◆【小出裕章ジャーナル~第46回】
政府の原発避難方針の転換
/廃炉に向けての石棺化について
http://youtu.be/feDT4lfnXJ0
聞き手:
元首相の小泉純一郎さんが突然「原発ゼロを目指すべきだ」と盛んにアピールしていますけれども、どういうふうに受け止められていますか?
※小泉純一郎「原発ゼロ」会見に安倍首相が戦々恐々(日刊ゲンダイ)
http://gendai.net/articles/view/news/145829
小出さん:
私はずっとそう言い続けてきたのですが、私の発言などは、全くマスコミから無視され続けてきました。まあ、小泉さんという方の発言ですからマスコミもそれに食いついているわけで、まあ、ありがたいと思います。彼が今、行っていることはまっとうなことです。
聞き手:
ブレずに言い続けて欲しいですね。
小出さん: そうですね。
聞き手:
11月に入って、福島第一原発周辺地域の避難されている方の政策を改めるという発言が自民党幹部、政権内部から出ています。茂木経済産業大臣は会見で「(元の住居に)戻らないと考えている方、判断に迷っておられる方も多数いる。政府として様々な選択肢を提示していくことが重要だ」と述べられました。
自民党の石破幹事長は札幌市内の討論会で「この地域は住めません、その代わりにこのような手当てをします、といつか誰かが言わねばいけない時期は必ず来る。つまり、民主党時代は避難にむけた準備段階としていたわけですが、これを改めるということです。小出さんはどう思われましたか?
小出さん:
当たり前といいますかね、猛烈に汚染されてしまっている地域がすでにあるわけで、
そういうところに人々が帰れないということは事故の直後から分かっていました。なんで、3年経って今頃言い出すのかな。これまで3年間、故郷を追われた人々の苦労が一体どれほどのものだったのか改めて考えてしまいます。
もっと早めに、「ここは帰れない」と言って、まるごと生活を補償する、移住させる、コミュニティごとどこか別の場所に街を作るということを本当は日本の国がやらなければいけなかったのですけれども、今になってしまいました。そういう決断をするのであれば、一刻も早く人々をきちっと生活できるようにするべきだと思います。
聞き手:
民主党時代に「将来は帰還させる」という曖昧な態度をとってきましたが、理由はどこにあったと思います?
小出さん:
原発被害がこれほど酷い被害を与えるということを何とか隠したい、自分たちの責任を取りたくなかったのだろうと思います。
聞き手:
現状の廃炉の見通しというのを小出さんの目からはどう見えますでしょうか?
小出さん:
見通しは全くありません。まずはできるところからやろうということで、4号機の使用済み燃料の底に今は沈んでいる燃料を取り出そうとしているわけです。全体の廃炉作業でいうと、比較的楽な作業だと思います。
※中長期ロードマップ進捗状況のポイントについて(政府・東電)
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/121022/121022_03c.pdf
それでも、危険がないわけではありませんし、労働者の被曝ということが積み重なっていってしまうわけです。さらに、1号機・2号機・3号機の使用済み燃料プールがあって、そこからも燃料を取り出さなければいけませんし、さらにはすでに溶け落ちてしまった1号機から3号機の炉心が未だにどこにあるのかわからない、そういう状態のままなのです。一体どういう形で廃炉ができるのかわからないという状態になってしまっています。
※廃炉完了 見通せず 「石棺」に厳しさ痛感(福島民報)
http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2011/11/post_2419.html
聞き手:
1号機~3号機の核燃料棒は、結局は取り出さなければいけないわけですか?
