安倍首相の施政方針演説
「国会軽視」姿勢あらわ
三権分立 無理解?
(東京新聞【こちら特報部】)2017年1月21日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2017012102000142.html
「威勢のいい言葉ばかり並べても現実は一ミリも進まない」。二十日の施政方針演説で安倍晋三首相は野党への皮肉を繰り返した。そういう安倍首相の演説も、明治維新を模した「国づくり」を連呼して、だいぶ威勢がいい。だが、その中身はどうか。今回も改憲議論に触れているが、そもそも内閣に指示される筋合いの問題ではない。国会軽視が過ぎないか。疑問符だらけの演説に識者から異論が相次いだ。
(沢田千秋、佐藤大)
「まるで党大会」
最後は得意の改憲呼び掛け
施政方針演説は五十分間続いた。安倍首相は、得意げに議場を見渡してアベノミクスの成功を強調し、野党を繰り返しこきおろした。締めは「憲法改正」だった。
「憲法施行七十年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる七十年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか」
安倍首相が施政方針演説で改憲に触れたのは今回が初めてではない。民主党(当時)から政権を取り戻した直後の二〇一三年二月の施政方針から国会に対し「憲法改正に向けた国民的な議論を深めよう」と呼び掛けてきた。
改憲議論に踏み込む演説について、神戸学院大の上脇博之教授(憲法)は「立憲主義にもとる」と批判する。「改憲は国民が求めて初めて動きだす。首相が改憲を呼び掛けるのは、国務大臣らに憲法尊重擁護義務を課す憲法九九条に違反する上、国会議員による改憲発議を規定する憲法九六条に照らしても、内閣による越権行為だ」
改憲の意志を表明する場は他にあったはずだ。「昨年の参院選で自民党総裁として、主権者たる国民に改憲を問うべきだったのに、争点にしなかった。にもかかわらず、多数の議席に囲まれ居心地がいい国会では首相として提案した。都合が悪いことは国民には言う必要はないと。国民主権を置き去りにし民主的手続きをも放棄している」
首相は昨春には国会で「私は立法府の長」という失言を繰り返し、昨秋の所信表明演説では、自衛隊に言及し「今、この場所から、心から敬意を表そうではありませんか」と議員に
拍手を促した。
今回の施政方針でもでも「~しょうではありませんか」という呼び掛けを多用した。高千穂大の五野井郁夫教授(政治学)は「自民党総裁としての党大会の演説のようだ。三権分立を理解していない」と指摘する。「施政方針演説は国務、外交など昨年の行政の成果、反省を国会へ報告し、今年の方針を述べる場であり。『~しよう』ではなく『~してまいります』が自然。呼び掛けは国会を掌握しているという意識の表れではないか」とみる。
駒沢大の大山礼子教授(政治制度論)は「これまでの首相は三権分立の原則に配慮し、国会審議には口を出さないというスタンスを貫いていた。その是非には議論の余地があるが、安倍首相は先例を無視し、国会審議が変質しているのは事実だ」と話す。なぜこのような事態が許容されているのか。大山氏は「以前は内閣の暴走を許さない与党議員がいた。現在は首相に意見具申できる与党議員が少なくなったからではないか」と分析する。
明治維新模した国づくり連呼
野党批判に「器小さい」
自覚持ち国会は奮起を
国会軽視の姿勢はこれにとどまらない。演説では野党批判も目立った。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古沖への移設工事を進める決意を述べたときにも、「かつて、『最低でも』と言ったことすら実現せず、失望だけが残りました。威勢のよい言葉だけを並べても、現実は一㍉も変わりません」と民主党政権をあてこすってみせた。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は「施政方針演説で野党批判を盛り込む必要性は全くない。政権を担って四年たっても前政権を批判するということはかえって、政権運営に自信を失っているからと受け止められても仕方がない」と分析する。
前出の五野井氏も「(野党の追及は)そもそも政府の強行採決の連発が原因。その批判をとがめるのは立法府の否定だ。総花的な演説と批判を許さない姿勢に、首相としての器の小ささと焦りを感じた。百年後も恥ずかしくない演説とは到底言えない」と首をかしげる。
