失墜「非核」日本、怒るヒロシマ 核禁止条約交渉不参加、原発輸出は正当化…
(東京新聞【こちら特報部】)2017年3月31日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2017033102000149.html
核兵器禁止条約制定に向けた交渉が米国で開かれているが、日本は反対を表明、参加すらしていない。かと思えば、核拡散防止条約(NPT)にも加盟していないインドに原発ビジネスを解禁する日印原子力協定の締結に踏み切ろうとしている。商業利益優先を印象づける振る舞いは、どこの核開発国かと見まがいそうだ。核の脅威が高まる世界で、むしろ危険な綱渡りではないか。「非核」の国是を揺るがせる被爆国の是非を、広島で聞いた。
(橋本誠、木村留美)
核禁止条約交渉に不参加
「怒りですね。母も入市被爆しているので…」
三十日、観光客でにぎわう広島平和記念資料館前。オバマ前米大統領の折り鶴を見学してきた森川薫さん(四〇)=広島県廿日市市=は、核兵器禁止条約の交渉に日本が参加していないこ
とを嘆き、涙をぬぐった。
「アメリカの核の傘の下にいることに気を使って、言いたいことが言えないのが情けない。日本人として恥ずかしい」
核兵器禁止条約は、核兵器の開発や実験、使用の全面禁止を定める。オーストリアやメキシコの主導で百十三力国が交渉開始に賛成したが、核兵器を持つ米
国、ロシアなどは反対。同調する日本政府も二十七日、交渉への不参加を表明した。高見沢将林軍縮大使は保有国が参加しないことから「国際社会の分断を一層深め、核兵器のない世界を遠ざける」と説明する。
だが、広島ではこの「理屈」に納得できる人は多くない。原爆ドームを訪れた外国人客からも口々に疑問の声が上がった。エルサルバドルから父親と旅行に来たマルタ・デニスさん(二九)は「日本は被爆国なのに、なぜ交渉に参加しないのか不思議です」と驚く。ドバイから家族旅行で来たインド人男性(五〇)は「不参加は知らなかった。日本はリーダーシップを発揮すべきなのに」。グループで訪れたインド人女性も「交渉には参加すべきだ」と話した。
怒るヒロシマ 「被爆国の役割放棄」
原爆ドーム前で二〇〇六年からボランティアで英語ガイドを続ける三登浩成さん(七一)=広島県府中町=は日本政府の姿勢を「被爆国のやるべきことを放棄した」と切り捨てる。妊娠四ヵ月の母親の胎内で被爆し、内外から訪れる人たちに核の恐ろしさを語りかけてきただけに、怒りが収まらない。
「日本が先頭に立つべきなのに、逆に重しになり、外国の人は皆がっかりしている。日本は本当の核兵器廃絶は願っていないとしか思えない。参加すると核保有国と非保有国を分断するというが、日本にしかできない調整役が務められるはずだ」
原爆文学を研究するポーランド出身で広島在住のウルシュラ・スティチェツクさんも「外国人は、日本に行ったら広島に行くのが義務みたいに感じている。なのに広島が核廃絶を訴えても国が訴えない」と交渉不参加の背景を分析。被爆地に比べ、東京などでは原爆の被害がローカルな問題として軽視されているとし「戦後生まれの人たちに知識が不足している」と、国内の温度差を懸念する。
ボランティアガイドとして原爆の被害を伝えている村上正晃さん(二四)も、日本人の中に「核抑止力の神話」が以前にも増して広かっていると感じている。
「ガイドで会う人でも、とくに若い人に、核兵器を持ってもいいという人が増えている」と危ぶむ。「日本が七十年戦争をしなかったのは、核の抑止力からではない。根底には原爆の被害を繰り返すまいという思いがあるのに、それが薄れている」
原発輸出は正当化
インドと原子力協定締結を急ぐ
現実に、世界はきなくささを増している。
トランプ米大統領は今年二月、ロイター通信に「(核兵器で)他国に後れを取るつもりはない。(他国が持とうとするなら)われわれはその頂点に立つ」と核強化に意欲を見せた。そのトランプ氏の就任後、北朝鮮は弾道ミサイルの発射を繰り返し「核の脅威」をちらつかせている。
