緊急報告 熊本地震
http://dai.ly/x452cyl
(2016年4月)14日、震度7の激震に見舞われた熊本県。これまでに9人の死亡が確認され、けが人は1000人以上に上る。その後も激しい揺れの余震が相次ぎ、多くの住民が自宅に戻ることができずに不安を募らせている。
専門家は、この地域に存在する活断層の一部がずれ動いて地震が起きた可能性があるとみているが、地震の規模の割に余震活動が活発で、その発生メカニズムにはまだ謎が多い。
命が失われる被害はどのようにして引き起こされたのか。今回の地震や、今なお続く余震活動は活断層にどのような影響を与えるのか。さらに、突然襲ってくる地震に、私たちはどう備えればいいのか。現地での緊急取材から報告する。
熊本地震「本震」そのとき
外へ…寒さ以上に恐怖
(東京新聞【こちら特報部】)2016年4月17日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2016041702000116.html
熊本市中央区を十六日未明、震度6強が襲った。取材中の「こちら特報部」も居合わせたが、熊本では大きな揺れが頻発し、市民は疲弊し、不安感を募らせる。震源域から南西方向、鹿児島県薩摩川内市にある九州電力川内原発も不安材料の一つだ。政府は十六日に「停止の必要はない」と判断したが、説明が乏しい。鹿児島県内で震度6弱が起きていないことが理由の一つのようだが、川内原発は熊本県境に近い。情報を積極的に広報すべきではないか。
(池田悌一、三沢典丈)
早すぎた国の「屋内避難」要請
十六日未明、熊本市中央区のビジネスホテル九階。被災した益城町の取材をようやく終え、ベッドに腰掛けて缶ビールを飲み始めたときだった。突然、腰に突き上げるような衝撃が走り、宙に投げ出された。
やぱい―。体勢を立て直そうとしたが、ホテルは左右にしなるように動き、身動きが取れない。余震にしては大きすぎないか。後に本震、震度6強と発表があったが、この時点では分からない。窓から離れた方がいい。机の角をつかんで立ち上がろうとして、尻もちをついた。体感では三十秒くらいか。東京都内で体験した東日本大震災よりも格段に揺れ、恐ろしかった。
「ただちに避難してください。非常階段を使ってください」。館内放送が流れた。慌ててジャンパーを羽織り、真っ暗な非常階段を駆け降りた。
本当に大変なのは、それからだった。ホテル前の辛島公園には、周辺ホテルの宿泊客や近隣マンションの住民らが駆け込んでいる。停電で明かりがない中、肩を寄せ合いながら座り込む人たち。外国人や子供の姿もあった。ホツとした時、再び激しく揺れた。
「キャー」「うおー」
悲鳴や叫び声。立体駐車場の鉄筋がカシャンカシャンとぶつかり合う音が暗闇に響き、救急車や消防車のサイレンが頻繁に響き渡った。
体が冷えてきた。断続的に襲ってくる揺れによる恐怖心もあり、寒さ以上に体が震える。熊本県天草市出身の雑貨店員女性(二五)と妹(ニー)が、一つの毛布にくるまっていた。「大きな地震は終わりと思っていたのに…。寒くて死にそうだけど、もうアパートには帰りたくない」。顔が青白い。今月から熊本で働く沖縄県出身の男性(二五)は「マンション、ものすごく揺れましたよ。まだ続くんでしょうか。沖縄に帰りたい」。
気象庁は「震度6弱の余廣がある可能性」を指摘していたが、政府は十五日、「全避難者の屋内避難」を自治体に求めた。蒲島郁夫・熊本県知事は「余震が怖くて部屋の中にいられないから出た。現場の気持ちが分かっていない」と不快感を示していたが、結果的には準備した上で、屋外に避難していた方がよかったわけだ。
寒さで震えていると、宿泊先のホテルが一階ロビーを開放した。毛布やバスタオルが配られ、みな無言で暖を取る。だが、緊急地震速報のアラーム音が鳴るたびに緊張し、「震度4程度だな」などと、再び腰を下ろす。その繰り返しだから、仮眠もできない。次第に常に揺れている錯覚に陥り、立つだけでふらつく。いわゆる地震酔いだ。
明け方近く、ホテルがおにぎりとたくあん、バナナを配った。ホテルは「本日の営業は未定です。安全確保が十分にできない状況で、お泊めするわけにはいきませんので」。外壁にひびが入っている。夜通し働いた従業員の休息も必要で、営業は難しいだろう。
規制委HP乏しい説明
「具体的に安全性示せ」
