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無関心でいることは罪を犯しつつあることなのです (`・ω・´)ゞ

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集団的自衛権、原発
日本の岐路 今言いたい
全日本仏教会元会長 天徳山龍門寺住職 河野太通さん
しんぶん赤旗日曜版2014年7月27日付

 全日本仏教会元会長の河野太通さん(84)の宗教紙での言葉が静かな反響を呼んでいます。「戦争や原発事故が起こって初めて罪が発生するわけではない。戦争前、事故前の”平和な時代”に、その平和を損なうかもしれないことにたいして何もしないこと、無関心でいることは罪を犯しつつあることなのです」-。天徳山龍門寺(兵庫県姫路市)に訪ねました。
 田中倫夫記者

「知らぬが仏」では罪問われる

「知らぬが仏」では罪問われる

 宗教紙「佛教タイムス」(1月30日号)でお話ししたのは、東日本大震災があり、大津波、福島原発事故で大変な被害が広がっているなか、仏教者として何かものを言わなければならないと思ったからです。
 戦争の罪は平和の時にあると思っています。いまは戦前と違い、私たちには言論・表現の自由は憲法で保障されています。そんな時に、知ろうとしないのは、「無知」「知らぬが仏」でいることの罪が問われます。同じことは原発事故にも言えるのではないか。あれ
だけの原発事故が起きたのに、また再稼働しようなどというのは、仏教でいう「正見」(真理を自覚して、正しい考えをもつこと)を欠いたことです。
 私は終戦の年は旧制中学の4年生でした。軍国少年で「国家のために命をささける」と本気で思っていました。学徒勤労動員として毎日、工場で火薬を作っていました。ところが戦争に負け、国家が崩壊し、自分の生きがいも崩壊し、何になったらいいのかわからなくなった。それで社会がどれだけ変動しても正しい道をめざそうと仏門に入りました。
 ところが日本の仏教界は、かつて戦争に突入したとき、歯止めになるどころか戦争を推進する側に立っていたことを知りました。一部には反対する人たちがいましたが、大きな勦きとはなり得なかった。私は仏門に入ったことを後悔しました。しかし仏門に入ったことが間違っていたのではなく、時の仏教界の指導者たちが間違っていたと思うようになりました。いけないことをいけないと言わずに、黙っていたことが戦争協力になったのです。
 私はいけないと思うことはいけないと発言しなければならないと思う。最近やっと、各教団も戦争協力への反省を言うようになりました。

◆◆◆

 集団的自衛権の行使を容認するための閣議決定が強行されました。憲法上は絶対できなかった海外での武力行使を可能にするものです。しかも、こんな重大なことを決めるのに、安倍首相のお友達だけで議論して、与党だけで決めていく。これで解釈改憲ができるなら、憲法など意味をなさなくなります。
 「平和のためだ」とか「必要最小限度にセーブする」とか安倍首相はいいますが、本当に必要最小限に止められるものなのか。いったん戦争が始まれば、それまでの決まり事なんか吹っ飛んで、自分の都合のいいように突き進んでいく。だから、私たちは、武器すら持つのはやめよう、戦争はしないようにしよう、と敗戦のときに、誓っだのではないでしょうか。
 憲法9条は、第2次世界大戦だけじゃなく、それまでに人類がやってきた大きな戦争を総括して、その反省の上にたどりついた「人類の知恵」です。「時代に合わなくなった」などという人もいますが、合わなくなっだのは権力を握っている人たちの古い価値観の方です
 憲法9条と釈尊(編注・釈迦=しゃか=のこと)の教えは一致します。釈尊は「悟り」をいいます。この意味は「人権は平等である」「一つひとつの命は尊いのだ」ということを悟っている
ということです。9条とは、まさにそれを一国の最高法規にまで高めました。日本が世界に先駆けて掲げたものです。
 安倍首相も座禅をやるそうです。座禅とは、今、持っているものi利権、名声、物欲など-を
一度きれいに捨てて無心になって、天然自然と人類社会と一体になることです。その立場に立って、自国の繁栄の追求は、人類社会の繁栄と調和するものでなければならぬことを、個別の国と世界に向かって発信してくださいと言いたい。それが禅のこころです。

◆◆◆

 私か役員をしていた全日本仏教会や妙心寺派は、集団的自衛権に「深い憂慮と危惧」を表明し
ました。(別項)
 この点て、今の日本の政党の中で一貫して主張がかわらないのは、日本共産党だと思います。私は共産党員ではありませんし、どの党の立場に立つというものでもありません。ですが、戦争と平和の問題とか、憲法9条の問題、原発事故の問題では、日本共産党のみなさんと一致することが多い。今後も頑張ってもらいたいと思います。

