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小出裕章先生:原子力規制委員会が川内原発が安全と墨付きを出したそのことが非科学的だと思います。

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イラクから見えた私たちの責任(ラジオフォーラム#93)

http://youtu.be/PjGD85-ybgI?t=14m14s
14分14秒~第93回小出裕章ジャーナル
御嶽山噴火から考える火山と原発について「噴火の予知ができないわけですからもともと対策のとりようもないし、規制委が川内原発が安全だというようなお墨付きを出したことその事が私は非科学的だと思います」

http://www.rafjp.org/koidejournal/no93/
御嶽山噴火

石井彰:
9月27日に長野県と岐阜県の県境に位置する御嶽山が噴火をして、多くの登山者の方が犠牲になりました。この御嶽山が大きな予兆もなく水蒸気噴火したことで、火山の噴火リスクというのが改めて注目をされていますが、火山と原発について、小出さんにちょっとお話を伺いたいんです。まず、今回の御嶽山の噴火について、小出さんはどんなふうにニュースを見てお感じになられましたでしょうか?

小出さん:
まずは、驚いたというのが正直な感想です。御嶽山がまさか爆発するということは、私自身も思っていませんでしたし、多くの人達はあの山が爆発するとは思っていなかったはずだと思います。
Mount Ontake
日本の専門家の中でも、火山が爆発するという危険を5段階に分けていたけれども、御嶽山の場合にはレベル1ということで、ほとんど危険がないという風にしか専門家も思っていなかったわけです。
噴火警戒レベル
それが突然に爆発してしまうということで、やはり自然というのは人知を超えているのだなと改めて思いました。

石井:
そういう中で、鹿児島にある川内原発の場合には非常に立地場所からして、「どうしてこんなところに造っちゃったんだろう」というような思いが私にはあるんですが。
九州電力がモニタリングの対象とする火山

小出さん:
でもそう言うと、たぶん日本中どこも危ないということになってしまうだろうと思います。ただ、今おっしゃって下さったように、この九州というのは、例えば阿蘇山ありますよね。内輪山と外輪山というのがあるわけですけれども、外輪山の中は全て爆発で吹き飛んでしまった跡なわけですし、
阿蘇カルデラ全景
桜島があるところ鹿児島湾はこれも火山が爆発して全部吹き飛んだがゆえにあそこが海になっているということであって、巨大なカルデラが5つも並んでいるという所なんですね。
鹿児島湾北部の衛星写真
そういう意味で言えば、九州というのは火山の爆発が一番危険な場所でもあるわけですから、そういう所に原子力発電所を造るということはできれば初めから避けておくべきだったと私は思います

小出裕章ジャーナル

石井:
実際に、火山が爆発した時に、原子力発電所には様々な危険、あるいは事故等々が起きるというふうに考えられると思うんですが、順番を追っていくと先ずどういうことを考えておかないといけませんか?

小出さん:
まず、ほんとに巨大な爆発が起きるというようなことになれば火砕流というのが起きて、猛烈に高温な岩石・灰等を含んだ物がその場所から流れ下ってくるということになりますので、そんな事になると原子力発電所のあちこちで多分、様々な障害が出るでしょうし、燃料関係がもし損傷するようなことになれば大量の放射性物質が出てきてしまうということになると思います。それが一番、まずは心配することです。
姶良Tn火山灰と入戸火砕流
入戸火砕流 - Wikipedia

次は、今回の御嶽山もそうでしたけれども、火砕流が起きないぐらいな噴火であっても、火山灰が何百キロという所まで飛んでくるということになります。
姶良Tn火山灰
姶良Tn火山灰 - Wikipedia

原子力発電所というのは、もともと綺麗な空気を循環させなければいけないということで、空調等が大変複雑に絡んでいるわけですが、それが火山灰によってフィルターの目詰まり等々含めて、深刻な障害を起こすだろうと私は思いますし、電気系統もたぶん様々な障害を受けてしまうだろうと思います

石井:
地震列島であり火山大国、日本。この川内原発だけでなく、他にも大変危険な場所にある原子力発電所というのはいくつもありますよね?

