都議選は歴史的惨敗も
黒を白と強弁し、国民を舐め切っていた「オレ様政権」の見るも無残な右往左往
共謀ゴロツキ議員も後を経たず、前川前次官にトドメを刺され、誰の目にもあからさまになった暗黒政権のおぞましい全容
転落加速
錯乱政権の末期症状
(日刊ゲンダイ)2017年6月27日
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/208202
「自民党は引っ込め」――。
23日の都議選告示日。自民党の茂木政調会長が街頭演説中、こんなヤジが飛んだという。2度目の安倍政権が発足して5年。ここまでの逆風は初めてだろう。
国会を無理やり閉じて、都議選に備え、臭いものにフタをしたはずだったが、そうは問屋が卸さなかった。文科省から加計問題をめぐる新たな文書が発覚。疑惑の中心人物の萩生田官房副長官は東京選出なのに、地元である八王子での応援演説にすら顔を出せないでいる。「この、ハゲーーー」の絶叫2回生、豊田真由子衆院議員の狂気も追い打ちをかけ、批判の嵐の中、自民党は右往左往。その狼狽ぶりは見るも無残だ。
下村都連会長は「心からおわび申し上げたい。謙虚さがないとの批判はその通り」と謝罪。二階幹事長は都議選応援の足で行った豊洲市場の視察の際、豊田に関して質問されると、ブチ切れて取材を打ち切った。
支離滅裂なのは丸川五輪担当相で、24日の演説で、なんと小池都知事を褒めちぎったという。「知事が素晴らしい方針を示してくれたら我々が支えていく」と、対決姿勢はどこへやら。丸川は2020東京五輪で、都知事と協力せざるを得ない関係とはいえ、想定を超える大逆風に、訳が分からなくなっているんじゃないか。
24日に日野駅前で行われた自民党の街頭演説を取材したジャーナリストの横田一氏がこう話す。
「ベテラン現職都議の古賀俊昭さんの応援に、党本部の細田博之総務会長が来ましたが、演説では『厳しい選挙』とは言ったものの、加計問題など国政のことには触れずじまい。演説終了後に候補者の古賀さんを直撃すると『政府はもっと説明責任を果たすべきだ』『謝って済むのは子供だけ。大人は謝るだけでなく責任を取らないといけない』と安倍内閣への怒りをあらわにしていました」
失点続きの国政のせいで自民候補は落選危機に真っ青だ。それなのに当の安倍首相は、この週末も都議選の応援に一切入らず、土曜は神戸、日曜は自宅にこもったままだった。自民党は今回の都議選で過去にない挙党態勢を敷いているが、安倍はひとり逃げまくっている。それどころか、局面打開を図るため、またもやトンデモ発言の悪あがきなのだから、呆れてしまう。
「殿ご乱心」またぞろ“上書き”のデタラメ
安倍が都議選を避けて逃げ込んだ先は、誰もが自分に同調してくれる“身内”の元だった。
慰霊の日の沖縄訪問を早々に切り上げ、安倍が向かったのは神戸。翌24日、産経新聞社が運営を全面的にサポートする「『正論』懇話会」で講演し、改憲スケジュールの前倒しをブチ上げた。
「来るべき臨時国会が終わる前に、衆参の憲法審査会に、自民党の案を提出したい」
つまり、秋の臨時国会に憲法改正案を出すということだ。これには安倍に近い自民党幹部からも「聞いていない」の声が上がる。
そもそも5月3日の憲法記念日に、安倍が突然、9条改憲と2020年の新憲法施行を打ち出した際にも、自民党内は大混乱だった。これまでの党の改憲草案と異なる内容だったからだが、総裁がそう言うのならと、党の改憲推進本部は、「年内に自民党案を取りまとめ、来年の通常国会で改正案を提示」というスケジュールを描いた。
安倍自身も5月21日のラジオ番組の収録で、年内に自民党案をまとめる考えだと言っていた。それが突如、まったくの根回しなしにスケジュールの前倒しである。公明党幹部が「焦っているのか」と困惑していたが、安倍お得意の“上書き”“上塗り”で目先を変えられると思っているのだろう。
政治学者の五十嵐仁氏が言う。
