女優・木内みどりさんが語る無関心の大罪。この国に生きる責任とは?
(ラジオフォーラム#89)
http://youtu.be/dIMckc7KH6k?t=14m36s
14分36秒~第89回小出裕章ジャーナル
新安全基準は世界一厳しい?「ほとんどの日本の原発は90年頃までにできてるわけですから、そんな古めかしい原発が世界一の基準に合うはずがないわけです」
http://www.rafjp.org/koidejournal/no89/
今西憲之:
政府や総理大臣の安倍さんが最近、「また原発再稼働させます」みたいなPRを始めました。鹿児島県の川内原発は審査に合格しました。世界で一番厳しい規制基準だということで、政府は胸を張って言っておりますけれども、「世界で一番厳しい基準」これ聞かれて、小出さんはどのようにお感じになられますか?
小出さん:
はっきり言ってしまえば「冗談を言わないでくれ」と思いました。
今西:
けど、その冗談を当たり前のように本気になって言っておるようなんですが、実際、原発を持つ国はたくさんありまして、欧米の基準なんかと比べまして、今回、世界で最も厳しい規制基準だと言っている点について、実際、どうなんでしょうか?
小出さん:
今、日本で基本的に動いている沸騰水型原子力発電所、加圧水型原子力発電所というのは、米国のエネルギー省の分類に従えば、第2世代と呼ばれている機体に属しています。その機械の事故の経験とか、様々なトラブルの経験を経て、第3世代の原子力発電所を造るという、今、時代に入っています。
沸騰水型原子炉
加圧水型原子炉
例えば、ヨーロッパでは、欧州加圧水型原子炉というものを造ろうとして、私達「EPR」と呼んでいますが、そのEPRでは、もちろんフィルターベルトはもう義務付けられていますし、溶けてしまった炉心を受け取めるだけのコアキャッチャーというような構造物を付けるということも義務付けられていますし、格納容器も頑丈なもので二重構造にするというような基準にもなっているわけで、そんなものから比べれば、日本で今動いている原子力発電所など全くもう古めかしいものでしかないということになってしまいます。
今西:
EPRというのは、もうヨーロッパにはどれぐらいの数あるんでしょうか?
小出さん:
ないのです。今のフィンランドでオルキルオトという所に造ろうとしていますけれども、安全性を高めようとすれば、高めようとするほどお金もかかってしまうし、建設も大変だということで、ヨーロッパでなんとかこれからやろうとはしているわけですけれども、本当に、これが実用化できるかどうかわからないという、そういう状態になっています。
今西:
なるほど。商業ベースで考えると、それが採算に合うかどうか、なかなかわからないと。
小出さん:
多分、合わないと私は思いますし、安全性を求めれば求めるだけ、今度は、経済性が成り立たなくなりますので、やはり、原子力というものは無理だと思った方がいいと思います。
今西:
なるほど。今回の世界で最も厳しい規制基準だということで、胸を張ってるわけなんですけれども、逆に上がもう存在しているということなんですね。
小出さん:
そうです。ですから、もう日本の古めかしい原子力発電所、70年頃から、例えば敦賀美浜なんて動いているわけですし、ほとんどの日本の原子力発電所は、90年頃までにできてるわけですから、そんな古めかしい原子力発電所が世界一の基準に合うはずがないわけです。
今西:
そんな中で、もし、その欧州型の原発がそれほど安全性が高いということであれば、これ逆に考えれば、「東京ですとか大阪の大都会に、そういう原発を造ったらどうなんだ」みたいな論議が出たりしないのかなあとか思ったりもするんですが。
小出さん:
もちろん、当初からそうやるべきだったのですね。「原子力発電所が安全だ」というなら、電力が消費地に造るのが一番合理的なわけです。でも、それができないで、原子力発電所だけは過疎地に押しつけるということを日本もやってきましたし、世界中でそれをやってきたのです。本当に原子力を推進する人達が、絶対に安全な原子炉が造れるというなら、もちろん電力の消費地に造るべきだと私は思います。
今西:
そうですよね。結局、電力の消費するのは都会が圧倒的に多いわけででして、原発の周辺住民がそういう危険を引き受けるという構図というのは、やっぱり、終わりにせんといかんですよね。
小出さん:
そうです。そんなことは始めからやってはいけなかった。そのことだけ考えてもやってはいけなかったんだと、皆さんが気が付かなければいけないと思います。
今西:
小出さん、今日はスタジオに女優の木内みどりにお越し頂いておりまして、木内さんもぜひ、小出さんにいろいろお伺いたいということなんですが、木内さんから、ぜひ聞いて頂ければと思います。
木内みどりさん:
原子力のことじゃなくてもいいですか?