今後、さらに大きな地震が起きる可能性はないのか。活断層の研究で知られる渡辺満久・東洋大教授は「震源となった布田川・日奈久断層帯の最大地震を考えれば、M7を超えた本震より大きな地震が起きることは考えにくい」と話す。規模よりも、震源が断層帯の北東部に集中していることが気になるという。「本震の南西側の断層が割れ残っているように見える」
断層を南西にたどった先には、全国の原発で唯一稼働中の川内原発1、2号機がある。「川内原発30キロ圏住民ネットワーク」の高木章次代表は「川内原発は稼働から三十年以上。老朽化している。さほど大地震でなくても、揺れを受ければ何か起きるか分からない」と危惧する。
原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「新規制基準は火山活動時の評価が甘い。地震が阿蘇山の巨大噴火を引き起こした場合、大量の火山灰が降る中、稼働中の原発のフィルタ上父換をできるのか」と話す。元東芝原子炉格納容器設計者の後藤政志氏は「今回、長周期地震動で初めて最大の階級4が観測された。新たな観測を踏まえ、いったん原発を止めて対策を整えるのが当然だ」と語った。
だが、原子力防災担当相兼務する丸川珠代環境相は十六日、政府の地震非常災害対策本部会議で「原子力規制委において(川内原発を)停止させる必要はないと判断されている」と報告した。どんな情報で、どんな判断をしたのか。
規制委のホームページ(HP)を見ると、「新着情報」の項目に、「その他」として「熊本県で発生した地震による原子力施設への影響について」が追加されている。
「16日1時26、44、46分頃に熊本県で発生した地震による原子力施設への影響について、お知らせします。〈1時59分現在)(現在、各施設ともに異常情報は入っていません)」
川内原発についての説明はこうある。
「施設内で計測した揺れはや01号機の補助建屋最下階八・六ガル、同一階で一二・六ガル」
原子炉自動停止設定値は最下階が水平方向一六〇ガル、鉛直方向八〇ガル、一階は水平方向二六〇ガル。この設定値に従って判断したということだ。だが、市民は原発に不安を抱いている。説明は不十分ではないのか。被災してネット情報を見られない人もいる。また、規制委のHPには「緊急時情報ホームページ」という項目があるが、こちらには熊本地震関係の情報は一切ない。なぜか。
原子力規制庁によると、緊急時情報の発表は、立地道県で震度6弱以上、原発の立地市町村で震度5弱以上の時に限られるという。規制委のHPによると、本貭で鹿児島県内の最大震度は5弱で、薩摩川内市は震度4.基準を満たさない。しかし、川内原発から熊本県境まで約三十七㌔。隣県で6弱が頻発する事態は「緊急時」ではないのか。
余震は、大分県内でも起きている。その先には四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)があるが、愛媛県内か伊方町で基準を超す震度を観測しない限り、やはり緊急時情報は発表されないわけだ。同原発は近く再稼働が見込まれている。
福島の原発事故後、東電の記者会見の取材を続けるフリージャーナリストの木野龍逸さんは「現状は情報が少なすぎる。政府は単に『異常なし』ではなく、具体的にどう安全で、どういう値について、どの程度から注意すべきか積極的に示すべきだ。透明性を確保しないと疑心暗鬼を招き、安心できない」と批判した。
巨大災害 MEGA DISASTER Ⅱ
日本に迫る脅威 地震列島 見えてきた新たなリスク
http://dai.ly/x41tifc
巨大地震から5年、膨大なデータによって、地震学の“常識”をくつがえすような新たな脅威の可能性が次々と浮かび上がっている。東北沿岸では、巨大地震で沈下していた陸地が数十センチも隆起する一方、沖合の海底ではプレートの複雑な動きが捉えられ始めた。
こうした大地の“異変”に、地下深くに存在するマントルの動きが関わっている可能性があることが、最新の研究からみえてきた。マントルの動きによって日本列島の地盤が変形しており、新たな地震のリスクにつながる危険性も浮かび上がっている。
さらに、GPSの詳細な分析からは、日本列島がのる巨大な岩盤・プレートが実はいくつものブロックに分かれている可能性も指摘され始めている。
日本列島の真下に大地の巨大な裂け目が潜んでおり、そうした場所では大きな地震が発生しやすいことがわかってきている。いま、日本列島の地下で何が起きているのか、その予兆をつかむことはできるのか。加速する地震研究の最前線に迫る。
<巨大災害 MEGA DISASTER Ⅱ>
第3集 「火山列島 地下に潜むリスク」