こうの・たいつう=1930年大分県生まれO兵庫・祥福寺専門僧堂師家、花園大学学長などを歴任。
2010年から臨済宗妙心寺派管長(14年まで)、全日本仏教会会長(12年まで)。会長時代には宣言文「原子力発電によらない生き方を求めて」を発表

河野太通老師の言葉

戦争放棄捨て去ることに
全日本仏教会の斎藤明聖理事長の談話
 「日本人が国外で人を殺し殺されるという事態が起こり得る可能性があり、日本国憲法に示される戦争放棄を捨て去ることになりかねません」「深い憂慮と危惧の念を禁じ得ません」
 ◇ 
臨済宗妙心寺派はこの談話を支持する栗原正雄宗務総長名の声明を発表しました。

原子力発電によらない生き方を求めて

宣言文

原子力発電によらない生き方を求めて

東京電力福島第一原子力発電所事故による放射性物質の拡散により、多くの人々が住み慣れた故郷を追われ、避難生活を強いられています。避難されている人々は、やり場のない怒りと見通しのつかない不安の中、苦悩の日々を過ごされています。また、乳幼児や児童をもつ多くのご家族が子どもたちへの放射線による健康被害を心配し、「いのち」に対する大きな不安の中、生活を送っています。
広範囲に拡散した放射性物質が、日本だけでなく地球規模で自然環境、生態系に影響を与え、人間だけでなく様々な「いのち」を脅かす可能性は否めません。

日本は原子爆弾による世界で唯一の被爆国であります。多くの人々の「いのち」が奪われ、また、一命をとりとめられた人々は現在もなお放射線による被曝で苦しんでいます。同じ過ちを人類が再び繰り返さないために、私たち日本人はその悲惨さ、苦しみをとおして「いのち」の尊さを世界の人々に伝え続けています。

全日本仏教会は仏教精神にもとづき、一人ひとりの「いのち」が尊重される社会を築くため、世界平和の実現に取り組んでまいりました。その一方で私たちは、もっと快適に、もっと便利にと欲望を拡大してきました。その利便性の追求の陰には、原子力発電所立地の人々が事故による「いのち」の不安に脅かされながら 日々生活を送り、さらには負の遺産となる処理不可能な放射性廃棄物を生み出し、未来に問題を残しているという現実があります。だからこそ、私たちはこのよ うな原発事故による「いのち」と平和な生活が脅かされるような事態をまねいたことを深く反省しなければなりません。

私たち全日本仏教会は「いのち」を脅かす原子力発電への依存を減らし、原子力発電に依らない持続可能なエネルギーによる社会の実現を目指します。誰かの犠牲の上に成り立つ豊かさを願うのではなく、個人の幸福が人類の福祉と調和する道を選ばなければなりません。
そして、私たちはこの問題に一人ひとりが自分の問題として向き合い、自身の生活のあり方を見直す中で、過剰な物質的欲望から脱し、足ることを知り、自然の前で謙虚である生活の実現にむけて最善を尽くし、一人ひとりの「いのち」が守られる社会を築くことを宣言いたします。