小出さん:
はい。たくさんあります。火山大国ですので北海道のもそうですし、九州という意味では玄海もそうですし、四国の伊方原子力発電所も阿蘇山のすぐ近くですので影響を受けるだろうと思います。

石井:
原子力規制委員会の田中俊一委員長は、今回の御嶽山の水蒸気噴火と川内原発で起こる現象が違うと。一緒に議論するのは非科学的だというふうに、自分達の川内原発再稼働についての審査は妥当であるというように記者会見でお答えになってらっしゃいますが、この一緒に議論するのは非科学的だということについて科学者の小出さんはどうお考えですか?

小出さん:
私は火山学者ではありませんので、あまり正確にコメントできるかどうか分かりませんが、ただ、御嶽山で起きた水蒸気の噴火と川内原発で今、危惧しているような火砕流が生じるような噴火とは、もちろん規模が違うわけです。

ですから、一緒に議論するのがある意味妥当でないというのはあるかもしれませんが、でも、一番大切な事は今回の御嶽山の噴火すら全く予知できないままだったということだと私は思いますし、原子力規制委員会も九州電力もなにか噴火の予知ができるかのようなことを言っていて、予知ができれば対策が取れると言ってきたわけですが、噴火の予知ができないわけですから、もともと対策のとりようもないし、原子力規制委員会が川内原発が安全だというようなお墨付きを出したことそのことが私は非科学的だと思います
私たちにできないのに規制委に できるわけない

石井:
つまり、比べることは違ったとしても、根底にある火山の噴火については今の科学技術ではなかなか予知できない。

小出さん:
そうです。

石井:
有珠山の爆発の場合には、ある程度事前に分かったケースももちろんあったりもしますが。
有珠山噴火2000年

小出さん:
非常に稀なケースですね。

石井:
そうですね。ですから、御嶽山の形で明らかになったのは、火山というのは突然ある種爆発するものなんだというふうな前提に立つことが科学的だという理解でよろしいですか?

小出さん:
はい。ほとんど火山学者の方々みなさんがそう言っているのですね。火山の噴火の予知は今の力ではできないというふうに専門家の人達が言ってるわけですから。

石井:
分かりました。今後も引き続きいろいろな事が起きている。小出さん、やっぱり日本列島は活動期に入ったという私達は前提に立った方がいいんじゃないか。地震が起きる、火山の爆発が起きるという理解でいいでしょうか?
日本周辺の活断層の分布と原発の位置

小出さん:
はい。私の知人で石橋克彦さんという東海地震を初めて問題にされたという方がいらっしゃるのですが、その石橋さんが「大地動乱の時代に入った」という風に指摘をしてきていますけれども、ほんとに今、日本というこの国が火山も含めて地震も含めて、大地そのものが大きく動いていくという時代に入っているように私も思います
大地動乱の時代

石井:
そういう中で、冷静に慎重に私達はいろいろな動きを見つめていかなければいけないし、再稼働というようなかたちに踏み込まないようなかたちにしていきたいと微力ではありますが思います。

小出さん:
ありがとうございます。ぜひ私もそうしたいです。

石井:
今日はどうもありがとうございました。


震災というのは、人間の文明社会と大自然のあいだに日常的に存在する矛盾の劇的な噴出にほかならない。生身の人間の手足や目のとどく範囲で都市生活が営まれていた安政期の江戸や、その面影を残していた大正時代の東京では、大震災といっても中身は単純だった。ところが現在の東京は、大自然の摂理と現代文明の相克が地球上でもっとも激しい場所の一つである。そこに潜む本質的な無理が大地震の際に極限まで顕在化して、ここで生ずる震災は人類がまだ見たことのないような様相を呈する可能性が強い。
石橋克彦著 大地動乱の時代―地震学者は警告する より

原発に頼れない地震列島
石橋克彦
http://historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/0808toshi.pdf
世界の地震と原子力発電所の分布

