潰れゆく中小企業の悲痛な叫びを聞け
「アベノミクスを恨みます」
週間ポスト2014年11月7日
「アベノミクスの嘘」がついに顕在化してきた。株価の上昇や大手輸出企業の”好業績”の陰で、中小企業が悲鳴をあげている。この国の企業の99%は中小企業であり、雇用の7割を支えている。この問題は単に「弱者を守れ」といった古い図式ではなく、日本経済全体の未来を危険にしている。
24時間稼働でも利益なし
東京・太田区に本社を置き自動車部品などを製造する一英化学。プラスチックを原材料とする100点以上の部品を製造するほか、オリジナルの「すべら膳」という先が滑らない樹脂製の箸は、「太田ブランド」として地元の商工会議所などに認定されている。
埼玉県にある同社の工場ではアームロボットやプレス機械が忙しく稼働していた。だが、西村英雄・社長の表情は暗い。
「従業員14人で24時間体制で工場を稼働させているものの、設備投資を含めたら採算は合わない。午前と午後では違う金型に交換して、1台で2種類の部品を造るなどの工夫は当たり前。金型は重いし、取り外しにも時間がかかる重労働だ。そうまでしても利益は出ず、借金を抱えながらやっている。社員はボーナスなんて諦めている。自分の給料はずっとゼロですよ」
西村社長が案内したに場内には白いカバーで覆われた金型が所狭しと置かれていた。
「金型は発注元のメーカーの所有ですが、生産終了した製品の金型を引き取ってくれないから、仕方なくウチが預かっている。そのための倉庫まで借りなきゃならなくなった。大手は予算や納期だけでなく、こうした負担まで下請けに強いる。こちらは立場上、断われません」
政府は「アペノミクスの成功」のアピールに躍起に
なっているが、その恩恵は中小企業に届いていないどころか、苦しめるばかりだ。
西村社長が吐き捨てるように続けた。
「大手が利益を上げているのは、うちのような中小や零細から吸い上げているだけなんですよ。円高の時は、メーカーから”輸出できないからコストを下げてくれ”という要請がきた。対応しないと仕事がなくなるから3~5%下げた。でも、円安になっても単価を元に戻してくれるわけではない」
電気代の値上がりの影響もある。一英化学の場合、以前は月60万円だった電気代が、今では80万円に跳ね上がっているという。それも納入価格に反映できない。
「来年、創業50周年を迎えるが、いつまで続けられるだろうか……」
西村社長はため息をつく。
中小企業がコスト増の納入価格への転嫁を言い出せないのは、この数年で日本の産業構造が大きく変わったからだ。経済産業省の統計によれば、日本企業の海外子会社の売上高は02~12年の10年間で約3倍に膨らみ、その主たる要因の一つが生産拠点の海外移転だ。安倍首相は「国内回帰が起きる」と力説するが、そんな動きは見られず、下請け企業が少しでも納入価格を上げたいと言い出そうものなら、大手はさらに海外シフトを強め、中小は取引を打ち切られかねない状況なのだ。
経済ジャーナリストの須田慎一郎氏が指摘する。
「起きているのは完全な二極化です。大企業で最高益更新が相次ぐ一方で、中小企業、とくに地方の零細企業は激しく疲弊している。安倍政権の法人税減税にしても、利益が出ていない中小には何の恩恵もない」
最終消費者向けの商品を出荷する中小企業や小売業
も、消費が上向いてこないから値上げに慎重にならざるを得ない。岩手県花巻市にある味噌・醤油の製造元、佐々長醸造も大豆の値上がりを価格転嫁できずにいる。
「大豆の6割が外国産ですから、1年前に比べて20%以上も仕入れ値が上がった。国内産も九州地方の大雨の影響で不作のため、去年に比べて15%ほど高い。でも、醤油や味噌などの生活品は簡単に値上げできないから、差損はうちで吸収するしかないと考えています」(佐々木博・社長)
同じ岩手県内のある酒販店も輸入酒の仕入価格が5%ほど上昇したが、打開策がないと途方に暮れる。
「電気代や配送でかかるガソリンなどの燃料費も高騰している。昨年の秋冬から一部は価格転嫁しているが、すると今度は売り上げがガクンと落ちて商売にならない。一体どうすればいいのか」(店主)
前出・須田氏はいう。
「ある地方の弁当屋では、50円の値上げを納入先の工場に申し入れただけで、あっさり取引を打ち切られた。赤字覚悟で売り上げを維持するのか、値上げを持ち出して取引を切られるか。どちらに転んでも地獄ですよ」
「大手の賃上げはおかしい」
安倍首相は12年の総選挙前から自民党総裁として「円高は大問題だ」と繰り返し、首相の座に就いた後は元財務官の黒田東彦氏を日銀総裁に据え、量的緩和によって円安を後押ししてきた。
それにより12年後半には1ドル=80円台だった円相場は10月1日にはIドル=110円を記録するなど、急速に円安が進んだ。
