高レベル放射性廃棄物の最終処分
(東京新聞【ニュースがわかるAtoZ】)
原子力発電所から出る核のごみは、大量の危険な放射能を含む。国は14年前に地下300メートルより深く埋めて処分することを決めたが、いまだに場所は決まらない。国は処分技術は確立できているとして、国主導で処分場選定を模索するが、10万年も安全に保管できる場所が国内にあるのだろうか。(社会部・清水祐樹)
「若い」地層が弱点
埋設処理は?
核のごみ処分に関し、日本には地層の「若さ」という大きなハンディキャップがある。処分場に決まったフィンランド南西部のオルキルオトは、19億~18億年前くらいにできた硬く安定した地層にあるのに対し、日本の地層はずっと新しい。軟らかく、水を通しやすいため、深い場所でも地下水が大量に出る。地震や火山活動も活発だ。
北海道幌延(ほろのべ)町の地下研究施設で地下350メートルの調査坑道を取材すると、こうした課題が肌で実感される。絶えずわき出る地下水が、コンクリートの壁からしみ出し、床は水たまりだらけ。水没しないようにくみ上げる量は毎日約120トンに上る。坑道の土に触ると軟らかく湿っていた。地下水の塩分が濃く、土にも塩の結晶が含まれている。生物の死骸などが積み重なってできた堆積岩は、爆発の危険があるメタンガスが発生しやすい。
国の方針では、原発の使用済み核燃料から出る廃液を、溶けたガラスに混ぜて固める。このガラス固化体を金属製の容器に入れ、その外側を締め固めた粘土で覆い、地中に埋める。「地下は自然環境の影響が少なく、酸素がほとんどないので鉄の腐食も起こりにくい。地下水の流れも非常に遅いため安全」だと強調している。
しかし、製造直後のガラス固化体は、人が近づくと20秒で死亡するほど強い放射線を放つ。放射能が天然ウラン並みの比較的安全な水準に下がるまでに数万年はかかるとされる。長い年月の間には、地下水は粘土を通り抜けて金属容器を腐食。塩分が濃いと、腐食がさらに進む恐れもある。放射性物質が水とともに地上や海へと流出することも考えられる。
地震などの自然現象の予測も難しい。処分技術を研究する日本原子力研究開発機構の幹部も「想定外の事態はあり得る。超長期の安全性の証明は難しい」と認めている。
札束での解決に固執
適地探しは?
国内には各原発のプールのほか、再処理工場(青森県六ヶ所村)のプールに大量の使用済み核燃料がある。これらを今後処理し、国内外にある分も合わせると、危険なガラス固化体は約2万5000本にもなる。
これらは何とかする必要があるが、日本では、地層問題のほか、処分場探しの主体、やり方にも問題が残る。
処分場は、電力会社の出向者らを中心とした原子力発電環境整備機構(NUMO=ニューモ)が探し、運営することになっている。調査を受け入れるだけでも数十億円を渡す”札束”方式で、自治体に候補地の公募をしてきたが、1件も応募がない。2007年、高知県東洋町が応募したが住民らの猛反発ですぐに撤回された。
東京電力福島第一原発事故後に、「研究者の国会」とも呼ばれる日本学術会議が、最終処分政策を白紙に戻すことを提言した。許容できる核のごみの総量はどれくらいなのか社会的な合意を得ることや、札束の力で自治体に「イエス」と言わせる方式をやめ、核のごみを一定期間ごとに各地に保管させる方式なども提示した。
だが、国は従来通りの埋設処分が良いとし、NUMOの改廃を含めた政策の抜本的な見直しも見送った。処分場の候補地選びでは、公募とは逆に、国がここが適地だと示す方針に変わった。政府の中枢部からは、今年早々にも複数の自治体を指名するかのような発言も聞かれたが、今のところ動きはない。なぜここが適地といえるのか、本当に超長期の安全性が保てるのか、明示できるだけの科学的な根拠が乏しいからのようだ。
相変わらず「トイレなきマンション」の状況が続くなか、現政権は原発再稼働を急ぐ。今秋にも九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)が第一号になりそうな雲行きだが、核のごみという次世代へのツケの問題は何も変わってはいない。
10万年後の安全をどう守れるか?:オンカロ・六ヶ所・幌延
