『何を怖れる』
~映画監督・松井久子が伝えたフェミニズム
(ラジオフォーラム#125)
https://youtu.be/UFtzspIutvo?t=15m6s
~第125回小出裕章ジャーナル
事故賠償をめぐって「もっと本気で住民に対しての賠償などをすれば、日本の国家が倒産してしまうほどの被害が出ていると私は思っています」
http://www.rafjp.org/koidejournal/no125/
谷岡理香:
政府は未だに「原発は安いんだ」「安価なんだ」と言い続けています。今回の原発事故の損害賠償をめぐっては、その政府と電力会社が互いに責任を押しつけ合っているという現状もあります。私達には負担は、今後どのような形で出てくるのでしょうか? 今日は、「原発事故の賠償費と除染費の利息は国民負担」、このことをテーマにお送りします。小出さんと電話が繋がっています。小出さん、今日も宜しくお願い致します。
小出さん:
はい、こちらこそよろしくお願いします。
谷岡:
まず、原発事故が起きた場合の保険金について、改めて教えて下さい。
小出さん:
皆さん今、日本というこの国で生きていて、さまざまな保険にご自分で加入しているだろうと思いますし、企業にしても様々な保険に入って、何か事あった時にはその保険でまかなうというのが、いわゆる資本主義という世界の原則なのですね。
しかし、原子力発電所というものが、万一であっても事故が起きてしまえば、国家が倒産するほどの被害が出るということは、原子力の専門家はみんな承知していました。当然ひとつの企業でそんな被害の賠償ができるわけはありませんし、保険会社もそんなものに関しては、契約を結ばないということになっていたわけです。
そのため、いわゆる資本主義を標榜する国としては大変異例なことに、日本では原子力損害賠償法という法律が作られまして、万一の事故の時に備えて、電力会社は当初は50億円でしたけれども。1961年だったと思います。
その法律ができたのは。その時は、50億円だったと思いますが、だんだんだんだんお金が上がってきまして、今は1200億円の賠償金を用意しておけば、あとは国が国会の議決を経て面倒を見るという、そういうあり得ないような法律で守られてきたのです。
ですから電力会社としては、とにかく1200億円だけ準備をしておけば、あとは国がやってくれるんだというそういうつもりで今日まで来てしまったということになりました。
谷岡:
電力会社にとったら1200億円さえ準備すれば、あとは国。でもそうしますと、東京電力のあの福島の原発事故での損害額とその賠償は、どういうふうになっているんでしょうか?
小出さん:
原子力損害賠償法の定めに従えば、まずは東京電力は用意しておいた1200億円の賠償金を払うということになって、それを超えたものは、国が国会の議決で面倒を見ると、先程聞いて頂いた通りなのです。
谷岡:
そうですね、はい。
小出さん:
一応、その原子力損害賠償法では、責任は無限責任だということに決められていますので、本当であれば、東京電力が全てを賠償すべきなのですけれども、でも、国が国会で議決をすれば、いくらでもまたそれが出せるということになってしまっているわけです。
実際に、今のところは多分10兆円、あるいはそれを超えるぐらいのお金がかかるだろうと、国の方は言っているわけですが、私自身は多分そんなことでは到底足りない。何十兆円ものお金がかかるだろうし、もっと本気で住民に対しての賠償などをすれば、日本の国家が倒産してしまうほどの被害が出ていると私は思っています。
いずれにしても、東京電力が全部を負担するなんてことは到底できないわけですから、現状では政府が原子力損害賠償廃炉等支援機構という組織をつくりまして、国のお金を東電に回しているという状態になっています。一応数十年かけて、東電を含む電力会社から返済を受けるという計画になってはいます。そして会計検査院の試算では、最大で1200億円、1300億円ぐらいの金利が、国民負担になるという試算を出しています。
でも私、先程聞いて頂いたように、国や東京電力の考えている賠償額よりも、はるかに巨額の賠償額が実際には必要になると思いますので、おそらく何千億円というような金利が、これから国民の負担になっていくんだろうと思います。
谷岡:
はい。なんかちょっと気が遠くなるようなお話をして頂きましたが、そういった状況の中で、今、電力会社と国がこの賠償をめぐって押しつけ合いをしているわけですが、これはどういうことなのか、もうちょっと説明して頂けますか?