今西:
どうぞ。
木内さん:
私が小出さんに聞きたいのは、お育ちになる過程で誰かの言葉がすごく自分の変わり目だったとか、例えば少年期に読んだ本とか、どっかの誰かが言った言葉とかで影響されたことって何かありますか?
小出さん:
特別、象徴的な、この言葉がというのは特に記憶にありません。ただ、私の周りにももちろん、みどりさんの周りにも、今西さんの周りにもたくさんの方が生きていたはずですし、私の周りにもいろいろな方がいて、そういう方々一人ひとりからいろいろな影響を受けたということはもちろんありました。実際にお会いできなかった人の中でも、例えば田中正造さんであるとか宮沢賢治さんであるとか、私が生きていく上で、指標になるような言葉を彼らから学んだということはあります。
木内さん:
私の場合は、小出さんが私にとっての指標なんですね。なので、その秘密をどうしても知りたいんですけど、例えば、お母様からは相当な影響を受けていると思うんですけれど。お答えになれる範囲で結構なんですが、やっぱり小出さんのお母さんというのは、時代的にも、そしてお兄様のことを考えてもすごく頭のいい方で、そして、その時期、お兄様も含めて、どうやって小出少年、2人の男の子を育てたのかなあって。お母さんが、他のお母さんと違っていた点というのを思い付きますか?
小出さん:
思い付きません(笑)。というか、私は東京の下町の零細企業の家に生まれたのです。父親は戦争に招集されて出て行ったのですが、その父親も本当であれば、大学などに行って勉強したかったと思っていたはずなのですが、そういうことも許されない時代に私の父親が生きていました。
それで、私と兄を育てる時に、私の父親は何も残してやれるものはないけれども、勉強だけはさせるという風に言っていました。その中で、実際に私の面倒をみるというか、学校に行かせる、あるいは、弁当を作るというようなことも含めて、ひとつひとつのことを私のお袋はやってくれたということです。
ただ、大学に行く時には、もうこの親からは自立したいと思いましたので、必ず自宅からは離れる、東京からも離れるというふうに思っていました。それで実際に、東北大学という所に私は行ったわけですが、その時点で、私は家というつながりからは切れたし、お袋というつながりからも基本的には切れたわけです。ですから、ときどきお袋は「あの時、あんたは出て行っちゃって、それ以降帰ってこなかったね」というようなことは、よく聞かされてきました。
木内さん:
お母さんはお元気ですか?
小出さん:
はい。2年半ぐらい前になりますけれども脳梗塞で倒れまして、今、療養中です。あまり元気とは言えませんが、まだ生きていてくれますので、ときどき顔を見に行きたいと思っています。
木内さん:
私にそういう力があればですけど、小説を書く力があれば、私は小出さんのお母さんを取材して、いっぱい聞いていろんな写真を集めて、少年・小出裕章子育てとお母さんの時代というのに迫ってみたいなあっていう風に時々思います。
小出さん:
そんなことをしても何にも出てこないです(笑)
今西:
たまには、こういう話がオンエアされるとリスナーの方も、逆の意味で、興味を持って聴いて頂けるかなあと思ったりもいたしますが。小出さん、どうもありがとうございました。
「新安全神話」というリスク 原子力規制委員会の虚妄
(東京新聞【こちら特報部】)2014年9月11日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2014091102000173.html
原子力規制委員会は十日、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)の再稼働にお墨付きを与えた。安倍首相が「世界で最も厳しい」と評する新規制基準をクリアしたとするが、当の規制委員長は「絶対に安全とは言えない」と語っている。福島原発事故をどうみているかが、信用の基準になりそうだが、分析しているメンバーは原発推進派一色。「名ばかり規制」の懸念は強まるばかりだ。
(榊原崇仁、林啓太)
「絶対安全」と言えず
「火山審査をやり直せ」「再稼働反対」。10日午前、東京・六本木の原子力規制委員会前。川内原発の審査結果の決定に反対する市民団体のメンバーたち約50人が抗議していた。
国際環境NGO「FoE Japan」の満田夏花(かんな)理事は「噴火予知の専門家が審査書に疑義を示し、避難計画の実効性は審査の対象外だ。委員らは再稼働ありきの政治的判断を科学に優先させた」と憤った。