だが、円安によって輸出を伸ばすというアペノミクスの思惑は完全に外れ、貿易赤字は過去最大の数字を更新し続けている。しかもその円安が中小企業の収支を圧迫する主たる要因となっている。
茨城県日立市でICタグなどの製造販売を行なうスターエンジニアリングの星勝治・会長がいう。
「材料の多くを日本から輸出して海外の関連会社で製造し、製品を輸入する形を取っているから、円安は利益を削っていく。とりわけ為替変動が激しいと、製品を運んでいる途中で支払い額が変わってしまうから計算が立たない。105円くらいで安定してくれればいいけど、110円になれば厳しい」
同社の工場では「電気使用料を監視し、オーバーしたらアラームが鳴るようにしている」(星会長)など、涙ぐましい節約をしている。
安倍政権の経済閣僚は「今が取り立てて円安であるというほどではない」(麻生太郎・財務相、10月1日)、「円安というよりドル高。とくに驚くような事象ではない」(甘利明・経済再生相、9月5日)と呑気な発言を繰り返すが、すでに円安の影響で倒産する中小企業が急増している。
東京商エリサーチによれば、円安が関連するとみられる倒産は14年1~9月で累計214件。前年同期の2・4倍にのぼる。
業種別に見ると、運輸業が81件、製造業44件、卸売業41件と続き、幅広い業種が円安の悪影響を受けていることがわかる。
オリジナルのチーズケーキなどで県内では知名度も高かった洋菓子製造販売のアサバ(栃木県日光市・従業員30人)は、高級ホテルのOEM商品供給やスーパーや百貨店への卸売などの多角化によって業績を伸ばし、12年10月には工場を増床。ところがその後、「主要原材料の卵・チーズ・砂糖などの輸入価格の急騰によって赤字に転落した。金融支援を受けて生き残りを図ったものの、夏以降の円安の進行がさらなる打撃となり、10月に入って業務停止を決めざるを得なかった」(同社関係者)という。
紙布・紙紐製造業の稲葉製紙(静岡県静岡市)は、安倍政権が誕生した12年末からの円安で仕入れコストが15%も上昇。販売価格への転嫁も思うようにできず、今年に入って事業継続を断念した。
そうした危機はむしろこれからが本番だ。
埼玉県川口市で鋳物製造を行なう石川金属機工の石川義明・社長が苦しい現状を打ち明ける。
「銑鉄関係の原料や材質調整のための添加剤など原材料はすべてドル建てで入ってきていて、この2年でコストは約2割も増した。一方で注文のほうはいい時と比べると、昨年は4割減でした」
同社では鉛筆1本持ち出すのも許可制にし、照明を減らすなど細かいところまで経費節減を徹底しているが、焼け石に水だ。
「社員の給料を下げざるを
得ない状況です。大手企業に対して政府が『賃上げ!賃上げ!』と騒いでいるのはおかしい。お金が大手の社員の賃上げに使われれば、我々のところに金が回ってこないのだから」(石川社長)
賃上げを最も熱心に説いているのは安倍首相だが、中小企業の現実など知りもしない。
東京都台東区にある玩具メーカーの社長は「どんどん円安が進むリスクを考えたら日本の市場には期待せず、海外で生産して海外で売るほうがいい。これから生きる道はそれしかない」と断言した。だが、当然のことながらそうした決断ができる中小企業は多くない。
「経営者が高齢で、資金的に安定しない中小企業がこれから海外に打って出るのは無理」(信用組合関係者)というのが実情だ。
川口鋳物工業協同組合の岡田光雄・事務局長の話。
「組合に加入している事業者の7~8割が従業員数10~20人の小規模事業者。海外展開できる資金も人員もいません。
戦後の復興期をピークに組合員数は徐々に減っていたが、ここ数年はようやく落ち着いていた。それが最近になって、再び倒産・廃業が増えてきた。生かさず殺さずでやってきたのに、殺される側に回ってしまったわけです」
08年のリーマンショック後、各企業は内部での節減努力でなんとかしのいできたが、アペノミクスの円安がそうした努力を一気に吹き飛ばすというのだ。
「為替予約でリスクヘッジができている体力のある企業は今はまだいいが、3~5年の長期為替予約の更新時に急激な円安の影響を一気に受けることになる。今後は比較的体力のあった企業まで追い込まれる可能性がある」(前出の信用組合関係者)
減税も交付金も効かない
体力のない中小・零細企業にのしかかるのが、社会保険料の負担増だ。安倍政権下で進められている社会保険料アップは、重しの上にさらに重しを乗せる非情な仕打ちになっている。
前出・須田氏がいう。
