疑惑閣僚の相次ぐ立候補に怒りと驚き
“選挙で帳消し”とんでもない
(しんぶん赤旗)2014年11月25日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-25/2014112503_01_1.html
閣僚を辞任した小渕優子前経済産業相(衆院群馬5区)、松島みどり前法相(同東京14区)に続いて噴出した「政治とカネ」の問題。疑惑の政治家は、説明責任をはたさないまま立候補表明し、これを公認する自民党に怒りと驚きの声があがっています。衆院解散で疑惑は帳消しにはなりません。
(藤沢忠明)
虚偽記載大がかり 小渕氏
「お許しいただけるなら、自民党から立候補させていただきたい」―。衆院が解散した21日、小渕氏は、こうのべました。
小渕氏は、閣僚辞任にあたって、観劇会をめぐる巨額な収支の差額などの疑惑について、第三者機関による調査をすすめると表明しました。ところが、その後、東京地検特捜部が後援会事務所や元秘書の自宅を政治資金規正法違反容疑で家宅捜索するなど捜査に着手したのに、小渕氏側からは新たな説明はおこなわれていません。
小渕氏の疑惑は、後援会や「自民党群馬県ふるさと振興支部」が2010年、11年におこなった観劇会で収入742万円に対し、「入場料・食事代」の支出は3384万円と、差額が2642万円にのぼり、12年は収入、支出とも記載がないという大がかりなものです。
差額を小渕氏側が負担していれば有権者への利益供与を禁じた公選法に抵触する疑いがあります。選挙区内の有権者にワインを贈った公選法違反の疑惑もあります。実姉の夫が経営する服飾雑貨店に「品代」として362万円の支出も、政治資金の還流と指摘されています。
21日の立候補会見で、みずから「説明責任を果たせたとは思っていない」とのべた小渕氏。その様子をテレビで見て、「ふざけるなと思った」と「104」で電話番号を調べて日本共産党本部に電話をかけてきた群馬県富岡市の女性がいます。「(小渕)後援会の端くれだ」という、この女性は、「反対の意思を示すには共産党しかないと思った。私は、20人ぐらいしかまとめられないけど、おばちゃんのおしゃべりは、バカにできないと思う。このままじゃ、田舎のおばちゃんは死んでしまう。ほんとにがんばってほしい」と話しました。
「ギフト券」28万円 西川氏
21日午前の閣議で解散の関係書類に署名した後の会見で、「政治資金規正法にのっとって処理してきた。親族企業うんぬんというのも批判にあたらない」と語ったのは、西川公也農水相(同栃木2区)。
西川氏が代表を務める政党支部の収支報告書では、親族企業への支出が「お土産代」「お歳暮」「お礼」と一般的に記載されていましたが、本紙が情報公開で入手した領収書によると、計17回、総額28万9800円が「カレーギフト代」でした。
購入時期は、西川氏の“浪人中”で、選挙区内の有権者にカレーギフト券が配られていたら、公選法に抵触する可能性があります。しかも、親族企業からの物品購入の一部は政党助成金でした。
税金を含む政治資金が親族企業に還流している構図。「法にのっとっている」では、説明になっていません。
領収書公開応じず 江渡氏
自身の資金管理団体から350万円を違法に得ていたことが判明した江渡聡徳防衛相(同青森2区)は、「人件費だった」と収支報告書を訂正しましたが、領収書の全面公開には応じていません。
同氏が代表を務める政党支部は、「政経福祉懇話会」という同氏を支援する企業の集まりから02年以降、3285万円の寄付を受け取っていますが、同懇話会は政治団体の届け出をしておらず、脱法献金だという指摘があります。
このほか、選挙区内の有権者に「うちわ」を配った松島氏、SMバーに政治資金を支出していた宮沢洋一経産相(参院広島選挙区)、「賀詞交歓会」などの収入を記載していなかった望月義夫環境相(衆院静岡4区)、脱税で有罪判決を受けた企業から献金をもらっていた有村治子女性活躍担当相(参院比例)など、閣僚の「政治とカネ」はうんざりです。(図参照)
http://youtu.be/eAGo_MftWEk
http://youtu.be/vu5exDHZgp0
http://youtu.be/9IqImuME8Zw
http://youtu.be/fUeAW0Y4aS8
衆院解散 「政治とカネ」リセット許すな
(東京新聞【こちら特報部】)2014年11月22日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2014112202000142.html
内閣改造後に噴出した「政治とカネ」の問題が、衆院解散・総選挙によって「リセット」されるかといえば、そうは問屋が卸さない。ダブル辞任に追い込まれた元閣僚も、あの疑惑大臣も、任命権者の安倍晋三首相も、説明責任を果たしてきたとは到底思えない。にもかかわらず「信を問う」とは、何ともずうずうしい。身の潔白を証明できないまま来月十四日の投開票を迎えるのであれば、安倍自民党は有権者から手痛いしっぺ返しを食うことになる。
(篠ケ瀬祐司、三沢典丈)
谷垣幹事長質問受け流す
衆院が解散された二十一日、「政治とカネ」の問題が取り沙汰されている自民党閣僚らの表情を追った。
午前十時前。閣議で解散の関係書類に署名した後、西川公也農林水産相(衆院栃木2区)は省内で記者会見に臨んだ。西川氏は、代表を務める自民党支部から親族企業への政治資金の流れなどが問題視されている。