http://www.myvi.ru/watch/5v_0aQPVDkeGrEzuFB9P4g2
巨大地震から4年あまり、日本各地の火山が活動を活発化させている。
御嶽山や阿蘇山など複数の火山で小規模な噴火が発生、今年(2015年)に入ってからは箱根山で鎌倉時代以来とされる噴火が確認された。
活火山だけで110ある日本の火山。そのいずれかで、大規模な噴火が起きるのではないかとも危惧され始めている。
箱根山では、人工衛星「だいち2号」の観測によって地表の膨張が詳細に見え始め、桜島では地震波トモグラフィーとよばれる人工地震を使った解析によって地下のマグマの位置や大きさが特定されるなど、最新鋭の観測網によって日本の火山の“いまの姿”が明らかになってきている。
一方で、150km先まで火砕流が及ぶ超巨大噴火“カルデラ噴火”は、日本列島で過去6500年に一度の頻度で発生してきたが、これまで7300年間起きていない。
“静かすぎた”と言われる時代が終わり、大噴火の時代が始まろうとしているのではないかと危惧され、謎の多いカルデラマグマに迫る研究が進んでいる。
大噴火の予兆はつかめるのか、そして、巨大地震と火山との関係は…。
最前線の研究を取材し、大噴火への備えを考えていく。
南海トラフ巨大地震
歴史・科学・社会
石橋克彦 著
https://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/9/0285310.html
必ず来る「西日本大震災」にどう備えるか.大災害を繰り返してきた南海トラフ巨大地震の歴史記録を徹底検証し,その発生機構に独自の視点で迫る.都市型震災の脅威を『大地動乱の時代』で予見し,自ら造語した〈原発震災〉の警鐘を鳴らし続けてきた地震学者が「地震に強い社会」を根底から問う.
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安倍官邸が最初の地震の後、熊本県の支援要請を拒否! 菅官房長官は震災を「改憲」に政治利用する発言
(リテラ)2016.04.16
http://lite-ra.com/2016/04/post-2166.html
「事は一刻を争う」「被災者救助、支援に万全を期す」
安倍首相は今日4月16日、昼前に開いた非常災害対策本部会議で関係各省を前にこう宣言。菅義偉官房長官も会見で、自衛隊を現在の2千人から2万人に増やすことを決定したと胸を張った。
これを受けて、ネットではいつものごとく、ネトサポ、ネトウヨによる「さすが安倍首相の対応は迅速」「菅直人首相や民主党政権とは全く違う」などと、称賛の“やらせ”書き込みが拡散している。
まったく、冗談も休み休み言ってほしい。今回の熊本大地震に対する安倍政権の対応はとてもじゃないが「迅速」と呼べるようなシロモノではない。首相は今頃になって「事は一刻を争う」などと偉そうに言っているが、当初は地元の要請をはねつけ、その結果、被害をさらに拡大させた形跡があるのだ。
そもそも、14日、1回目の地震が起きた時点で、熊本県では行政機能がマヒしている地域がいくつも出てきており、同県の蒲島郁夫知事は政府に対して、主導的に災害対策に取り組んでもらえるよう「激甚災害の早期指定」を求めていた。ところが、政府はこれを取り合わなかった。
ちなみに、東日本大震災であれだけ対応の遅れが指摘された菅政権は地震発生の翌日、激甚災害の指定を閣議決定しているが、安倍政権は今日16日昼の時点でもまだ、指定していない。
自衛隊の増派についても同様だ。知事側は最初から大量派遣を求めていたにもかかわらず、政府は当初、2000人しか出さなかった。そして今日未明、マグニチュード7.3の大地震が起き、被害の大きさを知ってから、ようやく増派を決定したのである。
「被災者の救出が遅れているのは、1回目の地震で行政機能が麻痺していたところに、2回目の地震が起きて、安否確認や救出が満足に行えていないから。政府が熊本県の求めに応じて、1回目の地震の直後からもっと積極的に動いていたら、もう少しこの混乱を防げたのではないかと思います」(熊本県庁担当記者)
その後も、安倍政権は不誠実きわまりない対応を続けている。そのひとつが、 安倍首相自身の現地視察見送りだ。安倍首相は、昨日の政府会合で「現場を自らの目で確かめ、被災者の生の声に接し、今後の対策に生かす」と意気込んでいた。ところが、マグニチュード7.3に達する大地震が起きるや、視察を見送ってしまったのである。(´・д・`)