   2011(平成23)年12月1日

財団法人 全日本仏教会

全日仏会長 声明文

http://youtu.be/-ru88zFFWK8




法人税減税、残業代ゼロ
大企業栄え民滅ぶ
同志社大学教授 浜矩子さん
しんぶん赤旗日曜版2014年7月6日付

安倍政権の一連の政策について、浜矩子同志社大学教授に聞きました。

大企業栄え民滅ぶ

強兵のための「富国」

 今回の「骨太の方針」と新成長戦略は、「強兵のための富国」という意味での「富国強兵」路線に貫かれています。それに役立たない弱者は切り捨てようという発想です。

集団的自衛権はごまかしばかり

 「強兵」を目指す新保守主義と、「富国」をめざす新自由主義が一体になっているのが安倍政権の政策です。
 集団的自衛権は、平和憲法に立脚するという戦後日本の目指してきた方向と相いれません。
 歴代政府は、集団的自衛権は国際的に認められている権利だけれども、日本は行使しないと言い続けてきました。だからこそ、日本は、言葉の真の意味で「ユニークな国」だったわけです。
 それを変えなければならない理由は、全然示されていません。4類型とか15事例とかわけの分からない話でごまかしながら、なし崩し的に「戦争をできる国」に日本を変えていこうとしています。
 ″日本が再び戦争をする国になることはあり得ない″″むしろ抑止力によって戦争を回避できる″と首相は言いますが、腕力は腕力を呼び、闘争心は闘争心を呼んできたのが歴史の教訓です。
 結局、″戦争を回避できる”というのは言葉だけで、狙いは、日本を「強い国=いつでも戦争できる国」にしたいということです。強さは腕力だという考えです。
 このように、言っていることとやっていることが違うのが安倍政権の特徴です。経済政策でもそれは同じです。どういう下心があるかを見抜かなければなりません

 富める人の間で 富がめぐるだけ

 なにがなんでも法人税減税をやるのも、彼らの「富国」が、国民が豊かになることではなく、大企業がもうかることだからです。そうでなければ、法人税減税に固執する理由は「株価対策」くらいしか思いつきません。
 大企業がもうかれば国民も豊かになるという「トリクルダウン(したたり落ちる)」理論は誤りです。増えた利益は株主への配当や役員報酬に回ります。いまトリクルはダウン(落下)ではなく、ラウンド(回転)しているのです。富は富める人から富める人へぐるぐる回るメリーゴーラウンドです。そこから排除されている人々には回ってきません。
 法人税減税の財源にするため、外形標準課税を中小企業に拡大して、赤字の中小企業からも税金を取ろうというのは本末転倒です。なりふり構わぬご都合主義だと思います。
 法人税減税よりも、たまりにたまっている大企業の内部留保を吐き出させ、貧困を改善するための政策に回す手だてを考えるべきです。
 「残業代ゼロ」制度も、人間を働く機械としか見ていないものです。「時間ではなく成果で評価される制度への改革」と言いますが、使用者側か「成果」とみなす結果をあげなければ、どんなに働いても報酬は払わないという、驚くべき発想です。
 「経済学の父」といわれるアダム・スミスからマルクスにいたる「労働価値説」(注)とは、根本的に違う発想ですよね。
 「柔軟で多様な働き方」とか、「自由な雇用形態」というのは言葉だけで、本当の狙いは、余計な金を払わないで成果をあげたいというだけです
 高額所得者に限定するといっても、「蟻(あり)の一穴」といわれるように、次第に対象者が広がっていくことは十分ありえます。
 「女性の活躍推進」とか「少子化対策」というのも、「富国強兵」の一環です。女性をもっと労働力として使いながら、「産めよ殖やせよ」という発想だと思います。女性の人権や、仕事と家庭を両立しながら自己実現したいという当然の要求に、政府としてどう応えていくかという発想はありません。
 安倍政権の「富国強兵」路線に対しては、怒りと粘りが大切だと思います。原発再稼働に反対して、官邸前行動が続いているのは心強いし、もっとマスコミが報道すべきだと思います。こうした行動を持続していくために必要なのが怒りと粘りです。怒りの火をあかあかと燃やし続ければ元気が出るし、知的めざめも高まります。

(注)商品の価値の源泉は労働であり、その大きさは労働時間で測られるという学説。



伸びない社員給与
トップと年収格差44倍
(東京新聞)2014年7月24日付

 国内企業で二〇一四年三月期の個別の役員報酬が高かった上位百社を調べた本紙の調査で、役員と一般社員の平均年収の格差が平均四十四倍に達したことが分かった。年収格差が百倍を超えた企業は九社あることも判明。一億円以上の役員報酬の個別開示が義務付けられた四年前より格差は広がり、経営者に比ベー般社員の給与が増えにくい実態が鮮明になった。
 (桐山純平)