「従業員の社会保険料は労使折半。しかし、業績が思わしくないために、中小・零細企業での滞納が増えている。零細事業者の話では、年金事務所から『本当に赤字で払うお金がないのか。決算書を持ってこい』などと、恫喝に近い呼び出しを受けているという。税務署ならまだしも、年金事務所にはそんな権限はないはずだが、役所側も徴収率アップを迫られて余裕がない。そのしわ寄せが零細企業に及んでいるということだ」
安倍政権は設備投資減税も打ち出しているが、これも中小・零細企業の経営者からは冷たい反応が返ってくるばかりだ。
「先の見通しが立たなければ、新たに機械を導入しようという気持ちになるはずがない。設備投資減税といわれても、絵に描いた餅だよ」(大田区のある中小企業経営者)
景気対策としての財政出動・公共事業もアペノミクスの柱の一つだが、中小企業は恩恵に与(あずか)れない。
「人手不足や原材料不足で、実際には予算はついても工事ができない状態が続いている。公共事業費の未消化分は12兆~13兆円。いくらカネをばらまいても回ってこないのが実態で、これでは景気がよくなるわけがない。地方創生の目玉として地方交付金を増やすことにしたが、要は地方自治体に丸投げしただけ。中小企業をどうやって助ければいいのか、政府にはその知恵が全くない」(前出・須田氏)
無策を続ける政府に見切りをつけ、独自の対策を始めている自治体もある。例えば群馬県では円安対策として、円安対策相談窓口の設置、円安対策セミナーの開催、資金支援として円安対応金融特別相談会、企業の販路開拓支援などを決定
した。
しかし、円安対策相談窓口への企業からの相談はゼロだという。企業側からすれば「いまさら行政に相談しても埒(らち)があかない」という気持ちなのだろう。
「廃業や倒産に踏み切れる企業はまだ幸せです。中小・零細企業は事業資金を個人保証しているところが多く、会社を畳んで家や財産を手放しても経営者に一生借金が残るケースが多い。会社を廃業したくてもできず、赤字を垂れ流すしかないという不幸な企業が増えている」(前出・須田氏)
そのうえ消費税を10%に増税すればどうなるかは火を見るより明らかだが、安倍首相は自分の間違いを認める勇気もなく、ただ官僚と大企業の声に従って日本経済を奈落の底へと導いている。
貿易赤字 上半期最大 誤算の安倍円安政策
(東京新聞【核心】)2014年10月23日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2014102302000131.html
財務省が発表した二〇一四年度上半期(四月~九月)の貿易収支は五兆四千二百七十一億円の赤字と、上半期として過去最大の赤字幅を記録した。貿易赤字から抜け出せない現状は、円安をテコに景気回復を図ろうとした安倍政権の経済政策が誤算だったことを示している。
(石川智規、山口哲人)
電気製品・車、輸出伸びず
輸入物価上昇し家計圧迫
▼想定外
「経済というのは、こっちの都合の良い通りに動いてくれない」。甘利明経済再生担当相は九月末、記者会見で本音を漏らした。
安倍政権は一二年末の発足以降、日銀の大幅金融緩和で円安を促し、輸出回復による経済再生を見込んだ。政権発足時の為替レートは一ドル=八五円前後。「せめて一〇〇円台に」と悲鳴を上げた自動車や電機など輸出企業の声に応えるためだった。
しかし、輸出は伸び悩んだ。一四年度上半期の貿易統計が示す通り、輸出は前年度同期比1・7%増どまり。輸入の増加幅は2・5%増と輸出を上回り、貿易赤字は拡大した。「円安でここまで輸出が戻らないのは正直、想定外」。経済官庁の政府高官はこう明かす。
▼変化
上半期の貿易統計には、日本経済の構造変化を如実に物語る二つの項目がある。
一つ目は、「中国からの通信機の輸入」だ。統計項目上の通信機は、スマートフォンなどの携帯電話が含まれる。上半期は8・6%減だったが、九月単月では8・2%増と急増した。
押し上げの原因は九月後半に発売された米アップル社の「iPhone(アイフォーン)6」。米国本社で開発された同製品は、中国の工場で製造され、日本になだれ込んでくる。
魅力的な電気製品を世界で売る経営戦略は、ソニーをはじめ日本メーカーのお家芸だった。しかし、最近は米国や韓国勢などに押され、半導体などの部品からテレビなど完成品に至るまで海外から電気製品が大量に流入する。
BNPパリバ証券の河野龍太郎氏の試算ではリーマン危機後の電機メーカーの低迷による貿易収支の悪化は、約七兆~八兆円。原発停止による液化天然ガス(LNG)など化石燃料の増加は最大四兆円。貿易赤字拡大の要因は、原発停止の影響よりも、電機メーカーの競争力低下の方が大きいことが分かる。
二つ目は、「米国向けの自動車輸出」だ。上半期は8・9%減となり、対米貿易黒字が六期ぶりに減る要因になった。海外に生産拠点を移す動きが各業種で広がっているが、とりわけ自動車メーカーはメキシコなどへの移転を進める。
