日本気象協会発表 台風8号の悪条件
(日本気象協会)
http://www.tenki.jp/forecaster/diary/t_yoshida/2014/07/07/13241.html
日本気象協会は台風8号に関する情報を発表。今回の台風には3つの悪条件。①猛烈な勢力に発達②梅雨前線の活動が活発化③台風の動きが遅く、影響が長引く恐れ。各地の警戒が必要な期間をまとめました。
台風8号 3つの悪条件
本日、日本気象協会は日本付近を接近・通過する見込みの台風8号に関する情報を発表しました。
まず、今回の台風8号ですが、以下の3つの悪条件があります。
①猛烈な台風に発達
8日には台風8号は猛烈な勢力となる見込みです。
台風の中心気圧は910hPaまで下がる予想。
910hPaまで下がり、沖縄に接近するのはめったにないことで、最強クラスの台風です。
沖縄地方には特別警報が発表される可能性も。
沖縄本島地方や宮古島など先島諸島では記録的な暴風となる恐れがあり、瞬間的には70メートル以上の暴風が吹き荒れる恐れがあります。ここまでの暴風が吹き荒れるのは、半世紀に1度、長寿の沖縄でも高齢の方が今までに経験したことがあるかないかというほどの大荒れの天気となる恐れがあります。
②梅雨前線の活動が活発化
本州付近に梅雨前線が停滞。梅雨前線に湿った空気が流れ込み、活動が活発化しています。
九州ではすでに大雨となっている所があり、避難勧告が出された所もあります。
今後、梅雨前線は本州付近をゆっくり北上する予想で、台風が近づく前から大雨となる恐れがあります。
そのあと、台風本体の活発な雨雲がかかるため、いっそう大雨による災害に警戒が必要になります。
③台風の動きが遅く、影響が長引く
台風の進行速度が遅いため、広い範囲で、大荒れの天気が長く続く恐れがあります。
大雨や暴風に警戒が必要な期間は?
上の表をご覧下さい。地域ごとの大雨や暴風に警戒が必要な期間をまとめました。
【沖縄】
宮古島など先島諸島は今夜から、沖縄本島地方も明日の明け方から風が非常に強くなり、明日は記録的な暴風が吹き荒れる恐れがあります。暴風に厳重な警戒が必要です。停電などの恐れがありますので、懐中電灯などの用意を。
【九州~近畿】
九州では梅雨前線の影響で、これまでにすでに大雨となっている所があり、今後も土砂災害に警戒が必要です。さらに水曜日頃からは台風本体の雨雲がかかり、再び大雨の恐れがあります。水曜日から金曜日頃にかけて、暴風や高波にも警戒が必要です。交通機関への影響が長引く恐れもあります。
【東海~関東・北陸】
今のところ、関東付近に台風が最も近づく恐れがあるのは金曜日頃。湿った空気の影響で、木曜日頃から広く激しい雨が降る見込みです。金曜日以降は台風が近づき、風も強まるため、暴風雨の恐れ。台風通過後も吹き返しの風に警戒が必要です。
【東北・北海道】
台風接近前から局地的な大雨に注意が必要です。木曜日以降は梅雨前線の活動が活発になり、局地的な大雨の恐れがあります。金曜日頃からは台風が近づき、風も強まるでしょう。
※なお、台風の予想進路や予想される影響は、今後、変わる可能性がありますので、最新の気象情報をtenki.jpなどでご確認ください。
(2014年7月7日 15時3分)
平成26年台風第8号に関する最新情報
(沖縄県)
http://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/bosai/h26taifu08.html
那覇市
【現場 画像集】台風8号が接近する沖縄 現地の状況 被害などまとめ 7月8日 #台風8号
(NAVERまとめ)
http://matome.naver.jp/odai/2140479032447674901
中・下越など大雨
新潟西蒲区1258世帯に避難指示
(新潟日報)
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20140709122668.html
県内は9日、台風8号からの暖かく湿った空気が流れ込み、梅雨前線が活発化している影響で、下越など各地で大雨となった。新潟市は土砂災害の危険性が高まったとして午前8時すぎに新潟市西蒲区の竹野町、仁箇、角田浜などの1258世帯、約4千人に避難指示を発令。新潟市秋葉区、長岡市、燕市の計3438世帯に避難勧告が出た。長岡市では国道脇の斜面が崩れ通行止めとなった。新潟地方気象台によると、10日正午までに1時間で60ミリの雨が予想される地域もあり、注意を呼び掛けている。
9日午前11時10分までの24時間降水量では新潟市(巻)で、7月の観測史上最大の144ミリを記録。佐渡市(弾崎)でも168・5ミリを観測した。
住民に避難を呼び掛ける避難勧告が出たのは、新潟市秋葉区の2401世帯、長岡市寺泊地域の海岸部の722世帯、燕市の一部地域の315世帯。新発田市、三条市、五泉市、阿賀町などでも高齢者や障害者に避難を呼び掛ける避難準備情報を出した。