小出さん:
もともと日本の原子力というのは、国がやるのだと言って決めたのですね。そして今、聞いて頂いたように、原子力損害賠償法というような法外な法律をつくったり、あるいは電気事業法で電力会社の利益を完璧に補償する。原子力をやればやるだけ儲かるというような仕組みを作って、電力会社を原子力に引き込んだのです。
そのため日本の原子力は国策民営と言われるようになってきました。つまり国が重大な責任を持っていたわけですし、それを引き受けた電力会社が、仮に何か事故を起こしたとしても、やはり国に責任があるということは、私としては当然のことだろうと思います。ですから、事故が起きたとしても、電力会社としても国の方が「お前が引き込んだんではないか」というように、もちろん思っているわけですし、国の方も自分の責任をしっかりと認識してるわけですから、ある程度はやはり仕方がないだろうと。電力会社を守ってやらなければいけないというようなことも思っているわけです。
そのため今、起きているように、国が東京電力を生き延びさせて、倒産をさせることのないように支えながら、そのツケを国民に回していくというようなことをやっているわけです。先程から聞いて頂いてるように、もし本当に被害の賠償しようと思えば、東京電力など何十回倒産しても足りないわけですけれども、実際には国がそれを支援して、東京電力を生き延びさせて、東京電力は既に黒字にまたなっているというそういう状態になって、結局誰も責任をとらないまま、一切のツケを国民に押しつけながらみんなが生き延びて、国も東京電力も生き延びていくというそういうことをやっているわけです。
谷岡:
国も東京電力も組織はあるけれども、人はどんどん変わっていくわけですよね? おっしゃったように、誰も責任をとらないっていうそこが本当に重く響きます。でも大事なことは、もうほんとに今、被害を受け続けてる方がいて、その方がどうやって救済されるか。そして、私達も明日そうならない保障はどこにもないわけですが、今後のことを考えると、小出さんはどのようにお考えですか?
小出さん:
福島第一原子力発電所の事故で、今現在もたくさんの人が故郷を追われて流浪化しているわけですし、本当であれば、放射性管理区域に指定しなければいけない汚染地帯に、人々がそのまま捨てられて生活を余儀なくさせられているわけです。事故から既に4年以上経ちましたけれども、そんな状況がずっと続いている。もっとちゃんと国として救済をしなければいけないと思うのですけれども、それをやろうとすると、国が倒産するほどのお金になってしまうということになっているわけです。
4年経った今でも、原子力緊急事態宣言というものは撤回されないまま、未だに緊急事態が続いている。そして、被害者も苦難にあえいでいるという大変なことになっているわけで、もしそんなことをきちっと賠償しようと思えば、原子力発電なんてどれだけ高いものか全く分からないほどになってしまうということだと思います。
谷岡:
ほんとに原発は安いだっていうのはどこから来るのかっていうのは、本当に伺っていて気持ちが重くなります。それから、福島も分断の中に来ていて声を挙げられない方がいますが、私達がなんとか何度でも何度でも繰り返し発言していかなければいけないなって、改めて思いました。小出さん、どうもありがとうございました。
小出さん:
こちらこそ、ありがとうございました。
そもそも、ベストセラー「原発ホワイトアウト」の著者は何を語るのか?
著者、若椙 冽氏インタビュー。
http://dai.ly/x17q16i
東京電力は、なぜこんなに黒字なのか?/そもそも総研
http://dai.ly/x2f9awr
独自入手の極秘資料が暴く
国民欺く東電賠償スキーム
(週刊ダイヤモンド)2011年5月20日
http://diamond.jp/articles/-/12350
いま一度「再稼働に経済的根拠なし」
大島堅一教授に聞く
(東京新聞【こちら特報部】)2015年3月31日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2015033102000162.html
原子力規制委員会は三十日、九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に向け、使用前検査を始めた。九電はすでに七月からの発電開始、八月には営業運転に入ることを発表している。政府はこの間、「再稼働抜きには日本経済は立ち行かない」と宣伝してきた。しかし、立命館大の大島堅一教授(環境経済学)は「まったくの虚構」と反論する。危機のあおりは、かつての「安全神話」に通じる。
(上田千秋)
政府試算は現実離れ
「正しく計算をすれば、原発のコストが他の電力と比べて高いのは明らか。電力会社や政府の論理は現実に即しておらず、再稼働のメリットは何もない」
研究者やNGO関係者らでつくる「原子力市民委員会」の座長代理も務める大島教授はそう訴える。
政府は一貫して「原発はコストが低く、経済性に優れている」と唱え続けてきた。内閣官房内に設置された「コスト等検証委員会」が二〇一一年十二月にまとめた報告書にも、一キロワット時の発電コストについて、石油火力の二五・一円、液化天然ガス(LNG)火力の一〇・九円、石炭火力の一〇・三円に対し、原子力は八・九円などとする試算が盛り込まれている。
安全対策費など
上乗せすると…
だが、大島教授は「原発が安いというのは、燃料費の比較での話。安全対策費などを上乗せすると、原子力は八・九円ではとても収まらない」と解説する。