官邸は、現地視察を取りやめた理由を「被害の全容把握や被災者支援に万全を期す必要がある」といっているが、そんな理由は成り立たない。というのも、今日午前、与野党幹部が会って週明けのTPP国会審議を行うと確認しているからだ。政界からも「震災対応に万全を期すならTPP審議だってできないはず。それをやれるくらいなんだから、現地視察はできたはずだ」と疑問視する声が出ている。
「視察取りやめは、マグニチュード7.3の大地震が起きて、安倍首相がさらに大きな地震が起きるかもしれない、と怖じ気づいたからでしょう。安倍さんは東日本大震災、福島第1原発事故のとき、菅直人首相(当時)の対応を手厳しく批判しました。しかし、菅さんのほうがまだ、自分で危険な場所に行っただけマシ。安倍さんは被害対策を地方に丸投げし、首相公邸に籠もりっきりですからね」(全国紙政治部記者)
安倍首相だけではない。やはり今日現地入りする予定だった石井啓一国交相は九州新幹線の脱線現場などを見て回るはずだったのに取りやめた。
結局、政府が派遣したのは、災害担当の松本文明内閣府副大臣だけ。しかもこの副大臣、蒲島県知事と面会するなり、「今日中に青空避難所というのは解消してくれ」と切り出し、知事から「避難所が足りなくてみなさんがあそこに出たわけではない。余震が怖くて部屋の中にいられないから出たんだ。現場の気持ちが分かっていない」と怒鳴り返されるという失態を演じてしまった。┐(´д`)┌
「蒲島知事は政府の後手後手の対応に相当、怒っていますからね。怒るのも無理はありません」(前出・熊本県庁担当記者)
これだけでも信じがたい対応だが、安倍政権は、現地の要望を無視しただけでなく、当初、この地震を政治利用しようとしていたフシがある。
1回目の地震の翌日夜、菅官房長官が記者会見で、熊本地震を引き合いに出して、憲法の新設項目として非常時の首相権限を強化できる「緊急事態条項」の必要性を主張した。
記者から「予想もしなかった大きな地震が発生した。早急な緊急事態条項の必要性をお考えか」と水を向けられると、菅長官は「今回のような大規模災害が発生したような緊急時において、国民の安全を守るために、国家、そして国民みずからがどのような役割を果たすべきかを憲法にどのように位置付けていくかということについては、極めて、大切な課題であると思っている」と述べたのだ。
改めて言うまでもないが、災害時の政府対応は、災害対策基本法が定める首相の「災害緊急事態の布告」でもって主導的に行うことが十分可能で、事実、東日本大震災の被災地に、政府の災害対応についての法改正が必要かどうかをアンケートしたところ、ほとんどの自治体が「必要がない」という回答を寄せている。
菅官房長官の発言は明らかに「話のすり替え」であり、今回の地震を政治利用しようとしたとしか思えないものだ。
「しかも、このやりとりは、シナリオがあったとしか思えないようなスムースなものだった。おそらく、菅官房長官とべったりの安倍応援団メディアの記者と事前にすり合わせをして、質問させたんでしょうね」(前出・全国紙政治部記者)
さらに、今日16日午後になって、今度は中谷元防衛相が「米軍の支援受け入れ検討」を表明し、防衛省や自衛隊にも検討を命じたが、これも、露骨な政治利用らしい。
というのも、この米軍の支援については、今日午前の会見で、菅官房長官が「動員を拡大し、現地で活動することができるようになり始めているので、自衛隊で対応できる」と否定していた。それが、一転、受け入れに動いたのは、安倍首相周辺が強く「受け入れろ」と言ってきたからだという。
「安倍さんの周辺は、世論誘導のチャンスと考えたようです。米軍が救援に協力する映像を流させ、イメージアップし、集団的自衛権行使や米軍基地辺野古移転問題で国民の支持をとりつける。現実には、時間が経った後に、言葉や地理に不案内な米軍がきても、現場が混乱するだけで、自衛隊内部でも反対意見が根強いんですが……」(防衛省担当記者)
この期に及んでも、頭の中は、国民不在の“謀略政治”。安倍政権にはせめてこういう非常事態の時くらいはくだらないことに頭を使うのはやめて、国民の生命、安全確保だけを考えることを強く望みたい。それこそ、「事は一刻を争う」のだ。
(高橋憲一郎)
【熊本地震】丸川担当相「川内原発停止の必要なし」について。- 2016.04.16
https://youtu.be/qY1NPAinjdI
こんな状況で川内原発を動かしていていいのか?
