医師不足、医療費不足…”ナイナイ”だらけの医療現場で、誰もが求める”理想の人生の終(しま)い方”を叶えてくれる「奇跡の病院」があった
最期の最期まで…
「笑顔のあなた」で送りたい
(女性セブン)2016年2月18日付
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年をとるごとに考えること。「自分はどんなふうに死んでいくのだろうか」――苦しまずに、迷惑かけずに、できることなら心残りなく最期を迎えたいと思うのは自然なことだ。しかし、高齢化社会の日本は今、医師不足、報酬減、病院不足と”医療崩壊”まっしぐら。そんななかで、希望の光ともいえる病院はまだある。そこから学ぶべきことは――
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石川県金沢市、金沢駅から歩いて15分ほどのところに、その病院はある。市内を流れる浅野川を渡り、幹線道路から入ったところに建つ、築46年の病院の外観は老朽化も目立ち、中に入ると雨漏りの跡も見受けられる。ベッドは314床、きれいで近代的、最先端というようなイメージでは決してない。しかし、地域の信頼は絶大だ。
「公益社団法人石川勤労者医療協会金沢城北病院」が正式名称だが、人はこの病院をこう呼ぶ。
「笑って死ねる病院」だと。
*
高齢化社会において、下流老人や独居老人の問題、あるいは老人ホームでの虐待など、高齢者を取祉巻く環境は、つらく残酷だ。老いていくなかで、″私は、夫はどうやって死んでいくのだろう々と考えることは少なくないだろう。
自分自身の最期をどうするかは、残り少ない人生に残された大きく重要な課題だ。でも、この病院で最期を迎えた患者とその家族は、「もうやり残したことはない。幸せな最期だった」と囗を揃える。
それは、この病院のある取り組みに秘密があった。
「買い物に行きたい」「墓参りに行きたい」「パチンコがしたい」「大好きなあの店のうどんが食べたい」「家に帰りたい」--病状を考えれば困難な願いを、病院が一丸となって。叶えてくれるやのだ。
病院長の大野健次さんが言う。
「みなさんの願いを叶えるのは特別なことではありません。この病院が開院したのは、49年。私か入職したのは85年で、当時すでにそういった取り組みは確立していました。近所にお散歩に行くといった”小さなお出かけから”大きなことまで、数え切れないくらいの件数です。昨年は、。北陸新幹線に乗りたいという患者さんがいて、お手伝いさせていただきました」
自営業を営む70代半ばの男性、板谷進さん(仮名)は、北陸新幹線の開通を心待ちにし、わざわざ駅前に店を構え、工事の様子を見に行くなど、開通まで金沢駅を見守ってきた。だが、昨年3月14日の開業のときには板谷さんは城北病院に入院していて、余命はもうわずかだとみられていた。
「新幹線に乗りたい」
当初はホームに見に行くだけでいいと言っていたが、見れば乗りたくなるものだ。看護部長の野村鈴恵さんが当時を振り返る。
「そのときにはもう随分血圧が下かつていて、もしかしてこのまま亡くなってしまうかもしれない状態でした。それでも、”最後だからこそ”という強いご希望を持っていたんです」
医師や看護師が付き添い、板谷さんは金沢~富山間の往復約1時間、楽しみに楽しみに待っていた新幹線に乗ることができた。
乗っている最中も血圧は低下し。意識が遠のいている瞬間もあったようだ。それでも板谷さんは車窓に映る景色を見て満足そうな表情を浮かべていたという。
「富山で『ますのすし』を買うんだっておっしやっていて、抱えきれないほど買って。私たちに”食べてよ”とくださった。言葉もうまく出ない状態でしたが、ご本人もご家族も。死んでも構わない。お父さんの希望を叶えられるんだったら、それでもいい々と話され、板谷さんは新幹線の旅を楽しんで金沢駅に帰ってきたんです」(野村さん)
次は東京まで行きたいと言っていた板谷さんは、それから1週間後、家族に看取られて息を引き取った。