福島原発事故で安全神話は崩壊した。ただ「新規制基準への適合」には新たな安全神話の匂いがする。
安倍首相は新基準を世界で最も厳しいと評価し、規制委の田中俊一委員長も、新基準に基づく川内原発の安全性を「ほぼ最高レベル」と自画自賛している。
規制庁技術基盤課の担当者は「非常用電源を確保する日数は米仏が3日なのに対して、日本は7日」とその理由を力説する。
しかし、そこに本質はない。福島原発事故以前の安全基準と今回の規制基準には大きな隔たりがある。それは、今回の基準が過酷事故が発生する可能性を否定していないことだ。
過酷事故想定 対策おざなり
新基準の目玉は、5層の防護だ。旧基準は①非常用電源などを充実し、異常や故障の発生を防止②異常や故障が起きた際、素早く検知し対応③炉心の損傷を設計基準内に抑制─の3層によって過酷事故発生を否定した。だが、これが崩れたことで、新基準では過酷事故を想定し、④放射性物質の放出の抑制⑤放射性物質の放出による人的被害の緩和─の2層を加えた。
しかし、川内原発では避難計画の策定を自治体任せのまま「適合」とした。最後の1層は有名無実だ。規制庁広報室は「地域の方々が地元の実情に応じて対策をつくっている」と「不介入」の姿勢を強調した。
過酷事故の可能性を否定せず、対策もおざなり─これが現実だ。規制委の田中委員長も会見で「絶対に安全だとは私は申し上げません」と繰り返している。2006年に初めて原発運転の差し止め判決を出した元裁判官の井戸謙一弁護士は「新基準に適合と判断することは、安全だと判断することと同じことだ」と、この釈明に首をかしげる。
では、事故が起きた際に誰が責任を取るのか。
政府は安全性について規制委に責任を負わせる考えを示す。4月に閣議決定したエネルギー基本計画では「原発の安全性については規制委の専門的な判断に委ねる」などと明記した。安倍首相も川内原発をめぐり「安全だという結論が出れば、再稼働を進めたい」と規制委にげたを預ける。
ところが、規制委は田中委員長が「(再稼働は)事業者(電力会社)と地域住民、政府という関係者が決める。私たちは関与しない」と明言している。つまり、福島事故同様、誰も責任を取らないつもりだ。
組織の中立性も疑問
それでも、規制委は福島原発事故後にできた組織なので、安全は保証されるはずだと考える人は少なくない。だが、それが「思い込みにすぎない」と言わざるを得ない根拠がある。
規制委員会も福島原発事故を分析析している。「東京電力福島第一原子力発電所における事故の分析に係る検討会」という有識者会合を昨年5月から始めた。
政府や東電は「津波が原因」という見解だ。検討会ではこれを追認する方向で議論が進んでおり、7月の中間報告案では地震で機器が破損し、事故につながった可能性に言及した国会事故調の指摘を否定した。
元東芝の原発設計技術者の後藤政志氏は「原因究明には炉心溶融などの現場を徹底調査することが不可欠だ。だが、まともに立ち入ることができず、『津波が原因』とは言い切れない」と見立てを批判する。
だが、この方向性は検討会のメンバー一覧を調べてみると、納得がいく。破綻した安全神話をかつて流布していた人たちばかりで、原発に批判的な専門家は完全に排除されている。
原発業界との関係でみてみる。メンバーの一人、京都大の高木郁二教授は2010年度から2年間、核燃料などを研究する「日本核燃料開発」から計140万円の研究助成を受けた。
東京大の高田毅士教授も原子炉建屋を建設した竹中工務店から、計150万円の寄付を受けていた。
北海道大の奈良林直教授は、東電から10年度に研究費425万円を受け取った。同教授は7月の検討会で、国会事故調による作業員の聞き取り調査について「発言を強要するようなことがあったと聞いた」とまで発言している。
国会事故調委員だった放射線医学総合研究所の元主任研究官、崎山比早子氏は「全く失礼な話。国会事故調は法律に基づいて設置されており、委員は職責の重みを感じて調べた。国民の信頼を裏切る行為などできるわけがない」と憤る。
国会事故調は福島原発事故の原因に「規制当局が電力事業者の虜(とりこ)になった」と指摘し、中立的な立場からの規制を求めた。しかし、現実はそれとは程遠い。
検討会の事務方も原発推進の経済産業省出身者が目立つ。緊急事態対策監の安井正也氏は資源エネルギー庁原子力政策課長などを歴任。山本哲也審議官は原子力安全・保安院首席統括安全審査官だった。
こうした傾向は検討会に限った話ではない。