「とうとう安倍首相が狂ってきました。与野党の議論も党内議論も無視して、とにかく自分の都合で、強権によって改憲に突き進むつもりなのでしょう。最終的には国民投票ですから、本来は国民の理解を得て、というはずでしたが、追い詰められ、焦りが如実になってきました」
5月3日のビデオメッセージも日本会議系の集会へ送ったもので、今回といい、「仲間内でしか勇ましいことを言えない小心者」(政治評論家の野上忠興氏)の安倍らしいが、焦りの裏返しはもうひとつあって、この講演会では、「獣医学部を全国に」などと、唖然とする発言も繰り出した。
加計学園だけが優遇されたという批判をかわす狙いで、安倍は「今治市だけに限定する必要はない。地域に関係なく、2校でも3校でも新設を認めていく」と言ったのだが牛や豚の飼育数は減り、ペットも減少傾向だから、獣医師は足りているんじゃないのか。それを全国につくってどうするのか。デタラメの極みだ。
上智大教授の中野晃一氏(政治学)はこう言う。
「まさに『殿ご乱心』です。『私がやる』で獣医学部を全国に増やすことができるのなら、国家戦略特区は首相の鶴の一声でどうにでもなると言っているようなものです。加計問題も自分が介入したと逆にバレてしまいました」
「信なくば立たず」と言うなら、もはや白旗
これぞ錯乱政権の末期症状である。全ては加計問題で黒を白と強弁した末路だ。おぞましい政権には、前川前文科次官が23日の会見でトドメを刺してもいる。
「出会い系バー」に出入りしていたという読売新聞の記事には「官邸の関与があった」と“共謀関係”を赤裸々に語った一件である。
読売は反論せず、会見で質問すらしなかった。新聞紙面でもこの話には触れていない。
官邸はそこまで汚い手を使うのか。こうなると、菅官房長官の反論も萩生田副長官の弁明も、国民には全て白々しく映る。
国民をナメ切っていた「オレ様政権」が、もはや何を言っても無駄だ。野党が要求する臨時国会を開かず、揚げ句が改憲スケジュールの前倒しと全国に獣医学部という特区拡大という上書き。こんなのもう通用しない。
「改憲は個人の執念であり、加計問題は権力の私物化。いずれも安倍首相の自己都合です。それを止める人が誰もいなかった。しかし、『政治主導』の名の下に全て押し切られてきた官僚から、『これはおかしい』と告発が出てくるようになったのです。改憲の提案を通常国会から臨時国会に早めたのは焦りの証拠。政権が長続きしないという不安があるからではないか。批判を無理やり抑え込もうとして、上書きでむちゃくちゃなことを言い出した。もはや滑稽というか哀れです」(中野晃一氏=前出)
ここまで転落しても、安倍はまだ首相に居座るつもりなのか。
19日の記者会見でも「信なくば立たずであります」と強調していたではないか。
都議選で自民は歴史的大敗を喫するだろう。共同通信が24、25日に行った世論調査は、第1党を都民ファーストと自民が競い合っているものの、既に投票先を決めている人は、都ファ26・7%に対し、自民25・9%。都ファに流れるだろう無党派が多いとみられる「まだ決めていない」が57・2%もいる段階で、すでに自民は都ファの後塵を拝しているのだ。
「逆風に 神戸の空は 五月晴れ」
安倍は講演で現在のつらい心境をこう読んだ。政権を退けば、すっきりする。晴れ晴れとした気持ちになれる。もう白旗を揚げたらどうだ。
【自民別働隊】「安倍政権を評価するか?」の質問に都民ファーストは「無回答」ばかり
(健康になるためのブログ)2017/06/25
http://xn--nyqy26a13k.jp/archives/31385
…別働隊らしく正体を隠して行動してますね。
アンケート結果からもわかるように、安倍政権・自民党に不満を持つ人は「共産党」か「民進党」に投票すべきでしょう。
「戦前回帰というウルトラ右翼思想の安倍政治は歴代自民党政治も否定している」
注目の人直撃インタビュー
