県立公園「群馬の森」(高崎市)の朝鮮人強制連行追悼碑の撤去を求める請願3件を採択した。紹介議員の南波和憲、狩野浩志両県議は地方議連メンバーだ。
前出の村主氏は「団体として『歴史修正主義』『反フェミニズム』を見解や方針に掲げたことは過去に一度もない。批判のためのレッテル貼りだ。学校教育では、自国の歴史に対する理解と愛情を育むことを第一の目標とし、家族の問題では、自国の伝統や生活様式を尊重すべきだ」と反論する。
日本の右傾化を憂う人たちからすれば、このまま放置はできない。
俵氏は「9条の会のような草の根で対抗していくしかない」と訴える。
歴史研究者らでつくる「日本の戦争責任資料センター」の上杉聡事務局長は「前身の『日本を守る会』は、旧満州(中国東北部)侵略を主導した将校らの思想的バックボーンとなった宗教右派の流れをくむ。同じく『国民会議』は右翼と結びついた組織だった。そうした日本会議の危険な実態をもっと知らせていくべきだ」と警鐘を鳴らした。
道徳、「読む」から「考える」に 教科化へ指導要領改定案
(東京新聞)2015年2月5日
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015020590070210.html
文部科学省は4日、現在は小中学校の教科外活動の道徳を、正式な教科とする学習指導要領の改定案を公表した。小学校では2018年度、中学校では19年度に教科化される見通しで、授業で検定教科書が用いられ、子どもの学習評価も始まる。文科省は「教材を読むだけの読み物道徳から、考え、議論する道徳への転換を目指す」と説明している。
学習評価は記述式とする方針で、専門家会議で詳細を詰める。一五年度から移行措置として新指導要領に基づく授業が可能になる。
改定案は「数値などによる評価は行わない」とし、一般教科と区別して「特別の教科」と位置付けた。担任教諭が原則、授業を行い、現行の週一回程度の年間三十五コマ(小一は三十四コマ)を維持する。
教材や指導方法については「特定の見方や考え方に偏らない」と明記。児童生徒が問題の解決策を考えたり、体験したりする学習を取り入れ、いじめ防止や情報モラル、生命倫理など現代的課題も取り上げるよう求めた。
各学年の学習内容は新たに設けた「節度、節制」「親切、思いやり」「国や郷土を愛する態度」「生命の尊さ」などのキーワードごとに列挙した。小一、二では従来の「郷土の文化や生活に親しみ、愛着をもつ」の冒頭に「わが国」を追加。外国文化の学習を小三から小一に引き下げた。いじめ対策では小三、小四で新たに「誰に対しても分け隔てをせず、公正、公平な態度で接する」を設けるなどした。
文科省は一カ月の意見公募の後、三月末に改定を告示。教科書作成の指針となる解説書と教科書の検定基準を今夏までに作成する。
道徳の教科化は一一年の大津市の中二いじめ自殺事件をきっかけに、安倍晋三首相肝いりの政府の教育再生実行会議が一三年二月に教科化を提言。中央教育審議会が昨年十月、下村博文(はくぶん)文科相に答申した。
価値観強制 懸念拭えず
解説 道徳の教科化によって、検定教科書と子どもの学習評価が導入される。政権が特定の価値観を強制するのではないかという懸念は拭えず、国民を戦争に駆り立てた戦前の教科「修身」を重ね合わせる教育関係者も少なくない。
鍵となるのが教科書の検定基準だ。安倍政権は昨年一月、歴史や領土などの政府見解を明記するよう社会科教科書の検定基準を見直し、統制を強めている。文部科学省作成の副教材「私たちの道徳」が、教科書会社に影響を与える可能性も指摘される。検定基準は、多様な教科書作りを促すものでなくてはならない。
学習評価の導入にも問題点が多い。学校現場からは「どう評価したらいいのか」「子どもの内面は評価できない」と戸惑いの声が漏れる。国が求める価値観で評価すれば、児童生徒の考え方が画一化される恐れもある。文科省が作成する教師向けの指導資料には、多様な児童生徒の個性を前向きに捉えるよう評価方法を明示すべきだ。
道徳の教科化は第一次安倍政権も目指したが、中教審は「検定教科書はなじまず、評価も難しい」との理由で答申を見送った経緯がある。今回は大津市の中二いじめ自殺事件の再発防止を前面に掲げたが、当時の課題は解決していない。
教科書の検定基準と教師向けの指導資料は、二〇一五年度中には出そろう。そこで、学校現場や教育関係者らの懸念を拭い去れるかどうかが、文科省に問われる。
文部省 道徳を特別の教科に
”愛国心”の強調心配
教育関係者が批判
(しんぶん赤旗)2015年2月6日
いま、小中学校では週1時間、「道徳の時間」があります。国は、これを「特別の教科」にして検定教科書をつくり、一人ひとりの子どもの「道徳性を評価」しようとしています。4日に文部科学省が公表したものです。教育関係者から疑問や危惧する声があがっています。
「いじめ」解決できない
いじめ問題に取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」理事の小森美登里さん
いじめ問題が「道徳の教科化」のきっかけとされていることに憤慨しています。
大津市立中学校でのいじめ事件を調査した第三者委員会の報告書も「道徳教育の限界」を指摘しています。一人ひとりが違っていい。互いに認めあうことのなかで、いじめ問題は解決していくしかないのです。
検定教科書を使って、同じ方向に子どもたちを向かせるための一つのアイテム(道具)にされないか心配です。過去の戦争の誤りと反省をあいまいにしようという動きのなかで、「愛国心」が強調されるのはとても危険だと感じています。
心の成長の仕方やスピードはそれぞれ。自分で感じ、悩み続けてやっとわかる場合もあります。評価することは、時間的制約をもうけることで、おかしい。
いじめ事件では各地で、学校側の隠ぺいや虚偽報告が問題になっています。いまの学校側が抱
える「道徳性」の問題解決こそ急がれます。
「戦争する国」に向かう
全日本教職員組合教文局長の中村尚史さん
今回の改訂案は、改悪された教育基本法にもとづき、「わが国と郷土を愛する心」「日本人としての自覚」など、国や社会への帰属意識を強調し、小学校低学年から「我が国」を入れるなど、安倍政権の「戦争する国」づくりに向けて国家主義的色彩を強めるものとなっています。
こうした内容を、検定教科書を使用した道徳科を要として、すべての学校教育に貫き、評価まで行うことになります。昨年10月の中央教育審議会答申で「特定の価値観を押し付け」ることは、道徳教育の「対極にあるもの」としたこととも相いれません。
基本的人権尊重の視点が大事です。自分を含め、すべての人間に「個人の尊厳」があります。
そういう人間同士が互いを大切にしあいながらどう生きていくか。そんな民主主義の視点からの自主的な道徳教育をすすめていきたいです。