小出さん:
東京電力や国は取り出すと言っているのですね。ただし、取り出そうとすると大量の被曝をするしかないと思いますし、取り出すといっても、100のものを100取り出すということはできないと私は思います。たとえば、50だけ何とか取り出したとしても、50は取り出せないまま残ってしまうわけですから、私としては取り出し作業を諦めてそのまま石棺というもので閉じ込めるというのが、たぶん一番現実的な方法だと思います。
聞き手:
京大原子炉実験所OBの海老沢徹さんは「石棺化をしたら、燃料棒を取り出せなくなる。コンクリートで固めたら、また水が入ってきて汚染水の問題が発生するかもしれない」というご指摘をしていまして、石棺化には簡単には同意できないとおっしゃられていますが、小出さんはどうお考えですか?
小出さん:
海老沢さんのご指摘のとおりだと思います。一度、石棺を作ってしまいますと、溶け落ちた炉心は取り出すことができない。それを諦めるという前提に立って石棺化するわけです。石棺で覆ったとしても、海老沢さんがご指摘のように、汚染水が出てきてしまう可能性があります。
ですから、どういう状態が一番いいかというのは、未だわからないという状態のままあるわけです。まあ、本当であればなんとか私も取り出したい、そういう状態ですけれども、それをやろうとすると先ほど聞いていただいたように、労働者の被爆が大量になってしまうと私は思いますので、諦めるしかないんだろうな、と思っています。
長靴の中に水が入り被曝した下請け作業員の方
聞き手:
チェルノブイリでは第2石棺をつくっていますが、このチェルノブイリの教訓から学べることというのはどういうことがあるでしょうか?
小出さん:
まあ、かなり主観的なことばかりですけれども、ようやくにしてチェルノブイリでも石棺というものを作ったのですね。ただ、事故から27年、もうすぐ28年になりますけれども、一度作った石棺がボロボロになりまして、そこをもうひと回り大きな石棺で覆うしかない。今、おっしゃってくれたように第2の石棺を作っているのですね。
福島で私の予想している石棺を作るとなったとして、10年後に作るのか20年後に作るのかそれもよくわかりませんが、一度作ったとしてもそれがボロボロになっていきますので、また何十年か後にはまた石棺を作らなければいけないという、そういう困難な作業をずっとやり続けないといけなくなってしまいます。
聞き手:
第3、第4の石棺が将来、必要になってくるかもしれない、ということですね。
小出さん:
おそらくそうなってくるだろうと思います。そうさせないためには、溶け落ちた炉心というものをどこかに掴み出すということをやらなければいけないのですけれども、先ほどから聞いていただいたとおり、膨大な被曝作業になってしまいますので、いつの時点でそれをやるのかということをいつかまた判断を迫られることになると思います。
聞き手:
福島は廃炉をしないといけないけれども、全く予測はできないということですね。
小出さん:
そうです。
20111212 父へ 父として~福島の父たち
20111212 父へ 父として~福島の父たち 投稿者 PMG5
20120311 老人と放射能(前)
20120311 老人と放射能(前) 投稿者 PMG5
20120311 老人と放射能(後)
20120311 老人と放射能(後) 投稿者 PMG5
ナレーション:大滝秀治・志田未来
チェルノブイリの内側 ー石の棺ー(BBC制作/1991)
http://youtu.be/6xIeqpy8ujk
http://youtu.be/kicQo5AQtrw
#Fukushima #原発 石棺化必要! #被曝 被害甚大☆字幕
#Nuke Need Sarcophagus!
