モンゴル・核廃棄物最終処分場問題に迫る(ラジオフォーラム#53)
http://youtu.be/bQ4ga6TPHfU
14分30秒~ 小出裕章ジャーナル/インドのウラン鉱山汚染の実態について
西谷:
今日はですね、モンゴルの核廃棄物最終処分場問題ということでゲストに大阪大学の今岡良子さんに来ていただいています。
小出さん:
今岡さんご活躍いつもありがたく思っています。
今岡さん:
いいえ、こちらこそ、いつもお世話になっています。
西谷:
小出先生、私たち2人とも時期は違うんですが、モンゴルのウラン鉱山を取材した経験があるんですが、小出さんもインドに行かれたということですが、それはどうして行かれましたか?
小出さん:
2000年に世界環境映画祭といったでしょうか、日本で開かれまして、それで大賞を受賞したのが「ブッタの嘆き」という映画でした。で、それを作った映画監督のスリプラカッシュという人が私の原子炉実験所まで訪ねてきまして、その「ブッダの嘆き」で取り上げたウラン鉱山の調査に来てくれ、という要請を受けました。
私はそれまで日本では人形峠のウラン鉱山の調査をしていたのですけれども、それならば喜んでインドに行きますと言ってお受けして、インドの唯一のウラン鉱山のジャドゥゴダというところに行きました。
タタナガルへ向かう途中パコリを食べる。右:小出裕章先生
西谷:
ジャドゥゴダ鉱山というんですね。これはインドのどのあたりにあるんでしょうか?
小出さん:
インドの西部の方でして、むしろカルカッタに近いところですけれども、インドのジャールカンダ州というところにあります。
大きな地図で見る
で、皆さん、インドのことをどこまでご承知かよく分かりませんが、いわゆる、インドのカースト制度で身分が決まってくるわけですけれども、そのカースト制度にも入れない人というのがいるのですね。
西谷:
カースト制度にさえ入れない。
小出さん:
いわゆるアンタッチャブル。不可触賤民と呼ばれる人ですけれども、実は不可触賤民にもなれない人たちというのがいまして、いわゆるインドの先住民族の人たちです。
Chatikocha村にて
ジャールカンダ州というのはその先住民族の方々がたくさんいらっしゃるところでして、そこでウランがあったということで、先住民族の方々が住んでいる、んー、なんと表現していいんでしょう、本当に貧しい土地、でも自然が豊かな土地というところでインド唯一のウラン鉱山が掘られてしまうことになりました。
西谷:
そのウランを掘り出していくわけですが、地域汚染されますよね。
小出さん:
そうです。もう、ウラン鉱山を掘るところはどこでもですけれど、米国でもオーストラリアでも、カナダでももちろんインドでも日本の人形峠でも猛烈な汚染が周辺で起きてしまいます。
西谷:
だいたい、私たち福島第一事故で数字が慣れてきたのですが、どのくらいのマイクロシーベルトみたいなのが出たのでしょうか?
小出さん:
それは場所によって違うのですが、集落の中でも0.6ミリシーベルトパーアワ―というのがいわゆる管理区域にしなければいけない基準なのですけれども…
ジャドゥゴダ周辺の集落地図
西谷:
マイクロじゃなくて…
小出さん:
ごめんなさい。0.6マイクロシーベルトを超えている集落もありましたし、えー、そこまでも達しないけど、汚染を受けている集落もありましたし、ウラン鉱山で掘り出された、いわゆるウラン混じりのウラン残土と呼んでいたり、鉱滓と呼んでいるものが投棄されている池があるのですけれども、その池の周辺では1マイクロシーベルトを遥かに超えているというところもありました。
西谷:
危険なことになっていたということでしょうね。
小出さん:
はい。
西谷:
今岡さん、今の話をお聞きして何か聞きたいことありますか?
今岡さん:
あのー、ウラン鉱山では、福島ではセシウムとかよく聞きますけれども、どのような放射線物質が出てくるんでしょうか?
小出さん:
はい。ウラン鉱山というのはウランを掘る場所なわけですけれども、ウランそのものが放射性物質でして、そのウランを掘ってしまいますと、ウランの「娘核種」と私たちが呼ぶ放射性物質が付随して出てきてしまうのですけれども、ラドンという名前のものであったり、ビスマスというものであったり、鉛というものであったり、まだまだ放射性物質が掘り出されてしまって、それが環境物質が汚染されてしまいます。
ウランの崩壊系列図
西谷:
娘核種というんですか。今日初めて…
小出さん:
はい。
西谷:
あー、いわゆる、分裂して子どもみたいに…
小出さん:
ウランがある限りは次々とその放射性物質が生み出されてしまうという物理学的な法則がありまして、ウランだけではなくて、様々な汚染物質が環境を汚染してしまっています。
西谷:
そのラドンとかビスマスとかも危険なのですよね?