伸びない社員給与

4年前より拡大

 国内企業が提出した一四年三月期の決算資料から集計した。個別役員に高額報酬を出した上位百社を抽出。金額が最も多かった役員の報酬を従業員が年間で受け取る平均給与で割った。
 その結果、役員報酬の個別開示が始まった一〇年三月期に三十五倍たった年収格差は一四年三月期は四十四倍に広がった。百倍以上の格差がある企業数も三社から増加。日産自動車、力シオ計算機、武田薬品工業、日本調剤などが名を連ねた。
 カルロスーゴーン氏がトップを務める日産は毎年のように収入格差が百倍を超え、ライバルのトヨタ自動車(二十九倍)と比べても格差の大きさは突出している。日産の広報担当者は「国際的な経営者トップの報酬と比較し役員報酬を決めている。従業員との比較についてはコメントできない」と話している。
 中には経営トップでなくても創業者らが退職慰労金を支給され、格差が広がったケースもあった。東証二部上場で電子回路基板の製造を手掛けるキョウデン(長野県箕輪町)は創業者の橋本浩元会長の役員報酬が十二億九千二百万円に上り、格差が上場企業で最大の二百六十六倍に広がった。キョウデンの担当者は「従業員の給与は同業者などと比べても遜色ない。今は(役員の)退職慰労金を廃止し格差は是正されつつある」と説明している。
 サラリーマン世帯の給与をめぐっては厚生労働省の毎月勤労統計調査で、物価上昇分を差し引いた五月の実質賃金指数が前年同月比3・8%の下落となり十一ヵ月連続のマイナスになった。消費税増税分や物価の上昇率に比べ伸びない賃金が、消費を冷え込ませる懸念材料になるとの指摘もある。



太る企業 内部留保304兆円 人への投資、給与増は低調
(東京新聞【こちら特報部】)2014年7月29日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2014072902000173.html
 三百四兆円-。金融機関を除いた日本企業の内部留保の総額だ。リーマン・ショック、東日本大震災でいったんは減ったが、過去最高に達している。一方で、従業員の給与はなかなか増えない。政府は法人税の実効税率引き下げなどで、賃上げを促そうとするが、内部留保がさらに増えるだけの可能性もある。
(榊原崇仁、上田千秋)

太る企業 内部留保304兆円 人への

大会社の積み増し顕著

 「リーマンーショツクと東日本大震災を経験し、企業は将来への不安を強めた。慎重になり、銀行から融資を受けて積極的に投資するより、内部留保をため込んで経営の安定性を確保する風潮が広まった」
 大和総研の太田珠美研究員は最近の経済界の傾向をそう分析した。
 財務省の法人企業統計調査によると、二〇一三年度末、資本金一千万円以上の企業の内部留保総額は約三百四兆円。会計規模の大きい金融・保険業は除いている。リーマンーショツク前の○七年度末の約二百七十二兆円と比べ、約三十二兆円の増加だ。
 資本金一億円以上の大企業が、内部留保を二割も積み増している。一三年度末で、総額約二百七兆円で、○七年度末よりも約三十六兆円増えた。
 太田氏によると、大企業は内部にためた資金を、海外における企業買収に活用しているケースが目立つという。「富裕層の増加を見込む東南アジアがターゲットになっている」と指摘する。
 一方で、資本金一千万~一億円未満の中小企業は、○七年度から一三年度で、内部留保を四兆円減らしている。景気が上向いても、効果が出るのが大企業より遅いことが理由として挙げられるという。
 また、生産設備や土地なども含めて内部留保を活用している大企業とは異なり、中小企業の内部留保は現金や預金の割合が多く、一三年度では全体の約18%だった。
 「中小企業は一般的に取引先が少なく、取引先が倒産すれば資金繰りがショートしかねない。自己防衛のために、使い勝手の良い現金や預金でためたい意識が働く」(太田氏)。つまり、不景気の際の出費に備えているわけで、リーマンーショツクや震災では、内部留保を取り崩して運転資金に回すなどした中小企業が多かった。また、景気後退で、倒産した企業が増えたことも、内部留保が減った原因の一つだ。
 内部留保を重視する企業の動きに今後、変化はあるのか。政府は先月、法人税の実効税率を知一%台に引き下げる方針を决めた。企業が減税で得られる資金を、賃上げに充てることをもくろむが、大企業は内部留保を積み増し続け、中小企業は減った内部留保の補てんに充てるかもしれない。
 帝国データバンクが十四日に発表した全国の企業一万社の意識調査によると。「減税分の使途で最も可能性が高いもの」という質問で、内部留保の回答が最多だった。全体の20%を占め、給与やボーナスなどによる社員還元の17%を上回った。
 業種別でみると、農林水産業で、内部留保は36%、社員還元が8%だった。環太平洋連携協定(TPP)、農協改革などの問題もあり、帝国データバンク産業調査部の窪田剛士氏は「今の段階で、社員への還元には慎重になっている」と語る。
 製造業は内部留保の回答が16%で、全業種の平均よりは下回った。ただし、社員還元も平均以下の14%。窪田氏は「震災復興や五輪の特需で人手の奪い合いになっている中、製造現場の機械化を進め、人手不足を乗り切ろうとしている」と説明している。