http://youtu.be/oEygOkPTDYE
チェルノブイリから福島へ 未来への答案
チェルノブイリから福島へ 未来への答案 投稿者 tvpickup
新映像 東電テレビ会議 4号機「爆発写真」
新映像 東電テレビ会議 4号機「爆発写真」 投稿者 tvpickup
○●○●○●○●○●
秘密保護法案続報・修正協議という名の茶番
http://youtu.be/AmHfQQF2oyk
ニュース・コメンタリー (2013年11月23日)
秘密保護法案続報
修正協議という名の茶番
濫用リスクが指摘される特定秘密保護法案をめぐり、法案提出者である政府と野党各党との間で修正の合意が続々と形成されているようだ。みんなの党に続き、22日には維新も修正案で合意したことを発表している。
しかし、法案の本質的な問題点は何も変わっていない。政府・自民党は野党側が求めていた第三者機関によるチェックの導入には最後まで応じず、付則で検討課題とするなどといったお茶濁しで誤魔化そうとしている。
秘密は一旦指定されてしまえば、その中身を確認することができない。秘密指定の妥当性を確認ができないということだ。
それを避けるためには、第三者によるチェック機能は不可欠だ。
なぜ政府・自民党はそうまで第三者のチェックを嫌がるのか。外部チェック無き秘密法制が、濫用や恣意的な運用を避けることは可能なのか。
政府や自民党が執拗に外部チェックを嫌う本当の理由を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2013/11/24
住民自治を掲げてきた東海村・国立市の長が語る「首長としての責任」、脱原発達成のためには「護憲」「秘密保護法廃案」が必要(IWJ)
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/113178
「お任せ民主主義から市民が街づくりの主人公へ」
JCO臨界事故の際、辞職覚悟で住民避難指示を出し、福島第一原発事故後は「脱原発」宣言をした茨城県東海村の村上達也元村長と、東京都国立市で環境・景観を守るために市民と奔走した上原公子元市長が11月24日、トークセッションを行い、これからの住民自治のありかたについて、それぞれの思いを語った。
※掲載期間終了後は、会員限定記事となります。
動画は本ページで( ^ω^)_凵 どうぞ
国立市現市長が元市長を訴える事態に
トークセッションが行われた一橋大学が位置する国立市は、1999年、「開発より環境」を訴えて初当選した上原市長が誕生した直後、閑静な住宅地の中に巨大高層マンション建設計画が明るみになった。以来5年間にわたって、周辺住民・学校・行政・市長・市議会が連携し、まちぐるみで建設計画に反対する運動が繰り広げられた。マンションの建設は強行されたが、住民の発意で一帯を高さ20mに制限する条例が施行。住民らによる裁判では、日本で初めて最高裁判所が「景観利益」の存在を認めた。10年近く続いたマンション紛争は終結したと思われたが、2009年、別の市民が市民とともに景観を守るために奮闘した上原元市長を相手に裁判を起こし、上原元市長に対して3124万円を賠償請求。現在、国立市が上原元市長に損害賠償請求する事態となっている。
景観をめぐる訴訟について、村上元村長は「最終陳述書を見て驚いた。読んで腹がたった。今の市長は何をしているのか。国立市民が7万人も署名をして、マンション建設に抵抗したのに損害賠償とは」と国立市と国立現市長を糾弾。「市民の存在、文化というものが日本の権力筋、自民党・公明党にとって目障りだった。上原元市長をターゲット、スケープゴートにして潰そうとしている」と、住民の意思を無視した行政、権力側の姿勢を強く批判した。
これからの日本において、村上元村長は「開発発展からの脱却」、「人と環境を大事にする街づくり」の重要性を主張。村上元村長、上原元市長の両氏は、豊かさの原点を考えた場合、経済優先ではなく、住民の命を大切にした、住民主体の街づくりの必要性を強調した。
安倍政権の思惑と特定秘密保護法案