経済ジャーナリストの荻原博子さんは、安倍政権の経済政策の成果と「誤解」させかねない文脈で、地方で奮闘する商店街の例を挙げたことをいぶかる。地方の努力に便乗する姿勢を疑問視した上で、「全てのビジネスモデルに当てはまるわけではないことをなぜ持ち出すのか。知事が言うなら分かるが、総理が言及する話ではないでしょう」と首をひねる。
国会に対する説明責任を果たしていないと憤るのは、同志社大の浜矩子教授(国際金融論)。改憲議論に踏み込んだことなどを挙げ「行政の側から予見を与えるようなことを言うのはおかしい。国民に対して説明責任を果たすという気もないのだろう。『大日本帝国会社』の総帥のような気でいるのではないか」と指摘した。加えて、「国づくり」を連呼し、真っ先に外交安全保障政策に言及していることに着目し、「強い国家を取り戻すという政権の本質的な姿勢があらわになってきた」と危ぶむ。
だが、みくびられっぱなしの国会側に「国権の最高機関」という気概がどれだけあるかは疑問だ。昨年の臨時国会では、多くの国民が反対する環太平洋連携協定(TPP)承認案、年金制度改革案、カジノ解禁法案をろくな審議もないまま強行採決した。カジノ解禁法案の審議で自民党の谷川弥一議員は、議論を深める努力をするどころか、なぜか般若心経を唱えることに時間を割いた。山本有二農相がTPP承認案の強行採決に触れて批判を浴びた後、自らめ発言を「冗談」と称するなど閣僚の放言も相次いだ。
谷川氏が地盤とする長崎県民で、長崎原爆被災者協議会副会長の田中重光さんは、地元議員による「般若心経事件」について「宗教を愚弄(ぐろう)しているし、国会もぱかにしている。国会議員におごりがあるのではないか」と怒りが消えない。長崎原爆の被爆者らでつくる「長崎の証言の会」の森口貢さん(八〇)も「立法府がないがしろにされている、というよりも、立法府自身が自らないがしろにしているように見える」と嘆く。
施政方針演説で安倍首相は、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案の提出にも意欲を示した。必要性がはっきりしないと批判も多いご「共謀罪」法案はともかく、今国会は、長時間労働の抑制策などを盛り込んだ「働き方改革」をめぐる法案など議論を深めるべきことはたくさんある。国会は責任を果たせるのだろうか。慶応大の金子勝教授(財政学)は施政方針演説に具体的な経済政策がなかったとし、「安倍政権は経済優先をうたってきたが、それは見せ掛けだったことがはっきりした」と指摘し、国会の奮起を促す。「安倍政権は『道半ば』などと答えるだろうが、アベノミクスは破綻したことをきちんと追及していくべきだ」とした。
安倍内閣所信演説《通常国会召集》国会 参議院 本会議 平成29年1月20日
https://youtu.be/VTa0QJ8RcZA
トランプ政権でアーミテージ報告書路線は… 日米連携の設計図失う?
(東京新聞)2017年1月20日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201701/CK2017012002000115.html
ドナルド・トランプ氏は二十日(日本時間二十一日未明)、ワシントンでの大統領就任式で、第四十五代米大統領に就任する。安倍政権は、米国の知日派がかつてまとめた「アーミテージ・ナイ報告書」に沿う形で多くの政策を進めてきたが、トランプ氏の就任で、こうした関係は成り立たなくなる。
(木谷孝洋)
この国こそ政権交代が絶対必要
聞き飽きたよ三百代言満載演説
(日刊ゲンダイ)2017年1月23日
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/198024
現実から目を背け、行き詰まりを認めず、野党叩きのいつものパターンでアブナイ自己陶酔の自画自賛
世界の激変にどう対応するのか、共謀罪はなぜ必要なのか、ヤバいことには一切触れず、文科省処分で目くらましの姑息
これから世界はどうなってしまうのか。当のアメリカ国民さえ不安を強めるトランプ政権がスタートした。世界中がトランプの大統領就任に固唾をのみ、アメリカ国民が危機感を強めているのは、一言で言えば、あの男は、なにをするのか分からないからだ。
トランプ大統領の誕生によって、世界のルールと常識は一変する可能性が高い。戦後の平和と繁栄は、アメリカを軸とする「国際協調」と「自由貿易」が支えてきた。ところが、トランプは「米国第一主義」と「保護主義」という正反対の政策を掲げている。しかも、反対意見に耳を傾けず、敵対する相手には容赦がなく、人権や平等といった“ポリティカル・コレクトネス”は完全に無視だ。元外交官の天木直人氏はこう言う。