不破哲三
日本共産党中央委員・常任幹部会委員
(日刊ゲンダイ)2017年6月23日
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/207972
安倍政権ほど国会審議を軽視し、議会制民主主義を冒涜した歴代政権はないだろう。森友、加計問題をめぐる数々の疑惑には一切答えず、国民の多くが反対の声を上げていた「共謀罪法案」に至っては、委員会審議を途中で打ち切って本会議で採決(中間報告)という「禁じ手」で強行成立させてしまった。傲慢な独裁政権の姿は、国政に半世紀近くにわたって関わってきた「ミスター共産党」こと、日本共産党中央委員会・常任幹部会委員の不破哲三氏の目にどう映っているのか。(インタビューは16日の共謀罪成立前)
安倍首相の加憲案は日本会議の提案
――今の安倍政権をどう捉えていますか。
自民党は結党来、財界密着、対米従属を基本路線としてきたわけですが、安倍政治というのは、これに戦前回帰というウルトラ右翼の思想が加わった。これが最大の特徴だと思います。
――歴代政権と比べて戦前回帰の志向が強い政権ということですか。
例えば、先の大戦について、日本の侵略戦争を認めず、「後世の歴史家の判断に任せる」と逃げていた田中角栄元首相でさえ、さすがに戦前を美化することはありませんでした。拓殖大学総長時代の中曽根康弘さんは、戦前回帰を肯定する言動が目立っていましたが、総理大臣就任後は「日本は外国から侵略戦争という強い批判を受けていることを心に留める必要がある」と答えるにとどめていました。自民党総裁といえども、首相となれば皆、国内外情勢を鑑みて踏み込んだ発言を避けてきたわけです。ところが、安倍政権は違う。閣僚が侵略戦争を美化する発言をしたり、教育勅語を肯定する答弁書を閣議決定したり。世界が警戒することを平気でする。安倍政治というのは歴代自民党政治をすら否定しているのです。
――安倍政権の傲慢さが目立つ理由として「1強多弱」の政治情勢が指摘されています。
安倍首相は選挙で大勝した――と言っていますが、実はそうではない。自民党の得票率は60年代末から90年代初めまで、40%台を割ったことはありませんでした。私が初当選した69年12月の自民党の得票率は47・6%で、共産党が39議席を得て「躍進」といわれた72年12月も46・9%。しかし、今の自民党は291の議席を獲得した14年12月の総選挙でも、比例得票率は33%。一方の野党4党は計34%で、本当は野党が上回っていたのです。つまり、今の自民党勢力というのは「架空の多数」にすぎないのです。
――小選挙区制がつくりだした「架空の多数」で好き勝手やっている。
やりたい放題のために、それに加えて特定秘密保護法と内閣人事局という“仕掛け”をつくりました。特定秘密保護法については、国民の多くが「特定秘密というのだから、よほどの極秘事項」と思っていたでしょう。しかし、施行後、国に情報公開請求すると、開示される資料は「黒塗り弁当」ばかりになりました。文書の見出しも真っ黒で、何も分かりません。そして、各省庁幹部の人事権を握る内閣人事局によって絶対服従体制を敷いた。これでは、外部から政権チェックするのは容易ではなく、それをいいことに目に余ることを毎日のようにやっている。国家の私物化、政治の私物化をしているといっていい。
対北朝鮮では外交努力を尽くすべき
――国家戦略特区諮問会議(議長・安倍首相)をめぐる加計学園問題でも「私物化」の批判が噴出しました。
国益を真剣に考え、本当に悪い岩盤規制であれば、突破しなければならないケースはあり得るでしょう。しかし、それでも総理関係者が関与しないように最大限の注意を払うのは当たり前。たまたま「腹心の友」が事業選定者に決まったけれど、俺は知らない――というのは政治の世界では通用しません。森友、加計問題は安倍首相の政治の私物化が露骨に表れた例ですが、憲法改正をめぐる新聞発表も私物化の例といっていいでしょう。