後半では、今国会での成立が危ぶまれる特定秘密保護法案に関して言及があった。上原元市長は、「情報というのは私たちの権利を守るために重要なこと。政府が秘密だと言って、命にかかわる情報がもらえなくなる。地域で生きるときの基本であるものが、全部トップの意向で知らされないという状況になったとき、私たちは幸せという安心感を持って生きることができなくなる」と、秘密保護法に対する警鐘を鳴らした。
村上元村長も、「秘密保護法は、法律が通ってしまったからしょうがないという訳にはいかない。麻生副総理(の発言)は本音が出たんだなと思っている。ドイツ人もワイマール時代に『ミュンヘンのゴロツキどもが』と思ったはず。国の政権がとれるはずがないと。今私は、『安倍のゴロツキどもが』と思っている。彼らの本音が出たというのは、そういう作戦を彼らのブレーンの中で考えていたんだろうと。考えていたから『ヒトラーのやり方を』という発言を麻生副総理が出したのだろう」と、安倍政権がナチスの手口と同様の戦略をたてているのではないかと推察。
「脱原発を達成するためにも、今の憲法はなんとしても守っていかなきゃならない。秘密保護法は通してはならない。これを守れなければ幸せな社会はつくれない。アベノミクスのような市場原理主義、新自由主義の経済の中で我々は搾り取られていってしまう」と危機感を持って語った。
トークセッションの後には、国立景観求償訴訟弁護団の窪田之喜弁護士による訴訟の経過説明や、景観訴訟・市民運動に関わってきた市民・団体によるリレートークが行われた。「住基ネットも共通番号もいらない!くにたち市民の会」の館野公一氏は、「秘密保護法案と住基ネット、国民共通番号制度は表裏一体の関係。住基ネット、国民共通番号制度は、私たちの個人情報を政府に渡すものだが、政府は都合の悪い情報を私たちには渡さない、隠すということ。政府に物を言う首長、物を言う市民を排除していくのが住基ネットであり、国民共通番号制度であり、特定秘密保護法案ではないか」と、政府、行政側が進めている住基ネット・国民共通番号制度(マイナンバー法)・特定秘密保護法案の関係性について概説した。
(IWJ・安斎さや香)
■登壇者
上原公子氏(元国立市長)×村上達也氏(前東海村長)
■主催 くにたち大学通り景観市民の会/一橋大学大学院社会学研究科フェアレイバー研究教育センター/あおぞらと魔女裁判 kikiの会
■告知 11/24 首長の仕事とは。上原公子氏×村上達也氏 トークセッション“原発、景観、市民自治”
【2013.11.22フル】原発事故対応「国が前に出る」その真相(高音質)
http://youtu.be/zP2Bc9zyqIA
「報道するラジオ」2013.11.22
原発事故対応「国が前に出る」その真相
「報道するラジオ」非常に重要なテーマを扱う貴重なラジオ番組。
必ず聞いておくべき大事な情報を、その都度発信しています。
今後も、様々なニュースから大事な部分を皆様にお伝えしますので、ご期待ください。
無責任と逐次投入の果てに
―事故処理体制と東京電力のあり方について―
(金子勝ブログ)
http://blog.livedoor.jp/kaneko_masaru/archives/1762091.html
(1)問題の本質と守るべき原則は何か
2013年11月11日に自民・公明両党が東京電力を「原発事故処理を専門に行う会社」と「電力事業を行う会社」に分社化し、東京電力の事故処理・除染費用負担に国費を投入する提言を出し、それに基づいた政府の動きが次々と出されています。
しかし、安倍首相が言うように汚染水問題が「完全にコントロールされている」ならば、そもそも国が対策に乗り出すことは必要ないはずです。政府の言っていることは支離滅裂です。
「国が前面に出る」ということで、福島第1原発事故の処理や福島の復興が進むかのように報じられていますが、本当でしょうか。あるいは、与党案は「社内分社化」「完全分社化」「独立行政法人化」という3つの選択肢を提示していますが、この三つが本当の選択肢なのでしょうか。そこには東京電力の「破綻処理」は含まれていません。