規制委の5委員のうち、田中俊一委員長、中村佳代子、更田豊志両委員は09年度以降、原子力関連の団体から講演料など50万円前後を受け取った。今月から委員に就く東京大の田中知教授も日本原子力産業協会の理事を務め、東電の関連団体「東電記念財団」から11年度に50万円以上の報酬を得ていた。
「規制側の倫理観が完全に崩懐」(崎山氏)している現状は、規制委の人員配置からも明らかだ。
規制委は各地の原発再稼働を急ぐためか、新基準の適合審査には事務方(規制庁)の100人を割く。昨年7月の審査申請開始時と比べて、40人も増えた。一方、汚染水問題が暗礁に乗り上げている福島第一原発の現場には、わずか10人を割いているだけだ。
前線基地の福島第一原子力規制事務所の大林昭所長はため息を漏らす。「365日、24時間の対応が求められる。初めて経験するトラブルも少なくなく、入手が足りない。限られた人員での仕事なので、被ばく線量が集中的に多くなる。増員を求めたが、応じてもらえてない」
汚染水は確実に周辺地域をむしばんでいる。本来なら、再稼働ところではないはずだ。規制委には解体的な再編が求められている。
原発事故自主避難を考える(ラジオフォーラム#88)
http://youtu.be/0g_g6rg2izc?t=15m59s
15分59秒~第88回小出裕章ジャーナル
中間貯蔵施設受入れと避難の関係性について「押し付けられてしまえば、もっと長い間にわたって戻れなくなるということです」
http://www.rafjp.org/koidejournal/no88/
景山佳代子:
まず、最初にちょっと簡単な伝言があります。この間、先日仙台の方に行ってきた時に、女川の高野町会議員の方が、「実は先日、小出さんが来てくださって、加藤登紀子さんと講演してくださったんですよ。ありがとうございました」ということと。まだもうひとつあるんですが、前双葉町長の井戸川さんが、「小出さんのお話聞いてると、ずっとぶれずに情報発信してくださって信頼できる人です」ということをおっしゃっていたので。
小出さん:
井戸川さんこそそうで、ありがたいと思っています。
景山:
というのは、最初に伝言をお伝えして、早速なんですけど、まず「2014年8月30日、除染で出た汚染土等を保管する中間貯蔵施設を受け入れる」というふうに、福島の県知事の表明がありましたが、これ中間というからには、やっぱり最終処分場へいずれ移すということなんだと思うんですけれども。実際、こういうことって可能なんですかね?
小出さん:
できないです。
景山:
できないですよね。やっぱり、これで帰還しようと思ってる人達というのは、さらに帰還が難しくなっていくんではないかなあというふうに考えてるんですけれどね。
小出さん:
そうです。中間貯蔵施設を押し付けられてしまいそうになっているのが大熊町と双葉町ですけれども、今でも大変汚染の強い状態にあって、100年経って戻れるのか200年経って戻れるのか私にはわかりませんが、中間貯蔵施設というようなものを押し付けられてしまえば、もっと長い間にわたって戻れなくなるということです。
景山:
今回実は、そういう放射能の被ばくのこういう不安とか恐怖というところから、実は自主避難されてきてるのが、森松さんと太田さんなんですけれども。このおふたりが今回、子どもの健康というのが一番関心事ですね、母子避難されていて、この際ですからということで、小出さんに聞きたいことがあるというので、まずは、森松さんから質問させて頂きますので、よろしくお願いします。
森松明希子さん:
いつも本当に、情報発信をしてくださいましてありがとうございます。今日はよろしくお願いします。事故直後に政府は、私達普通の人間は当初、1ミリシーベルトまでが 放射線被ばくの限度だったのが、法律で20ミリシーベルトに引き上げて、未だにそういう基準値を引き上げたまま放置していて、「耐えなさい」というような、基準値を引き上げるというのは、我が国は法治国家ですよね、子どもも含めて耐えなければいけないというのは、どう考えたら・・・。
小出さん:
普通の皆さんは、日本が法治国家だと思ってきたのだと私は思います。でも実は違ったのです。この国は、普通の方々には1年間に1ミリシーベルト以上の被ばくをさせないということを法律にしてきた国なのですけれども、福島第一原子力発電所の事故があまりにも過酷だったがために、もう自分で決めた法律も守れない、もう反故にしてしまうと彼らは勝手に法律を決めてしまったのです。ほんとに、デタラメな国だと私は思います。
景山:
続きまして今度は、水戸から避難されている太田さんからご質問があるので、こちらも聞いて頂いてよろしいですか?