日本の原発は「地震付き原発」


川内原発

http://dai.ly/x21ls4i


川内原発再稼働の安全審査...火山学者が批判

http://youtu.be/vHpr8rWsG4c


そもそも火山が噴火しても原発は問題ないのだろうか

http://youtu.be/03cqDCiU6Z4



「御嶽山噴火影響なし」川内原発再稼働で経産相
(読売新聞)2014年10月01日
http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20141001-OYS1T50011.html
小渕経済産業相は再稼動に影響ないと語っている 小渕経済産業相は30日の閣議後記者会見で、御嶽山おんたけさんの噴火に関連し、「(九州電力川内原子力発電所の)再稼働に何か影響があるということではない」と述べ、再稼働への影響はないとの考えを示した。

 小渕氏は、「火山対策も含めて、世界で最も厳しい新規制基準に適合した」と説明した。


御嶽山噴火を無視 政府追認する「原子力規制委」の存在意義
(日刊ゲンダイ)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/153804
 川内原発再稼働に突き進む安倍政権。原子力規制委員会は“最後のとりで”との期待もあったが、ダメだった。政府方針の“追認機関”にすぎないことがハッキリした。

 今回の御嶽山の噴火について菅義偉官房長官は、29日の記者会見で「川内原発再稼働への影響を与えないと思う」と早々と宣言。今回の噴火事故を受けて再稼働を見直すことを否定したが、1日の会見で原子力規制委員会の田中俊一委員長も「(今回の噴火が川内原発再稼働に影響を与えるのかについて)再検証するべきことではない」と菅官房長官に同調したのである。

 今回、御嶽山の噴火でわかったのは日本の火山学者の予知・予測のつたなさと、想定をはるかに上回る噴火が起きて、しかも、何の警告も出されていなかったことから多くの犠牲者を出したという事実である。

 日本の火山学者の予知レベル、危機管理態勢の不備など検証すべきことは山ほどある。実際、一部の火山学者からは「地震動が始まっていたのに登山者に警告を発したり、登山自粛を求めなかったのは問題だった。地元観光業への打撃を気にしすぎたのではないか」という声が上がっている。

■「現象が全然違う」

 そこで田中委員長に、「日本の火山学者は国際レベルに達しているのか、危機管理態勢が整っているかも含めて再検証するべきではないか」と聞いてみたのだが、その答えにはガックシだ。

「火山学者のレベルについて私が申し上げる資格もないし、知識もありませんし、<社会的対応がどうこう>というべきことではない。御嶽山の水蒸気爆発による噴火と、(川内原発で問題になっている)超巨大噴火は、起こる現象が全然違う」とか言って、見直すそぶりもないのである。

 異なる噴火現象といっても、同じ日本の火山学者の知見を基に予測や対応を考えているのだから、その学者が信用できなければ、議論の前提が崩れてしまう。まして、議論しているのは原発の安全性や避難計画なのである。国内外の専門家や危機管理のエキスパートに相談すらしないのは異常に見える。

 政府の言い分にお墨付きを与えるだけの規制委であれば必要ないし、田中委員長の適性も問われる。

(取材協力=ジャーナリスト・横田一)




噴火予知は幻想 火山学者が異論唱える川内原発再稼動
(週刊朝日)
http://dot.asahi.com/wa/2014100700094.html
 御嶽(おんたけ)山(長野県・岐阜県境、3067メートル)の噴火は、想像を絶する被害が明らかになりつつある。今回、改めて浮き彫りになったのは噴火予知の難しさだ。御嶽山の水蒸気噴火だけでなく、マグマ噴火ですら予知する技術は確立できていない。

 噴火は予知できる、という考えはもはや幻想だ。だが、その幻想に寄りかかって防災計画が策定され、行政の方針が決められている。その最たるものが、政府が進めている九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働だろう。

 川内原発の周辺には、数万年に1度、カルデラ噴火と呼ばれる超巨大噴火を起こす地帯が複数存在する。約3万年前の姶良(あいら)カルデラの噴火では、南九州全域が火砕流にのみ込まれた。この規模の噴火が起きれば、川内原発も壊滅的な被害を免れない。

 こうした危険性が指摘されている中で、原子力規制委員会は9月10日、川内原発の安全対策は新規制基準を満たすとして設計変更の許可を出した。カルデラ噴火の可能性を「十分低い」とし、火山活動のモニタリングで前兆があれば、核燃料を運び出すなどの対応をとるというのだ。