この問題の本質は、どこにあるのでしょうか。事故処理体制と東京電力の経営のあり方を見直すに際して、つぎの3つが問われなくてはならない点です。
①こうした分社化案で事故処理が進むようになるのか――電力料金や税金をズルズル投入するやり方、戦力の逐次投入が失敗を招き、福島原発事故の収拾を困難にする。
②10兆円の賠償と除染の費用を、誰が、どのように負担するのかが国民に示されているか――10兆円に関して具体的な財源と負担のあり方を国民に示さないまま、東電救済を優先して福島に多大な犠牲を強いることはあってはならない。
③何が国民負担を最小化させる道なのか――経営責任も株主責任も貸し手責任も問わない分社化案では、国民負担がズルズルと膨張していく可能性が高い。かつての不良債権処理問題とそっくりであり、その失敗から何も学んでいない。
(2)責任回避のための逐次投入が失敗を招き、国民負担を膨張させていく。
政府与党の東電分社化案とその後の対応を見ていくと、東電救済のための逐次投入を行い、誰も責任を問われないまま、ほとんど電気料金か税で賄う方針が見えてきます。さらには、柏崎刈羽の安易な再稼動を進める姿勢も見えてきます。これまで、こうしたやり方が、福島第1原発の事故収拾や福島の復興を困難に陥れてきたにもかかわらず、失敗が上塗りされようとしているのです。
まず事故対策とその費用負担の問題点から見てみましょう。
●東京電力の負担を増やさないために、本格的な対策を打たずに泥縄式の事故処理が行われてきたために、事態の悪化が進んできたことの反省がありません。当初、四方を囲う鉛直バリア方式が出たが、1000億円かかるためとられず、安上がりの海側だけの遮蔽壁になってしまいました。現在も経産省と財務省の折衝した結果、予備費の470億円の範囲内(370億円)ということで凍土遮水壁方式が出てきています。この方式は恒久的対策としては実績がなく、どれほど地下水を遮断できるのか、耐久性があるかなど、未知数の部分が多く、本格的な汚染水対策になるかどうか疑わしい。現場は放射線量が高まっており、このような一時的対応を繰り返していてよいのでしょうか。
●仮設タンク方式(フランジ型)ですまそうとした結果、次々に汚染水漏れを起こし、敷地内が放射能で汚染されたため、溶接型に交換することができなくなっています。このまま行くと、仮設タンクの寿命から収拾がつかなくなる危険性があります。しかし、タンクの問題は相変わらず東電任せのままです。
●その中で、経産省は廃炉の会計ルールを変更し、省令ひとつで公聴会も開かず、原発の廃炉費用を電気料金に乗せられるようにしてしまいました。つまり、福島第1原発の廃炉の費用も、将来、電気料金に乗せようとしているのです。ズルズルとした対策を繰り返していけば、事故収拾がどんどん遅れ、電気料金だけが膨らんでいくことになる危険性が高まっています。
つぎに除染費用を見てみましょう。
●すでに原子力損害賠償支援機構から認められた5兆円の交付金枠のうち3.9兆円の交付金を認可されています(残り1.1兆円)が、支払っている賠償費用は3兆円超です(2013年10月段階)。もはや東電には5兆円だとされる除染費用を支払う能力はありません。実際、除染費用を少なくするために本格的な除染が行われず、東京電力が支払った除染費用はわずか67億円にすぎません。除染費用の不足を補うために、原子力損害賠償支援機構の交付金支給枠を5兆円から8兆円に増加させようとしています。いわゆる“追い貸し”です。しかし、本来、特別事業計画によって東京電力が原子力損害賠償支援機構に支払わなければならない特別負担金1.8兆円(2020年まで)を支払っておりません。原子力損害賠償支援機構法の枠組み自体が破綻しているにもかかわらず、追い貸しを続けて東電を生き残らせても展望はありません。実際、重大事故を引き起こした東京電力に反省もないまま安全性を無視して柏崎刈羽を再稼動させ、永遠に電力料金に乗せない限り、返せる見込みがあるとは思えません。1990年代以降に、銀行の不良債権処理で繰り返されてきた失敗そのものです。