太田歩美さん:
小出先生、太田と申します。こんにちは、よろしくお願いします。私が小出先生にお聞きしたいことは、内部被ばくと外部被ばくのことについてです。特に、内部被ばくなんですけれども、内部被ばくについては、放射性物質というのを一度身体に取り込むということですよね?
小出さん:
そうです。
太田さん:
そうすると、その体内に入った放射性物質というのは、もう出ていかないんですかね?
小出さん:
そんなことはありません。人間というのは、この環境中で生きてるわけで、人間の身体も含めて流れの中にありますので、例えば、食べ物を食べるということもちろん、外部から様々な物を身体の中に入れるわけですが、一方では、人間は排泄という機能を持っていますので、また外に出していってるわけです。
太田さん:
じゃあ、1回取り込んでも大丈夫な部分もあるということですよね?
小出さん:
放射能に関しては、私は皆さんにお願いしていることがあるのですが、「大丈夫だ」とか「安全だ」とか「安心だ」とかいう言葉は使わないでくださいとお願いしています。 被ばくは、どんな意味でも危険を伴います。
そして、一度身体の中に放射性物質を取り込んでしまえば、もちろん被ばくをするわけですし、必ず危険を伴います。そして、特に、発育盛りの子どもが放射線に大変敏感ですので、もし、小さなお子さんをお持ちで汚染区域にいるのであれば、私はできる限り避難をしてほしいと願っています。
ただし今、景山さんもおっしゃってくださったけれども、国の方が「避難しろ」と指示してる所もあるわけですが、そうではない所の人達に対しては、「勝手に出て行くなら勝手に出て行け」と言ってるわけで、そういう状態のもとで避難をしようと思うと、生活が崩壊してしまったり、あるいは、家庭が崩壊してしまったりという大変な重荷をまた別に背負ってしまいますので、一概にどうするのがいいのかと、私には申し訳ないけれども言えないのです。
やはり、おひとりおひとりがそこに居続けることで被ばくする危険、そして、避難することで負わなければいけない重荷というものをそれぞれの方に判断して頂くしかないと思います。
森松さん:
ありがとうございます、小出先生。
小出さん:
ありがとうございました。
景山:
ひとつだけ最後に、森松さんから。
森松さん:
森松なんですけれども、もちろん、本当に私達自身も避難という選択をたまたまできたということにとても感謝をしていて、ただ、避難をしたいと思う人達が避難できるような、そういう取り組みをぜひご一緒にしていただけたらというふうに思います。
小出さん:
ありがとうございます。私は本当に力足らずで、事故も防げませんでしたし、今、たくさんの方々が汚染地域に取り残されていて、なんとかしたいとは思うのですけれども、あまりにもデタラメな国なので、私の力でなかなかどうにもならないことが沢山あって申し訳ないと思っています。
森松さん:
とんでもないです。
景山:
じゃあ、太田さんもよかったら。
太田さん:
小出先生がずっとぶれずに発信してきてくださったことで、私達もすごく励まされてますので、本当にありがとうございます。
小出さん:
とんでもないです。大変だろうと思いますけれども、くじけずにまた頑張ってください。
太田さん・森松さん:
はい、ありがとうございます。
小出さん:
はい、ありがとうございました。
現代のストーカー問題を考える(ラジオフォーラム#87)
http://youtu.be/yOhO8sXItIY?t=16m42s
16分42秒~第87回小出裕章ジャーナル
川内同型原発は審査簡略化可能か?「そんなもの簡略化できる道理がないのです」
http://www.rafjp.org/koidejournal/no87/
湯浅誠:
今日は、原子力規制委員会との話の中で、「川内原発同型の原発は審査の簡略化が可能なんじゃないか」と、菅官房長官が言ったというニュースについてお伺いしたいんですが。これは、どういうことなんでしょうかね。
小出さん:
彼らとしては、なんとしても早く早く再稼働をさせたいと思っているわけで、審査に関しては、出来る限り手を抜いて速やかに完了するようにしたいわけです。