http://youtu.be/l2uCjnXIdfU
10万年先まで危険が続く...核廃棄物の現実
http://youtu.be/5axeW9Gmf4E
「津波で電源喪失」予見
国・東電の過失立証へ
福島第一原発生業返せ訴訟 第7回弁論 ヤマ場
弁護団 事務局長 馬奈木厳太郎ごに聞く
全国商工新聞2014年7月7日付
「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(生業訴訟)が提訴されて1年4ヵ月。6回の口頭弁論を通じて、東電、国の過失責任が鮮明になり、次回の口頭弁論(7月15日)は大きなヤマ場を迎えます。裁判の流れと現局面について、弁護団事務局長の馬奈木厳太郎(まなきいずたろう)弁護士に聞きました。
-生業訴訟が起こされ1年4ヵ月。今の局面は
馬奈木 私たちの裁判は、国と東電の責任を追及することで、原告だけの救済ではなく、全体の救済を図ることをめざしています。
そのために、まず過失責任があったことを主張立証し、それを前提に被害の立証に入ります。その上でどの程度の原状回復、慰謝料となるのか。裁判所による損害の評価があって判決となります。
つまり、責任追及→被害立証→評価→結審・判決が、裁判の大きな流れで
す。次回の第7回口頭弁論では、過失責任の追及が大きなヤマ場を迎えます。
対策を取らずに
-この問題は「裁判の核心部分」ですね
馬奈木 私たちは国も東電も「故意とも同視しうる重大な過失があった」と考えています。
それは国も東電も「02年、遅くとも06年までに」、全交流電源喪失が津波などによって生じることを予測・予見していた。
しかし、東電は何の対策も取らず、国は、東電や電力会社に対して、対策を取るよう法的な規制をかけたり、国の規制権限を適時適切に行使しなかった、からです。
―だから過失(落ち度)があったというわけですね
馬奈木 そうです。過失を立証するためには、三つの論点で決着をつける必要があります。
①対策を取らないと今回のような大事故につながって危険だと思える情報とは何か
②その情報は確立した知識や見解なのか
③国や東電はそうした情報にいつ接したのか
-です。
故意同然の過失
-国、東電は原発事故前にそうした情報に接していたわけですね
馬奈木 その一つが97年に出された農水省などによる4省庁「報告書」です。
この報告書は「過去に例がなくとも予想できる最大級の津波を想定すべきだ」と指摘しています。これを踏まえ国は、東電を含めた電力会社で組織する電気事業連合会(電事連)に対し、従来の2倍の津波(10メートルを超え得る津波)を想定した対策を取るように指示していました。
-指示まで出していたのですか
馬奈木 この指示を受け電事連が00年に試算結果をまとめたところ、福島第1原発には建屋などがある敷地の高さ10メートルを超え得る津波が来る、との結論でした。02年の「地震調査研究推進本部地震調査委員会が出した「長期評価」でも同様の結果が出ています。しかし、国も東電も何らの対策を取ってきませんでした。ですから、私たちは「02年、遅くとも06年までに」津波の予見可能性があったと指摘し、それにもかかわらず、対策を取ってこなかったのは「故意とも同視しうる重大な過失」と主張してきたわけです。
-もう”勝負あった”ですね
馬奈木 もちろん、国、東電も反論しています。たとえば実際に来たのは15メートル超の津
波。だから、10メートルを超す津波で事故が起きるのか立証しろ、などと反論していますが、「危ない」と分かっていれば、予見可能性の議論としては十分です。
4省庁「報告書」についても、国は「その結果をもって科学的知見が形成、確立したといえない」などと反論しています。しかし前回の第6回口頭弁論では、国が電事連に指示した措置や内容について「当時の資料が現存しないため、事実の有無を確認できない」と、驚くような無責任な回答をしました。
情報隠しに怒り
-傍聴席からは「情報隠し」と、国の態度に怒りの声が上がりました
馬奈木 裁判長も回答するよう促しましたが、それでも「必要性が分からない」と、指示をしていたかどうかの認否さえ明らかにしませんでした。