「(米国に対し)北朝鮮はハリネズミのように身構えている。誰も戦争を望んでいないのだが、偶発的なことから核兵器を使用するような衝突がいつ起きるか分からないほど緊張状態は高まっている」と警告するのは、元広島市立大学広島平和研究所所長で国際政治学者の浅井基文氏だ。
北朝鮮だけではない。最多保有国のロシアも核戦力の増強を進めており、米口間の戦略核兵器の削減に関する交渉も難航が予想されている。
米科学誌が毎年発表する「終末時計」も、トランプ・リスクを危ぶみ、地球最後の日までの残り時間を「残り二分三十秒」まで針を進めた。米ソ冷戦下で核実験競争が過熱した一九五三年の「残り二分」に次ぐ危機的な状況とみられている。
緊張感が高まる中、「唯一の戦争被爆国」の動きは鈍い。外交評論家で日本赤十字看護大教授(国際人道法)の小池政行氏は「世界の多くの一般の人から見れば、被爆国を訴えながら非人道的な核兵器廃絶に積極的にならない日本の姿は矛盾したものに映るし、日本もまた自己矛盾に陥っていくだろう」と危ぶむ。
軍拡競争あおりかねず
その最たるものが、インドへの原発輸出を可能にする日印原子力協定だ。政府は今国会での承認を目指すが、国内外の市民団体が「核開発競争をあおりかねない」と猛反発している。
安倍首相は昨年十一月の日印原子力協定署名後の共同記者発表で「NPTを締結していないインドを国際的な不拡散体制に実質的に参加させることにつながる。核兵器のない世界を目指すわが国の立場に合致する」と強調し、原発ビジネス解禁を正当化した。
だが、原子力資料情報室の松久保肇研究員は「インドは七四年の核実験で平和利用のためと輸入した原子炉などを転用していた経緯がある。被爆国である日本が、核兵器をつくりNPTにも加盟しない国に協力していいはずがない」と批判。「(事実上の核保有国の)隣国パキスタンの危機感をあおりかねず、南アジアの軍拡競争の火種になりかねない。インドは被爆国である日本のイメージを利用できる一方、日本は軍縮とは囗ばかりで金のためなら何でもする国と評されかねない」と懸念する。
また、軍事転用を禁じるのが協定の目的だが「インドに対する協定は驚くほど甘い」(松久保氏)。政府は、核実験を実施したら協力停止すると言うが、その項目は協定本文にはなく、別の文書にあるのみ。他国との協定と比べても異例の譲歩で「これでは歯止めにならない」との懸念は根強い。輸出した原発が事故を起こしたら、日本企業が賠償を求められる可能性すらある。
重大な懸念が噴出しているのに加え、岐阜女子大南アジア研究センター客員教授(インド政治)の福永正明氏は「福島第一原発事故による『原子力緊急事態宣言』が解除されていない日本が原発を輸出することが許されるのか」と倫理的な問題も指摘する。
前出の三登さんも「NPTにも加盟していない国に原発を売るのはおかしな話」といら立ち、原発ビジネス優先の姿勢を危ぶむ。
「外国から見たら、日本は原爆の被爆と原発事故があった重要な国なのに、日本人自身の自覚が足りない。唯一の被爆国という言葉だけで、核廃絶のために何をするのか方法が見えない。アメリカの方を向いているばかりで、国としての品位、威厳が損なわれている」
「核兵器廃絶へ重要な一歩」
交渉会議参加国が歓迎
(しんぶん赤旗)2017年3月29日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2017-03-29/2017032905_01_1.html
【ニューヨーク=島田峰隆】ニューヨークの国連本部で27日に始まった核兵器禁止条約の交渉会議(第1会期)では、国連のキム・ウォンス軍縮担当上級代表がグテレス事務総長のメッセージを代読し、参加国の政府高官らが条約の交渉開始を「歴史的だ」と相次いで歓迎、核兵器を法的に禁止することの必要性や緊急性を強調しました。