●その一方で、中間貯蔵施設と追加除染の費用を国が負担するとし、除染は国の「公共事業」として実施するとしています。除染も汚染水対策と同じで、お金がかかるとして本格的な対策が回避されてきました。セシウム回収型焼却炉もそのひとつです。セシウム回収型焼却炉は600度以上の高温でセシウムを気化させて濃縮すると、汚染土や草木などをそのまま貯蔵するのに比べて容積を100分の1に圧縮できます。ところが、安上がりの中間貯蔵施設方式が選ばれました。これだと2000万トンに及ぶ汚染土壌などがそのまま持ち込まれ、フレコンパックに詰め込まれたまま簡易な屋根をつけたくらいで野積みしていては、集中豪雨などの問題に耐えられません。しかも、そこが最終処分場になってしまう可能性が高くなります。当然、その地域の住民の反対が根強く、住民間に対立が持ち込まれて、除染が進まなくなってしまいました。
●政府は、中間貯蔵施設の建設費1~2兆円をエネルギー特別会計から賄おうとにしています。しかも、失敗した高速増殖炉もんじゅをはじめ、原発推進のための予算の組み替えがないままでは、資金が不足する場合には電源開発促進税を増税することになります。この電源開発促進税増税も電気料金にかかってきます。
●そこで問題となるのは、このエネルギー特別会計含めて2000億円あまりの予算を使っている日本原子力研究開発機構の出身者が、除染に深くコミットしていることです。たとえば、この中間貯蔵施設の建設に関して「日本環境安全事業」という政府出資の天下り法人がアセスメントを含めたプランを作り、この「日本環境安全事業」に中間貯蔵の専門家として環境省環境回復委員会に入ったのが森久起氏ですが、彼は原子力研究開発機構の核燃料リサイクルの前部門長でした。また原子力規制委員会の田中委員長、更田委員も原子力研究開発機構出身です。原子力研究開発機構は、もんじゅをはじめ失敗だらけの政府機関ですが、彼らは予算削減を恐れてか、一貫して安上がり方式の除染を求めています。
●その中で、田中俊一委員長下の原子力規制委員会は個人が持つ線量計で被曝線量が1mSvまでならよいとする提言を出しました。国は、全国基準である空間線量1mSv以下へ環境を回復する責任を放棄し、被災地の住民の「自己責任」に押し付けようとしているのです。では、新しい町や代替地を与えているのでしょうか。それどころか、多くは生活再建に必要な賠償額も支払われておりません。これでは15万人も避難している福島を見殺しにしようとしているのです。
以上見てきたように、東電分社化案は、経営者、株主、貸し手の責任を問わないまま、汚染水対策を含む福島第1原発事故の廃炉費用も、除染費用も電力料金と税金にずるずると乗せていき、国民負担を膨らませていくだけなのです。さらに、東電生き残りのため、柏崎刈羽の再稼動を安易に進めることは、福島原発事故から何も学ぶことがないということに他なりません。
福島第1原発事故以降、電力料金値上げのたびに東京電力離れが進んでいます。その需要電力は560万kWに及びます。大手企業は自家発電を設置したり、新電力に移ったりすることができますが、負担は逃げられない家庭や中小企業に集中します。
(3)電力債が東電処理回避の理由たりうるか?
では、国民負担を最小化する方法はあるのでしょうか?
まず東京電力の経営や賠償負担のあり方を変えるには、原子力損害賠償支援機構法の見直しが必要となりますが、自民も民主も賛成した機構法の付帯決議には、経営者、株主、貸し手、利用者すべてのステークホルダーの負担のもとに1~2年後の見直しが規定されています。今の政府与党の東電分社化案は国会決議違反なのです。
本来ならば、日本航空がそうだったように、旧東電を経営破綻させ、新会社に移行すべきです。経営者、株主、貸し手責任を問うたうえで、発・送電会社を所有権分離し、原発部門は切り離して新事業体にし、旧東電の資産売却あるいは新東電の株式の売却で賠償費用を捻出するのが筋です。
ところが、政府与党が示す東電分社化案を進める人たちは、東京電力を破綻処理した場合、東京電力が発行した4.4兆円の「電力債」が紙クズになり、金融市場を混乱させるから、「民間企業」としての東京電力を残すべきだ、という理由をあげます。
これは本当でしょうか?