▼警鐘
「円安のメリット(利点)が見いだしづらくなっている」。みずほ証券の末広徹氏は指摘する。円安で、ガソリンや原材料などの輸入物価が上昇、個人消費の回復を妨げ、景気が上向か
ない一因になっている。
政府は、円安で自動車や電機メーカーの円換算での海外収益が増えれば、その分を現地販売価格の値下げや販売促進に使い、日本製品の競争力が上がって輸出も増えると期待した。だが、「日本製」の競争力自体が低下、海外生産も増えた中では「円安イコール輸出増」の読みは甘かった。
唯一のメリットは、大企業の収益が円ペースで回復し、株価も高水準を保っていること。だが、もうけを中小企業への発注増や雇用者への賃金増に回さず内部留保の増加にとどめれぱ、経済の好循環は生まれない。
末広氏は「円安で消費者の負担だけが残った、という結末だけは避けなければいけない」と警鐘を鳴らす。
経団連献金関与
献金増やして法人税引き下げ
気流(しんぶん赤旗)2014年10月21日
経団連は企業献金への積極関与を決め、政党の政策評価まで発表しました。しかし、財界筋からも、経団連が積極的に企業献金に関与することに否定的な声が出ています。
「政策買収」高まる批判
A 経団連が企業献金への積極的関与を決めたのは、民主党政権が崩壊し、自民党が政権に復活したことがきっかけになっている。経団連は「政治と経済の連携」をうたい文句にしている。
B 企業が政治献金をする場合、経営側としては株主にどう説明をするのかが問われる。
C そこで出てくるのが、説明資料としての政党の政策評価ということ?
A そういう意味合いはあるね。でも、経団連が10日に発表した政策評価は、大企業本位の政策の推進を各党に求めるものだよ。
B 今回の政策評価は、自民、公明の与党だけでなく、民主、維新、次世代、みんな、など各野党も対象にした。しかし、自民党への評価項目は、農業の「成長産業化」や「道州制の導入」など9項目。他の党の5項目より多く、しかも詳細にわたっている。
自民党に高評価
C 自民党に対してはどんな評価をおこなったの?
A 財界が求める法人実効税率の25%程度への引き下げについては、「20%台まで引き下げることを目指すことを決定した」と高く評価していた。さらに今後の課題として大企業にとって「実質負担減となる」引き下げを強調した。
B 消費税率の引き上げについては「10%への着実な引き上げ」が課題とし、原発の再稼働については「再稼働を明言」と評価。その上で、「早期再稼働加速化に向けたさらなる取り組み」を求めていた。
C 結局、大企業本位の政策を自民党に推進してもらうため企業献金を増やしたい、というのが本音だね。
求心力強化狙う
B 経団連が企業献金への関与を強めるには、もう一つの狙いがある。それは、会員企業にたいする経団連の求心力強化だ。
A 今回の措置は、以前のような経団連による企業献金割り当て、とまではいかないが、企業に対し経団連が企業献金を奨励すればするほど、経団連の存在が増すのは明らかだ。
B 各企業には、経団連担当者がいるからね。彼らにとっても、仕事がある方がその業績評価も上がるしね。
A しかし、ある財界筋は「いまさら企業献金あっせんはないでしょう。共産党は受け取っていないけど、他の政党には、政党助成金が入っている。しかも、政党助成金制度をつくるときは企業献金を禁止しようとやっていたわけですからね」と口にしていた。
C しかも、「法人税は下がった。企業献金は増えた」となれば、「政策買収だ」との批判は免れないよ。法人税減税と消費税増税は一体のものだ。たとえ株主に説明ができたとしても、こんな税制「改正」に国民は納得しな
い。
B 経済界の中からも消費税増税を予定通り実行することに、慎重論が出てきている。「消費税を引き上げないリスクより、引き上げるリスクが大きくなっている」(財界筋)と言っていた。経済が底割れすれば、元も子もないということだ。
A 20日には安倍晋三政権の閣僚が「政治とカネ」の問題で辞任した。財界は、安倍政権に長期政権の期待をかけているが、財界と政権が一体化すればするほど、政権の国民的基盤は失われていくよ。
主要政党の政策評価
(日本経済団体連合会)
http://www.keidanren.or.jp/policy/2014/084.pdf
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アベノミクスを恨みます・・m(-_-m)~ ウラメシヤー
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