過失がないのであれば、堂々と主張すればいいのに、それを隠そうとする。
東電は相変わらず「過失は争点にならない」と繰り返すだけです。
-国も東電も過失問題では、窮地に追い込まれているわけですね
馬奈木 私たちの追及とともに、裁判所も国、東電に異例ともいえる数十項目の釈明を求めています。第7回口頭弁論までに、国は何を指示したのか、そして東電はそれに対してどんな対策を取ったのか、文書で明らかにするよう訴訟指揮をしました。
次回の口頭弁論は、それを踏まえた上での弁論となるわけで、過失責任問題が重大な局面を迎えることになります。
-福島原発関係の裁判で過失責任が正面から争われているのは、生業裁判だけ。それだけに注目されますね
馬奈木 そうです。全国への影響も大きい。私たちは、過失責任の一定の決着をつけた上で、被害立証に移りたいと考えています。
-被害立証はどう進むのでしょうか
馬奈木 私たちは裁判を通じ、被害者一人ひとりの被害実態を明らかにすることで原発事故の広がり、深刻さをあぶりだしたいと、考えています。
被害立証では被害者の尋問をできるだけ行いたい。ただし2600人の原告全員が裁判で陳述することは、時間的に不可能なので、被害実態を告発するアンケート調査に取り組みます。これが原告一人ひとりの大きな作業になります。
同時に心理学や、津波などの専門家を呼んでの証人尋問、そして裁判所による現地の検証-複数力所-をこの秋にも実現したいと考えています。
大飯判決を力に
-ところで、福井地裁の大飯原発再稼働の差し止め判決(5月21日)は追い風になりますね
馬奈木 控訴されましたが、判決は憲法上保護された「人格権」を、原発を稼働させる関西電力の「経済活動の自由」よりも重視されることは明らかだとし、多数の人間の生存にかかおる権利と電気代の高い低いの問題を並べて議論すること自体「法的には許されない」と断罪しました。
さらに「豊かな国土と、そこに国民が根をおるして生活することが国富であり、これを取り戻すことができないことが国富の喪失」としました。生業訴訟も「人の命や健康よりも経済活動の自由を重く見るような社会の在り方を変えよう」と提起していますが、福井地裁判決と私たちの問題意識は共通してお
り、私たちの裁判を後押しするものとなっているのはうれしいことですね。
韓国も脱原発の機運 フェリー沈没で広がる安全不信
(東京新聞【こちら特報部】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2014062402000165.html
韓国社会に衝撃を与えた四月のフェリー沈没事故は、事故とは関係ない分野にまで安全不信を広げている。その代表格が原発だ。老朽化原発の廃炉を求める声は急速に高まっている。日本にとっても対岸の火事ではない。韓国で原発の大事故が発生すれば、甚大な被害を受けるからだ。日韓が手を携えて脱原発を目指したいところだが、両政府とも原発推進の姿勢を崩さない。
(篠ケ瀬祐司、白名正和)
老朽化原発「廃炉を」
今月9日、韓国東部の蔚珍(ウルチン)にあるハンウル原発(旧蔚珍原発)1号機が発電を停止した。原子炉の制御棒1本が落下したためだ。
韓国内で原発が故障などで止まったのは今年4件目。原発運営会社の韓国水力原子力は「放射能の漏出はない。手動で停止し、発電所の安全は維持されている」と説明するが、23日現在、運転は再開されていない。
韓国では4月16日、300人以上の死者・行方不明者を出した「セウォル号」沈没事故が発生。その直後にも、ソウルの地下鉄で衝突事故が起き、政府や運行事業者への国民の怒りが沸騰している。交通機関システムの見直しが叫ばれる中、同じく安全第一の原発に注がれる視線も厳しくなった。
今月2日、有識者や市民団体代表ら56人が南部・釜山郊外の古里(コリ)原発1号機の即時閉鎖を要求する宣言文を発表した。参加した市民団体「環境運動連合」の担当者は「老朽化原発の廃止を求め、これほど多くの学会元老や市民団体が集まったのは初めてだ」と驚く。