日本では、2種類の原子力発電所を使ってきました。福島第一原子力発電所で使っていたのは、「沸騰水型原子炉(BWR)」と言います。一方、関西電力等は、「加圧水型原子炉(PWR)」と私達は呼んできました。基本的には同じものなのですけれども、仕組みが違うところもあるということで、2種類のものを使ってきたのですが、事故を起こしてしまった沸騰水型の方は、容易に安全だということを言えないだろうと、たぶん菅さん達も思ってるんだと思います。
ですからそうなれば、一方の加圧水型(PWR)という原子炉の方は、できる限り早く再稼働させたいと思っているはずですし、「川内原子力発電所が安全だと認めたのであれば、他だってみんな安全だと認めろ」という指示を菅さんが発信したのだと思います。
湯浅誠:
沸騰水型というのは水を沸騰させて、その蒸気でタービン回して発電と。
小出さん:
非常に単純な原子炉なのです。
湯浅誠:
小出さんは、ずっと湯沸しと同じ原理だとおっしゃってる。それ、字を見るとわかりやすいんですけど、加圧水型というのは何が違うんですか?
小出さん:
沸騰水型は文字通り、今湯浅さんがおっしゃってくださったように、水を沸騰させて蒸気を出して、その蒸気でタービンを回すのですけれども、原子力発電所の場合には、その沸騰した水がもう既に放射能で汚れてしまっているわけです。
それで、タービンというものを回そうとすると、タービンは非常に巨大な構造物ですし、タービンすらが放射能で汚れてしまって、管理をすることが大変になるということが一方にあったわけです。
ですから、加圧水型という方は、放射能で汚れた水をタービンに持っていきたくないと。だから、一次系と私達は呼んでいますけれども、放射能で汚れた水は一次系というところで閉じ込めて、途中で蒸気発生器という熱交換器を使って、二次系に熱を渡して、二次系を沸騰させるというシステムを作ったのです。
ですから、システムとしては沸騰水型より面倒なシステムになったわけですね。冷却系がもう一つ増えてしまっているから。
湯浅誠:
そうですね。間にワンクッション入ったということですね。間にワンクッション入ったことで、より安全だと言えるんですか?
小出さん:
言えません。もちろん、良いこともあるし悪いこともあるわけで、タービンという巨大な構造物が放射能で汚れないという点では、もちろんよかったわけですけれども、一次系から二次系に熱を渡すためには、蒸気発生器という巨大な装置をそこに置かなければいけないし、蒸気発生器というのは、もちろん一次側から二次側に熱を渡すべきものですから、なるべく熱を渡したい構造、つまり金属のパイプなんですけれども、パイプの厚さをなるべく薄くして、効率よく熱を渡したいわけです。
しかし一方で、薄くしてしまうと、今度はそのパイプが破損する可能性が高くなりますので、一次系の放射能が二次系に漏れてしまうということになるわけです。ですから、相反したその目的を両方担わなければいけないということで、蒸気発生器というのは大変難しい設計になりまして、なんとかそれを上手くやりたいと思ってきたわけですけれども、世界中の加圧水型原子炉では、たびたび蒸気発生器が壊れてしまいまして、日本でも、しきりに事故を起こしましたし、世界的にも事故を起こしたし。
例えば、米国の西海岸にサンオノフレという加圧水型の原子炉がありましたが、その原子炉の蒸気発生器は日本の三菱重工が造ったのです。それがあまりにも欠陥だということで、サンオノフレは閉鎖になってしまいましたし、三菱重工が多額の賠償金を請求されるというようなことにもなっているのです。
湯浅誠:
係争中の案件ですね。ありましたね。メリットとデメリットは背中合わせというか、ある問題が解決しようとすると、次の問題が起きてしまうというのが 原子力というものの難しさなんだと思いますけど。これを簡略化するというのは、ちょっとイマイチよく分からないというかですね。
小出さん:
全く分からないです。
湯浅誠:
加圧水型という建物の構造、原子力を生み出す構造は、今おっしゃったように、加圧水型というものはある種、同型なんだろうと思うんですけど。にしても建ってる所は別の場所だし、海沿いにあるのか、海面から何メートル上にあるのか、そういうような地下に地震のリスクが、どれぐらい活断層があるのかないのか。そういうことも含めて審査するという話だったですよね?