グテレス氏はメッセージで「核兵器の保有は平和と安全を求める人類共通の願いと根本的に相いれない。核兵器に反対する国際規範の強化は重要なステップだ」と述べました。
南アフリカは、核兵器廃絶をめぐる動きが保有国の妨害で数十年にわたって停滞してきたことを振り返り、「われわれがここに集まった唯一の目的は核兵器を禁止する交渉のためだ。その意味で実に歴史的な出来事だ」と語りました。
生物兵器などの大量破壊兵器が国際的に禁止されてから廃絶へと進んだことを指摘。「核兵器を同様の国際規範に従わせる」「核兵器に関するより厳格な規範は国際的な安全保障をより強める」と述べました。
エジプトは禁止条約の交渉を支持する理由として、法的拘束力のある文書が▽核兵器の保有や使用を全面的に拒否する▽禁止によって核兵器への国際的非難が強まる▽「核抑止」に基づく軍事ドクトリンを再考させ、廃絶の決意を地球規模で強める―ことなどを挙げました。
ジャマイカは、核保有国が核不拡散条約(NPT)に基づく核廃絶の努力を怠っていることを批判。大量破壊兵器の中で核兵器だけが禁止されていないことに触れ「この受け入れがたい異常を正すときだ」と述べました。
アイルランドは、「新たな歴史を刻み、すべての人にとってより安定した、安全で平等な未来をつくる機会を迎えている」と強調。「この変化を起こす事業に、より多くの国が参加することを望む」と呼び掛けました。
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森友疑獄を隠れ蓑
共謀罪とGPS捜査法が同時進行の恐怖
狡猾政権が着々進める国民総監視社会への立法準備が世紀の疑獄の裏で進んでいる
同士には便宜、一般国民は統制とはいよいよ、露骨な安倍サマ独裁国家の大暴走
最高裁の違憲判決も焼け太りに使う国家最優先政権の底知れぬ悪知恵と執念
(日刊ゲンダイ)2017年4月3日
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/202723
歯向かう者は、国家権力を総動員して徹底的に弾圧する――。教育勅語を是認する大臣を抱え、戦前回帰を目指す安倍独裁政権の本性が垣間見えたようだ。31日行われた大阪府・市による学校法人「森友学園」への立ち入り調査。学園本部がある市内の「塚本幼稚園」には、早朝から黒スーツ姿の府職員らが列をなして建物内に入り、籠池泰典前理事長立ち会いの下、4時間近くにわたって資料の確認や聞き取りなどを行った。
学校法人に対する行政や捜査機関の立ち入り調査は、国の就学支援金を不正受給していた「ウィッツ青山学園高校」(三重・伊賀市)が記憶に新しいが、今回ほど物々しい雰囲気はなかった。森友も補助金の不正受給疑惑が浮上しているとはいえ、異例の大調査だ。
理由はハッキリしている。安倍政権は何が何でも籠池前理事長をフン縛り、「森友疑獄」を闇に葬り去りたい。そのためには、大阪地検特捜部を動かし、菅官房長官が会見で籠池発言に対する偽証告発について前向きな姿勢を見せるなど、なりふり構ってはいられないらしい。頭と胴体を食らおうと必死の“シッポ”を、政権があらゆる手段を用いて切り離そうとしているのがアリアリで、とても先進国の姿とは思えない。だが、この狡猾政権の恐ろしいところは、まだある。「森友疑獄」を隠れ蓑にして、さらなる“劇薬”を国民にのませようと企んでいることだ。3月21日に国会提出された現代の治安維持法と呼ばれる「共謀罪」(組織犯罪処罰法改正案)である。
基本的人権を蹂躙する共謀罪
安倍首相は30日に公明党の山口那津男代表と首相官邸で会談した際、共謀罪について自民党が主張する今月6日からの審議入りを要請。山口代表が慎重姿勢を示し、協議は平行線をたどったものの、特定秘密保護法や安保法など、「強行採決」が常套手段であるオレ様政権だ。最後は公明をねじ伏せて突っ走るに違いない。しかし、日刊ゲンダイでも再三、指摘している通り、この法案は最悪だ。