https://youtu.be/nimiMA4FfmU
地震学者が「川内原発の審査は『耐震偽装』ともいえる大問題」と警告
(週刊朝日)2014/9/29
http://dot.asahi.com/wa/2014092600031.html
原発に懸念示すだけで「地震の政治利用」と炎上…ネット世論に騙されるな! 川内、伊方原発で高まる大地震の可能性
(リテラ)2016.04.17
http://lite-ra.com/2016/04/post-2168.html
熊本大地震は、予想をはるかに上回る被害をもたらした。現時点(17日20時30分現在)で、死者41名、重軽傷者は1000名以上。さらに大規模な土砂崩れ、阿蘇大橋崩落、数々の道路崩壊、地割れ、新しい建物でも全壊や半壊が続出している
こうした深刻な被害を目のあたりにして、被災者への心配とともに広がっているのが、原発への不安の声だ。
当然だろう。震源地の近くにある鹿児島県・川内原発は反対を押し切って再稼働したばかりで、地震対策の甘さが各方面から指摘されていた。今回の地震では異常は認められなかったが、もし、直下で同規模の地震が起きたら、深刻な事故が起きる可能性は決して低くない。
ところが、ネット上では、こうした川内原発への懸念を示すだけで「地震を政治利用するな」「みんなが一丸とならなきゃいけないときに足をひっぱるな」と総攻撃を受ける状況になっている。
たとえば、地震発生後、川内原発の運転続行が決定されたことに対し、共産党の池内さおり衆院議員が〈川内原発今すぐ止めよ。正気の沙汰か!〉とツイートすると、一斉に「政治利用だ」批判が巻き起こり、〈おまえが一番正気じゃない〉〈被災地で電気が止まれば人命に関わるのがわからないのか〉などと大炎上。池内議員は一連のツイートを削除する事態に追い込まれた。
また、16日の『報道特集』(TBS)で、現地レポートをしたキャスターの金平茂紀氏が川内原発への不安を訴える住民の声を紹介し、このまま再稼働を続けていいのかと疑問を呈した際も、〈熊本の震災に便乗して自分達の主張をアピールする反原発派〉〈福一は地震でなくて、津波での電源喪失だよ。なんでもかんでも原発止めろかよ〉〈今、停止したら救助活動に支障が出ます。電気が不足したら、明らかに救助活動が低下します〉という非難ツイートが殺到した。
他にも、原発に不安を示したり、運転中止を求めるツイートなどに対しては、必ず〈自然災害まで反原発に利用するゲス〉〈今原発を止めたら大規模な電力不足でますます状況が悪化する〉という攻撃が加えられる状況になっている。
こうした攻撃を仕掛けている連中は、「原発を止めたら電気が足りなくなって救助できなくなる」といったありえない主張を平気で口にしていることからもわかるように、原発をどうしても運転させたい原発ムラの関係者と、頭の悪いネトウヨが中心だ。
しかし、なかには“善意”で「震災が起きている原発に触れることは政治利用」だと信じ込んでいる人たちもいる。
〈全員が一丸にならないといけない時期なのに、こういう意見は残念〉〈反原発の気持ちはわかるけど今はまず、この災害に立ち向かうべき〉
こういうことを言う人たちにこそ釘をさしておきたいのだが、原発はけっして「政治」や「イデオロギー」ではない。ひとたび近くで自然災害が起きれば、原発はすぐに国民の生命や地域の環境を脅かす。つまり、いま、目の前にある“現実の危機”なのだ。そのことは、5年前の東日本大震災のことを思い起こせば明らかだろう。
しかも、今回については、たんに「比較的近い場所で大地震が起きたから不安」というレベルの話ではない。今回の地震によって、原発直下で大地震が起きる可能性が高まっていると専門家が指摘しているのだ。
一連の地震は、熊本県を東北から南西に横切る日奈久断層帯、布田川断層帯という活断層において発生したが、これらの活断層は「中央構造線断層帯」の延長線上にある。
「中央構造線断層帯」というのは、九州の西南部から、四国を横断し紀伊半島、関東にまで延びる日本最大級の活断層だが、この中央構造線が九州、四国などでおおよそ2000年に1回動いており、マグニチュード8クラスの巨大地震を発生させていることが近年の研究で明らかになっている。