古里1号機は韓国で最も老朽化した原発だ。同国初の商業用原発として1978年に運転を開始した。30年の設計寿命後も10年間の延長運転中だが、2013年11月には、定期検査明けの運転再開直後にトラブルで運転を停止した。市民団体のまとめによれば、これまで130回もの事故を起こしている。
現在、韓国で運転中の原発は23基。古里1号機のほか、東部の月城(ウォルソン)原発1号機が既に設計寿命を超えた。韓国紙・ソウル新聞によれば、さらに10基が30年までに30~40年の設計寿命を迎える。セウォル号が約20年前に建造された老朽船だったことも、老朽化原発への不安を増長している。
運転トラブル・隠ぺい 後絶たず
問題は事故や老朽化だけではない。
古里1号機では12年2月、定期点検中に全電源を喪失する大事故を起こしながらも約1カ月間、国の原子力安全委員会に報告を怠った。原発への不良部品納入問題も発覚。新型の加圧水型軽水炉で、韓国政府が「韓国型の新原発」と宣伝してきた南東部・蔚山(ウルサン)の新古里(シンコリ)原発3、4号機(建設中)にも、性能が劣る信号伝達用制御ケーブルが納入されていた。
韓国水力原子力は「古里1号機の事故の6割以上は、原発運用技術が不足していた最初の10年間に起きた。08年以降は3件だけだ」と反論するが、釜山の市民団体「エネルギー正義行動」のチョン・スヒ氏は「納得できる説明ではない」と批判する。
「セウォル号の事故で感じたのは、国家が市民の安全を守ってくれないということだ。古里1号機は約350万人が暮らす釜山の中心部から30キロほどしか離れていない。老朽原発閉鎖の風を起こしたい」
手を携えゼロ目指せ
韓国国民が不安や不信を募らせる一方で、朴槿恵(パククネ)政権は原発新増設路線を維持する。
今年1月に閣議決定された第2次国家エネルギー基本計画では、2035年までに、電力供給に占める原発の比率を現在の約26%から29%に引き上げる。そのまま実行すれば、出力100万から150万キロワット級の原発が5~7基新増設される。
背景には深刻な電力部不足がある。
11年9月、電力需給の急増に対応できずに供給を強制的に中断した結果、全国212万世帯が停電した。13年夏には、制御ケーブルの性能証明書ねつ造事件などを受けて6基の原発が停止。大口需要者に節電を義務付けるなどの強制措置でしのいだ。
日本の社団法人「海外電力調査会」の中川雅之上席研究員は「安価な電気での冷暖房が多く、需要ピークが夏冬の2回くる。日本のように休眠火力発電所がほとんどなく、潜在的な予備電力も極めて小さい。原発肯定派は、二酸化炭素(CO2)排出量削減の必要性を強調している」と韓国の電力事情を解説する。
原発を輸出産業と位置付けている点も推進の理由だ。
朴大統領は5月19日にセウォル号沈没事故に関し、涙を見せながら国民向けの談話を発表した。直後に向かったのは「韓国型原発」の竣工(しゅんこう)式があったアラブ首長国連邦(UAE)だった。トルコへの輸出では日本と中国、カナダと受注を競い合った。
古里1号機閉鎖の宣言文に参加したソウル大の安京煥(アンギョンファン)名誉教授は「人権の根源は安全と平和だ。安全を脅かしかねない新規原発を抑制し、既存の原発は閉鎖すべきだ。原発輸出にも反対だ。(事故による)被害者が韓国人か外国人かという話だからだ」と警鐘を鳴らす。
23基 対岸の火事ではない
日本も隣国の原発に無関心ではいられないはずだ。
韓国の原発事情に詳しい朴勝俊・関西学院大教授(環境経済学)は、古里1号機で旧ソ連・チェルノブイリ事故(1986年)並みの大事故が発生した場合、日本国内で50年以内にがんで死亡する人数を試算した。
具体的には、被ばく量とがん死者数の関係は国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に基づき、放射性物質が秒速2メートルの風に乗って細い扇状に拡散する事態を想定。南南東の福岡市や熊本市方向に広がったときは、死者は九州地方で8万4千人。京都市や名古屋市、東京都方面へ拡散すれば関西、中部、関東地方で13万人が亡くなる。朴教授は「風がどう吹くかは分からないが、肝心なのは韓国で大事故が起きれば、日本にも多大な影響が出かねないことだ」と指摘する。
実際、韓国と距離が近い九州には、危機感を抱いている人たちが少なくない。