「この先、4年間、国際社会にとってトランプ大統領が最大のリスクになるのは間違いない。一番のリスクは、予測不能だということです。予測不能ほど怖いことはない。中国と敵対するかも知れないし、手を握るかも知れない。1年後、2年後、どうなっているのか誰にも分からない。厄介なのは、アメリカの大統領にはツイッターの書き込みひとつで世の中を変える力があることです。戦後70年つづいた国際社会が、歴史的な転換点を迎えているのは間違いない。トランプ大統領の登場によって、過去のルールや常識は通用しなくなる恐れがあります」
すでに日本経済は、トランプに翻弄されている。名指しで批判されたトヨタは、アメリカ国内に100億ドル(約1兆1000億円)の投資をすると表明せざるを得なくなり、トランプが「ドルは強すぎる」と発言した途端、円は急上昇してしまった。トヨタ社内からは「これまでの延長線上では対応できない」と悲鳴が上がっている。
「自慢話」と「民主党批判」だけの演説
はたして、トランプは日本にどんな要求をしてくるのか。日本政府も日本企業も激変への対応を迫られることになる。
ところが、安倍首相は、緊張感のカケラもないのだからどうしようもない。20日行った「施政方針演説」で何を訴えるのかと思ったら、いつも通りの聞き飽きた「自画自賛」と「民主党批判」のオンパレードだったから最悪である。
〈就任から5年目を迎え、G7リーダーの中でも在職期間が長くなります。500回以上の首脳会談の積み重ねの上に(略)世界の真ん中でその責任を果たしてまいります〉と、うれしそうに「地球儀俯瞰外交」を自慢。
さらに、沖縄北部の米軍基地の一部が返還されたことを誇り、返す刀で〈かつて「最低でも」と言ったことすら実現せず、失望だけが残りました〉と、民主党政権時代の鳩山首相が「最低でも県外」と、普天間基地の返還を訴えながら頓挫したことを皮肉った。
経済政策についても〈経済の好循環が生まれています〉と、「GDP44兆円増加」「ベア3年連続」「貧困率2%減少」……と、アベノミクスの成果を強調し、ここでも〈政権交代前と比べ3割(倒産を)減らすことに成功しました〉と、民主党政権にケチをつけていた。
安倍首相の「施政方針演説」は、トランプ大統領の就任式が始まる12時間前に行われたのに、自慢話に終始し、激変する国際社会についてどう考えているのか、どう対応するのか、まったく触れなかったのだから、どうかしている。演説の中身は、1年前と代わり映えしなかった。
見たくないモノは見ない
ふざけているのは、相変わらず、自分に都合の悪い話は無視し、事実をねじ曲げていることだ。
たとえば、沖縄北部の米軍基地の一部返還は、20年前に決まっていたことだ。安倍首相の手柄じゃない。鳩山政権が実現できなかった「普天間基地」の返還と比べるのは、ナンセンスというものである。
〈500回以上の首脳会談〉と自慢した外交も、この4年間、世界各国に約40兆円の経済支援を約束しただけで、成果はほぼゼロだ。対ロ外交では、「北方領土」は返還されず、プーチン大統領に3000億円のカネを召し上げられただけだった。よくも〈世界の真ん中でその責任を果たしてまいります〉と口にできたものだ。
ボルテージを上げた〈経済の好循環が生まれています〉の一言は、噴飯モノである。どこに好循環が生まれているのか。貧富の格差が拡大しただけで、庶民の実質賃金は増えていない。倒産件数にしたって、たしかに倒産は減少しているが、“廃業件数”は過去最悪を更新している。経営者がアベノミクスに見切りをつけ、次々に自主廃業しているのだ。なのに、〈3本の矢を次々に打ちつづけます〉と平然と口にしているのだから国民をバカにするにも程がある。この男は、一事が万事、すべてこの調子だ。
「政治リーダーにとって大切なことは、たとえ見たくない事実でも直視し、現実を把握することです。現実を見誤ると必ず失敗する。誰が見ても、経済も外交も安倍路線は破綻しています。なのに、安倍首相は現実から目を背け、行き詰まりを認めず、民主党政権を批判することで、安倍政権を正当化させている。しかも、この国会の一大テーマである“共謀罪”について、施政方針演説で一言も触れなかった。あれも成功している、これもうまくいっていると訴えれば、国民をダマせると思っているのでしょうが、いくらなんでも国民をバカにしています」(政治学者・五十嵐仁氏)
過去、5回行われた「施政方針演説」で、安倍首相は毎回「強い経済」「好循環実現」「改革実行」などをキーワードにしている。いったい、いつまで「三百代言」満載の演説をつづければ気が済むのか。