そして、今回の地震をきっかけに、2000年以上動いてなかったこの中央構造線が動く可能性が懸念されているのだ。
たとえば、地震地質学の権威である林愛明・京都大教授は朝日新聞の取材に対し、こんな見解を表明している。
「今回ずれた断層の延長線上にひずみがたまり、大分県側でM7級の地震が起きることも否定できない。四国側の中央構造線が動く可能性もある」
たしかに、一連の地震の震源は、14日の日奈久断層帯から16日の布田川断層帯、さらに阿蘇、大分と、まるで中央構造線の想定ラインに沿うように北東へと移動しており、次が四国の中央構造線上で起きる可能性は否定できない。
一方、東北大の遠田晋次教授(地震地質学)は、逆に南西に震源が移動する可能性を警戒している。
「地震活動が南へ拡大する可能性も忘れてはいけない。日奈久断層帯は北部で地震が発生したが、南への延長部分では地震が起きておらず、注意が必要だ」
いずれにしても、日奈久、布田川断層帯の先や、さらにその延長線上にある中央構造線で大地震の危険性が高まっているのだが、実は、この中央構造線の南西の端には、鹿児島の川内原発があり、一方、中央構造線が四国側に抜けたところには、愛媛県の伊方原発があるのだ。
もし、この川内原発や伊方原発の直下や近辺で、今回の熊本地震と同規模の直下型地震や、中央構造線が動く大地震が起きたら、どうなるのか。
安倍首相は川内原発の再稼働をめぐって「世界一厳しい耐震基準をクリアした」ことを再三強調していたが、川内原発が再稼働にあわせて策定した基準地震動(想定される最大の揺れ)は620ガル。しかし、16日の地震では、益城町でその3倍に当たる1580ガルの加速度が測定されている。
また、伊方原発も、今年夏の3号機の再稼働に向けて耐震工事を実施したが、対応できる地震動は1000ガル。伊方原発付近では、M8~M9の巨大地震の可能性があることを文科省の特別機関である地震調査研究推進本部も認めており、もしこの規模の地震が起きたら、とても耐えられる設計ではない。
ようするに「世界一厳しい基準」などというのは、地震がほとんどない海外と比べたごまかしの論理であって、世界一の地震大国ではまったく通用しないのだ。
原発のこういう状況を知っていれば、現実に大地震が起きたときに、批判と懸念の声を上げるのは当然ではないか。
ところが、ネット上にひそむ原発ムラ関係者やネトウ連中は、原発を再稼働するために、こうした懸念の声を「政治利用だ」と決めつけ、「みんなが一丸となっているときにそんなことをいうのは不謹慎だ」などという無茶苦茶な論理で批判を封じ込めようとする。
いや、ネット上だけではない。電力会社に巨額広告漬けにされているマスコミも同様だ。
たとえば、今日17日に放送されたフジテレビの『新報道2001』では、番組の最後にわざわざ、「今回の地震は稼働中の川内原発、停止中の玄海原発、伊方原発が近くにあり、その影響を心配する声も上がっていますが、東日本大震災以降、原子力規制委員会も新しい耐震基準を整備しています。デマに流されず、冷静に公開された情報を受け止めてください」などと、わざわざ原発への不安の声をかき消すアナウンスをする始末だった。
そして、こうした声に引きずられるかたちで、一般のネットユーザーまでが「政治利用はよくない」「いまは原発のことを言うべきときじゃない」などと言い始め、原発の危険性の議論そのものがタブーになってしまっている。
しかし、5年前の東日本大震災を思い出してほしい。福島第一原発事故が進行しているあの最中にも、ネット上では同様に、懸念と不安の声を嘲笑い、「反原発の連中が不安を煽っている」と原発危機の現実から目をそらせようと動いている連中が大量にいた。
しかし、実際には、故・吉田昌郎所長の調書が示していたように、福一の危機は我々が考えている以上に進行しており、吉田所長が「東日本壊滅を覚悟する」ところまで深刻化していたのである。