「あー、あー」とカラスが鳴くような声しか出せなかった夫の表情が・・・・
同院では、週に1度の症例検討会や必要に応じて開かれる倫理委員会などがあり、その場で看護師や医師、リハビリスタッフなどが、担当する患者の病状や様子について報告し合う。そこかそのまま、”情報交換々の場となり””可能な限り、本人のやりたいことをやらせてあげた”という動きにつながっている。
金沢市に住む主婦、仲谷外志子さん(78才)は、3年前に慢性腎不全で夫(享年88)を亡くした。08年11月に入院してから、亡くなるまでの間に、3度自宅に帰っている。
最期の時が近づいてきたとき、3度目にして最後の願いを伝えたのは、夫ではなく仲谷さんだった。
「亡くなる直前の秋ですね。夫は5人きょうだいで、当時は姉と妹が2人生きていたんです。でも、姉と下の妹は入院していて、お互い病院を出られないから会えなかった。だから、先生たちにお願いして、それぞれの病院をお見舞いさせてもらったんです。
病院に行ったら、妹は『あんちゃん。あんちゃん』つて言って、涙を流しながら夫の頭を撫でててね、いつもは『あー、あー』とカラスの鳴き声のような声しか出せなかった夫も、その声に反応して表情がガラツと変わってね、あぁ、本当に会わせてあげられてよかったなあと思ったんです」
(仲谷さん)
仲谷さんの夫が入院してきたとき、同室にいたのが、岡崎一子さん(71才)の夫だ。岡崎さんの夫は、’00年に59才で倒れた。当初は自宅で介護していたが、07年から亡くなる最後の5年間、城北病院に入院を決めた。糖尿病、脳梗塞、脳出血とつぎつぎに大病が襲い、体重が120㎏あった大柄な夫は入院中に60㎏にまで小さくなってしまったという。家に帰ることができたのは、亡くなる年の7月だった。
酸素吸入器を外すことができない夫のために岡崎さんは吸入器の扱い方を練習し、薬ののませ方、順番を覚えた。透析も、出発日の朝イチで受けて、帰つてきたらすぐに受けられるようスケジュールを調整。同室でその準備の様子を見ていた仲谷さんは、あまりの入念さに驚いたという。
「看護師さんたちが細かく計画表を作って、それをもとに準備をしていました。本当に細かくて、1つ1つチェックして、綿棒の数、1本まで確認してましたよ。岡崎さんも、いろんな機械の使い方をマスターしてて、すごいなあと見てました」(仲谷さん)
岡崎さんの住まいは、病院から車で1時間ほどの石川県羽咋市。ストレッチャーに乗って運ばれる夫のために、こんな周到な準備もされていた。
「有料でお願いしている救急車の運転手さんがおるんです。その彼にね、このような重症のかたが行きますと伝えたら、事前にご自宅まで行くにはどの道がいちばん近くて、どの道が安全で、車の量が少なくて楽か、など実際に一度走って時間も確認してくれていました。ガタンと振動がおきないように、マンホールを踏まないように運転までしてくれている。
運転手さんもそこまで気を使ってくれて協力してくれていることに、私も感動しました」(看護師長の青木静子さん)
その数か月後、見舞いの病院から自宅に帰る車中で岡崎さんは1本の電話を受け取った。慌てて戻ると夫は透析室にいた。
「あぁ、もうダメなんかなって。そのときにね、看護師さんが、”ご主人の好きなものなんですか”って言うの。それで、息子がこっそり買ってきたお酒を出したのね。そしたら、”飲ませてあげていいですよ”って。小瓶の冷酒を少しずつ口に含ませて、病気以来12年間一度も口にしなかった冷酒1本をすべて飲みました。そして次の日の明け方、息を引き取りました」(岡崎さん)
医師不足、資金不足、経営難。
日本の「医療崩壊」の犠牲者は誰か
城北病院の理念は、「無差別平等」。お金で患者を差別してはいけないという考えが根底にあるため、個室に入院しても差額ベッド代は取らない、他院で入院を断られた末期状態の患者を受け入れる。