九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)に反対する市民団体「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の石丸初美代表は「九州は韓国に近く、事故が起きたら影響は大きい」と心配する。だが、活動範囲を韓国にまで広げる余裕はない。「精力的に動けるメンバーは数人で、玄海の再稼働反対の声を上げるので精いっぱいだ」
なるほど安倍政権は原発の再稼動や輸出を推し進める。福島事故の教訓などどこ吹く風では隣国の原発に口を出せるはずもない。朴教授は「日本は脱原発にかじを切るべきだ」と訴える。
「福島事故が起きた時点で脱原発へと政策を転換し、外国でも二度と事故が起きないよう世界に発信すべきだった。ところが、安倍政権は全く逆方向に進んでいる」
2014/04/13
【広島】原発を推進するのは『不経済界』の人々だ ~
「原発が無くても経済は大丈夫!」講師 朴勝俊氏
(IWJ)
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/134449
2014年4月13日、広島県福山市のまなびの館ローズコムにおいて、学習会「原発が無くても経済は大丈夫!」が行なわれた。関西学院大学の朴勝俊(パク・スンジュン)氏(環境経済学)が、経済学の観点から脱原発やエネルギー転換の道筋を解説した。
朴氏は「これまでかかった費用にこだわって、原発をやめられないという人たちは、経済をわかっていない。パチンコで負けているのに『つぎ込んだ金を取り返すまで、やめるわけにはいかない』と、さらにのめり込むようなもの。絶対やってはいけないことだ」と断じた。
さらに、世界的なエネルギー需要の増加に対応するためには、「発電所より節電所という、発想の転換が必要だ」と説き、これまで原発に依存してきた立地自治体が、安心して原発がやめられるような仕組みを作り、支えていくべきだと提案した。
記事目次
経済とは「命と未来を守ること」
発電所より「節電所」
原発の地元を支える仕組みを
原発をやめても安心できる「未来」を示そう
Ustream録画(再配信映像)
・1/3(14:00ごろ~ 55分間)パフォーマンス/あいさつ/朴氏講演
http://www.ustream.tv/recorded/46149045
1分~ 坂本氏パフォーマンス/8分~ 主催奥野氏あいさつ/14分~ 朴氏講演第1部
・2/3(1時間0分)朴氏講演〔続き〕
http://www.ustream.tv/recorded/46150174
冒頭~ 講演第1部〔続き〕/36分~ 講演第2部
・3/3(29分間)質疑応答
http://www.ustream.tv/recorded/46151414
パフォーマンス 坂本晃一氏/主催あいさつ 奥野しのぶ氏(みどり福山 共同代表)
講演 朴勝俊(パク・スンジュン)氏(関西学院大学総合政策学部)
第1部「日本経済と原発・再エネ・節電所」/第2部「原発地元の未来の産業・経済をいっしょに考えよう」/質疑応答
日時 2014年4月13日(日)14:00~16:00
場所 まなびの館ローズコム(広島県福山市)
主催 みどり福山
関連リンク 『チャンスとしての脱原発』(e-みらい構想)
経済とは「命と未来を守ること」
朴勝俊氏は「原発推進派にも、経済のイロハをわかっていない人が結構いる」と前置きし、「東京電力の元副社長、桝本晃章氏は『原子力は引き返すコストが非常に高い』、もんじゅの所長だった近藤悟氏は『1兆円も使ってきて、やめるわけにいかない』と語っている。経済をわかっていない典型的な人たちである。何をわかっていないかというと、埋没費用である。建設にこれまで使ってしまったお金は戻ってこない。これを『もったいない』と言って、もっと続けると無駄が増える。絶対にやってはいけないことである」と述べた。
「原発推進は、社会的な費用も度外視されている」という朴氏は、「電力会社は、原発を運転すると安い燃料費でたくさん電気ができるので便益がある。しかし、事故が起きた場合の損害は、今の東京電力のように、国民全体が尻を拭うことになる。経済というのは、経営上の損得勘定ではない。社会全体にツケを回すことは、経済的なものではない」と断じた。