政府は「五輪開催のため」「テロ対策」と屁理屈をこね上げているが、「組織的犯罪集団」の定義がいまだに曖昧な上、金田勝年法相の国会答弁はグダグダ。所管の大臣が法案内容をよくよく理解していないのに審議入りもヘッタクレもない。
政府は犯罪対象を当初の676から277に絞ったことを挙げ、過去3度も廃案に追い込まれた共謀罪とは異なる――と詭弁を弄している。しかし、例えば犯罪対象の中には、およそテロと関係がない「著作権法違反」なども含まれている。写真や文章をネットからダウンロードし、2次創作物を団体の宣伝ポスターに使って街頭で配ったら、「計画を共謀した」とみなされて逮捕なんて事態にもなりかねないのだ。また「組織的な威力業務妨害」という定義もあやふや。米軍基地建設の反対運動中に逮捕・起訴され、約5カ月間も長期勾留された沖縄平和運動センターの山城博治議長の容疑のひとつは「威力業務妨害罪」だった。自民党の石破茂元幹事長は、特定秘密保護法に反対する国会周辺の市民デモを「テロ行為」とブログに書き込んで問題となったが(後に撤回)、当局が「テロ」と決め付け、恣意的な運用を行う危険性が極めて高い。そして何よりも怖いのは、憲法で保障された集会、結社、表現、思想、良心の自由――といった基本的人権を蹂躙する内容だということだ。「共謀罪」は、刑法の大原則である「既遂行為」を処罰するのではなく、「計画」や「悪心」を処罰する内容に近い。ツイッターなどでつぶやいた内容が逮捕に直結する可能性も十分あり得る。犯罪前に逮捕されるのだから、当然、冤罪が多発するだろう。とてもじゃないが法治国家とは言えない。
特定秘密保護法や共謀罪の反対運動を展開している市民団体「武器輸出反対ネットワーク」の杉原浩司代表はこう言う。
「森友問題の経緯を見て感じたのは、当初は教育方法などを評価する答弁をしていた安倍政権が、一転して総力を挙げて森友を潰しにかかっている恐ろしい姿です。こういう政権だからこそ、なおさら、共謀罪を成立させてはいけないのです。武器輸出解禁、安保法、自衛隊の海外派兵容認……と、これまでの安倍政権の動きを見ていると、日中戦争の頃と似ています。政権がフリーハンドを握るため、事前に市民の反対運動を抑え込む仕組みを作ろうとしている。そういう思惑を感じます」
安倍サマ政権の大暴走を許せば、国民主権は奪われ、君主主権の時代に逆戻りする。
国家統制を強めるために共謀罪を使いたい
レンタル大手の「ツタヤ」が指定管理者となった佐賀県武雄市の「TSUTAYA図書館」。3月上旬、市民が地元紙で市の図書館施策を批判する内容を投書したところ、市幹部がこの市民の自宅を“急襲”。さらに市議会の一般質問で、自民党の山口昌宏市議が投書した市民の実名を挙げて批判していたことが報じられた。
行政批判を口にしただけで、権力側が個人の思想や表現の自由に踏み込み、締め上げる。天皇と日本帝国軍を批判して不敬罪に問われた後、特高警察にスパイ容疑で逮捕され、虐殺された作家、小林多喜二の拷問死事件を彷彿とさせる話だ。「首相を侮辱した」という仰天理由で私人を証人喚問するトンデモ政権だから、決して絵空事ではない。共謀罪が成立すれば、武雄市のような人権無視が日本中で起きることになるのだ。
森友疑獄であらためて明らかになったのは、安倍政権がすり寄ってくる“お友達”に対しては陰に陽に便宜を図る一方で、反論は許さず、軍国主義化を目指して国家統制を強めていること。そして、その武器に共謀罪を使いたいのは明白だ。
取り調べの可視化が、なぜか司法取引導入に
物証を得にくい共謀罪は電話やメールの盗聴・傍受が欠かせない。3月中旬、最高裁大法廷は、裁判所の令状を取らずに捜査対象者の車にGPS(全地球測位システム)を取りつける警察の捜査手法について「個人のプライバシーを侵害する」として違法判決を出した。捜査権の乱用を厳しく指弾したわけだが、共謀罪成立のためなら、どんな悪知恵でも働かすのが安倍政権。最高裁判決が、GPS捜査の令状について、現在の刑事訴訟法では対応が難しく、「新たな立法措置」を求めたことに対し、警察庁は「GPSを用いた捜査の在り方を検討したい」と即応していた。おそらく、今後、GPS捜査を合法化させる策をヒネリ出すつもりだ。