――5月3日の読売新聞で公表した9条をめぐる改憲宣言ですね。
あの中身はよくよく調べると、日本会議の関係者が昨秋の機関誌(「明日への選択」)で提唱した内容です。例えば、日本会議の政策委員で、第1次安倍政権から安倍首相のブレーンを務める伊藤哲夫・日本政策研究センター代表は16年9月号で〈憲法第九条に三項を加え、『但し前項の規定は確立された国際法に基づく自衛のための実力の保持を否定するものではない』といった規定を入れること〉と加憲方式への戦略転換を提案し、続いて、同じ研究センターの小坂実研究部長は11月号で、この方式で憲法9条を「空文化させるべき」だと主張しました。安倍首相の「加憲」案は、日本会議派のこの提案をそのまま取り入れたもので、しかもその提案を5月3日の日本会議派の集会に、その提案通りに「やります」と報告した。それも党に一切相談することなく、「党と政府の方針」とした。これは公党と国政の完全な私物化です。
――安倍政権では閣僚の劣化も目立ちます。特に共謀罪法案をめぐる金田法相の国会答弁は酷いものでした。
安倍政権の閣僚の顔ぶれは、国政をうまくかじ取りしようと考えられた人事とは思えません。共謀罪法案についても、本気で成立させたいのであれば、少しでも法律に明るい人を法相に据えるのが当然です。しかし、ほとんど法案の中身を理解していない人を大臣に任命した。おそらく30時間という審議時間が過ぎれば、数の力で押し切れるという発想が背景にあったのでしょうが、政治感覚を疑います。
――共謀罪法案では、国連人権理事会の特別報告者も懸念を示していました。
共謀罪は国民の人権、プライバシー権に対する安全装置が何もなく、政府の監視機能、警察機能を強化するだけだという警告。特別報告者の報告書は現地調査を踏まえた、非常によくまとまった内容です。国際社会からみて、今の日本が極めて危険な国になっていると判断したため、緊急の質問状を日本政府に出したのです。ところが、日本政府は報告書を否定した上、特別報告者も非難した。これは日本の民主主義に違反しているだけではなく、国際社会のルールを踏みにじる行為です。
――国際社会における日本という視点では、北朝鮮に対する強硬姿勢も最近、際立っています。
北朝鮮のミサイル発射問題をめぐり、武力衝突が起きないよう国連の閣僚級会合で「対話」の道が模索されていた中、「核ミサイル計画を止めない限り、対話はあり得ない」と言っていたのは日本の岸田外相だけ。安倍政権の外交姿勢というのは軍事的対抗措置を強めることしか頭にない。世界で最も軍事的脅威をあおっているのです。
――これまでの日本政府の対応とかなり違う。
98年1月、北朝鮮と日本の間で「軍事的対応の悪循環」ともいうべき危険な事態が拡大したことがありました。その時、私は国会で「交渉ルートを持たないまま対立関係だけが先行するのは危険だ」として、正式の対話と交渉のルートを確立する努力の重要性を訴えました。それが契機になって、村山富市さん(元首相)を団長にして政党代表団〈村山訪朝団〉をつくり、共産党も参加して初めて北朝鮮との交渉に道を開きました。双方の疑心暗鬼が深まれば、実験が演習となり、やがて戦争に至る。そうならないように外交努力を尽くすべきです。ところが安倍政治は、危機をあおることが政権の存在感を示し、右翼路線を国民に浸透させる手段だと信じ切っているのです。
戦後史上、初の野党共闘は今後も力になる
――安倍政権の暴走を止めるには、やはり野党共闘が必要ですね。
昨夏の参院選で実現した野党共闘は、日本の戦後史上、初めてです。それも、市民の声が政党を突き動かした。これはすごい財産です。「安倍1強」という異常な政治体制が、戦前回帰のウルトラ右翼を生み出す一方で、市民と野党の結集を促した。この動きは今後も大きな力になるのは間違いありません。
(聞き手=本紙・遠山嘉之)