「すべての患者さんに差別なしに適切な医療を受ける権利があります。地域の核となる病院は。いろいろな病気に対処して地域の医療を守らなければいけないのです」(大野院長)
診療報酬が下がって儲からないからと、他院では入院を断られるような認知症患者を受け入れたり、生活保護受給者には無料で医療を提供するのもそうした考えが根底にあってのこと。そんな”最後の砦”ともいわれる理念は、城北病院が加入している全日本民医連に基づくものだ。民医連に加入している病院は全国に150か所以上あり、いずれの病院でも同様の取り組みを行っている。組織は厚く、城北病院もまた、1万9000人ほどの「金沢北健康友の会」の会員による寄付によって収入は大きく支えられているのだ。
一方、全国にある約8000の病院(ベッド数が20床以上の医療機関)のほとんどは、医師不足や、収入不足、経営難などに悩み、困窮状態にある。
医師で、『本当の医療崩壊はこれからやってくる!』(洋泉社刊)などの著者である本田宏さんが言う。
「欧米では、キリスト教の影響などで病院への寄付は珍しくありません。しかし、日本の病院は、国や県による公立か、地元の名士や資産家などが設立してきた歴史があり、住民か寄付て、貧しい人のために役立てるというボランティア的な発想は育ちにくく、民医連のよケな考え方はなかなか浸透してきませんでした。
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今、医療の現場は、医師不足のうえに、医療費抑制のために診療報酬は切り下げられる一方です。そのため経営難で、特に地方では。病院がなくなってしまうところも珍しくありません。そうしたしわ寄せは確実に患者さんを直撃して、救急患者の受け入れが困難でたらい回しにあつたり、長期入院ができずに病院を転々としなけれぱならないなど、医療難民が出てきます」
本田さんが指摘するように、日本の医師不足は深刻だ。80年代に、医師過剰が問題視され、大学医学部の定員が大幅に削減されて以来、その問題は深刻化。08年にようやく見直されたが、医師の養成には時間がかかるため、いまだ問題は解消されていない。また、診療報酬が下がることで、長期入院患者は点数が低く収人にならないからと、医療現場では倦厭(けんえん)され、結局在宅介護など、各家庭に負担が重くのしかかっている。
「埼玉県の久喜総合病院は、市から36億円近くの補助金を受けて5年前に300床の地域中核病院として設立されました。しかし、医師や看護師不足で、充分に稼働がでくず、今年1月に経営困難を理由に売却が発表されました。
医師不足、診療報酬削減に加えて、消費増税が大きな打撃となったのです。医療機関は薬剤や医療機器などの購入に多額のお金が必要ですが、もちろん消費税がかかります。でも、患者さんからいただく医療費に消費税はかけられません。結果として病院の負担ばかりが大きくなっているのです」(本田さん)
にもかかわらず、そうした状況はあまり国民に実感として伝わっていない。むしろ、新聞などの見出しには、”医療費は過去最高””医師不足解消”などの言葉が躍っている。
「たしかに、医療費は過去最高です。しかし、GDPあたり医療費はようやくOECD(経済協力開発機構)加盟国平均を少し上回つただけ。また、医師不足解消といってますが、それもとんでもない情報操作なのです。
日本では国民1000人あたりの医師数が2・2人ですが、これはOECD加盟国平均の3・3人には遠ぐ及ばず、先進国のなかでは最少。それに、医師数は年々増えているといいますが、日本では100才を超える高齢医師まで含めて水増ししてカウントされています。医療現場で実働している医師数が正確に把握されていないため本当に増加しているのかはなはだ疑問です」(本田さん)
こうして聞くと、日本の医療現場が、いかに深刻な局面にあるかが見えてくる。
医師不足と経営悪化で、医療現場は余裕を失い、結果として引き起こされる医療事故や医療ミス、また、忙殺された医師が発してしまった心ない言葉について、患者が裁判を起こす例も急増し、。モンスターベイシェント(患者)”が登場するなど、悪循環を招いているのだ。