昨年5月に成立した「刑事司法改革関連法」も、当初は取り調べの可視化が叫ばれて議論が始まったはずなのに、いつの間にか「司法取引」や「通信傍受対象犯罪の拡大」など捜査機関の“焼け太り”につながった。GPS捜査についても、もっともらしい理由を付けて、当局が好き勝手に使える改正法案が出てくるだろう。
共謀罪に対する反対声明を公表した、国内の映画監督有志らでつくる「自由と生命を守る映画監督の会」の仲倉重郎代表はこう言う。
「『普通の市民団体でも、性質を変えた場合は(共謀罪が)適用される』とあり、市民運動や労働運動などが監視・弾圧の対象となる危険性はぬぐえません。行き着く先は自由が奪われた監視社会であり、戦前、戦中に思想・言論弾圧に猛威を振るった治安維持法と同じで、当時、モノが言えない戦争国家がつくられていったことが忘れられません。集団的自衛権の行使容認以降、日本は戦争できる国への道を歩んでいる。共謀罪はさらなる危険な自由弾圧で、決して認めてはいけません」
1億総監視の恐怖社会なんて、絶対、実現させるわけにはいかない。
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森友問題をどう見るか
元・朝日新聞編集委員
落合博実
(全国商工新聞)2017年4月3日
学校法人「森友学園」が、異常な安値で国有地を取得し、同学園の小学校設置認可をめぐっても異例な手続きで認可を得た問題で衆参予算委員会は3月23日、同学園の籠池泰典理事長に対する証人喚問を行いました。24日には国有地売却を担当していた近畿財務局を管轄する財務省理財局の迫田英典局長(現国税庁長官)らの参考人質疑が行われました。この問題をどう見るのか。元朝日新聞編集委員・落合博実さんに寄稿してもらいました。
国税庁長官に向けられた疑惑
東京・霞ヶ関の財務省ビル。文科省側のエレベーターで5階に上がると、すぐ左側、赤絨毯の通路を抜けた奥に国税庁長官室がある。この部屋の今の主が迫田英典・国税庁長官である。
迫田氏は2015年7月から翌年6月まで財務省理財局長のポストにあった。理財局は国有地の処分・管理を担当している部局。政権を揺るがす大問題になっている「森友学園」への国有地大バーゲンは、迫田氏の理財局長時代に売却交渉がまとまっている。
国税庁長官は約5万7000人の徴税権力のトップだが、日ごろは目立つことのない地味な存在だ。その現職の国税庁長官が疑惑の『主役』と見なされ、表だって登場したことは過去に例を見ない。
迫田氏はメディアの取材を徹底して避けている。筆者は迫田長官に「国有地売却の経緯を詳しくお聞きしたい」と取材を申し入れた。しかし、国税庁は「当庁の所管行政ではないので、取材は控えさせていただきたい」と断ってきた。
専門外の部局がゴミ撤去費算定
問題の国有地は大阪府豊中市にある。近畿財務局は16年6月、小学校用として学校法人「森友学園」に1億3400万円で払い下げている。この土地の不動産鑑定士による評価額は9億5600万円。実に85%引きの投げ売りである。値引きの理由は地下に埋まっているとされる廃材、生活ごみの撤去・処理費だという。
この値引き販売について、財務省の佐川宣寿・理財局長は国会で「法的瑕疵(かし)はない」と素っ気なく答えている。ところが、8億1900万円と見積もって僖引きしたゴミ処理工事が実際に行われたかどうか追及されると、「確認していない」というのだから、あきれる。
「森友学園」の籠池理事長は実際に撤去にかけたのは「1億円くらい」と説明しており、大幅な水増しだった疑いが濃い。
また、ゴミ撤去・処理費の算定は第三者の専門業者ではなく、素人の国交省大阪航空局が算定している。これも不自然な話ではないか。
自民議員でさえ政治介入を示唆