たしかに東電の電力債は企業年金投資対象となっていたり、投資信託に組み込まれたりしていますから影響がないとはいえません。ただし、いま他の電力会社の電力債は日本銀行や多くの機関投資家が買い支えていますから、金融市場がパニックになるというのは少々大げさです。
問題は、こうしてズルズルの処理を繰り返しているうちに、大手銀行は、融資を一般担保付きの私募電力債に変えている点です。これは、電気事業法37条で優先弁済が保証されているためです。福島への賠償支払いより「優先」弁済される可能性がある電力債に融資を換えているという意味で、典型的なモラルハザードです。これを至急止めさせ、金融機関には少なくとも原発由来の債務(原子力施設や核燃料の残存簿価、廃炉引当金)は債権放棄しなければなりません。その範囲であれば、銀行への公的資金注入は必要ないか、非常に少ない額に抑えられます。電力債は東電救済の理由にはなりません。
政府は東京電力を「民間企業」として生き残らせないと、事故収拾も賠償もできないと言いますが、そもそも今の東京電力を「民間企業」と呼べるのでしょうか。すでに東京電力には、公的資金1兆円と原子力損害賠償支援機構からの3.9兆円の交付金認可と合わせて計5兆円もの公的資金が入っています。そして原子力損害賠償支援機構と協議して経営再建計画を作成し、その下に動いている事実上の国家管理企業です。実際、原子力損害賠償支援機構から交付金が認可されると、東京電力はただちに自己資本に組み込み、損害賠償を支払って自己資本が足りなくなると、また交付金を認可してもらって延命しているゾンビ企業です。
仮に柏崎刈羽の再稼動を考えた場合でも、原発事故を起こし、その責任を取らない「民間企業」に運営を任せることは狂気の沙汰です。再稼動、廃炉のいずれかの選択肢をとるにしても、新潟県の泉田知事が要請するように管理・運営主体には必ず国が関与する必要がある以上、「民間企業」という言葉を盾に東電救済を継続することは大きなゴマカシです。
事実上の国家管理企業である以上、電力債の処理も、国会の立法次第でどうにでもなります。電力債を「新会社」が引き継ぐ方法だってあるし、国会が「政府保証をつける」と約束してもいいのです。
ただし、もし電力債を守りたくて新会社が債務を引き継げば、東京電力の発電所などの資産売却をするにせよ、新会社の株式を売るにせよ、借金を返済する必要が出てくるので、10兆円の賠償・除染費用の支払いが不足してしまいます。
だとすれば、エネルギー特別会計の原発推進予算を削って組み替え、事故処理費用に年2~3000億円を集中的に投入すべきです。
また六ヶ所村の再処理工場は計画から24年たっても稼働しないまま毎年およそ2500億円もの電気料金を浪費しています。「核燃料サイクル事業」を中止し、そのための積立金3.5兆円のうち六か所の再処理工場の廃炉費用を除く部分と、電気料金に上乗せしている再処理料金のうち年2~3000億円を除染費用に充てるべきでしょう。
こうした抜本的改革を経て、はじめて残る費用が新たに国民負担になるのです。正しい政策の手順に戻さないといけません。
*なお詳しく、その背景を知りたい方は、拙著『原発は火力より高い』(岩波ブックレット、2013年8月)および『原発は不良債権である』(岩波ブックレット、2012年5月)を参照してください。
【1086】 科学と合意 : このぐらいは区別して欲しい / 武田 邦彦
http://youtu.be/pCzmZKBDdDE
科学と合意 このぐらいは区別して欲しい
http://takedanet.com/2013/11/post_3b04.html
科学は時としてまだ事実を明らかにできないことがある。たとえば、地球が宇宙の中心なのか(天動説)、それとも地球が太陽の周りをまわっているのか(地動説)が真面目に議論された時代もあった。
でも、科学はやがて事実を明らかにし、今では「地動」であることを疑う人はいない。つまり「説」が取れれば初めて科学として確定する。「被曝と健康」という科学的問題は、まだ「説」がある時代で科学的には確定していない。福島で甲状腺がんの子供が増えている現在、全員が「正しいこと」を理解して発言しなければならない。