こうした問題が解消されない理由は、国の方針にあるという。
「厚労省は、以前から医療費亡国論を唱えて医療費削減を目標に掲げています。そのため、病院が潰れれば、医療費は削減できて、むしろラッキーくらいにしか思つていない。だから病院側は、国によってどんどん削減される医療費のなかで常に苦闘してきたのです。民医連のような取り組みは理想ですが、一般の病院で導入することは簡単ではありません。
でも、患者さんからすればそんな事情はわからない。病院は儲かっていると思っている。厚労省の政策で疲弊している医療現場の対応について患者さんが、「○○病院でこんなひどい目にあった」と厚労省に相談すると、『それはひどい病院ですね』と自分たちの政策を棚に上げて答えるんです。すると、厚労省の責任はスルーされて、あの病院はひどい、とますます病院が悪者になる。国が医療費抑制策を変えない限り、医療現場は変わりません」(本田さん)
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「娘の花嫁姿が見たいんだ」リハビリ中の
父の言葉を病院中が聞き逃さなかった
困窮する医療現場を考えると、支持者との信頼関係によって支えられる城北病院は、まさに”奇跡の病院”ともいえる。
もちろん、スタッフだって必ずしも一丸となってできるわけではない。『非番の日にお出かけ同行のために出勤、ただでさえ忙しいのに合間の時間にどこかに連れて行く、″とても自分にはそんなことはできません”と思っているスタッフはいないわけではない。
「でもね、みんなでやってる姿を見てると、自然と協力しようかなっていう気持ちになるんですよ。うちの病院はそれが当たり前ですからね。私らも、不思議に思ったことはない」(ベテラン看護師)
できることを最大限やろう――そんな気持ちが集結したのが、一昨年11月3日に行われた、病院内での結婚式だ。
ウェディングドレスに身を包み、その日新婦となったのは、市内に住む水上(旧姓・笹島)裕美さん(32才)。父親の博さんは、その年の春、膵臓に腫瘍が見つかり、体力的に手術はできなかったため、″最期の時”は着実に近づいていた。
「14年の4月に入院し、いったんはリハビリするまでに回復していたのですが、10月21日頃から黄疸が出始めて、主治医の先生から、”1か月持つかわかりません”と告げられたときは本当にショックでした」(裕美さん)
裕美さんは、まず博さんにそのことを告げた。苦しそうに二コツと笑う博さんは、「よくなるように頑張りたい」と言つたという。
博さんの口癖は「娘の花嫁姿が見たい」たった。
担当していた看護師長の重光真弓さんは、博さんを担当するリハビリスタッフから、その言葉を聞いていた。
「『裕美の花嫁姿を見たいから頑張るんだ』『やっとお嫁に行くんだよ』『楽しみだな』と、リハビリしながらいつもいつも嬉しそうに話していたというのです。だから、笹島さんがもう危ないとなったときに、なんとしてでも見せてあげないかんねってことになったんです」
そのとき博さんは、外の会場に出かけられるような状態ではなく、当初は病室で花嫁姿を見せる、という計画だった。ところが、あれよあれよ、という間に計画はどんどん大きくなり、結婚式か行われたのは10年前に新設されたリハビリルーム。バージンロードになる白い布は、透析室のスタッフが貸し出してくれた。
「これができるなら、あれもできるんじやない? ここまでできたんならあれもやろうか、ってみんなでアイディアを出し合ってね。透析室から防水シートが借りられるつて、じゃあこっちもなんかやらんとね、ってそうやってみんなが結束できた。そのうち、他の患者さんがお花を作ってくれたりもしましたね。最初は10人くらいのスタッフでやろうって言つてたのに、いつの間にか40人以上が参加してくれました」(重光さん)