大島教授は他の研究者と共同で、政府や電力会社などの資料から、原発建設時の地元対策費や電源三法交付金といった社会的費用を独自に算出。これらを含めると、原発の発電コストは最低一一・四円になるという数字をはじき出した。
政府は「原発を再稼働させずに火力発電に頼り続ければ、石油をはじめとする燃料費のコストがかさむ」と主張しているが、大島教授は明確に反論する。
「石油などの輸入費が高いのは、アベノミクスによる円安の影響。そろそろ限界に近いだろうし、原油価格は下落傾向にある。安価なLNGの発電比率を増やすことも可能なはずだ」
原発のコストの高さは、世界的にも常識になりつつある。米国のエネルギー問題の調査機関「ブルームバーグーニュー・エナジー・ファイナンス」は昨年、原発の発電コストは一キロワット時約十五円と、太陽光発電とほぽ同レベルで、他の再生可能エネルギーなどと比べると、かなり割高になるという分析をまとめた。福島事故後に、事故対策の拡充が求められるようになったことが主な原因という。
しかし、日本では再稼働に向けた動きが進む。すでに川内原発1、2号機、関西電力高浜3、4号機(福井県)の四基が原子力規制委から新基準を満たすと判断された。このまま再稼働されれば、一三年九月から続く国内の「原発ゼロ」が終わることになる。
電力会社や政府は「原発を再稼働させなければ、電気料金が上がり、経済が行き詰まる」という主張を繰り返してきた。だが、大島教授は「原発を廃炉にすれば、維持・管理費が不要。火力の燃料費を賄ったうえで、現在よりも電気料金を低く抑えられる可能性がある。そうした事実を直視せず、電力会社や政府はあえて論点をずらしているのではないか」と批判する。
高コスト世界の常識
こうした指摘があるにもかかわらず、政府は原発を維持しようと躍起だ。最近も電力会社の利益に沿った政策を打ち出している。
政府は今月十三日、関連省令を変更。廃炉に伴う損失を十年間分割でき、かつ電気料金に上乗せできる新たな会計制度を導入した。従来は当該年度に一度に計上する必要があったため、電力会社にとっては債務超過に陥る恐れがあった。
さらに一六年に実施予定の電力自由化以降も、発電に伴う費用を基に電気料金を決める「総括原価方式」に似た仕組みを導入する案が浮上している。経済産業省の有識者会議では現在、原発の建設費や使用済み核燃料の処分費などを含めて電気料金を決め、仮に損失が生じた場合は利用者から回収できるシステムが議論の対象になっている。ヾ(゚Д゚ )ォィォィ
電力自由化に
逆行する動き
「電力の自由化というのに、これでは公正な競争は保てない。本来は電力会社が負うべき原発のコストを国民に回すという話。原発を持っている電力会社ほど経営が安定する結果になってしまう」(大島教授)
政府は戦後、国策として原子力の利用を進め、それに沿って電力会社は全国に原発を建設してきた。しかし、原発の効率の低さは世界レベルで常識になりつつある。もたれ合いの構図は限界を迎えている。
大島教授は「国民にツケを回す新会計制度は許されるものではないが、導入するなら原発をゼロにすることが最低限の条件。廃炉にしても債務超過にならなくなる以上、電力会社にとって原発を続ける理由はなくなる」と強調する。
「原発はコストと事故のリスクが高い。これを一番理解しているのは電力会社と経産省。だからこそ、次々に新たな制度をつくろうとする。電気料金に転嫁して広く、薄く国民負担を増やせぱ、批判を受けにくいと考えているのかもしれないが、国民の多くが望んでいるのは原発ゼロ。それを無視してはならない」
電が足りている■核のごみ限界■福島事故原因は?
原発再稼働が無謀である理由はいくつもある。
第一に原発抜きでも電気は足りている。電気事業連合会によると、大手電力十社の年間電力需要は一〇年度は九千六十四億キロワット時だったが、福島事故後は減少して、一三年度は八千四百八十五億キロワット時。財団法人・電力中央研究所は、一四年度も八千二百五十億キロワット時になると試算している。
第二に使用済み核燃料の処分だ。使用済み核燃料はガラス固化体に加工し、最終処分場で地下三百メートルより深い地点に埋め、約十万年保管するという。だが、肝心の処分場の場所が見つからない。原子力発電環境整備機構(NUMO)が○二年から候補地を公募しているが、応募は一ヵ所(後に
撤回)しかない。
昨年三月末時点で、使用済み核燃料は全国の原発のプールに約一万四千三百三十トンが貯蔵され、最短三年でいっぱいになる。青森県六ヶ所村の再処理工場でも容量三千トンのうち、二千九百五十一トンが埋まる。
第三は福島の事故原因が未解明なこと。昨年五月に関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の運転差し止めを命じた福井地裁の判決は、福島事故について「地震がいかなる箇所にどのような損傷をもたらし、それがいかなる事象をもたらしたかの確定には至っていな
い」と指摘している。なにより、避難計画が不十分なこと。国は原発から三十キロ圏内の市町村に避難計画の作成を「丸投げ」している。ただ、原子力規制委は「(避難計画を)評価する立場にない」(田中俊一委員長)と、計画の確立は再稼働条件ではない。
再稼働への自治体同意についても、立地する道県と市町村のみに限定。他の周辺自治体は避難計画作成を強いられつつ、再稼働には何ら影響力を行使する立場にない。
(白名正和)
target="_blank"