▼ふわ・てつぞう 1930年、東京生まれ。87歳。東大物理学科卒。47年に日本共産党に入党し、53年に鉄鋼労連書記局勤務、64年以後、党本部勤務。70年、党書記局長になり、党幹部委員長、中央委員会議長を歴任。69年の総選挙で東京6区で初当選、2003年の議員引退まで連続11回当選。佐藤栄作首相をはじめ計17人の歴代首相と論戦した。
首相の「説明責任」空虚
「丁寧」連発も実態うやむや
(東京新聞【こちら特報部】)2017年6月21日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2017062102000137.html
「深く反省する」「真摯(しんし)に説明責任を果たしていく」と低姿勢をアピールしても、中身が伴わなければ空虚である。19日、前日の通常国会閉会を受けて記者会見した安倍晋三首相。加計(かけ)・森友問題や「共謀罪」法を巡る安倍政権の対応を批判してきた人たちの間からは怒りと失望の声が上がる。思えば特定秘密保護法や安全保障関連法の説明責任もうやむやなままだ。安倍首相が説明責任を果たす日は来るのか。
(佐藤大、三沢典丈)
加計・森友 「共謀罪」 関係者は怒り・失望
「あまりに漫然とした会見だった。あそこまで漫然とやられると、(記者も)切り込みにくいかもしれない。危機管理としては最適だったのかもしれないが…」と皮肉るのは、学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部建設が進む愛媛県今治市の住民らでつくる市民団体「今治加計獣医学部問題を考える会」の黒川敦彦共同代表だ。
首相は会見で「説明責任を果たす」と力を込めたが、黒川氏は「これまで全く何も説明責任を果たしていないのに」と失笑する。
「岩盤規制改革を進めると強調したが、〈市民への説明が先。真相究明を求める世論に応えようという姿勢は見えなかった。真相が究明されなかったことに対しては反省していない。問題が終わっていないのに幕引きをしようとする政権への不信はさらに高まった」
加計問題と同様、首相や妻昭恵氏の関与の有無が取り沙汰される学校法人「森友学園」し(大阪市)への国有地格安売却問題でも、首相は会見で「会計検査院の検査に政府として全面的に協力していく」と素っ気なかった。
強引な国会運営 反省の弁なし
問題の火付け役である木村真・大阪府豊中市議は「何か言い訳したつもりだったのかもしれないが、何が言いたかったのかよく分からなかった」とあきれながら首相の思惑を推し量る。「森友問題は昭恵氏が疑惑の中心にいるにもかかわらず、証人喚問はおろか、記者会見すらしていない。そこのところをほったらかしにして、何を言ってもそのままには受け取れない。反省の言葉を口にしたのは支持率が目に見えて下がったからではないか」
「国有地低額譲渡の真相解明を求める弁護士・研究者の会」代表の阪口徳雄弁護士も「国会が終わってから反省しても、およそ信頼できない。本当に反省しているのなら、国会の閉会中審査をするとか、証人喚問をするとかやればいい」と突き放した。
「共謀罪」法は、参院での委員会採決を省略する「中間報告」を用いて成立させたが、強引な国会運営などへの反省の弁はなかった。社民党の福島瑞穂参院議員は「共謀罪」が過去三度、廃案に追い込まれるのを目の当たりにしてきた。市民らの反対の大きさもあったが、当時の自民党にもそれを受け入れる度量があったと感じている。だが、「安倍一強」の政治状況下で国会の風景は変わった。
「今はかつての自民党と違う。こんなひどいやり方で法案成立を強行することはなかった。加計問題に関する私の質問に首相は『責任取れるのか』と恫喝した。その口から『説明責任』とは腹立たしい。支持率が落ちてきたことで猫なで声になっているが、でそれにだまされてはいけない」
秘密保護法 安保法 でも「丁寧に…」連発