裕美さんは、急遽ドレスをレンタルし、指輪も借りた。知り合いの美容師に化粧と髪の毛のセットを頼むなど、急ピッチで準備を進める。病院も、他の患者さんとの調整、リハビリルームの器具の移動、飾り付け、椅子の準備などに追われた。
「いちばん心配して気をつけたのは、笹島さんの体調。もうジュースを飲めるか飲めないかっていう状態で、当日いかに良い状態で迎えるかにいちばん気を配りました」(重光さん)
博さんの体調は日増しに悪くなり、結婚式の日程は当初の予定を一週間繰り上げて行われた。
結婚式当日、家族や友人、大勢のスタッフが見守る中で裕美さんは、スーツに身を包み車椅子に乗った博さんとバージンロードを歩いた。
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「父は痛くてとても苦しそうでしたが、最後まで笑って二コニコしていました。苦しい時期に比べたら一瞬のことかもしれませんが、結婚式を挙げたことでその前の苦しみが帳消しになったのではないかと思うくらいの笑顔でした。神父は牧師である義父がやってくれて。アットホームだったけど、父とバージンロードを歩きたい、その思いが叶ったことが本当に嬉しかったです」(裕美さん)
博さんは、式の終わりに裕美さんにこう声をかけた。
「いろんな人にお世話になっとんぞ」
父親としての「最後の務め」を果たし終えたその言葉に、裕芙さんは涙が止まらなかったと、涙しながら振り返る。病室で集合写真を嬉しそうに見ていた博さんは、結婚式の8日後、11月11日に亡くなった。
”あんた泣かないんだね”
――心残りがないから笑っていられる
裕美さんはこう話す。
「結婚式ができるなんて思っていなかったんです。だから、花嫁姿の写真を撮って見せてあげるくらいかなあって。そしたら、看護師さんたちが。「病院でやる?」つて言ってくれて。そんなことできるの?って驚きました」
12年間にわたって夫の闘病生活を見舞った岡崎さんも、同じ思いを持つ。
「先生が『岡崎さん、なにかしたいことないですか?』って聞いてくれてね。
もう何も言うことはないねんけど、いっぺんお父ちゃんをうちに連れて帰りたかったなあって。施設に入れていた毋を結局死ぬ前に連れて帰ってあげられなかったのが本当に心残りだったから。お父ちゃんを連れて帰れて、そのことが今もどれだけ心の支えになつてるか」
共通するのは、”最期の願いは患者のほうからお願いするわけではない”ということ。患者の家族関係や生い立ちなど、バックグラウンドを熟知し、病院側から「したいことがあったら、してみませんか」と提案しているのだ。
「特にタイミングが決まっているとか、そういうことはないんです。でも、やはり長期間入院している患者さんには、患者さんやご家族のかたが何を思っているのかを考えます。
ボランティアのように思われているかもしれませんが、反対です。患者さんの願いを実現させることで、私たちが教えてもらっているんです。患者さんのそれまでの暮らしや習慣、性格がよく見えないのに、若い看護師たちは『ああしなさい、こうしなさい』とよく言います。でも、岡崎さんや仲谷さんと接していくことで、どのようにして人が一生を送るのか、何を望まれているのか、それを知ることでグッと立派な看護師に成長させてもらっているんです」(青木さん)
夫の葬儀の時、岡崎さんは参列者から言われた忘れられない言葉がある。
「”あんた泣かなんだね”って言われたんだけど、涙なんか看病中にとっくに枯れ果ててなくなってしまった。
それに、一生懸命看病するとね、心残りがないねん。自分なりに精一杯やったという達成感。
今、私は老春を謳歌しとんの。それもこれも、心残りがないから。本当に病院には足向けて寝られんわ」
*
本田さんが言う。
「モンスターベイシェントが増え、医療訴訟などが増えたのも、その根底には医療スタッフの不足や経営困難で患者さんと向き合えず、信頼関係が生まれにくいことに原因があるのです」