トランプの餌食になる
トランプが大統領に就任し、世界が大きく変わろうとしているのに、現実から目を背けている安倍首相では、激変する国際社会を乗り切れない。即刻、クビにしないとダメだ。
しかも、アメリカだけでなく、EU離脱を決めたイギリスにつづき、選挙を控えているオランダ、フランス、ドイツも大きく変わる可能性がある。なにもかも行き詰まっている安倍首相では、対応は不可能である。
「この先、日本のリーダーは、まったく新しい発想が求められる。アメリカが同盟関係を見直し、孤立主義に走ったら、70年つづいた対米従属からの脱却を迫られるかも知れない。アメリカに従っていれば安泰という時代は終わる可能性があります。あるいは、アメリカからいま以上の要求を突きつけられるかも知れない。いずれにしろ、日本にとって対米従属から脱却するチャンスとも言えます。ところが、安倍首相は、施政方針演説で〈日米同盟こそが我が国の外交・安全保障政策の基軸。これは不変の原則です〉〈トランプ新大統領と同盟の絆をさらに強化する〉と、古い発想から抜け出せていない。ひたすら対米従属をつづけるつもりです。〈できる限り早期に訪米し〉と、トランプ大統領と駆け引きする気概もなく、1日も早い日米会談を切望している。この調子では、国益追求をむき出しにしているトランプ大統領の格好の餌食になるだけです」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
激変する世界は、リーダーが次々に変わりはじめている。安倍首相は〈就任から5年目を迎え、G7リーダーの中でも在職期間が長くなります〉と、長期政権を自慢していたが、この国こそ政権交代が必要だ。
IOC総会における安倍総理プレゼンテーション-平成25年9月7日
https://youtu.be/TW22EoQwwvk
施政方針演説から見えた
安倍流「新しい国」とは
(しんぶん赤旗)2017年1月21日
20日に始まった通常国会。ウソと偽りで国民を欺く安倍晋三首相の手法は、施政方針演説でも際立ちました。安倍首相が美辞麗句で飾り立てた言葉の裏には、どのような事実や実態が隠されており、安倍首相が目指す「新しい国」とは、どんな国なのか―。
世界に取り残される国
対米従属むき出し
戦争法の危険隠す
安倍首相は、国内政治を差し置いて、冒頭から日米同盟を全面に押し出す異例の演説を行いました。「世界の真ん中で輝く国づくり」と題するも、核兵器禁止条約の交渉開始をする国連の会議などの国際的な潮流には触れずに、「日米同盟こそがわが国の外交・安全保障政策の基軸」と、対米従属の姿勢をむき出しにしました。
首相は、「トランプ新大統領と同盟の絆をさらに強化する」と露骨な姿勢をみせました。核戦力の強化をもくろみ、人種差別発言を繰り返す大統領にすり寄る首脳は他に存在しません。
「米国との信頼関係のもと、抑止力を維持しながら、沖縄の基地負担軽減に、一つひとつ結果を出していく」。沖縄県民の民意を徹底的に踏みにじる宣言をしたのも大きな特徴です。
首相は、北部訓練場の「4千㌶の返還が、20年越しで実現した」と豪語しました。一方、不発弾や汚染で使用不可能な返還地であること、昨年12月に強行建設したオスプレイパッド、豊かな自然環境の破壊などの都合の悪い事実には一言も触れません。
「沖縄県民に寄り添う」というかつての表明は消え、名護市辺野古の米軍基地の建設を「最高裁判所の判決に従い移設工事を進めていく」と強権ぶりを示しました。ヾ(‐‐)オイ
外交の成果として、昨年12月の日口首脳会談に触れ、「平和条約の締結に向けて重要な一歩を踏み出した」とアピールしました。しかし、同会談は「領土問題は存在しない」とするロシア側に屈した結果に終わるなど、「安倍外交」の破たんがすでに示されています。
「自衛隊の活動一つひとつが、間違いなく南スーダンの自立と平和な国づくりにつながっている」
「積極的平和主義」を掲げる首相は、過去に開催された「全国スポーツ大会」を脈絡もなく取り上げるばかり。深刻な内戦状態に陥っている国内の実態や、戦争法の新任務「駆け付け警護」などに一切触れず、二重に国民を欺いています。
「世界の真ん中で輝く国づくり」はおろか、いまだに米国の属国として「世界の片隅」にしか居場所がない安倍政権の現実です。
格差と貧困が広がる国
雇用・賃金・消費の
改善なく「成長」と
「全国津々浦々で、確実に『経済の好循環』が生まれている」
首相は経済問題で、お決まりのフレーズを繰り返し、「力強く成長し続ける国づくり」を進めると豪語しました。しかし、「好循環」など、とんでもないごまかしです。