長岡市寺泊野積の国道402号では、土砂が流出したため新潟市西蒲区間瀬までの間が通行止めとなっている。県によると、9日午前11時半現在、冠水などで佐渡市など19カ所の国道や県道などが全面通行止めとなっている。
県によると、住宅被害は三条市と燕市で床上浸水が各1棟、床下浸水は三条市で10棟。上越市では落雷が原因とみられる火災で空き家の外壁の一部が焦げた。
東北電力新潟支店によると、落雷などの影響で8日深夜から9日午前までに、県内16市で延べ1万6882戸が停電した。
JR東日本新潟支社による9日午後0時20分現在、越後線や信越線、磐越西線など7線の全線または一部区間で、合わせて特急4本、普通列車82本が運休した。
県教育委員会によると、三条市や長岡市の小中学校32校が休校、燕市、五泉市、佐渡市などでも始業を遅らせるなどした。
梅雨前線はゆっくりと北上し、雨は10日には小康状態となる見込み。10日正午までの24時間予想降水量は多いところで、中下越と佐渡で120ミリ、上越80ミリ。11~12日明け方ごろには台風8号が最接近することが予想される。気象台では「雨が降りやすい状況が続く。土砂災害などに気を付けて、不要な外出は控えてほしい」としている。
Typhoon Neoguri on July 6 NASA
過去最強の台風8号が原発を襲う?
(Newsweek)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2014/07/post-3322_1.php
今週日本列島に接近する台風8号「ノグリー」は原発のある九州や四国付近を通過するが
2014年7月8日(火)15時16分
マリア・ガルーチ
強烈な雨と風 2003年7月にフィリピンを襲った台風 Romeo Ranoco-Reuters
北上して日本に向かう非常に大型の台風8号「ノグリー」が、日本の3カ所の原発に損害を及ぼす恐れがある。
台風8号は8日に沖縄県宮古島に接近後、10日は九州に近付き、日本列島は過去最強クラスの強風と激しい雨に襲われるとみられている。
「沖縄諸島を襲う台風としてはこの15年で最大規模の台風だ」と、米空軍嘉手納基地のジェームス・ヘッカー准将は同基地のフェイスブックに投稿した。「沖縄を直撃したらどれほど危険なものになるか、言葉では言い尽くせない」
沖縄に原発はないが、九州には2つの原発がある(玄海原発、川内原発)。台風8号はこれらを通過しそうだ。四国の原発(伊方原発)も影響を受ける見込みがあると、ロイターは報じている。
これら3カ所の原発は以前から稼働を停止している。九州電力の広報担当者はロイターに対し、台風8号に関連して特別な対策は予定していないが、同社の原発施設は年間を通じて深刻な悪天候から原発を守る戦略を取っていると語った。
東日本大震災で被害に遭った福島第一原発は、今回の台風8号では最悪でも雨に見舞われる程度だとみられている。原発事故から3年以上が経過した今でも、東京電力は汚染水の流出を食い止めるのに苦慮している。
気象庁によれば、台風8号は8日午前には宮古島の東北東90キロの海上を1時間に20キロの速さで北へ進んでいる。10日6時までの24時間に予想される雨量は沖縄地方では多いところで200ミリに達する見込みだ。
それでも今回の台風8号は、昨年11月にフィリピンを直撃した台風30号「ハイエン」の威力には及ばない。この台風の死者は6000人以上に達し、過去最大規模の被害を記録した。
A Scary Super Typhoon Is Bearing Down on Japan…and Its Nuclear Plants
(恐怖のスーパー台風が日本に押し寄せてくる・・そして、原子力発電所にも)
http://www.motherjones.com/environment/2014/07/supertyphoon-neoguri-japan-nuclear-plants-fukushima
より
Super Typhoon Neoguri as glimpsed by astronaut Reid Wiseman from the International Space Station Reid Wiseman/NASA
Joint Typhoon Warning Center
One pressing issue is the safety of Japan's nuclear plants. In the wake of the 2011 tsunami and the subsequent disaster at the Fukushima Daiichi plant, it's important to consider whether a similar vulnerability arises here.