 規制委は8月から火山学者らで検討チームを作り、モニタリングの方法などについて議論を始めているが、火山学者たちからは異論が噴き出している。

 8月の第1回会合では、予知が可能だという根拠にフランスの火山学者ティモシー・ドゥルイット氏の論文が使われていることに、火山噴火予知連絡会(噴火予知連)会長の藤井敏嗣・東京大学名誉教授が疑問を呈した。藤井氏が語る。

「この論文はギリシャのサントリーニ火山で3500年前に起きたカルデラ噴火について研究したもので、他の火山でも同じ現象が起きるとは限らない。巨大噴火の10~100年ほど前から地下のマグマの量が徐々に増えるので地面の隆起を観測できるというのですが、マグマが下方向に成長すれば、地面が隆起しないことも考えられる」

 マグマの増加を観測できない場合もあるとなれば、カルデラ噴火の可能性が「十分低い」という前提自体が怪しくなる。9月の第2回会合で藤井氏がそう指摘すると、進行役の島崎邦彦・原子力規制委員会委員長代理(当時)はこう答えた。

「そこまでさかのぼって全部ひっくり返してしまうと、この検討チーム自体が成り立たなくなると私は思っていますので、現状から出発していただきたいというのが私の考えですね」

 指摘に正面から反論するでもなく、もう決まったことだから覆すなという。これでは「安全神話」に寄り掛かった3.11前と変わらない。

 モニタリングの主体が電力会社とされていることにも、複数の火山学者から疑問の声があがっている。噴火予知連副会長で検討チームに参加する石原和弘・京都大学名誉教授がこう語る。

「何かの前兆があって電力会社が原発を止めても、10年、20年たっても噴火が起こらないことも考えられる。その場合、原発を止めたことによる損失を株主にどう説明するのか。何が巨大噴火の前兆かという明確な基準もない中で、原発を止める判断が本当にできるのか」

 地下のマグマが一気に大量噴出するカルデラ噴火について、前出の藤井氏はこうも語る。

「そもそもカルデラ噴火の研究はまだほとんど進んでいない。私が座長を務めた内閣府の検討会で昨年5月、国が体制を整備して調査研究を始めるべきだという提言を出したところです。いつか起きるのだから、今のうちに対策を考えておくべきです」

※週刊朝日 2014年10月17日号より抜粋


火山列島大変動


川内原発説明会 住民の不安解けず
(東京新聞【核心】)2014年10月10日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2014101002000148.html
 九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)は原発の新しい規制基準を満たしているのか-。原子力規制委員会が審査結果を住民に説明する会が九日、立地自治体の薩摩川内市を皮切りにスタートした。約二時間にわたる説明と質疑でも、噴火対策や避難計画など住民の不安が解けることはなかった。
(小倉貞俊、山川剛史)

川内原発説明会 住民の不安解けず

■疑問

 「住民には賛否ある。あまりに(再稼働を)早く早くというのが疑問だ」
 「机の上で考え、川内原発は『大丈夫でしょう』となったと聞こえる」
 規制委の審査官による約一時間の説明が終わり、質疑に入ると、約千人の市民から多くの手が挙がり、単に基準を満たしているだけでは納得できないとの意見が相次いだ。

■地元

 福島の原発事故前までは県と立地市町村が同意すれば、原発は再稼働できた。ところが、ひとたび重大事故が起きれば広範囲に汚染が広がり、長期避難を強いられることが福島の事故で証明された。もっと広く地元の同意を得ることが必要との声が高まっている。
 薩摩川内市に隣接するいちき串木野(くしきの)市では市民グループが集めた再稼働反対の署名が人口の半数を超え、市議会も市を同意が必要な「地元」に加えるよう、県に要求する意見書を可決した。市長も再稼働容認から慎重姿勢に転じた。こうした動きは原発三十キロ圏の九市町村のうち、五市にまで広がっている。再稼働に積極的な伊藤祐一郎県知事は、再稼働するために同意が必要な「地元」は「県と(立地自治体の)薩摩川内市」だけという考えを崩していないが、説明会で住民の納得が得られず、周辺市町村の反対の声が強まれば、再考を迫られることになる。