原発利権に骨の髄まで犯されて、安全神話を垂れ流している連中に騙されてはならない。むしろ、この大地震が起きた直後のいまこそ、原発の危険性を大きな声で叫ぶべきなのだ。
(エンジョウトオル)
「朝鮮人が井戸に毒」
熊本地震 ネットにあふれるヘイト
(東京新聞【こちら特報部】)2016年4月16日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2016041602000144.html
「井戸に毒を投げ込んだぞ」。熊本県益城町(ましきまち)で震度7を観測した地震の発生後、短文投稿サイトのツイッターには、関東大震災時の朝鮮人虐殺を思わせる流言飛語があふれ返った。災害時にデマはつきものだが、今回のケースは、在日コリアンらを排斥するヘイトスピーチ(差別扇動表現)にほかならない。ヘイトデモに路上で直接抗議する「カウンター」の市民たちが打ち消しに走ったものの、悪質な投稿は後を絶たない。ヘイト根絶のためには、インターネット対策が急務である。
(池田悌一、佐藤大、白名正和)
井戸ないのに「井戸に毒」
飛び交ラデマ・悪意
「熊本の朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだぞ」。こんな差別的な投稿がツイッター上に登場したのは十四日午後九時三十五分、最初の地震からわずか九分後のことだ。一九二三(大正十二)年九月の関東大震災時には「朝鮮人が井戸に毒を投げ入れた」「暴動を起こしている」などのデマが流れ、大勢の朝鮮人や中国人が自警団などに惨殺された。関東大震災を模倣したのは間違いない。
その後もツイッターには「熊本では朝鮮人の暴動に気をつけてください」「こういう時に暴言はもちろん盗みとか嘘募金とかやる中国朝鮮人にご注意」などの書き込みが相次いだ。
「こちら特報部」は十五日、益城町に入った。
「うわあ、あっちの家もぺっしゃんこだ。ひどいな、これは」。町総合体育館で一夜を過ごし、自宅の様子を見に戻った里形明徳さん(七三)は、途方に暮れたように立ち尽くしていた。
「トーンと突き上げるような衝撃があったかと思ったら、左右に揺さぶられてね。テレビもたんすも落ちてきて、死ぬかと思ったよ。東日本大震災は人ごとじゃなかったんだね」
この後、再び体育館に戻るという里形さん。ネットデマを知っているのか。
「携帯電話を持っていないので情報が入らない。用心しなきゃならんね」。デマだとあらためて説明すると、「なぜこんなときに変なことを言いはやすのか」と不快感をあらわにした。
公民館に避難している塚本悦子さん(六三)は「昨夜は近くで火事もあったでしよ。余震も怖いし、ほとんど眠れなかった」と憔悴(しょうすい)し切っていた。デマについては「全然知らなかった。私はもともと心臓が悪い。知らないところであれこれ言われていると思うと気持ち悪い」と眉をひそめた。益城町中心部では商店も大きな打撃を受けた。町内最大のスーパー「よかもんね!」では店員たちが、陳列棚から落ちた食料品の回収などに追われていた。
戸惑う益城町民「妙な投稿やめて」
店員の松本修治さん(五一)は「デマを流すのは匿名の誰かでしょ。そんなことしておもしろいんですかね」とあきれる。「地震後はフェイスブックで『水が足りない』『生理用品が必要』という呼び掛けがあり、みんなで協力し合った。ネットはそういうことに使うべきでしょう」
文具店を営む尾塚三夫さん(六六)は黙々と、散乱した商品の片付けにいそしんでいた。「そもそも井戸なんて、ここいらに一つもない。ぱかげたデマだ」とばっさり。「町内には、農業を手伝うアジア系の人も暮らしている。みんなまじめな人ですよ。妙な投稿はやめてほしい」と憤った。
町役場を訪れると、ほかの自治体などからの救援物資が次々と運び込まれていた。手書きの掲示板には「TELください」の差し迫ったメッセージもある。
町民の安全確保や安否確認、倒壊家屋への対応などに駆け回る町職員たち。町災害対策本部の職員は「井戸の毒もなければ暴動もない」と全面否定した。
虐殺起きた関東大震災を模倣
まさにヘイトスピーチ
「行政が自ら否定を」