患者を番号で呼ぶ、病状チェックだけで世間話は一切しない、患者の家族と話すのは診察の時のみ、こうした状況は間違いなく医療崩壊の余波だ。ただ、たとえ実現できなくとも医師たちに城北病院のような理念があるならば、少しでも患者の気持ちに寄り添うことができるのではないか。
今の医療現場の現実を知った上で、この病院を改めて見ると、″最期の瞬間に笑って逝きたい””笑って送りたい”という願いを叶えることは、決して絵空事でも夢物語でもなく、もしかしたら人の想い一つなのかもしれないと思えてくる。
取材・文/樋田敦子 取材/岸綾香、戸田梨恵 撮影/大野真人、太田真三(本誌)写真/朝日新聞社
ザ・ノンフィクション・奇跡のバージンロード
~花嫁の父は余命1か月~
https://youtu.be/0or1T64toIY
命が尽きる前の、人生最後の願い…
それを叶えてくれる病院があるという。
石川県金沢市にある城北病院。
地元の人々は、親しみを込めて「笑って死ねる病院」と呼ぶ。
この病院で起こった、ある「奇跡」
末期がんで余命1か月と宣告された父。(笹島博さん75歳)
一人娘の裕美さんは、半年後結婚する予定。
だが、父の命はそれまで持たない。
これまで、医師や看護師が付き添って結婚式に出席させた事例はあったが、式の日取りを繰り上げたとしても、叶わない病状だった。
だが、どうしても娘と一緒にバージンロードを歩きたい!
人生最後の願いに応えたい…
なんと、病院で結婚式を挙げることとなったのである。
医師が、看護婦が、入院している患者たちが準備を手伝う。
父の願いは叶うのか…
最後の最後まで懸命に生き抜き、消え行こうとする命に正面から向き合う人々の姿をカメラは見つめた。
医療費抑制の波紋「病院で死ねない」退院を迫られる高齢者
http://dai.ly/xwxh75
終の住処はどこに 老人漂流社会
http://dai.ly/x17nmmy
『歳をとることは罪なのか――』
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今、高齢者が自らの意志で「死に場所」すら決められない現実が広がっている。
ひとり暮らしで体調を壊し、自宅にいられなくなり、病院や介護施設も満床で入れない・・・「死に場所」なき高齢者は、短期入所できるタイプの一時的に高齢者を預かってくれる施設を数か月おきに漂流し続けなければならない。
「歳をとり、周囲に迷惑をかけるだけの存在になりたくない…」 施設を転々とする高齢者は同じようにつぶやき、そしてじっと耐え続けている。
超高齢社会を迎え、ひとり暮らしの高齢者(単身世帯)は、今年(※2013年)500万人を突破。「住まい」を追われ、“死に場所”を求めて漂流する高齢者があふれ出す異常事態が、すでに起き始めている。
ひとりで暮らせなくなった高齢者が殺到している場所のひとつがNPOが運営する通称「無料低額宿泊所」。かつてホームレスの臨時の保護施設だった無料低額宿泊所に、自治体から相次いで高齢者が斡旋されてくる事態が広がっているのだ。
しかし、こうした民間の施設は「認知症」を患うといられなくなる。多くは、認知症を一時的に受け入れてくれる精神科病院へ移送。
症状が治まれば退院するが、その先も、病院→無届け施設→病院・・・と自らの意志とは無関係に延々と漂流が続いていく。
ささいなきっかけで漂流が始まり、自宅へ帰ることなく施設を転々とし続ける「老人漂流社会」に迫り、誰しもが他人事ではない老後の現実を描き出す。さらに国や自治体で始まった単身高齢者の受け皿作りについて検証する。その上で、高齢者が「尊厳」と「希望」を持って生きられる社会をどう実現できるのか、専門家の提言も交えて考えていく。
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最期の最期まで…「笑顔のあなた」で…( ;∀;)
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