安倍首相が国会閉会時の記者会見などで、賛否が分かれる中で成立した法律の説明責任に触れるのは今回が初めてではない。
特定秘密保護法が成立した二〇一三年十二月の臨時国会閉会後の記者会見では「秘密が際限なく広がる、知る権利が奪われる、通常の生活が脅かされるといった懸念の声があった」「国民の皆さんの懸念を払拭すべく丁寧に説明をしていきたい」と語った。説明は尽くされたのか。
情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長は首をひねる。「成立前に懸念されたような問題は起きていないが、特定秘密の仕組みの詳しい説明はない。秘密を扱う政府は、信頼性を高めるため、公文書管理や情報公開の制度で、秘密以外の情報の透明性を高めることが不可欠だが、そのために政府が何をしたかについても説明がない。加計・森友問題などでも行政文書の管理のずさんさばかりが明らかになっている」
一五年九月、安全保障法制が成立した通常国会の閉会直前の記者会見でも、野党から「戦争法案」と攻撃された同法制を「戦争を抑止する法案」と強調した上で「国民の皆さまの理解がさらに得られるよう、丁寧に説明する努力を続けていきたい」と訴えた。
ところが、安保法で駆け付け警護が可能になった自衛隊の南スーダンPKO派遣では、日報で「戦闘行為」と記されていたにもかかわらず、実態の説明はなかった。先月、初めて実施された米艦防護でも、安倍首相は「一切公表しないことで米側と合意している」と口をつぐんだ。
元防衛官僚の柳沢協二氏は「安保法で政府が何を行い、日本にどう影響するのか、国民は大きな関心を寄せているが、目の前の出来事すら説明しようとしない」と指弾する。「安倍首相は『丁寧に説明する『一と百回ぐらい繰り返せば、国民が説明された気になると考えている。いずれ、日本が戦争に参加した場合でも、首相の『今後、参戦理由を丁寧に説明する』の一言で済ませていいのか」
「説明責任」の四文字が空々しく響く。
北海道大の吉田徹教授(比較政治)は「日本の国会は制度上、与党は強引に法案の採決を狙い、野党は会期の短さを逆手に廃案に追い込もうとする展開になりがちだ。熟議型でなく、対決型と言える。このシステムが機能するには、選挙による政権交代とセットでなけれぱならないが、安倍一強でその心配がない。説明責任など果たすはずがない」と嘆く。
打開策はあるのか。「状況を変えるには野党共闘を進め、選挙で政権交代は無理でも、負けないことを目指すしかない」(吉田氏)
「真相究明ヘメディア連携を」
ジャーナリストの青木理氏はメディアの意識改革に期待する。「記者は裏で情報を得て、他社を出し抜くのが格好良いと考え、公の記者会見で詰め寄るのは避けがちだ。しかし、菅義偉宣房長官の記者会見で、東京新聞やジャパンタイムズの記者がやったように『きちんとした回答がないから重ねて聞いている』と食い下がるのも大事だ。こちらの方が国民の感覚に近いのではないか」
首相の記者会見を権力側の宣伝の場にせず、批判的な言論空間にできるかどうか。「首相に説明責任を果たさせるのに保守もリベラルもない。報道陣は連携して鋭い質問を浴びせかけるべきだ。そうしないと、いずれ国民から見放されてしまう」(青木氏)
有権者はどう判断すべきなのか。首都大学東京の堀江孝司教授(政治学)は、今回の首相会見について「加計学園問題と、共謀罪法案を成立させるため、禁じ手の中間報告を使ったことが支持率急落の原因なのに、謝罪すらしなかった。このことは忘れてはならない」と念を押した上で、有権者に呼びかける。
「安倍政権は、個々の政策の支持率は決して高くない。何度も説明責任を約束しながら、果たしたことがない政権に対して、有権者はこれまで以上に厳しい目を注ぐべきではないか」(`・ω・´)ゞ
報道特集 沖縄「慰霊の日」~大田元知事が遺したもの~
20170624
http://dai.ly/x5ru3wy