■予知

 再稼働までには、九電は詳しい事故時の対応策を規制委に提出し「妥当」と判断されなければならない。
 川内原発の周辺には阿蘇など巨大噴火による陥没地帯(カルデラ)が五カ所あり、火山リスクがある。九電の対策は噴火予知を前提にしているが、突然の御嶽山(おんたけさん)(長野、岐阜県)の噴火を見ても予知は難しい。
 規制委の田中俊一委員長は「御嶽山の噴火と巨大カルデラ噴火とは別」と言うが、専門家でも無理という巨大噴火の予知を九電ができるのか。仮に噴火が近いと分かっても、原発内の核燃料を全て安全な場所に緊急搬送できるのか、未解決の問題が残されたままだ。
 住民を守る避難計画への不安も消えない。政府は九月の原子力防災会議で避難計画を了承。安倍晋三首相は「具体的、合理的である」と強調したが、入院患者の避難や渋滞の回避など検証が十分とは言い難い。
 薩摩川内市高貫(こうかん)自治会の会長武元優子さん(五四)は本当に避難できるのか、夫とともに車で指定の避難ルートを走ってみた。
 海沿いの国道は津波で使えなくなる可能性があり、高速道路も地震に耐えるかどうか分からない。代替ルートは示されていない。避難所に指定されている鹿児島市内の公民館に着き、職員と話をすると、避難所に指定されていることを知らなかった。
 「避難計画はまだまだ不十分なのではないか。私たちが避難した時の食料をどうするのかも不安」と危機感を強めている。



小渕大臣コスト計算

松島みどり 辞任

誤認戦隊 解任ジャー02

小渕・松島大臣辞任 新潟日報20141020

誤認戦隊 解任ジャー01



福島に原子力推進の新拠点? 「環境回復」名目のセンター建設
(東京新聞【こちら特報部】)2014年10月19日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2014101902000152.html
 「福島県環境創造センター」と名付けられた施設の建設が進められている。県立だが、原発推進派と目される人物らが計画に関わっており、原子力のPR館を連想させる。高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)のトラブル隠しを繰り返す日本原子力研究開発機構(JAEA)、チェルノブイリで健康影響を過小評価した国際原子力機関(IAEA)も拠点を置く予定だという。いったい何が狙いなのか。
(榊原崇仁)

福島に原子力推進の新拠点建設_1

「安心神話」色濃い展示

 「現計画のまま建設が進めば、新たな安全神話の拠点になりかねない
 脱原発の市民団体「フクシマ・アクション・プロジェクト」の事務局長、佐々木慶子さん(七二)=福島市=はそう訴える。
 県の肝いりで計画が進む環境創造センターは、東京電力福島第一原発から西に約四十五キロの三春町にメーン施設、原発の北約二十キロあまりの南相馬市にサブ施設が設けられる。
 五万平方メートルの敷地に建設されるメーン施設には、環境教育用の交流棟や研究棟などを備える。サブ施設では原発周辺の環境モニタリング機能を置く。来年度以降に順次開所する予定で、費用は十年間の運営費を含めて約二百億円に上る。
 県の担当者は「事故で汚染された状況を回復するための拠点にしたい。福島ほど大規模に除染を進め、元に戻そうとする試みは世界で初めて。国内外から英知を結集するほか、復興に近づく状況を来場者に伝え、前向きな気持ちを持ってもらいたい」と語る。
 ただ、計画に携わった面々を見ると、どうにも前向きな気分にはなれない。
 設置準備検討委員会のトップは、原子力規制委員会の新委員、田中知(さとる)氏が務めた。核燃料サイクルが専門の同氏は日本原子力学会の元会長。原発メーカーの寄付や東電の関連団体から報酬を得るなど、明らかに原子力ムラの住人だ。
 他の検討委メンバーでは、原子力委員会の元委員を顧問に迎えたNPO法人「持続可能な社会をつくる元気ネット」の関係者がいるほか、文部科学省で原子力政策を担う研究開発局もオブザーバー参加する。
 六月にスタートした交流展示等検討会には、長崎大の高村昇教授が名を連ねる。同氏が師事するのは「放射線の影響はニコニコ笑ってる人に来ない」と講演した福島県立医科大の山下俊一副学長だ。
 交流棟も細部を見ると、内容の偏りが目立つ。県のレイアウト案によると、館内では原発事故以降の経過をテーマにした映像を流すほか、放射線に関する学習や体験のコーナーなどを設ける。しかし、伝える内容は「着々と進む環境回復」に力点が置かれ、事故をもたらした推進側の体質や深刻な被害、原子力を抑制する難しさは二の次だ
 医療や工業での放射線の利用例や、放射線研究者の偉業を紹介する案も出ており、放射線との共生を訴える色合いまで出ている。
 放射線の基礎知識の展示例としては、低線量被ばくの健康影響に否定的な立場を取る東京大の中川恵一准教授の著書から、イラストを引用している。
 交流棟展示等検討会の会合では、JAEAの石田順一郎氏が「非常に低い線量を心配して、北海道や沖縄へ逃げた人がいるが、それはちょっとおかしい」と発言している。