不可解なことはまだある。過去に別の学校が問題の土地を7億円で購入したいと希望したところ、近畿財務局は安過ぎると拒否したいう。
言うまでもなく国有財産は国民の大切な財産だ。巨額の赤字財政を抱える財務省は少しでも高値で売って国庫収入の足しにする貴任があるのに、まったく逆の事をやっている。
何から何まで異例づくめなのだ。
自民党の船田元・衆院議員が自身のブログなどで「特別の力学が働いたと思わざるを得ない」と、有力政治家の介入をにおわせた。
国会では佐川理財局長が野党の矢面に立ち防戦に必死だが、売却交渉が進められた当時の理財局長に疑惑が向けられたのは当然だ。政府・自民党は迫田氏の国会への参考人招致を拒否してきたが、幕引きを急ぐ狙いからか、突然、参考人招致に応じた。
3月24日の参議院予算委員会に姿を見せた迫田氏が何を話すか注目されたが、意表をつく肩すかし答弁が飛び出した。
「理財局長時代、森友学園については報告を受けておりませんので、その間の事情については承知しておりません」
近畿財務局や本省の担当部課がやったことで、自分はあずかり知らぬというのだ。
「森友学園」の籠池理事長は3月23日の国会証人喚問で、15年11月に安倍首相夫人付きの女性政府職員から受け取ったファクスの内容を暴露している。
「財務省国有財産審理室長に問い合わせを行い、以下の通り回答を得ました」「本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」とある。
財務省と外局の国税庁は「政治案件」に関して非常に敏感で神経質だ。首相夫人付きの職員から問い合わせを受けた段階で、「高度な政治案件」と気づいたはずだ。上層部に報告を上げないで済ますということは、およそ考えにくい。
与党のためなら官僚は手を汚す
筆者は88年、朝日新聞社会部デスク時代に政官界を揺るがせた「リクルート事件」を担当したが、政治家や元高級官僚が未公開株を受け取りながら秘書のせいにしたことを思い出した。
「保身に長けた官僚は危ない橋を渡らない」というイメージが世間にあるが、財務省の高級官僚は、与党の有力政治家からの無理難題で手を汚すことも時には厭わない。省内には「清濁併せのむ懐の深さ」を評価する空気が伝統的にある。
例えば27年前、角谷正彦・国税庁長官時代、とんでもない不祥事が『守秘義務』の陰に隠されていた。渡辺美智雄・元蔵相が角谷長官に電話をかけ、知人の史上最高額の脱税査察を葬り、単なる申告漏れ・修正宏弓済ませてしまったことがあった。
税務調査への政治家の介入は数限りなくあった。追徴額を4000万円も減額した例もあった。
日ごろ標榜する「課税の公平」など、どこ吹く風。97年、筆者はその実態を詳細につかみ朝日新聞紙上でキャンペーン記事を書いたことがあった。
一時はなりをひそめたが、安倍1強政権になって、また増えてきているという。
巨悪を助け弱者に襲いかかる権力
国税庁ポスター強烈に皮肉られ
今年3月3日、倉敷民商事件の「禰屋裁判」で岡山地裁は執行猶予付きの有罪判決を言い
渡した。「国税、検察の言い分を丸呑みにした不当な判決」と弁護団から怒りの声が上がった。決算数字をパソコンソフトに入力しただけの倉敷民商の女性事務局員を「脱税幇助」で逮捕し、428日間も拘留するという異様な事件だ。
口火を切ったのが広島国税局。「脱税幇助」というが、建設会社への査察自体が強引極まるものだった。査察立件に不可欠な「たまり」もないまま査察に突っ走った。「たまり」とは、脱税で得た預貯金や隠し資産のことで、脱税の証拠である。なりふりかまわぬ強権発動だ。55年前には当時の木村秀弘・国税庁長官が「民商をつぶす」と公言し、全国規模で強権的な税務調査を展開している。
巨悪を助け、弱い立場の人間には問答無用で襲いかかる。
16年の国税庁の税務職員募集ポスターの標語がネットで話題になっている。