そんな状態だから、原発などのように事故が起これば被曝するようなものは少し待って、被曝と健康について「説」がなくなるまで待ったほうが良いのだが、急ぐ人がいるので「事故は起こらないだろう」として見切り発車した。
でも、被曝の基準は作っておかなければならない。そこで、科学的には確定していないが、「このぐらいだろう」という感じを「合意」しておこう、「合意ができれば原発も運転できる」ということで、関係者が検討し、国民の合意を得てスタートした。つまり「安全だから1年1ミリ」と決めたわけでもない。まして1年20ミリとか100ミリまで安全などという「科学的データ」はない。そういうことを唱える人もいるという段階だ。
そこで、「致命的発がんと重篤な遺伝疾患の合計が日本人全部で8000人でる」というまで「我慢しよう・・・専門的には「耐えられる限界」」ということを決め、多くの学者が納得できる数字が「一般人については、1年1ミリシーベルト以下の被曝」となったのである。もちろん、科学には達していないので異論はある。でも異論を言う人も「合意」には従う必要がある。異論のある人はそれを「科学」まで高めれば良く、それが医師や科学者の役割なのだ。合意もされていない自分の説を勝手に社会に言うのは、具体的な障害が出たときには責任をとる必要がある(イタリアの地震予知裁判の有罪と同じ)。
そして、この合意がなければ、原発の設計もできない。たとえば正常に運転していても原発の敷地境界では一般人が歩いたり生活をしていたりするので、そこに人がいても1年1ミリシーベルトを超えることのないように設計しなければならない。
事故が起こった最初の段階では、隠し通せると思ったのだろう、「1年100ミリまで大丈夫」などという人がいたが、この「大丈夫」という意味は、具体的に言うと「80万人が被ばくで死んでも大丈夫」ということだ。交通事故死が1年1万人を超えると「交通戦争」と言って多くの人が怖くなるぐらいだから、原発で80万人が死ぬと言ったら、だれも原発の運転に賛成しなかっただろう。
さらに「事故が起こったから1年20ミリシーベルトまで仕方がない」と言った人もいたが、この「仕方がない」というのは、16万人が死ぬことを意味している。
「日本全体ではない。福島県だけだからいいじゃないか」という人もいるが、交通事故でもなんでも1万人死ぬというのは日本全体のことで、少ない県もあれば多い県もあるが、全体として「日本全体で1万人も死ぬような産業は許さない」というのがコンセンサスである。
さらに、「科学的に1年1ミリでどのぐらいの犠牲者がでるかわからないのに、武田は何を言っているのか!」とバッシングする人もいるが、「1年1ミリ」は「科学」ではなく、「合意」である。科学的には現在のデータから言えば、1年1ミリで8万人から800人というぐらいのところしか絞り込めないが、それでは原発を運転できないから、合意したのだ。
だから、1年1ミリの合意を変更するときには、20ミリで良いとかそういうのではなく、犠牲者が16万人で良いか?と言わなければならない。自分で原発を進めるのに「合意手続」をしておいて、事故が起こったら合意がないようにいうのは実に汚く、狡猾で、日本人の誠実さが見られない。
繰り返すが、一般人が1年1ミリと決めたのは、「日本社会の合意」であって、それは「8000人の犠牲者」ということを意味している。「科学」と「合意」の区別もできないような人は他人を危険に陥れるので発言を控えてもらいたい。
「1年1ミリは厳しすぎる」とか「守らなくても良い」という人はその前に、社会が合意している他のこと、たとえば「飲酒運転はしてもよい」とか「1リットル0.15ミリグラムのアルコールで酒気帯び運転とするのは厳しすぎる」と言ってからにしてほしい。
この日本は野蛮な国ではなく、約束を守る国なのだ。
(平成25年11月18日)
↧
厳しさと無責任と茶番
↧