太る企業 内部留保304兆円 富偏在 社会の責任

経営安定優先・資金は海外M&Aに

 ちなみに、内部留保は企業会計上の用語ではない。企業の資産や負債の状況を表す貸借対照表では、純資産のうちの「利益剰余金」として計上される。
 大まかに説明すると、企業が得た利益から株主への配当、法人税などを引いた後に残った資金のことだ。預貯金や現金のようなイメージがあるが、企業が必ずしも「キャッシュ」の形で保有しているとは限らない。土地や建物、機械などの「資産」になっていたり、設備投資に回したりしている方が割合としては多い。
 トヨタを例に挙げると、今年三月期の連結決算では、利益剰余金は約十四兆一千億円だったが、「現金及び現金同等物」は約二兆円。
 つまり、「内部留保を取り崩して賃上げに回せ」という意見もよく聞かれるが、まず資産を売却しなければならない。そのためには、株主総会での承認も必要で、一度、内部留保に回ったものを給与に回すことは事実上、不可能だ
 企業の内部留保をめぐる議論は、以前から繰り返し行われてきた。民主党の鳩山由紀夫首相(当時)は二〇一〇年二月、共産党の志位和夫委員長との党首会談で、「内部留保に適正な課税を行うことを検討したい」との考えを表明した。だが、経済界から「国際競争力が落ちる」などと反発が相次ぎ、立ち消えになった。
 菅直人首相時代の同年十二月にも、法人税率の5%引き下げ決定を受けて、政府税制調査会が内部留保への課税の可否を検討した。ただ、経済界の反対に加えて、法人税を支払った後に税を課す「二重課税になる」との否定的な意見もあり、手付かずのままだ。
 そもそも利益剰余金が増える際、ボーナスは別にして、給与に充てられたことは過去あまりないとみられる。経営サイドからすれば、いったん給与を上げると、業績悪化の際に下げにくい。
 とはいえ、政府は来年には消費税率を10%に上げようとしている。給与が増えないと、家計の厳しさは増すばかりだ。何か方法はないのか。

富偏在社会の責任 再分配の仕組みを

 駒沢大の小栗崇資教授(財務会計論)は「内部留保の資金を設備投資に回すことで国内生産が活性化され、雇用も生まれて内需を豊かにするのが本来のあり方だ。今は金融投資に回ったり、海外でのM&Aに使われたりすることが多く、国内に適切な形で資金が回っていない」と解説する。
 さらに、「内部留保がここまで拡大した理由は、企業が非正規雇用を増やすなどして人件費を削ったから」と批判し、「大企業に富が偏在する現状を、社会全体の問題としてとらえる必要がある」と訴える。
 決算前なら、利益を賃上げの資金に回すことは可能だが、東京大の醍醐聡名誉教授(会計学)は「それをできるのは業績の良い一部の企業だけだ」と否定的だ。それよりも、「企業に任せていては状況は変わらない。税金として一度吸い上げて、再分配を考えるべきだろう」と提言する。
 台湾のように、前年よりも増えた内部留保の金額に対して課税している例を挙げ、醍醐氏は「家計に比べて企業を優遇する政策が続いてきた。過去のゆがみを是正すると考えれば、内部留保への課税も二重課税に当たらない。家計が潤わない今の政府の施策では、景気の上昇にはつながらないだろう」と話した。

太る企業 内部留保304兆円 デスクメモ



批判高まり 赤字転落しても
懲りないワタミ
しんぶん赤旗日曜版2014年7月13日付

 上場以来、初の赤字決算となった「ワタミ」グループ。背景には、ブラック企業批判があります。日本共産党議員の国会質問や「赤旗」日曜版での連続追及のなか、ワタミもついに改善策を示さざるを得なくなりました。それでもなお「ブラックの縮図」と指摘されているのが「ワタミの宅食」。その実態は-。  取材班

懲りないワタミ

究極の脱法的手口

 6月末、都内で開かれたワタミの株主総会。桑原豊社長は「大変厳しい決算になった」と陳謝しました。ワタミは2014年3月期決算で約49億円もの赤字。総会で株主から、同社の「理念集」
にある「365日24時間死ぬまで働け」という言葉はいまでも残っているのかとただされ、経営陣は「批判を受け改訂した」と釈明しました。総会後の講演で創業者の渡辺美樹・自民党参院議員は「ブラック企業との風評が広まり…」と弁明しました。そんななかで-。
 国内外食事業や介護事業が減収減益したものの弁当宅配の「ワタミの宅食」は増収増益。市場売り上げシェアー位を維持しました。