「巨悪と戦うなんてドラマの中だけの話。だと思っていた」とある。「巨悪と戦う国税職員」のイメージ作戦のつもりらしいが、「巨悪はおたくの長官でしょう」と痛烈に皮肉られている。
森友学園“疑惑の人物”が橋下徹の元後援会長親族に働きかけと「新潮」が報道 麻生財務相への仲介依頼も
(リテラ)2017.03.08
http://lite-ra.com/2017/03/post-2974.html
共通項は「教育勅語」
森友募集案内 政治家ずらり
(しんぶん赤旗)2017年4月3日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-04-03/2017040301_04_1.html
学校法人「森友学園」(大阪市)が開設を目指していた小学校の募集案内には、同学園を訪問した政治家、著名人がずらりと並んでいます。森友学園との関係を調べると、ある共通点が浮かび上がりました。
(三浦誠)
「幼児教育で大変な実績を挙げられた塚本幼稚園の籠池先生が、此度(こたび)小学校の建設をされることになり、日本にとってこれ程の朗報はありません」。自民党重鎮の平沼赳夫衆院議員は、募集案内にそんなあいさつ文を寄せています。
平沼氏は、2013年9月に森友学園が運営する塚本幼稚園(大阪市)で講演しています。同氏の事務所は「自民党の山田宏参院議員に頼まれて講演をした。あいさつ文は、こちらが書いたものかどうかは分からない」といいます。
山田氏の事務所は、平沼氏に頼んだ事実を認め、自身も同幼稚園からの依頼で「講演した」としています。
目立つ昭恵氏
募集案内には、自民党の鴻池祥肇参院議員、青山繁晴参院議員、参院で自民党と統一会派をくむ「日本のこころ」の中山成彬元衆院議員、西村真悟元衆院議員も登場しています。
最も目立つ扱いだったのは、議員ではなく、「安倍晋三内閣総理大臣夫人」の肩書で紹介されている安倍昭恵名誉校長(辞任)です。
これら政治家と昭恵氏が森友学園と共通するキーワードがあります。「教育勅語」です。
森友学園は園児に、「教育勅語」を暗唱させています。同学園の籠池泰典前理事長は、小学校でも暗唱させるとしていました。
平沼氏は中山氏との共著で、塚本幼稚園を「園児に教育勅語を暗記させています」「暗記しておくことは重要だ」とほめています。
中山氏の事務所は本紙の取材に「教育勅語を暗唱させていると聞いて視察にいった」としています。
鴻池氏は教育勅語の暗唱が「思想的には、わしにあう」(3月1日の会見)と発言。青山氏は議員になる前に、教育勅語の暗唱をほめ、「塚本幼稚園に子どもを通わせてはどうでしょうか」と勧めていました。
昭恵氏も教育勅語の暗唱に「感動しました」と、自らのフェイスブックに書き込んでいます。安倍首相も「妻から、森友学園の先生の教育に対する熱意はすばらしいという話を聞いている」(衆院予算委員会、2月17日)と同学園を持ち上げていました。
侵略戦争美化
教育勅語は戦前の教育の基本です。重大事態があれば天皇のために命を投げ出せと教え込む軍国主義教育の柱でした。そんな教育勅語を礼賛することは、侵略戦争の肯定や美化につながります。
自民党元閣僚の秘書は、こう指摘します。
「政界でも極端に“右”の顔ぶればかりだ。思想的には安倍首相にとても近い。だから森友学園と共鳴するのだろう」
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平沼、鴻池、青山、中山の各氏は了解なしに募集案内に掲載されたとしています。口利きの依頼や献金については、自ら公表した鴻池氏を除き、いずれも否定しました。西村氏は回答がありませんでした。
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核禁止条約交渉不参加…(・ω・`?) 共謀罪…(゚A゚) 森本問題…(¬_¬)
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