一つの喫緊(きっきん)の課題は、日本の原子力発電所の安全性である。2011年の津波とその後の災害をきっかけで起こった福島第一原発の課題、ここで同様の脆弱性が発生したかどうかを検討することが重要です。
Fukushima is located north of Tokyo on Japan's largest island, Honshu. By the time the typhoon reaches that point, it is forecast to be considerably weaker. But there are a number of other reactors spread across the islands; perhaps most exposed will be the southwestern island of Kyushu, where the current forecast has the typhoon making its first major landfall.
福島は日本最大の島である本州にある東京の北に位置しています。台風がそのポイントに到達するまでにはかなり弱まっていることが予想されています。しかし、日本に点在する存在する他の原子炉が風雨にさらされることになり、現在の台風の進路予測では、その最初の台風が上陸する先は九州南西部になります。
According to reporting by Reuters, there are two nuclear plants on the island. A company spokeswoman for Kyushu Electric Power Co. told the news agency that it "has plans in place throughout the year to protect the plants from severe weather."
ロイターの報告によると、九州には2つの原子力発電所がありますが、九州電力の広報担当者は、それが「厳しい天候からプラントを保護するために、年間を通じての計画を持っている」と報道機関に語った。
Joint Typhoon Warning Center (JTWC)
http://www.usno.navy.mil/NOOC/nmfc-ph/RSS/jtwc/
台風8号観測画像
(宇宙航空研究開発機構 地球観測研究センター)
http://www.eorc.jaxa.jp/news/2014/nw140708.html
台風の動き(GSMaP)2014年7月3日~7日の3時間毎のアニメーション
世界の雨分布速報
http://sharaku.eorc.jaxa.jp/GSMaP/index_j.htm
デジタル台風:台風画像と台風情報
(北本朝展/国立情報学研究所)
http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/
災害の記憶 ‐三大台風‐
(台風の一生)
http://contest.japias.jp/tqj2008/100101/sandaitaihuu.html
日本は昔から台風災害を受けてきましたが、昭和以降の台風の中で特に被害の大きかった3個の台風を、昭和の三大台風といいます。これらの台風によって生じた被害は、甚大なものでした。
室戸台風
1934年9月21日に高知県室戸岬付近に上陸した台風で、室戸岬で観測された911.6hPaは当時としては最も低い気圧の世界記録でした。台風は大阪市の西約20km地点を通ったので、大阪や広島では最大瞬間風速秒速60mの暴風が吹き荒れ、大阪湾では高潮が発生しました。近畿地方では多数の学校や家屋が倒壊し、列車の転覆や船舶の沈没などの大きな被害が出ました。
枕崎台風
1945年9月17日に鹿児島県枕崎付近に上陸した台風で、九州を縦断後広島市の西約15kmの地点を通り、北東に進みました。各地で激しい雨が降り、広島県を中心に洪水や山、がけ崩れなどで大きな被害が出ました。広島県では、死者・行方不明者がほぼ2000人と台風が上陸した九州全部よりも多くの犠牲者を出しました。これは、原爆投下と敗戦直後の混乱で防災対策がとれなかったことが原因の一つと言われています。
伊勢湾台風
1959年9月26日に和歌山県潮岬付近に上陸した台風で、北東に進んで同夜名古屋の西を通過したので紀伊半島や東海地方では最大風速が秒速30m以上の風が吹き荒れました。特に名古屋市から四日市にかけての沿岸部には東京湾平均海面上およそ4m以上の高潮が襲い、海岸堤防が各所で破られ死者約5000人を出し、5500億円の財貨を失いました。当時、名古屋とその周辺は干拓の規模が広がり、工場地帯が急に拡張していました。このため、高潮に対して防備の薄いゼロメートル地帯が広がり、自然災害を防ぐ努力があと回しにされたことが災害を大きくしました。