小出さん:
そうです。新規制基準では、「活断層をより厳密に審査しろ」ということであったり、あるいは、「津波の影響がどれだけあるかを審査しろ」とかいうことであったわけで、そういうものは全て敷地に依存していますので、加圧水型という原子炉のかたちとは違うことをキッチリと評価しなさいというのが新規制基準の目玉ですので、そんなもの簡略化できる道理がないのです。
敷地の条件でなくて、要するに立地している地域の住民の安全をどう守るかという、もっと重要なことがあって、それは新規制基準で言えば、原子力規制委員会は「自分達の責任でない」と言ってしまって、「それぞれの自治体で勝手に考えろと」いうようなことにしているわけですね。
ですから、川内原子力発電所に関しても、原子力規制委員会は、「避難計画とかそんなことは一切知らない」と言ってしまっているわけです。
でも、一番大切なのは、本当に住民の安全が守れるかということなのであって、それこそ大切であって、個別敷地に依存しているのです。ですから簡略化というのは、ほんのごく一部でできる場所もあるかもしれませんが、ほとんどのものはできないと思った方がいいと思います。
湯浅誠:
小出さん今日もありがとうございました。
小出さん:
どうもありがとうございました。
震災とシングルマザー(ラジオフォーラム#86)
http://youtu.be/yKhj9W_mJzw?t=15m6s
15分6秒~第86回小出裕章ジャーナル
空間放射線量から個人被ばく線量へ除染基準転換の意味とは?「できる限り小さな数字が出てくるような測定の仕方をしたいと、彼らが思っているわけです」
http://www.rafjp.org/koidejournal/no86/
谷岡理香:
東京電力福島第一原発事故に伴う除染をめぐって、環境省は8月1日、「これまでの空間放射線量から、より実態に近い個人被ばく線量に基づいた除染に転換すべきだ」という報告書を発表しました。
なぜ急に、これまでの空間放射線量から個人被ばく線量に変えようとするのでしょうか?その目的は何なのか、小出さんに伺います。小出さん初めまして、どうぞよろしくお願い致します。
小出さん:
初めまして。こちらこそお願いします。
谷岡理香:
まず、この空間放射線量と個人被ばく線量の違いについて教えて下さい。
小出さん:
はい、空間線量というのは、それぞれの場所がどの程度の放射線が飛び交っている場なのか、ということを測定します。
例えば、学校の教室がどれだけ放射線が飛び交っている、校庭に出ればどれだけだ、あるいは家庭はどれだけだ、道路はどれだけだということを測るのが『空間線量』です。
これまで福島の事故の後、あちこちでそういう線量を測ってきて、どこで何時間その場にいるのであれば、どれだけ被ばくをしてしまうという事を推定しながらきたのでした。そうやって推定してしまいますと、人々の被ばく線量を1年間に1ミリシーベルトに抑えることが、ほとんどもう出来ないということが分かってきたために、今度は国は、「一人ひとりの被ばく線量を測ってしまって、それが1ミリシーベルトを下回ればいいことにしてしまおう」ということを考え始めたのです。
個人の被ばく線量というのは、一人ひとりに放射線の被ばく量を測る測定器を持たせまして、それがいくつの値になるかということを調べるわけです。
ただし、なかなか難しくてですね。例えば、ずーっとほんとに一人ひとりが放射線を測定する機械を肌身離さず、1日24時間365日持っていられるかと言えば、恐らく多分私はできないだろうと思います。ですから、個人の被ばく線量を測定するということ自体が、まずは無理だろうと私は思います。
谷岡理香:
これまでの環境省の除染の目標基準からは、どういうふうに変わっていくのでしょうか?