福島に原子力推進の新拠点建設_2

研究棟には推進団体

 こうした傾向は交流棟だけではなく、メーン施設にある研究棟も同様だ。
 ここでは主に、JAEAと国立環境研究所が除染技術や放射性廃棄物の処理方法などを研究する。
 県は「JAEAは原子力、国立環境研究所は環境の各分野で国内屈指の研究機関。環境回復を目指すうえで大きな助けになる」と誘致の理由を説明する。
 しかし、JAEAは自らのホームページで「原子力の未来を切り拓(ひら)く」「世界一を目指す」と宣言する国内屈指の原子力推進機関であり、実際、「もんじゅ」などを手掛けている。
 同時に、不祥事の常連でもある。もんじゅでは二○一二年十一月に約一万件の点検漏れが発覚し、事実上の運転禁止命令が出た。今月には、もんじゅ内の監視カメラ計百八十基のうち、約三分の一が壊れたことが判明。一年半以上放置されたものもあった。
 JAEAの前身、動力炉・核燃料開発事業団(動燃)時代の一九九五年には、もんじゅで国内初のナトリウム漏れ事故を起こし、さらに現場映像の改ざんが発覚し、批判を受けた。
 研究棟にはIAEAも拠点を置く予定だ。一二年末に県との間で交わした連携協力の覚書に基づき、除染について研究するほか、事故発生時の環境モニタリングについて、各国から研究者を招いて研修をする。
 ただ、IAEAは一貫して原子力利用に肯定的な立場を取ってきた。
 九一年にまとめたチェルノブイリ原発事故に関する報告書では、住民の健康影響に否定的な見解を示した。だが、その後に子どもの甲状腺がんの多発が明らかになり、IAEAの過小評価が問題とされた。
 福島でも、同様の姿勢で介入している。IAEAからは廃炉や除染などの視察団が相次いで福島入りしているが、原発敷地内の汚染水の海洋放出を検討するよう政府や東電に求めているほか、除染の長期目標は年間一ミリシーベルトとなっているにもかかわらず、「二○ミリシーベルトの被ばくは許容範囲」という見解を示している。
 環境創造センターのうち、交流棟の展示内容などについては、県が二十四日まで意見公募をしている。交流棟が来る三春町在住のパート従業員、大川原さきさん(六二)は「町の施設ではないから、町民の大半は何ができるのか、まだよく分かっていない」と話す。
 地元の事情はお構いなしにセンターの概要は固まりつつあるが、福島大の後藤忍准教授(環境計画)は「大切なことは、二度と原発事故を起こさせないということ。そのためには事故の教訓が何かを検証し、広く伝える拠点こそが求められている。被害については、県の責任もまぬがれない。そこから目を背けるようでは、福島の教訓を生かすことはできない」と語る。
 三春町在住で、福島原発告訴団長の武藤類子さん(六一)は「県は復興の名を借りて、国内外の原子力推進機関と『事故が起きても問題は大きくない』と発信しようとしているだけだ。この施設は再び原発事故を招く温床にすらなりかねない」と批判し、こう訴えた。
 「県内の小学五年生全員が、一度はセンターを見学するという方向で話が進んでいるとも聞く。幼いころから、原発の安全神話、放射性物質の安心神話で洗脳するような拠点づくりを絶対に許してはならない

福島に原子力推進の新拠点? デスクメモ


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