「新たな法規制急務」
熊本の在日コリアンは、ツイッター上の差別デマに困惑気味だ。在日本大韓民国民団(民団)熊本県地方本部の崔相哲(チェサンチョル)事務局長は「アジアにとって日本と韓国は大事な関係。このような書き込みはお互いにとって不幸なことだ」と表情を曇らせる。
在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)熊本県本部の担当者も「これまで熊本でヘイトスピーチはなかった。まさか熊本であるとは夢にも思わなかった」と不安を隠さない。
ネット社会の昨今、災害時の外国人差別デマは、ツイッターなどを通じて急速に拡散される。
例えば、二〇一四年八月に広島市を襲った土砂災害では、被災地で計十二件、空き巣などの被害があった。ネット上では「在日コリアンの犯行」と決めつけるデマが横行したが、逮捕されたのは日本人一人。広島県警の広報担当者は「情報通りの事実は確認できなかった」と説明する。
そもそも、デマの前提である「犯罪が多発」自体があやしい。
東京大総合防災情報研究センターの関谷直也・特任准教授は「被災地では人命救助が最優先となり、犯罪する側も被災するので、犯罪はむしろ減る傾向にある。しかし、避難生活などで避難者は不安を感じ、市民も犯罪が起こりやすいと信じているため、うわさが流布されていく」とみる。
ただし、熊本のケースは、従来の災害時とは様相が異なる。「発生数分後から書き込んでいる。国も県も市町も、被害の詳細を確認できない段階だ。自然発生的に生じたうわさというよりは、ヘイトスピーチのようなものだ」(関谷氏)
今回は、カウンターらが、即座に対抗した点も特徴だ。差別的な投稿には「デマ流すなよ、消せ」「通報して潰しておきます」といったコメントが付けられ、デマを凌駕するほどの勢いである。
カウンターの中核である「CRAC(対レイシスト行動集団)」メンバーの野間易通氏は「見るからにふざけているような書き込みに対しても、叱る内容のツイードが出ている。ヘイトスピーチに皆が怒っていることの表れだ。どんなデマも、一つ一つつぶさないといけない」と強調する。
カウンター側の奮闘は分かるが、運営会社はどう対応しているのか。 ツイッター社の広報担当者は、一連のデマツイートについて「そのようなツイートがあったことは理解している」としたが、削除したかどうかについては「個別のケースにはお答えできない」。とは言っても、一部の投稿は消えており、全く野放しにしているわけではなさそうだ。
とはいえ、デマツイートを根絶するのは難しい。
関東大震災時の朝鮮人虐殺を取り上げた『九月、東京の路上で』の著者であるノンフィクションライターの加藤直樹氏は「行政が自らデマを否定することが望まれる」と説く。
関東大震災では、朝鮮人による「爆弾計画」「井戸への投毒」などの報告が都内の警察署から上がった。巡査は暴動への警戒を呼びかけたり、自警団と一緒に朝鮮人を追い掛けたりした。加藤氏は「差別を打ち消すのではなく、逆に広げた結果が、あの大虐殺だ。熊本の件もほっておけば、二次的な被害を呼ぶ恐れもある」と警鐘を鳴らす。
現行法では、刑法に名誉毀損(きそん)罪や侮辱罪の規定があるが、不特定多数に向けたヘイトスピーチにはほとんど対応できていない。
現在、与野党双方がヘイトスピーヂ対策法案を参院に提出している。野党案は、ネット上での差別行為について「国及び地方公共団体は、事業者の自主的な取組を支援するために必要な措置を講ずるものとする」と明記するが、与党案に「ネット」の文字はない。
ヘイトスピーチに詳しい師岡康子弁護士は「ネット上の不特定多数に向けたヘイトスピーチ対策には新たな法律が必要だ。路上でのヘイトもネットが温床になっており、デモ対策としてもネットを規制の対象にすべきだ」と訴える。
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熊本地震……惨事に便乗すんな!(`_´)
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