小出さん:
これまでは、日本の普通の方々は、「1年間に1ミリシーベルト以上の被ばくをしてはいけない」と定められていました。しかし、福島第一原子力発電所の事故というものはあまりにもひどい事故であったために、福島県を中心として、到底それはもう守れないという状態になってしまったのです。
そのため、日本の政府は、今はもう守れないのだから、1年間に20ミリシーベルトを超えないような地域には人々が住んでもいいし、一度逃げた人達もそこに戻れと言って指示を出しているわけです。
でも、それはあまりにもひどいことだという事で、これまで原子力を推進してきた人達の中にも、やはり納得しない人達がいる。そのために、できる限り早く1年間に1ミリシーベルトを下回るように、除染というものをやろうということになっていたわけですけれども、除染がほとんど効果がないのです。
もともと除染というのは、汚れを除くと書くわけですけれども、汚れの正体は放射能であって、人間が放射能を消す力はありませんので、言葉の本来の意味で言えば除染はできないのです。
出来ることは、人々が生活している場の一部から放射性物質をはぎ取って、どこかに移動させるということが、唯一できることなわけですけれども、もう大地全部が汚れてしまってるわけで、除染ということ、私は除染は正しくないので、「移染」(汚れを移動させる)という言葉を使っているのですが、移除できる場所というのも、ほんとに限られた場所しかないのです。
それで、これまで環境省等がやって来た、いわゆる除染活動というものがほとんど効果が無いということが、既に分かっているわけです。
そうなると、もう基準自体を引き上げるしかないだろうということで、なんとかその1年間に1ミリシーベルトという基準すら変えたいと彼らは思っているわけですし、出来る限り小さな数字が出てくるような測定の仕方をしたいと、彼らが思っているわけです。
谷岡理香:
先程ちょっとお話して頂きましたけれども、個人の被ばく線量というのは具体的にはどうやって計るんですか?
小出さん:
私自身は毎日、「ガラスバッチ」という放射線測定器を身に着けて仕事をしています。同じように、個人の被ばく量を計るための測定器を一人ひとりにずっと持っていてもらうというかたちで測定します。
谷岡理香:
ずっとというのは、ほんとにさっきおっしゃっていた24時間ということですか?
小出さん:
そうです。そうしなければ、要するにほとんど意味がないわけですけれども、私のことを言っても、放射線の管理区域に入る時にはもちろん持っていきますけれども、そうでない時には、肌身離さず持っているということはほとんどできないわけです。
谷岡理香:
そうですね。苦しいですね少し。生活する中で。
小出さん:
ですから、おそらく私でも出来ないような事ですから、普通の方々が丸1日24時間持ち続けるということは、まずできないはずですし、1年365日ずっと持っているという事もできないだろうと思います。
そして、個人の被ばく線量の測定器というのは、例えば、ひと月間ずっと肌身離さず持っていたとしても、ひと月経った後に「あなたはどれだけ被ばくをしました」という結果が出てくるのです。
私はそういう測定に関しては、私のような放射線業務従事者と法律で決められてる人間にとっては、もちろんやらなけばいけないし、ある程度意味があると思いますけれども、一般の人々の場合には、とにかく被ばくを少なくするということが何よりも大切なことだと思うのです。
そのためには、ひと月間測定した後に「あなたはどれだけ被ばくをしてしまいました」というように教えるようなやり方は私はダメだと思います。
ですから、従来と同じように空間線量というものを測って、「この場所に近づいてしまうと被ばく線量が多くなってしまうよ。だから、できる限りそういう場所には行かないように」と言って、予防できるようにするという事の方がむしろ私は大切だと思います。ですから、空間線量を測るのと個人線量を測るのは、二者択一ではなくて、本当であれば両方をやらなければいけないという、そういうものです。
谷岡理香:
環境省がそういった個人被ばく線量に方向転換した目的というのは何だとお考えですか?
小出さん:
要するに、これまでは空間線量だけ測ってきたわけですけれども、空間線量を測ってきて、人々の被ばく線量を1年間に1ミリシーベルト以下に抑えるという事がほとんどできないと。だから、今度は個人線量という形で測定をして、なんとか上手く逃れることはできないかなと彼らが考えているのだと私は思います。
谷岡理香:
小出さん、どうもありがとうございました。
小出さん:
はい、ありがとうございました。
「放射線と放射能」日映科学映画製作所1973年製作
http://youtu.be/Q60ZwQTlD6g
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第86~89回小出裕章ジャーナル
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