伊勢湾台風の記録(昭和35年制作)
http://youtu.be/ueRc0s54fD8
伊勢湾台風の大きさを近年日本を襲った主な台風と比較してみた
http://youtu.be/P9Y5cKggmGg
伊勢湾台風 - Wikipedia
史上最強の台風、1979年20号を現在の台風情報で再現してみた
http://youtu.be/3w7ZmNWhFlM
昭和54年台風第20号 - Wikipedia
空白の天気図
柳田邦男
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167240202
1945年(昭和20)年9月17日。敗戦直後、鹿児島県枕崎に上陸した超大型の台風、いわゆる「枕崎台風」は、九州、四国と西日本を縦断し死者不明者3600人超の被害を日本にもたらしました。しかしその内実に2000人強は広島県です。なぜ同地で被害は膨らんだのでしょうか? 原爆によって行政、警察、報道すべてが壊滅した広島の苦境と、自らも放射線障害に苦しみながら、観測と調査を続けた広島気象台の人々の奮闘を描いた、傑作ノンフィクションがついに文春文庫に登場です。(TT)
■ 『空白の天気図』 今年ほど、本書を読み継ぐのに相応しい年はないだろう (2011.11.8)
http://www21.ocn.ne.jp/~smart/Kuuhaku111108.htm
1945年8月6日、広島に原子爆弾が投下された。直後の9月17日には、その広島を大型台風(枕崎台風)が襲い未曾有の暴風雨と洪水をもたらす。原子爆弾による死者および行方不明は二十数万人に上った。枕崎台風による広島県下の死者及び行方不明は2千人を越えた。原爆被害の巨大な影に枕崎台風の悲劇が隠されているが、いったいなぜ広島で台風で多くの――それも上陸地の九州の犠牲者数(442人)をはるかに越える――人命が奪われたのだろうか。
著者は、単なる事件の発掘だけでなく、原爆による殺戮と台風による災害という二重の苦難の中で、人々がどのように生きあるいは死んでいったのかを知りたかったという。とりわけ著者の心をひきつけたのは、死傷者や病人が続出し、食うや食わずやという状況に置かれながらも、職業的な任務を守り抜いた人々が実に多かったという事実であった。官公庁の職員、大学の研究者、医師、軍人、……。
広島地方気象台の台員たちに、著者は焦点を合わせる。彼ら自身が原爆炸裂の真只中に身をさらした被爆者でありながら、同時に原爆と台風という二重の災厄を科学の目で見つめていた観察者であったということだ。1945年9月17日の事件であったが、核時代に生きるわれわれにとって、いつ何時同じ状況下に置かれるかもわからぬという意味で、まさしく現代の危機を象徴する事件であった。
2011年3月11に発生した東日本大震災は、巨大津波による大被害をもたらしただけでなく、東京電力福島第一原子力発電所を壊滅的な状態に追い込んだ。放射能の危機にさらされた地域の住民は家をすてだ状態で避難を強いられることになった。
まさに昭和20年9月の広島の状況と重なる。原爆被災と1カ月余り後の枕崎台風災害という二重の災厄だった。いま直面しているのは、巨大地震・大津波による災害と原発事故という二重の災厄だ。
2つの災厄の態様は違うように見えるけれど、そこから読み取るべき問題の本質に変わりはないと著者はいう。人間が手をつけた核の危険性に自然界の脅威が重なることによって、人類史上前例のない巨大災害を引き起こした私たちの、便利さと効率優先のライフスタイルと価値観、経済と国策のあり方、ひいては文明のあり方が問われているということだ。
著者は、本書『空白の天気図』が作品のなかで一番好きだという。NHK退職直後の執筆でもあり愛着があるのだろう。綿密かつ膨大な取材に裏付けられた事実に圧倒される。ノンフィクションとして一気に読み進ませる迫力がある。今年ほど、本書が新たに読み継がれるのに相応しい年はないだろう。
◆Sさんの質問に答えて
原爆と原発の放射性物質についてお答えします(沢田昭二)
http://blog.acsir.org/?eid=19
より
前略
広島原爆の放射性物質の大部分は風で移動し、火災雨と台風で流された
この放射性微粒子の一部は地上に堆積し、雨などで地中にしみ込みましたが、大部分は風とともに移動して行きました。原子雲の中央部から降下した放射性降雨は、一部は地中にしみ込みましたが、広島の場合は爆心地から2 km以内は大火災になり、火事嵐が発生し、強い火災雨が最初の放射性降雨の強く降った地域に降って、大部分を洗い流しました。最初の放射性降雨が降ったとき、広島市の北西部の被爆者は最初に雨が降った後、池や小川の魚や蛙が沢山死んで浮き上がったという多くの証言があります。