「アペノミクス」で、大企業は3年連続「史上最高益」を更新しましたが、労働者の実質賃金は4年のうちに年額で19万円も減少。家計消費は実質15ヵ月連続で対前年比を下回るなど、負金や雇用は改善せず、消費は伸び悩んでいるのが現実です。
首相は、総務省調査をもとに、「子どもの相対的貧困率は2%減少し、7・9%」などと強調しました。しかし、厚労省調査では16・3%(2012年)で、貧困層の増大は依然として深刻です。国民の暮らしから目を背け、問題に真正面から取り組む姿勢がなければ、まともな経済政策は生まれません。
なかでも、深刻なのが雇用ルールの破壊によってもたらされた非正規雇用労働者の拡大です。労働者派遣法の連続改悪などによって1990年代半ばまでは20%で推移していた非正規の割合は、37%を超えるまでになり
ました。
雇用ルールの破壊は非人間的な労働をまん延させ、首相自身も施政方針演説では、「働き方改革」などを打ち出さざるをえなくなっています。しかし、雇用ルールの破壊を進めてきた自らの姿勢を転換しない限り、本当の「働き方改革」など実現するはずもありません。
実際、首相は「同一労働同一賃金」というものの、昨年12月に出した政府のガイドライン(案)では、能力や業績・評価などで正規と非正規の間に賃金格差をつけることを容認。企業の主観的判断で格差を固定化させることにつながりかねません。
首相は「長時間労働の是正」とも述べましたが、それならば、演説では一言もふれなかった、長時間労働野放しの「残業代ゼロ法案」をまず撤回すべきです。
首相が唱える「成長し続ける国づくり」の実態は、貧困と格差を広げる国づくりでしかありません。
社会保障を破壊する国
拡充とはほど遠い
保育所・介護・年金
一億総活躍の国づくり」。首相はこのフレーズで、「待機児童ゼロ」「介護離職ゼロ」の受け皿整備を進めると言います。実態はどうか―。
安倍政権の保育所整備計画には、6万7千人いる「隠れ待機児童」は含まれません。新たにつくる保育所10万人分のうち5万人分は無認可の「企業主導型保育」で、基準緩和で子どもたちを詰め込むものです。
介護では、受け皿として191万人分を追加しましたが、特別養護老人ホーム待機者52万人には遠く及びません。14年には介護報酬を実質マイナス4・48%と過去最大規模で削減し、介護事業の倒産・休止は過去最高に達しています。
首相は社会保障費の「自然増」削減を「今年度に引き続き来年度予算においても、5千億円に抑えることができた」と誇りました。
17年度予算で保育士給与に2%の処遇改善としていますが、月額約6千円で、全産業平均と比べて月10万円も低いのが実態。介護職でも給与改善は1万円にとどまります。
首相は「年金受給資格を25年から10年に短縮する」と胸を張りましたが、年金の受給資格を10年に短縮することは12年法改正で決められていたのに、消費税10%増税延期に伴い先送りにされていました。世論と国会論戦で実施に追い込まれましたが、納付期間10年では年金額はわずか月1万6252円。低年金者への月5千円の上乗せも見送られています。それどころか、年金カット法を強行し、物価が上がっでも賃金が下がればカットされる年金大改悪を行っており”拡充”とはほど遠いものです。
日本国憲法否定する国
明文改憲前のめり
現代版治維法狙う
安倍首相は、日米同盟を[不変の原則]と言い切る一方で、日本国憲法については「施行70年の節目」「憲法審査会で具体的な議論を深めよう」と明文改憲に踏み込む決意を表明しました。行政府の長が、国会審議を指し図するという三権分立を否定する異常な発言で、閣僚の憲法尊重擁護義務にも反します。
しかも、安倍首相は、3年後の東京五輪開催に合わせ、「テロなど組織犯罪への対策を強化する」と主張。実際の犯罪行為がなくても、相談、計画をしたというだけで罪に問える「共謀罪」法案の提出にも執念を示しました。
安倍首相が「共謀罪」でやろうとしていることは、テロ対策の名による思想・内心の弾圧で、戦前の治安維持法体制の現代版です。
「『戦後』の、その先の時代を開く」と豪語する安倍首相が目指す先は、”憲法を否定する国づくり”へとつながっています。
次の「戦前」許さず憲法生かす政治へ
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ウソとペテンはもう嫌だァァァァ(((((┏ ’ω’)┛
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