「政治資金規正法にのっとって処理してきた。親族企業うんぬんというのも批判に当たらない。有権者にも実態を伝えていきたい」
こちら特報部の記者が、「政治とカネ」の問題をただすと、そう正当性を強調した。前をむき、ゆっくりとした口調。解散で当面は野党からの追及にさらされなくなった安心感も手伝ってか、余裕の表情だ。「政治とカネ」のやり取りは、質問を含めて二分間弱。直前に補正予算に関して六分近く費やしたのと比べると、そっけなかった。
午前十時半すぎ、国会内で記者会見した自民党の谷垣禎一幹事長にも「政治とカネ」について聞いたが、「細かな論点と言うと、語弊があるが…」などと受け流された。
衆院本会議の開会時間(午後一時)が迫ってくると、間もなく失職する衆院議員たちが続々と登院してきた。政治資金収支墾昜の記載で誤りが指摘された望月義夫環境相(静岡4区)や、自身が代表を務める政党支部から自身への寄付が明らかになった江渡聡徳防衛相(青森2区)も、秘書官を連れて足早に本会議場に向かった。
開会約五分前、観劇会の収支のズレなどで十月二十日に経済産業相を辞任した小渕優子氏(群馬5区)が、黒いワンボックスカーで正面玄関に到着した。黒いスーツ姿。両脇にはSPが寄り添う。無言でエレベーターに乗るまでの間、フラッシュがたかれ続けた。久しぶりに公の場に姿を見せたとあって注目度は安倍首相以上だ。
解散後、正面玄関ホールで報道陣に囲まれた小渕氏は「疑惑について説明できる調査が進んでいない。私自身、十分に説明責任が果たされていないと思う」と釈明した。それでも自民党公認で出馬を目指すそうだ。最後はもみくちゃになりながら国会を後にした。
小渕氏と同じ日に法相を辞任した松島みどり氏(東京14区)には本会議後、議員会館で直撃した。
選挙区内で配布した「うちわ」などが問題になった。「違法なことをしている認識はないが、やはり地に足がっいておらず、脇が甘かった」と神妙な表情で反省の弁を語った。
念のため、今後は「うちわ」を作るのか聞くと。「いや、もう、えーと……」と一瞬、言葉に詰まりながらも「決して作りません。季節がらも違いますけれど、もちろん作製しません」と明言した。
一連の疑惑をもう少し詳しく見ておこう。
小渕氏は、関連政治団体の二〇〇九~一一年の政治資金収支報告書で、支援者らを対象に開いた観劇会の支出が収入を約四千三百万円上回っていることが分かっている。小渕氏は「事務的なミス」と主張したが、それが事実でも政治資金規正法違反(虚偽記載など)となる。選挙区内で有権者にワインを配った公選法違反の疑いもある。
東京地検特捜部は十月三十日、小渕氏の元秘書の自宅などを家宅捜索して捜査を始めた。
松島氏は、選挙区内の祭りで有価物の疑いがあるうちわを二万本以上も配布していたことが明るみに出た。松島氏は「討議資料」と言い張ったが、民主党議員から公選法違反容疑で刑事告発された。
西川氏は、地元事務所が、西川氏の複数の親族企業から事務用品やタイヤを購入したことが発覚したが、「必要なものなので購入した。親族企業に利益を供与するようなことはない」と強弁した。
江渡氏は、自身の資金管理団体から三百五十万円の寄付を違法に得ていたことが判明。江渡氏は政治資金収支報告書を訂正したが、領収書の全面公表には応じず、「鋭意、説明しているつもりだが、理解いただけない」と開き直った。
望月氏は、後援会の会合費など計約六百六十万円の支出を、賀詞交歓会の支出と偽って記載。望月氏は「妻が(収支報告書に)記載していたが亡くなってしまい、どうしてこんな記載をしたか分からない」ととぼけた。
ダブル辞任の際、安倍首相は「任命責任は私にある」と認めたものの、何をしたわけでもない。小渕氏の後釜である宮沢洋一経産相(参院)も、資金管理団体からSMバーに支出した問題が飛び出した。
今選挙の構図は、第一次安倍政権時、閣僚四人の「ドミノ辞任」の後に迎えた○七年の参院選と似ている。与党は過半数割れの大敗を喫し、安倍首相の退陣につながった。
しかし、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「当時とは逆。あの時は危機管理が甘く、閣僚をなかなか辞任させられずに失敗した。安倍首相は現政権では自分の思う通りにやると決めており、小渕、松島両大臣もすぐ切った。そこに他の大臣の問題も浮上し、リセットするしかないと、解散を決断した」とみる。
政治資金問題に詳しい神戸学院大大学院の上脇博之教授も同じ見方だ。「もう一人大臣が辞任すれば、安倍降ろしの声も出かねない中、解散をすれば、大臣のスキャンダルはマスコミも報じにくくなる。疑惑の大臣を辞任させることなく、選挙後に内閣の顔ぶれを一新するつもりだろう」
問われるのは有権者の意識
「疑惑リセット」を許していいのか。「彼らが国民そっちのけで自分の生活しか考えていない実態が見えてきた」と上脇氏。日本大の岩井奉信教授(政治学)は「政治資金規正法は支出について何も規定していないが、今、ムダな使い道に厳しい目が向けられている。疑惑を個人の責任に帰一して、選挙で当選すればみそぎが済んだことにされてはたまらない。制度上の問題として今選挙でも議論すべきだ」と訴えるが、「前回一二年衆院選で約束しながら果たされなかった選挙制度改革と同様、この問題は野党も乗り気ではない。争点にはならないのでは」とあきらめ顔だ。
鈴木氏は、有権者の自覚を促す。
「有権者は自分なりの大義や争点を設定する必要があり、その一つに政治とカネの問題は必ず入れなくてはダメ。疑惑の人を当選させてしまったら、その選挙区の有権者の意識が問われることになる」