1年で辞めた

 「もうかるのは当たり前だ」。こう吐き捨てるのは60代男性のAさん。3月までの1年間、都内でワタミの宅食の宅配員をしました。
 「1日3~4時間で月20日働いて、手元に残るのは1万4000円弱。日給に換算すると1日700円未満。東京の時給の最低賃金が869円ですから、日給が時給の最賃以下ですよ
 ワタミの宅配員は全国で約9千人。複数の元宅配員も「手元に残るのは月2万円程度」と証言。Aさんは「周りの人もこれではとても食えないといっている。昨年当選の参院議員の資産公開で、渡辺氏は17億円でトップだつた。ばかばかしくて、宅配員を辞めた」

 契約に仕掛け

 北九州市に住む70代の女性Bさんは昨年9月末、ワタミの宅配員の車にはねられました。くも膜下出血や頭蓋骨骨折、肺挫傷などで3ヵ月入院の重大人身事故でした。
 謝りにきたのは事故を起こした宅配員だけ。会社からは連絡すらありません。宅配員は「会社に一切責任はない。私か加入している自動車保険で対応する」といいます。娘のCさんは怒ります。
 「配達中の事故なのに会社は知らん顔。こんなことが許されますか
 宅配員を事実上、最賃以下で働かせながら、事故がおきたら”自己責任”。なぜこんなことが可能なのか-。実は、宅配員はワタミに雇用された労働者ではなく、「個人事業主」として「ワタミの宅食」と請負契約を結んでいます。究極の脱法的手口とは-。

懲りないワタミ_2

”請負”契約で経費削減
労働時間も賃金も解雇も規制外


 1面で紹介した元宅配員Aさんの2013年の収支を見てみると、別表のように1年間の会社からの報酬額は46万6023円。他方、自己負担となる諸経費の合計は30万3381円で、手元には16万2642円しか残りません。配達に使う車の維持費から配達中の駐車違反の反則金まですべて自腹なのです。
 Aさんは怒ります。
 「ワタミの求人広告では、1日30軒配って月の標準報酬が8万7800円(当時)となっていた。私の周りの人もみな、″だまされた″と怒っている」
 ワタミと同じような弁当宅配会社で働く宅食大手の管理職はあきれます。
 「うちでは配達員は社員やパートだ。配達は専用の社用車で、当然だがガソリン代などの諸経費は会社が負担する」
 なぜ、「ワタミの宅食」は社員やパートとして雇用契約するのではなく、個人事業主として請負契約をするのか-。
 個人事業主は、経営者からみると究極の低コストで働かせられるからです。個人事業主は労働者でないとされ、労働時間や解雇の規制、最低賃金などの対象外となります。

 「偽装」の可能性

 ブラック企業問題に詳しい笹山尚人弁護士は指摘します。
 「個人事業主という請負契約でも、会社側からあれこれ業務命令が出ていたり、営業の仕事をさせられたりしているならば労働者として契約すべきだ。本来会社が負担すべき費用を浮かすために請負契約にしている手法は偽装請負の可能性があり、脱法的と言わざるを得ない
 実際、Aさんなどによると、会社から
①非番の日の電話対応
②警察から要請されたチラシの配布
③配達エリアの変更-などを指示された、
と証言します。
 ワタミと請負契約を結ぶ配達員は約9000人。他方、正社員やパート従業員は1075人(3月末現在)にすぎません。
 請負にすればワタミが独自に営業車を用意するなどの経費を″節約″できます。

 消費税も″減税″

 さらに正社員の給料と違い、「請負」で外注する形にすれば、仕入れ控除の対象になり、納める消費税を少なくできます。まさに究極のコスト削減策です。
 1面で紹介した宅配員による交通事故についても笹山弁護士は脱法性を指摘します。
 「ワタミは知らぬ存ぜぬだが、ワタミを名乗って弁当を配っている以上、ワタミと加害者の配達員の間には使用関係があると考えるというのが解釈上確立している。民法第715条の使用者責任が問える事例だと思う」
 笹山弁護士は「ワタミの宅食」の実態について「ブラックの縮図だ。働く人がきちんと守られる仕組みにすべきだ」と指摘します。
 編集部の取材にワタミの広報は、「宅配員は個人事業主なので、手元に残る金額については意見をのべる立場にない。個人事業主が起こした交通事故は、個人事業主の責任で対応すべきだ」と回答しています。


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