その上で、「原発事故のリスク、私たちの子孫に放射性廃棄物の危険を残す、こういったことを度外視して再稼働する勢力は、『日本不経済団体連合会』であり、主体となる役所は『不経済産業省』である。私たちは、この『不経済界』から経済を取り戻さないといけない」との考えを示した。
発電所より「節電所」
エネルギー需要への対応について、朴氏は「OECD(経済協力開発機構)の世界的な予測では、今後、発展途上国がエネルギーを必要とすることから、世界全体のエネルギー消費は増える。どんどん増えるエネルギー需要を、再生可能エネルギーで賄うにも自ずと限界がある。したがって、発想の転換が必要。それは『節電所』である。節電には、発電と同じ価値がある」と述べ、節電が鍵を握るとの見解を示した。
「小さいレベルでは、200ワットの冷蔵庫を使ってきた家庭が、買い換えの時に、同じ性能で100ワットで済むものを買うことである。そうすれば、この家庭は100ワットの節電所を建設したことになる。全体を1度に変えなくても、部分的に少しずつ変えていける。何千万世帯が束になれば、100万キロワットの節電所になる」。
「発電所だと長い建設期間はかかるし、建設費、燃料費もかかる。環境破壊にもつながるし、原発の場合は事故の危険性もある。それに対して、節電所はすぐにできて、燃料費は不要、環境破壊もない。なんだ、省エネか、と侮ってはいけない。エネルギー消費には無駄があるし、途上国でのエネルギー消費は増えてくる。これを、先進国で使っている最新技術を使えば減らせるのだ。省エネは、非常に大きな意味を持っている」。
このように説明した朴氏は、具体的な取り組みの例として、米サクラメント市電力公社の需要管理プログラムや、電力消費量の大きい企業向けの節電サービスなどを紹介。「節電所で利益を上げることができる」と力説した。
原発の地元を支える仕組みを
朴氏は、原発立地自治体の財政に関して、次のように説明した。「比較的新しい原発を持っている自治体は、固定資産税収入が大きいため、原発がなくなると困ってしまう。しかし、財政的に恵まれた自治体が、恵まれない自治体を支える財政調整の仕組みとして、地方交付税交付金がある。原発がなくなって固定資産税が入らなくなれば、その自治体には、地方交付税交付金が増える」。
「だが、電源三法交付金は、原発がなくなったからといって、他の交付金で埋めてもらえない。むしろ、原発の運転機関を延長したり、プルサーマルをやると割増金が出るなど、『危ない橋を渡らせる交付金』だ。本来は、原発が止まったら交付金が出る仕組みにしないと、地元は再稼働を求めてしまう」。
朴氏は、「しかし、原発が止まっても出る交付金の前例がある。福島第一原発である。事故で原発は止まったが、交付金がないと困るということで、規則を変えて出したのだ。しかも、特別な追加財源がいるかといえば、必要ない。電気代には電源開発促進税が含まれていて、毎年安定的に3500億円ほどの収入がある。もんじゅなどの原発研究に使うのをやめて、これを原発から撤退するための交付金にすればいい。核燃料税も、原発が止まっても税収が得られる方式に変わってきている。他にも、使用済み核燃料に課税する地域も増えている。工夫していけば、財政はなんとかなる」と主張した。
原発をやめても安心できる「未来」を示そう
原発停止後の地域産業に関して、朴氏はドイツの取り組みを示した。「原発をやめても、ドイツ経済は大丈夫だが、地元は工夫が必要となった。産業を起こしていかなければいけない。そのひとつは、再生可能エネルギー産業。もうひとつは、送電設備を利用した天然ガス火力発電所の誘致。そして、原発の解体事業である」。
「ドイツのように、これらで雇用を生み出しながら、日本であれば、原発立地地域は自然豊かなところが多いので、1次産業を発展させる。あるいは、観光業をもっと発展させる。そうした可能性を追求していかなければならない。原発をやめるにしても、希望のある未来の設計図が必要なのだ」。【IWJテキストスタッフ・花山/奥松】