こうして放射性物質が大量に瀬戸内海に流れ込みました。おそらく海産物にかなりの方射影物質が取り込まれたと考えられますが、当時はそうした問題意識がなかったので、調査資料はありません。
その後、広島では9月に枕崎台風が直撃し、大洪水で20以上の橋が流失し、三角州の上の広島の土地は濁流で洗われ、放射性物質が瀬戸内海に流れ込みました。しかし、これも測定されていません。測定されたのは、放射性降雨によってもたらされ、地中にしみ込んだ放射性物質から放出される放射線を主に台風後に物理学的に測定したもので、これは放射性降下物のごく一部に過ぎません。これを放射線影響研究所や日本政府(厚生労働省)とそれを取巻く御用学者たちは、放射性降下物の影響はほとんどないと否定する根拠にし、その結果原爆被爆者の被爆実態から内部被曝の研究が発展させる道を閉ざしてきました。原爆症認定集団訴訟は、この国側の主張を打ち破って内部被曝の重要性を明らかにしてきました。
以下略
防災基礎講座
自然災害について学ぼう
(防災科学研究所)
http://dil.bosai.go.jp/workshop/01kouza_kiso/taifu/typhoon.htm
2. 台風
台風の発生と進行
台風は直径が数百kmほどの大気の渦です.気圧の低い中心に向かって周りから風が吹き込み激しく上昇するので,中心域で強い風と雨をもたらします.台風のエネルギーの源は, 熱帯・亜熱帯域の海水に貯えられた大量の太陽熱です.この熱が大気を温めて上昇させ, 風を呼び込み,しだいに大きな渦に成長して台風になります.なお,台風とは最大風速が17m/秒(34ノット)以上の熱帯低気圧を言います.赤道付近では大気の渦をつくる力が弱いので,海水温は高くても台風は発生しません.
北半球における大洋の中・低緯度域では,地球が東向きに自転していることによって生ずる力(コリオリ力)が働いて,時計回りの海流が流れます(南半球では反時計回り).従って大洋の西部では,海流は低緯度から高緯度へ向かうので,暖流が流れます.このため大洋西部域では より高緯度まで海水温度が高くなるので,熱帯低気圧が多く発生し,また移動しながら成長を続けます.
黒潮が流れる太平洋西部における熱帯低気圧を台風,メキシコ湾流が流れる大西洋西部域における熱帯低気圧をハリケーンと呼んでいます.これが世界における2大発生域です.太平洋西部海域(主としてフィリピン東方海域)で発生した台風は,暖かい黒潮に沿って勢力を維持・拡大しながら北上して,日本列島に来襲します.発生域を吹く偏東風(貿易風)に流され夏の太平洋高気圧の西のヘリを回り込むようにして北西に向かい,北緯25度付近 (ほぼ沖縄の緯度) にある亜熱帯高圧帯の気圧の尾根を越えると,上空の偏西風に流され速度を増して北東に向かう,というのが典型的なコースです(図2.1 本土上陸台風の経路).したがって台風の経路は,太平洋高気圧の位置と勢力,上空の気流の状態などに左右されます.
熱帯低気圧の周辺は温度差のほとんどない大気で満たされているので,前線を伴わないし,また,その等圧線は同心円状です.高緯度に進んできて北西からの寒気が流れ込み,中心から前線が伸びるようになると,温帯低気圧に変わります.台風の年平均の発生数は約27,本土への上陸数は年平均2.7です(図2.2 台風接近の年平均回数).
台風の風と雨
風は台風の中心に向けて反時計回り(左巻き)に吹き込みます.地球の自転による力や遠心力などが加わるので,気圧の高い方から低い方へと真っ直ぐにではなくて,かなり斜めの方向に吹き込みます(図2.3 台風域の風の場).このため台風の雲は左巻きの渦巻き状です.偏西風の流れに乗ると,移動速度は秒速20m(時速72km)以上にも達します.台風進行の右側 (通常北に進行するので東側)では,左巻きに吹き込む風の速度にこの移動速度が加わるので,その反対となる左側 (西側)に比べて風がより強く吹くことになり危険です(図2.4 台風域の風の渦). 進行右側は危険半円,左側は可航半円とよばれ,昔から船乗りにはよく知られていました.眼がはっきりしているような発達した段階では,中心から100kmほど離れたところで風が最も強く吹きます.最大風速 (10分間の平均)の記録は1965年23号台風による69.8m/秒(室戸岬),最大瞬間風速の記録は1966年第二宮古島台風による85.3m/秒(宮古島)です(表2.1 主要台風).台風の強い風は低い気圧と相まって,高潮を引き起こします.