小出さん:
ラドンというのはですね、西谷さんもたぶんご存じだと思うけれども、いわゆるゴジラという映画があった時に…
西谷:
ありましたね。
小出さん:
あのラドンというのがあったんですね。あれは空飛ぶ怪獣だったのですけれども、放射性物質のラドンというのは完全な気体でして、えー、空を飛んでしまうというか、えー、空気中にどんどん拡散して、そこら中に汚染してしまうというそういう放射性物質です。
今岡さん:
吸い込むということですかね?
小出さん:
そうです。それを呼吸で人間が吸いこんでしまうという特殊な放射性物質でして、いわゆるウランというのは天然の放射性物質なんですけれども、天然の被ばくという意味では、ラドンが一番寄与が大きいと昔からいわれている放射性物質です。
西谷:
なんかラドン温泉とか体にいいような気がして。そうではないということですね?
小出さん:
そうです。ラドン温泉を喜ぶようなことは全くの無知のなせる技でして、えー、放射性物質がある限りでは必ず危険なものです。
西谷:
そうでしたか。あのー、ちょっと話は変わりますが、人形峠に行かれたということですが、やはり、人形峠も今は危険なんでしょ?
小出さん:
もちろんです。はい。人形峠というところは、1954年に日本の原子力開発が始まったのですが、1955年の暮れに何かウランが出るということが発見されまして、一躍宝の山のように報道されたのです。
『岡山県ニュース』ウランの宝庫 人形峠
http://youtu.be/9zJcPl6ZAeo
それからほぼ10年かけて試掘が繰り返されたのですけれども、結局、たいしたウランは取れませんでした。掘り出されたウランの総量は85トンしかなくて、それでたとえば100万キロワットという標準的な発電所の燃料を供給しようと思うと、半年分にも満たないというほどの本当にわずかなものしか取れなかったのですけれども、人形峠周辺には45万立方メートルものウランを含んだ残土というものが野ざらしで捨てられて…
※人形峠ウラン鉱山などの汚染と課題
京都大学 原子炉実験所 小出 裕
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No79/kid000927.PDF
西谷:
野ざらしで…
小出さん:
捨てられてしまっていました。それが分かったのが1988年なのですけれどもそれ以降、なんとか住民たちが被ばくをしないようにしてくれといって要求をしたのですけれども、国の方はもうどうにもできないと、諦めなさいということで何の手だてもしてくれませんでした。
もう、住民は裁判に訴えることになりまして、結局最高裁まで争ったのですけれども、えー、国が悪いと、はい、裁判では確定しました。住民の土地に放射能を含んだごみを野ざらしにするのは国が悪いのであって、撤去しなさいという判決が出ました。
そして、どうしたかというと日本の政府は日本の国内では撤去する場所がないということでアメリカ先住民の土地までそれを運んで捨ててきました。
※人形峠ウラン鉱害裁判 土井淑平・小出裕章著 批評社
http://www.hihyosya.co.jp/ISBN978-4-8265-0321-1.html
西谷:
酷いことをして…そうですか。先生、時間がやってきました。あの、2月2日にですね、「戦争と原発はつながっている」ということでイベントをさせていただきます。本当に普段は短い時間でしゃべっていただいているのですが、たっぷりと戦争と原発のつながりについて講演していただきたいと思います。
小出さん:
お世話になります。よろしくお願いします。
インド、ジャドゥゴダ・ウラン鉱山の 放射能汚染と課題
京都大学 原子炉実験所 小出 裕章
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/genpatu/india/CNIC0311.pdf
ウランを利用することで生じる被曝
インド・ジャドゥゴダウラン鉱山の汚染を中心にして
京都大学原子炉実験所 小出 裕章
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No94/koide030826.pdf
小出裕章さんにお話をきく。-6「人形峠のウラン鉱害問題について。」
http://youtu.be/eqyy3ByEslw
ウラン残土レンガ販売! 放射能物質
http://youtu.be/B2kkA8i94Rs
土井淑平・小出裕章講演in米子(日教組中国地区協議会青年部主催)
http://youtu.be/RwJgqJSkMyg
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放射性物質がある限りでは必ず危険なもの 小出裕章先生
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