台風の眼は,遠心力が働いて風がそれ以上吹き込めない範囲で,台風が弱まるとなくなります.眼の周りには強い上昇気流によるタワー状の積乱雲がそそり立ち,強い雨を降らせています.外に向かって螺旋状に伸びる雲の帯のところでも強い雨が降ります.停滞した梅雨前線や秋雨前線があると,台風から暖湿気流が送り込まれて前線の活動が活発となり総雨量が多くなります.通常,山地の南東側が風上斜面になり雨量が特に多くなります.1976年台風17号による総降水量は834億トン,1990年の台風19号では740億トンでした(写真2.1 1990年台風19号の気象衛星画像).800億トンの雨とは,日本全域に220mmの雨が降った場合の総量に相当します.この強い雨は洪水災害や土砂災害を引き起こし,一般に風による災害よりも大きな被害をもたらしています.しかし,ときには風の被害が大きくて 「風台風」 と呼ばれるものがあります.中心気圧の低い台風が衰えずに日本海沿岸を高速で北東進すると,日本全域に強風が吹き荒れ, 建物の損壊棟数が非常に多くなることがあります(1991年台風19号など).
台風の勢力と被害
台風の勢力は「大きさ」と「強さ」という2つの表現で示されます.1991年以降,「大きさ」 は風速15m/秒以上の強風域の半径により,「強さ」 は最大風速により分類され,強風域の半径が300km~500kmを「中型」,最大風速が33~44m/秒を「強い」といったように,大きさと強さがそれぞれ5階級に区分されています.それ以前は中心気圧と1000hPa以下の円形等圧線半径に基づいていました.最大風速などの気象データは,1987年までは米軍が飛行機観測を行っていたので,ここから入手できました.それ以降は,気象衛星の画像が示す台風の雲の形状・特徴を数値化し,最大風速との統計的な関係から求められています.
中心に向かう気圧の傾きが大きいほど風は強くなるので,中心気圧の低い台風は一般に 「強く」なります.本土で観測された最低の気圧は1934年の室戸台風による911.6hPa (室戸岬)です(表2.2 三大台風の比較).死者3,036などの大きな被害をもたらした室戸台風は観測史上最強の台風でしたが,このような非常に大きい台風では,日本の本土がすっぽりと覆われてしまうほどの大きさになります(図2.5 室戸台風の上陸時天気図).この台風は主被災地の京阪神地方には不意打ちの状態となり被害を大きくしたので,台風予報の向上をうながす契機となりました.第二次大戦後における最強の台風は敗戦直後の広島地方に著しい土砂災害を引き起こした枕崎台風で,室戸台風に次ぐ勢力でした.最大の台風災害は1959年の伊勢湾台風によるもので, 伊勢湾に発生した観測史上最大の高潮などにより,死者5,040などの著しい被害が生じました(図2.6 伊勢湾台風の強風).強い風と低い気圧によって引き起こされる高潮は,世界的にみても最大の被害をもたらしています.台風が湾岸低地に大都市のある湾内に大きな高潮を発生させるようなコースを運悪くとった場合には,そうでない場合に比べ被害は何倍も大きくなる恐れがあります.ただし,1961年の第二室戸台風(死者数202)のように,災害の教訓をうまく活かすなどにより,人的被害を大きく減らすことも可能です.
1960年代以降全般的にみて,台風による被害はその勢力に比較しより少なくなる傾向を示してきました.とくに,夜間上陸の台風による被害が大きく減少しました.これには情報伝達手段や生活様式の変化なども関係しています.台風はその発生・移動の経過が完全に捉えられています.見失うことはありません.地震や噴火などに比べれば,ほぼ完全に予報されていることになりますが,台風被害を防ぐにはさらに,洪水・山崩れ・高潮などの予測が必要です.
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時機を得た情報と早めの避難で、どうか命をお護りください!m(_ _)m
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